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東條慎生 課題7/リアルな感情とリアルでない設定―「記憶の空の果て(仮)」プロット 2003年06月09日(月)19時37分12秒
高橋阿里紗 作品1/「記憶の空の果て(仮)」プロット への応答

●レファレンスとしての類似作品(参考リンクはだいたいオフィシャルがあればそれを、無ければ概説的なものを選びました)
漫画的、アニメ的なものを感じると、他の方も書かれています。私もいろいろなものを思い出しました。あえて固有名詞の列挙をします。私が想起するのは、漫画で言うなら大友克洋「AKIRA」、高橋しん「最終兵器彼女」。アニメで言うならば、新海誠「ほしのこえ」及び、パイロットフィルムしか出てないのですが、「雲の向こう、約束の場所」という作品たちがいっせいに頭のなかに現われて来ました。

大まかな相似は、近未来への想像がその作品を構成する根本にあることです。「AKIRA」を思い出したのは、国に管理された学校と言うところから、鉄雄と金田のいた超能力養成施設が頭に浮かんだからです。それはある意味外面的なことで、高橋さんのプロットと想像力の相似を見たのは、実はそれ以外の作品です。
タイトルを見ても、内容の説明を見ても、そこにあるのはいわゆるノスタルジーに近いような、感情のリアリティを意識しているのだと思われます。普遍性を持った、学校という施設への郷愁を、思春期の少年の異性への感情を、失われていく存在としての時間を、そして不可避的に登場人物の感情を押し潰していく外部の状況への抑圧的感情を。

●感情のリアリティ
新海誠や高橋しんの作品から感じるのも、またそのようなものです。
新海誠「ほしのこえ」には、携帯メールで連絡を取り合う恋人同士という、今作とよく似た設定があります。高橋さんは御存知なのではないでしょうか。個人制作でそのまま商業ベースに載せられるクオリティの高いアニメを製作したということで、非常に有名な作品であり、作家です。「ほしのこえ」にあるのは純粋に感情のレベルでの詩情らしきものであり、その他の設定はすべて感情のリアリティのための道具立てに過ぎません。だからこそ、感情がリアルであると受け取られるかも知れません。外部は描かれず、二人の感情だけが焦点化されています。
二、三冊読んだだけの「最終兵器彼女」も、外部の戦争はまったくの道具立てに過ぎないという印象があります。この作品、読んだ限り非常に私は嫌いなのです(だから少ししか読んでないのです)。理由は、主人公たちの感傷のためだけに人間が死んでいくという印象を受けるからです。(または、暴力への憧憬)
感情のリアリティだけが突出してしまい、あらゆる外部は亡き者とされていくような状況、感傷の肥大と自己中心化されていく思考のようなものを感じます。
今人気を博するのはそういった作品のようです。

●世界と日常の断絶
精神科医の斎藤環網状言論F改で、上のふたつの作品は、「世界」と「日常」との乖離を、「感情のリアリティ」によって埋めようとした作品であると評しました。現在、われわれの「日常」と政治や国家などの「世界」というものが乖離しているという話を聞くことがあります。私たちの世代にとって、政治などがもはや身近な問題として感じられないような状況は確かにあるでしょう。(思えば、「内向の世代」と呼ばれた人びとは、社会的状況を描かずに、個人的なことを書くことからそう命名されたわけですが、それと同じようなものを感じます)その乖離、それを「感情のリアリティ」によって埋めていると斎藤環は言うのです。世界に対する決定的な欠落?欠如? これらの作品は個々人の存在の地点を確かめようとする作品でしょう。世界に対して自分の位置を定め得ない不安定さ、だからこそ携帯メールや恋愛などで繋がりを確かめようとするのです。いたずらにテーマを抽出しようとすると現代社会データベース派東浩紀が怒りそうですが、それはさておき、「ほしのこえ」の最後に現われる「ここにいる」という台詞、文字は顕著に作品の有り様を示していると言えるでしょう。

今の世代の人間の「リアル」というものが、そこにあるのかも知れません。とすれば高橋さんのアプローチは非常に現代的であり、人の心を掴みうるものであるでしょう。もちろん、個々の細部によるリアリティに関しては詰めなければならないのですが、作品が持つ傾向に関しても考慮し、自覚する必要もあることは確かです。高橋さんのプロットを見ると、読者の何に訴えたいかというのは明確な気がします。それとの類似を感じたので、上記の作品を挙げました。良かったら参考にしつつ、自らの作品が同時代的に何の意味を持つ/持たされてしまうのか、考えておくと良いかも知れません。しかし、それを考えすぎると作品の魅力を消去することにもなりかねないので、程度問題ですが(日本では一般に、批評的意識が強い作品は敬遠される傾向にあるようです)。

●個々の設定について
・携帯メールが更に発達し、離れている人同士があたり前のようにメールでやりとりする。

外部との連絡が遮断されているのに、汎用的なコミュニケーションツールが使用可能であるというのはどういう理由によるのですか? 禁止されているのは直接的な接触だけなんでしょうか。また、インターネットなどの他の遠隔交流手段との関係を詰めておく必要があるでしょう。つまり、携帯メールが焦点化される理由です。
「ほしのこえ」のように、携帯メールだけを特化して、その他の設定をすっ飛ばすことで逆説的にリアリティを出すというやり方でない以上、携帯メールという手段が社会的にどういう存在であるのかは、重要なところだと思います

・日本はアメリカからの独立を図り、密かに核の製造を試み、軍事教育にも力を入れ始めている。
・アメリカは、日本側の不穏な空気に気づきつつも、日本の豊かな経済援助が無くなるのを恐れ、中々手を出せず、慎重になっている。

ここは、描くか、描かないか決めてしまわなければならないと思います。それこそ「最終兵器彼女」のように、「戦争」を不気味なものとして完全に外部に置いてしまうことで設定を説明する難を回避するということも考えられるでしょうけれど、この作品はその状況を書かなければ始まらないようなので、それもできないでしょう。
となると、リアリティのある設定を用意しなければならないと思われるのですが、上記のふたつの設定はどう考えてもリアリティを獲得できるようなものではないと思われます(時代をどれくらい未来に置くかにもよりますが)。
アメリカからの独立を画策するならば、日本の完全な武装放棄以外に方策はないと思われますし、武装を放棄することはアメリカが許しません。そしてこの設定にはアジア圏への視線がありません。アジア、大きくは北朝鮮との緊張状況がアメリカをして日本を軍事的中継地として重視しているという面がある以上、日本の武装独立という政策はあり得ません。そもそも、日本という国が武装独立しようなどという政策をとりうる国では全くないと思います。なあなあで決断力が無く、他国へ上目遣いで接しているこの国の性質を鑑みるに、非常にむずかしい設定であると言えるでしょう。軍の暴走と言うことを考えているのかも知れませんが、日本近代史から私が知ったのは、軍の行動は民衆の意思を無視した暴走などではなく、制度的にも、また民意としてもかなりの部分周到に準備され、同意された行動であったということです。そこには天皇も関与していますし(金曜の「近代日本の戦争と軍隊」という講義で扱っていました)、もちろん国民も日比谷の交番を焼き打ちした有名な事件があるように、軍だけの暴走などでは全くないのです。現在日本の国民性とは、そのような熱狂を生み出しうるかと聞かれれば大きな疑問符を私は浮かべることでしょう。
この設定はむずかしい、と思います。

また、他国が日本の経済援助を求めているというのは、北朝鮮にこそふさわしい設定です。たとえ、アメリカが日本から経済援助を求めるとしても、何らかの対価を用意し、日本が優位に立てないようにするはずです。まるでアメリカの子犬のような“神国”ジャパンが、そんな程度のことでアメリカに対して優位に立てるはずがありません。精神的に子犬のジャパンがもし、アメリカに刃向かうとすれば、それは子供の逆ギレのような、抑圧された屈辱などをバネにした一瞬の反乱でしか無いような気がしています(もちろん、その時にジパングはテロ国家として殲滅されるでしょう。だからこそ、そのような状況は考えにくいのです)。アメリカだって、日本に対して好意を乞うような真似は死んでもしないでしょう。アメリカはそういう国です。
そういった状況をどうにか出し抜いて設定を考えなければなりませんが、そこまでやるのは仮想戦記作家だってむずかしいでしょうし、第二次大戦直後からの偽史を考えた方が手っ取り早いかも知れません。さらに膨大に資料が必要になる、かな。やっぱりある程度現実を無視しつつ設定した方が、作品を書きやすいかも知れません。書く時も背景状況をあまり出さないようにして、できるだけ日常のレベルのみを描くようにするとか。
ファンタジーにしてしまう方法もあります。パラレルワールド的な世界を設定して、そこで展開する。
つうか、実際誰もそんな細かい設定気にしないかも知れませんね。だったら話は簡単だ。

・養護施設で育った子供達は、中学までの義務教育期間を国が完全に保障する代わりに、卒業後は国に定められた軍事学校に入らなければならない。

この設定は、徴兵制度を現実的なものとするには良い設定だと思いました。管理社会的な国の厳しさを印象づけるには適しています。制度的に管理された社会のなかでは「通常」をはずれた異分子は徹底的に排除されるでしょうし、それを庇ってやる代わりに兵役につけ、ということでしょう。管理社会そのものが生み出した差別構造を、当の管理社会が利用する。アイロニカルで峻厳です。

●終わり
直接関係ないことを長く書きすぎました。設定について延々書いたのは、そこで躓いてしまうとまったく読者を失ってしまう可能性があるからで、外面的な設定については慎重にした方がいいと思うからです。このままでは悪い意味で漫画的なものになりかねないと思います。漫画ならば設定を度外視して(というか、気にしないで)読む人もいるかも知れませんが、小説だとちょっと事情が異なってきます。画面や絵による疑い得ないリアリティをぶつけることのできる映像的表現と違って、細かな積み重ねでリアリティを構築する必要のある小説の場合、設定はやはり重要であるでしょう。物語については情報も少ないので書きませんが、詳しい話を聞ければいろいろ討議できると思います。
(しかし、上野俊哉氏が怒りそうな固有名詞ばっかりだ。そういえば、上野氏の「紅のメタルスーツ」序文には延々と東浩紀批判が名前を出さないで書いてあったなぁ)

圓山絵美奈 課題7/プロットについて 2003年06月09日(月)19時34分28秒
高橋阿里紗 作品1/「記憶の空の果て(仮)」プロット への応答

日本がアメリカから独立しようと核開発を始めたり
するのだったら、アメリカへの経済的援助が大きいと言うよりも
アメリカにいいようにされて、国民は食べるものも困ってしまってる
という設定の方が、危機感がでるんじゃないかなあと思いました。
もしかして高橋さんは日本が力をつけてきたから、アメリカ
に対してそういう想いにさせたという設定を考えたのでしょうか?
また、メールが連絡手段だとそれこそ戦争みたいなものが
始まったときに、メール自体が使えなくなるんじゃないでしょうか?
それにメールだとありふれているので、
もうちょっとひねった方がいいと思います。
何を使うかで大きい印象を受けるか違うと思うので。



島本 和規 課題7/記憶の空の果てのプロットを読んで 2003年06月09日(月)15時53分03秒
高橋阿里紗 作品1/「記憶の空の果て(仮)」プロット への応答

 プロットを読んでの感想として、アニメやゲームのような感じの設定だなと思いました。
五十嵐舞さんや、水落さんがすでに書いているように、設定を細かく徹底的に用意して、それをちゃんと作品中に描くことがこの作品を良いものにする為に重要だと思います。
 設定のなかで、さらに進歩した携帯メールという設定がありますが、携帯メールは身近に溢れすぎていて、接触禁止なのにメールで連絡を取り合うと言うのは、高校生が授業中にしゃべれないからメールするみたいな、なんだか安っぽい感じがします。この携帯メールは、重要な設定のように思うので、なにか全く新しい通信手段を考えてみたほうが良くなるのではないかと思います。
 それと、近未来にアメリカへ豊かな経済援助というのも、今の日本を考えるとリアリティに欠けるのではないかと思います。この際、日本は既に経済破綻をきっかけに、アメリカの属国、またはそれに限りなく近い状態にになってしまっているとか、にしてみたらおもしろいかもなーと思いました。
 あと思いつきなんですが、近未来や異世界的な雰囲気出す為に、S.キューブリックの「時計仕掛けのオレンジ」みたいに勝手に造語を作って、それで田中康夫の「なんとなくクリスタル」みたいな注をつけてみるとかどうでしょう?
 

五十嵐 舞 課題7/「記憶の空の果て」について 2003年06月09日(月)13時04分16秒
高橋阿里紗 作品1/「記憶の空の果て(仮)」プロット への応答

 この作品の設定(構成)を徹底的に描けけばとてもいい作品になります。私は彼らが通う学校は軍ではないほうがいいかもと思います。こういう物は書けばわかると思いますが詳細な書き込みがないとリアリティがなく説得に欠けます。それよりは学園都市とか企業都市の特殊学校の設定のほうが自分の設定(構成)で描きやすく例えありえないことでもフィクションで片付けられまし、近未来的な世界で読者に入り込ませやすいこもしれません。
軍ものにするなら、メジャーで言えばアニメで言えばガンダムSEED・ウィングの世界が、小説でいうなら須賀しのぶ氏の「キル・ゾーン」などが参考になるでしょう。また、学園都市(企業都市)ものでいえばCLANPさんの作品やE’Sのようなものが参考になるでしょう。
 恋愛をメインにするのか軍の方の関係に巻き込まれていく出来事を主体にするかでこの話のイメージが結構変わると思います。また、このネタはありきたりなりやすいのでどこかに【高橋さんらしさ】が出さないとただのモノマネになってしまう恐れが充分ありますので採算言うようですがこの話(作品)は人物・世界の構成・軍や学校の設定を緻密にやることがまずストーリーを書く前にすることだと思います。これはあくまでフィクションですがリアリティを読者に与えなければ意味がありません。水落さんも言うように服装にしろ容姿にしろ学校の設定や人物の性格にしろ何か細部いたるところまで書くととても読み応えある作品になると思います。
私も出来上がりを楽しみにしてます。また、色んな作品の構成を学ぶだけでもいいので探してみるといいでしょう。バットエンドの中にハッピーエンドは難しいですね。頑張ってください。
(参考作品を羅列したいのですが名前が出てなくて大して挙げられなくてすいません。)

水落麻理 課題7/記憶の空の果てのプロットについて。 2003年06月09日(月)02時00分59秒
高橋阿里紗 作品1/「記憶の空の果て(仮)」プロット への応答

 ぐいぐい想像力をひぱっていってくれるような設定だと思います。ただ設定が実体験したことのない世界のことなので、そこで出てくる町の雰囲気や、人々の様子、魅力などをしっかり形作れないとなると作品の質が落ちてしまうよう。反対にその形作りがはっきりでき、ピントのあったリアルな世界を作り上げることができたなら、それはとてもいい作品になるのではないでしょうか。いかにこの世界を魅力的に現実的に書けるかがこの話を作っていくときの軸になってくるような気がします。このプロットの中に人々の様子や町のありようを単語を並べる形だけでもいいのでプラスしてみたら、いざ書いていったときにこの話に雰囲気をだすためのいいきっかけになると思います。
 主人公達の正確な年齢が書いてなかったけれど、設定からみると今の高校1年生の年齢ということでいいんですよね?というと15歳や16歳ということになるのかな。その時期はみんなファッションや自分の好きなものに貪欲ですよね。その設定年齢をうまくいかして、近未来日本の若者達にはやっているものを勝手に考えてみるとか。そんなことを考えていくのはすごく楽しそう。例えばハリーポッターでもあの世界にひきこまれてしまうのはファッションや部屋の内装が奇想天外だけどリアルな世界だったからだと思う。ハリーポッターが良いというわけではなく一例として。それがあれば読み手は引き込まれていくと思います。
 女の子がサラリーマンの革靴はくのが流行っちゃった時代。だとか、逆に鼻にピアスあけてる女は男好きだと思われる時代だとか。よくわからないこと書いてしまったけど、主人公達の内面性だけでなく容姿も知りたいです。その容姿をプロットとして考えてみるときに服装などにもこだわってみてほしいと思ったのです。今ここにない世界だからこそ全く新しい自分の世界を作ってその中で高橋さんが多いに楽しめると思う。物語の展開が気になります。楽しみにしています。
 

杉井武作 作品1A/萎れた心臓の搾取は惨すぎてできない 2003年06月05日(木)04時25分21秒

闇に手を翳しても、触れるものは無い
凭れ掛っていた世界の壁が崩れ
落ちたのは握り潰された心
萎れたまま彷徨う、まだ蜃気楼を求めてる
けど裏切り屋の真実に、また痛みは逃げ場を失う
欺きのナイフはいつになったら取れる?
蔑みの目はいつ縛りを緩める?
醜い眼球をえぐりだしても、消えない喪失への自己嫌悪
喉の渇きと消えない吐き気に、抗う気力も無くして
だれか慰めて欲しい
だれも僕を知らない
誰も信用できない!
萎れたままの心臓じゃ、立ち上がれない……
許して
殺して
早く!
早く!
心臓から零れる最後の一滴の汁

あぁ時は刻まれ、この足はまた立ち上がっている
なにもかも忘れて、何故立ち上がる?
太陽の感触は無邪気に僕を開花させてく
叫んでいた喉は潤って、新しい壁は築かれる
けどその壁に潰された、萎れた心臓の異物感は
永久に消えないから
欺きも蔑みも、消えないから
消えないから
消えないから
消えないから

越智美帆子 課題6/感想・言葉の難しさ 2003年06月05日(木)00時08分45秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

私は一時期、詩を書いていた時期があるのですが、短い中に凝縮して思いを入れなくてはいけないことが、とても難しいなと思いました。かっこつけたらかっこ悪くなってしまうし、小難しい言葉を使ってしまったら相手にその思いが伝わらない。そういうセンスは努力や練習でどうにかなるものではないと思うので、落ち込んだこともあります。

外島さんの詩は、全体的に悲壮感が漂っていて、雨や曇り、人との繋がりの空しさが読み取れます。しかし、言葉の前後の意味が読んでいてわからなかったり、矛盾している箇所が気になりました。多分、なるべく短くしようとして、重要なところを省いてしまったために、意味不明になったり抜けていたりするのだと思うのですが、せっかくいいことを言っていてもアレ??と思ってしまうため、その良さが半減してしまうのが残念です。

作品7の題名が、私はいいなと思いました。ただ、4行目の「クルクル」というのは、レコードを想起させます。クルクル、まではいいのに、その後にMDウォークマン、と続いてしまうので、これは多分音楽が頭の中、もしくはその音が部屋の中で回っている、ということを書きたかったのだと思うのですが、そこがいまいち抜けていてわかりません。

作品8の題名もDESIREとしたところがいいと思います。欲望への願い、求めるものを意味する単語を持ってきたのは、技あり、と思いました。ただ、英語が苦手な人(私を含めて)が読むと、英単語の題名の詩は意味が伝わりにくいので、そこも工夫が必要だと思います。

読んでいて思ったのですが、かっこよさをかなぐり捨ててみてはどうかな、と思いました。

室橋あや 課題4/恋の歌三首 2003年06月04日(水)22時17分31秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答


バイト先ももいろの声振り向けば スイッチ入れた同僚ニヤリ

妹はもう十五ですお母さん 肩を並べた馬の骨あり

久しぶり集った仲間酒の席 開口一番カレシできたの

杉井武作 課題6/言葉の喚起力不足 2003年06月04日(水)21時09分35秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

詩とは読み手によって受け取り方が変わる感覚的なものですが、
僕には伝わってこないものが多かったようです。
レトリックを弄んでいるだけで、
言葉の喚起力が決定的に不足しているように思えるのです。
意味の繋がりが見えない詩もありました。
意味がわからなくても、言葉の持つオーラで
訴えかけるタイプのものであれば、
自分とは肌が合わなかったようです。
無機質すぎる言葉遊びに感じられるのです。
また、意味がはっきりしているものでも、
そこに「趣」を感じることができない、
言い換えれば「そういうのあるよね、その感じわかるわかる」
というものがなく、「だから?」と一言で終わってしまうような
感想を抱いてしまうものが多かったです。

意味性の欠落という点において甚だしいのは、作品4「Madness⇔Sence」です。
状況を描きたいのか心象風景を描きたいのか、
単語の鏤め方が半端で、見えるものがありませんでした。
逆に「うまいこというなあ」と感心したのは、作品12A/「群集劇」です。
少ない単語の書き換えでテーマを浮き彫りにしています。
風景で見せるという点でとても好きなのは、作品5A「CHILD HOOD」です。
短い詩ですが、自然の静けさや暖かさが浮かんで、
なんだか懐かしい気持ちになりました。
また、作品13A「one−piece dress」は、
「愛のないセックス」をテーマにしていると読み取りました。
だとすれば、僕が書いた、「tears’Ring」という詩と似ています。
これは、身体を重ねる描写で出会いと別れの無常観を
浮き彫りにしている(つもりの)詩です。
よかったら読んでください。

島本 和規 課題4/あのすばらしい愛を一度と言わず、二度三度 2003年06月04日(水)18時48分32秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答

「あてもなく 二人で歩く 宵の道 どこへゆくのか どこへゆくのか」
「映画館 握ったその手 離せずに シビレた腕は 幸せの代償」
「手作りの 弁当食べる 昼休み いつかは食べたい 君の手作り」


瓜屋香織 課題4/コイノウタ 2003年06月04日(水)14時07分20秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答

ガムみたい 君にかまれる たびあたし あたしのあじを うしなってゆく
缶コーヒー なりたかったの 冬の日に だってあなたと キスできるもの
なんでもね もってけばいい もうすでに だいじなものは ここにないから
欲しいなら 好きにしていい 私にね 守るものなど ないのですから
嫌いより スゴク痛いの 君の目に 私の場所は はじめからない
スキってさ いいことだよね でもあたし なんだかどんどん いやなやつなの
君の欲しい 好きじゃない ここにいて いい理由がね 欲しかっただけ

菊池佳奈子 課題6/外島さんの作品批評 2003年06月04日(水)08時30分22秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

なんだか共感できたり、ずきりとする詩が多かったです。
言葉の言い回しとか、表現の仕方がとても鋭いと感じました。
特に作品2A、作品11A、作品17Aの3作品がとても心に響きました。

詩というものは形態が自由なのだけれど
もっと韻を踏んだり、言葉の字数を考えてみたり、段落のつけ方に工夫してみたり、言葉を対比させてみたりしたらもっと読みやすくなるんじゃないかなと思いました。

私も詩を書いたりするので
とても勉強になりました。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Apricot/1583/

菊池佳奈子 課題4/儚くとも 2003年06月04日(水)08時18分28秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答

*君のため そんな言葉は 欲しくない 僕は自分で 歩いていける
*部屋のすみ 人形抱え 泣いていた 大丈夫って 言って欲しいの
*いつまでも 頭に残る 君の声 いつも優しく 微笑んでいた

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Apricot/1583/

高橋阿里紗 課題4/恋短歌。 2003年06月04日(水)03時36分56秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答


「携帯に 愛の言霊 吹き込んで 夜空へ飛ばす 願いを込めて」

「黄昏が 君のほっぺた 染め上げて 道の狭間で キス5秒前」

「靴ひもを 結びなおした 大きな手 君の髪の毛 触れてみたくて」

「僕の目に 映らなかった 君の空 アイツにだけは 理解ったんだね」

越智美帆子 課題4/年下の男の子 2003年06月04日(水)03時34分26秒

*かわいいと 思った顔に ある日、髭 意外に似合って 赤面したり
*年の差の分だけ過去の 自分見ている気がしてる そんな今
*年上の 私が何故か 敬語なの 年下彼は 普通にタメ語
*成長期 まだその最中 並ぶ顔 待ってて早く 見下ろすから
*ああいいよ 俺払うから おごるから 財布に見える 漱石2枚
*白いシャツ 漂泊したら ばれちゃった 親には言えぬ アリバイ外泊
*1年や 2年の遅れが 致命的 見たい世界が 俺、まだ見えない
*離れてる 時間に何が起ころうと どんと構えて 焦りは禁物
*あの年は 憧れ混じり マザコンで 甘える場所が 必要かもね
*背伸びして 髭生やしても 「あ、かわいい」 いつになったら 「かっこいいよね」


高橋阿里紗 課題6/外島さんの詩の批評 2003年06月04日(水)03時28分40秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

印象としては、かなりキツイものがありました。
落ち込んでる時に読むと、更に墜ちそうです;;
墜ちるというより、沈む感覚かな?

読んでる時、映画のフェルムをバラバラに切って繋げたような印象を受けました。
感情の動きに合わせて移り変わるシーンについていけなくて、気づいたらひとりぼっち。
何だかそんな錯覚に陥りました。
思考の迷宮??


作品として気になったのは、作品10A「Kill」です。
この中の、「今を消費するだけの私達」というフレーズが二回出てきますが、二回目を「今を浪費するだけの私達」とかにしてみてはどうでしょう?
類似語で言葉遊びしてみても楽しいかもしれません。

それと、作品11A「GAN」を見て、THE BLUE HEARTSの「TRAIN-TRAIN」を思い出しました。
「見えない自由が欲しくて/見えない銃を撃ちまくる/本当の声を聞かせておくれよ」
かなり大好きな歌です。(笑)
「私」も「誰か」も許してくれているのに、「未来」だけは「拒絶」なんですか?
かなりズキンときました。
もう少し信用しようよ〜。色々。とか言いたくなりました。(笑)

個人的に好きなのは、作品9A「Varilbe wind」です。
理由は、一番イメージが浮かびやすいから。
何で人って、願いは空にいくと思うんでしょうね?不思議だ。
でも、写真のように情景が浮かび、童話のような優しい印象を受けました。
それと、世界が広がったような解放感を感じました。


熱い感情を押し殺している自分を、客観的に眺めるもう一人の冷めた自分。
全体的に、そんな映像が浮かびました。
言葉の欠片ひとつひとつはすごい綺麗で好きです。
でも、それらが集まって痛い印象を受けてしまいました。
硝子の欠片でゆっくりじわ〜っと切られているような…;;
ジリジリしているモノを、必死に押し殺しているような感じがしました。
少し息苦しいかもしれません。
でも、何かある。気になる。という詩ばかりです。
言葉を少し整理してみたら、すっごく良い作品になっていくと思いました。






滝 夏海 課題4/そよ風に雨粒光る 2003年06月03日(火)23時20分17秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答

重要なとこだけいつも聞き逃す 明日の事とか誰が好きとか
授業中 うたた寝してる横顔をそっと見つめてそっと笑って

困ってる笑顔が一番好きだから キミ専門のいじめっ子になる

叫んでも 振り向く人はもういない 泣く場所探して街を彷徨う
あたしたちカイとゲルダになれないの 涙もキミに辿りつけない
行かないで あの日素直に言えてても きっと今頃後悔してる

圓山絵美奈 恋の短歌 2003年06月03日(火)15時59分03秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答

短歌は書いたことがないので自信がないのですが
がんばって書いてみました。 

「犬みたく 好きだ好きだと言わないで たまには私 否定してみて」

「空色も  泥水にして 濁しちゃえ そんな恋をね 知ったあの頃」

「やさしさを はき違えてる あの人の 笑顔はいつも 悪魔に見える」

圓山絵美奈 評論代表者から・・・ 2003年06月03日(火)15時44分32秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

皆さん忙しい中、評論ありがとうございました。
とりあえず五十嵐さんの批評までを対象にプリントを
作ったので、授業でお渡ししたいと思っています。
私の感想、批評はこの掲示板にのせるか考えたのですが、
長くなってしまうので当日プリントにてお渡ししたいと
思っているのでよろしくおねがいします。

五十嵐 舞 課題4/  【万華鏡】 2003年06月03日(火)12時57分31秒
▼課題と連絡:課題4/恋の歌三首 への応答

 
 ★どうすれば忘れられるの 彼の背ともう戻らない あの夏の日々

 ★天の川 二人で見た夏がもう 誕生祭にわく冬となる

 ★長い髪を 風になびかせ 歩く君 日傘の影に 隠れるカンバセ
 
 (もう二句)これは恋の句はいるかわからないもの
 ★助手席の疲れた寝顔を眺めつつ 夢の国から 我が家へ向かう
 ★デートとさしゃれこみつつ葡萄摘みに栗拾いと 食欲の秋

五十嵐 舞 課題6/ 外島理香さんの詩について 2003年06月03日(火)12時36分41秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

 まず作品全体からいうと何か虚無感にも似た寂しさがそこはかとなく漂ってる感じをうけました。皆さんがいう孤独というか孤立という感じもこの作品群にはあると思います。しかしそれとは別にこの作品から受ける作者の印象は何かに飢えている感じがします。それは喜びや感動などというものか、人の温もりなどに対する憧れや執着のようなものも見受けられるような感じもします。(間違っていたらすみません!!不愉快に思うかもしれませんが・・・)
私の中では気に入った作品は、作品17A「Vanity」です。
特に気に入ったフレーズが
「本当は感情なんて要らないのでしょう?」という部分。
このフレーズは逆のことを言っている感じを受けます。感情があるからこその欲であり、また孤独感や寂しさという名の負の感情も人は皆抱くのだと私は思うのですが・・・まあ、これは疑った見方をしているかもしれません。
また、
 >  海に映る月はどこまでも無情で
    人間はその海の中をゆらりゆらりと泳ぐように
    ただ呑み込まれて行くだけ

というフレーズは世界(=海)に対する人間という個の存在がいかに無力であるかが無情(ではなくて無常かもしれませんが)や呑み込まれて行くだけという言葉に現れているような気がします。そして視点はどう見ても第三者的な位置で見ているというか感じているんだなという印象がしました。
この作品と全体を通して思うのはほとんど作品には巨大な無情な世界に対する個の存在の小ささと力のなさに絶望しているというか虚しさやあきらめが出ている感じがします。
もしそうなら、それはある意味世界というものにかなり依存しているからこそ孤独を感じるのだし、自分が孤立した(させた)見方になるのかもしません。
 またこの作品にも全体にも言えるのですが、はっきりとしたビジョンというかインパクトが見えてきません。もっと作品の世界観を描いていくまたは掘り下げてみたほうがいいと思います。そうすればもっと作品に磨きがかかり個性というか味わいが出てくると思います。これからも創作頑張って下さい。
私もご本人の朗読を希望します。また、違う印象を受けるかもしれません。






瓜屋香織 課題6/外島理香さんの詩について 2003年06月03日(火)12時05分01秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

私は、あまり詩を読んだことがないので、外島さんの作品全体の印象について感想を書こうと思います。

ひりひりするな。
私が作品達を読んではじめに感じた気持ちです。

外島さんの作品達を読んで、誰の目も届かない、誰もいない場所で、目隠しをして、ぎりぎりの崖っぷちを、ひとりぽっちで走っているようなイメージが浮かびました。崖を走っているけれども、その人間を見る人はいない。だから、危ないところを歩いているのか、だれにもわからない。誰も助けない。そんなイメージです。
孤独と一言でいうには、ちょっと違う世界観がある気がします。

奥野美和 課題6/移り気な大空の下 勇ましく立っていてほしい詩 2003年06月03日(火)03時17分59秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

まず縦書きに出力して読んでみました。

なぜだか硬い塊を読んでいるようで、
たまに喉につかえたり、うまく飲み込めなくなってしまったりしました。
それは、「孤独」という内面へむかった言葉たちを
読み手であるわたしが受け入れることが難しかったのかもしれません。

最近わたしは「曖昧な表現」「雰囲気だけの言葉」に対して
考えています。それは、前の発表から始まり、
今月のユリイカの特集、
「Jポップの詩学」を読んでよりいっそう考えてしまったのです。
読み手のイマジネーションに頼りすぎてしまう危険性を感じています。
(良かったら読んでみて下さい)

外島さんの詩には、この詩を書くことによって作者が
生きているというところ、気持ちを内面に向いつつ外に出しているところが
良いと思います。作者にとって詩を書くことがとても
大事だと言うことがわかります。これからも、勇敢に(今年の私のテーマでもあります)
書きつづけて欲しいと思います。


ただ、作者にとって「詩」とどういう付き合いかたを今後
していこうと思っているかはわからないのですが、
これを「作品」としていくには、やっぱり言葉のフックや印象が欲しいような
気もします。

いちばん好きなものは
作品9A/「Varialbe wind」です。

「願い」を空に「投げる」という軽快さが良いと思いました。

私の「願い」とは、また違う「願い」をだれかがしているのですよね?
あれ?でも「また空へと投げる」とあるので誰かが、同じ「願い」を持っているのでしょうか?
それとも最後は、第三者(?)の言葉で「誰か」=「私」となるのかな。
「誰か」と「だれか」と「私」の関係が知りたいところです。
いろんなイメージを持てるのが詩の良いところだと思います。
こんな質問はナンセンスかもしれません。……でも、この詩を良いなあ、と思ったので
知りたくなってしまいました。

あと、「Varialbe wind」は「Valiable wind」
かな?::移り気な風::と言うような意味でいいかな?

そして雑談板で詳しく書きますが
来週お休みします。(詳しくは雑談板で)



滝 夏海 課題6/さびしいイメージが強く残る詩達 2003年06月02日(月)23時53分42秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

他の方も言っているように、外島さんの詩は全体的に孤独・孤立を感じさせます。
とっても個人的な事ですが、一時期マイナスの要素が溜まると詩を書いていた事があり、それを思い出しました。

一番印象に残った作品は作品2A/「大都会の喧騒〜27階の非常階段〜」 です。
詩でありながら1人芝居やモノローグを思わせる文章なので、声で聞いても面白いと思います。
ただ一つだけ気になったのは3段落目
こんな音
聞き続けていたら
僕は気が狂ってしまうであろう

ここで「であろう」という言葉を使ってますが、音の流れとして「だろう」の方が良いのではないでしょうか。

室橋あや 課題6/外島理香作品批評。 2003年06月02日(月)22時56分30秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

目で追って読んでいて、詩はもしかしたら本人に読んでもらう方がずっと意味をくみ取りやすくなるかも、と思ったので、ぜひ当日本人の朗読を希望します。

「群集劇」が一番印象に残りました。

神様か 巨人かが
地球から人をほうきで掃いて
まっくろのごみ箱に
捨てるという喜劇

神様か 巨人かが
天国から人をほうきで掃いて
地球というごみ箱に
捨てたという悲劇

というフレーズは口の中で転がしても心地よく、「ヘドウィグアンドアングリーインチ」という映画を思い出しました。言葉は少しずつ変わっていてもテンポが乱れていないので引っかからずに読めました。喜劇と悲劇はまったく別のものでありながら同じ孤独ともの悲しさを持っているものだと思いました。

昨日の葛藤が嘘のように溢れる群衆

の群衆の部分はちゃんと漢字は正しいのに、タイトルで違うのは書き手自身の視点の違いなんでしょうか・・(自分がその場にいるかいないか)。

全体的に、自分を世界から孤立させている作品が多く見られたと思います。

東條慎生 課題6/孤絶の光景−外島さんの詩について 2003年06月02日(月)21時11分26秒
▼課題と連絡:課題6/外島理香作品1〜17の詩の批評 への応答

詩を読むのは余り慣れていないので、全体の感想を書くにとどめます。

外島さんの作品で目立つのは、強い孤絶感だと思います。
この世界から
人が消えてしまったような妙な快感
「群集劇」(群衆でないのは何故ですか?)に書かれているのが典型的なもので、これが高じたものとして、「大都会の喧騒〜27階の非常階段〜」に書かれているように、自己の鼓動だけを聞きながら自殺するという方向に向かいます。恋人との関係を描いたらしいいくつかの詩を見ても、その孤独、孤絶した感覚はいつでも底流していて、ともすると自らの内に籠もりきってしまう印象を与えます。これらの詩の中で書き手が描こうとしているのは、自分の存在の揺らぎが一体どこへたどり着くのか、というものではないでしょうか。いくつかの孤独を強く匂わせる作品群を主に念頭に置いて書きますが、詩の中の人物達は、上に挙げたいくつかの作品でも、それ以外のものでも、自らの位置の揺らぎに気を取られているのではないでしょうか。離人症的な描写が描き出す光景は自らの存在の揺らぎを照射します。
私は測りに会いに行く
という特徴的なフレーズが印象に残る「体温計」という作品では、その関係が体温というものに置き換えられていて、自分の体温を測るには相手を必要とする(体を重ねることの暗喩でしょう)という新たな関係を描いています。
揺らぎが誰にも関係することができず、内に籠もって外部と切断された状況を、「都会の喧騒」は描き出し、外の何ものかと手を伸ばすことによって安定を得ようと言うのが「体温計」だと整理できるかも知れません。
外島さんの詩は、ともすると自滅に向かいかねない揺らぎを抱えた存在、それがどのようにして他人と関係しうるか、そのような問いを含んでいるのではないでしょうか。
また、それが詩の言葉の断片的、散発的な感じをもたらしているようにも思えます。
改行の単位が短く、一つ一つの言葉それ自体を浮かび上がらせようとしているようにも見える言葉は、饒舌さからは程遠く、ギリギリの印象が強く感じられます。

外島理香 作品17A/「Vanity」 2003年05月31日(土)18時22分19秒

「本日この海は欲望の波が高すぎて
泳ぐことはできません」

「入ってしまったら後は呑み込まれるだけ
釈明しようとする人間はいない」

海は本能から生まれる欲望という名の悲しみの涙
「本当は感情なんて要らないのでしょう?」

答えを欲しがるような魚はいないように
その言葉は魚のあぶくに呑み込まれて消える

海に映る月はどこまでも無情で
人間はその海の中をゆらりゆらりと泳ぐように
ただ呑み込まれて行くだけ

外島理香 作品16A/「fragment」 2003年05月31日(土)18時09分51秒

この街はすべてを守り通そうと
なにひとつ守り通させはしない
自分がボロボロと剥がれ落ちていく
その破片を
誰かがムシャムシャと食べ続けゆく
この道を歩くあの人の破片
この人の破片この街の群衆
山ほどの破片が落ちているこの街で
なにが守り通せるといえるのだろう

外島理香 作品15A/「体温計」 2003年05月31日(土)16時05分28秒

私の凍えた身体は何℃だろう
君に会えば測れるのに
君の凍えた身体は何℃だろう
私は測りに会いに行く

外島理香 作品14A/「てるてるぼうず」 2003年05月31日(土)16時04分30秒

雨ばかりの晴れない日々
水溜りが増えていく路地
雨漏りがし始めた心の中
どかん
ふいに水鉄砲で撃たれた
水風船みたいな私の心は
どかん
雲をも吹き飛ばす大爆発
そうだ明日天気になあれ

外島理香 作品13A/「one−piece dress」 2003年05月30日(金)21時24分46秒

嘘がばれないように
体重ねては虚しさ積もる
真っ白なワンピース
煙草の煙に染まって消える
知識のない私を笑顔で君は抱く
中途半端な私の心
何を探すでもなく
ドアを開けて外は雨
傘を差すか差さぬか
迷うような細い雨
いっそ濡れて帰ろうか
真っ白なワンピース
雨の色に染まることもなく
洗濯機に放り込む
鏡に映った私の心
真実のない心を笑顔で君は抱く

外島理香 作品12A/「群集劇」 2003年05月30日(金)21時22分51秒

昼間の雑踏が嘘のような夜明けの街
この世界から
人が消えてしまったような妙な快感

ふと頭に浮ぶ光景

神様か 巨人かが
地球から人をほうきで掃いて
まっくろのごみ箱に
捨てるという喜劇

昨日の葛藤が嘘のように溢れる群衆
この世界には
時が止まることのないような従属感

また目に映る場景

神様か 巨人かが
天国から人をほうきで掃いて
地球というごみ箱に
捨てたという悲劇

外島理香 作品11A/「GUN」 2003年05月30日(金)21時15分59秒

私がジュウを持って
人を撃ち殺す
私がジユウを知って
空を飛び回る

誰かが私を許す
未来が私を拒絶する

私が誰かを許す
私が未来を拒絶する

外島理香 作品10A/「Kill」 2003年05月30日(金)21時14分24秒

道に咲いている花に足は止めない
今を消費するだけの私達
散っていく花を咲かせる術はない
今を消費するだけの私達

外島理香 作品9A/「Varialbe wind」 2003年05月30日(金)21時12分38秒

空へと投げた
私の願い
風に飛ばされ
どこかで
だれかが
また空へと投げる
いつか
どこかで
誰かの願いは
空へと届く・・・

外島理香 作品8A/「DESIRE」 2003年05月30日(金)21時07分26秒

欲望の好物はあなたの体温
欲望の食物は私の空虚な心

外島理香 作品7A/「薄曇った部屋の中で見る夢は」 2003年05月30日(金)21時05分37秒

汚い安っぽいテーブル
その前に腰をおろして廻る一日を忘れたい
弱い喉で煙草を7本吸ったら痛くなってきている

好きな曲 クルクル クルクル 回っている MDウォークマン
歌えない フワフワ フワフワ 浮いていく セーラムのケムリ
自分の姿だけ 重ねて思う
浮かんでは消える 浮かんでは消える
吐き出す煙に 想いを託す
浮かんでは消える 浮かんでは消える

繋ぐもの パララン パララン 届いたのは 友達からのメール
待ってね カチカチ カチカチ 送り合って 上辺だけのコトバ
「なにしてんの?」
ただなんとなく ただなんとなく
「好きな曲を聴いているよ」
ただなんとなく ただなんとなく

空になった煙草ケース
あるのは吸殻の溜まった出来合いの灰皿だけ
最後に吸った煙草がまだ消えずに煙を浮かせている

外島理香 作品6A/「Ra Ka Da」 2003年05月30日(金)21時02分43秒

君の身体に身を委ね
意味のない言葉を繰り返す事はなく
ただ君を愛撫し続ける
汚い君のからだ
愛など存在しない
君が穢いからだ
愛欲の果てに得た空気のような幻想
私の殻のからだ
真偽なんて計れない
空が私だからだ

外島理香 作品5A/「CHILD HOOD」 2003年05月30日(金)20時58分31秒

白夜の中で夢を見ながら 寝息をたてる
土が呼吸している音を聞き 蟻が歩いていくのを見る
遠ざかる夏の音は 澄んだ川の流れる音に似ている

外島理香 作品4/「Madness⇔Sence」 2003年05月30日(金)20時56分30秒

愛する人は
愛すべき人を殺した
愛すべき人は
愛する人を殺した
その手で私の髪の毛を撫でる
死体の転がる部屋で私の身体を抱く
あなたの体温
部屋の室温

私は感じる

悲しみ 怒り
微かな希望


あなたは死に逝く
私は見守る
椅子の上で
あなたは見知らぬ男に
ボタンを押される
その瞬間 あなたは消える
私に残るものは
思い出だけ


悲しみ 怒り
微かな希望

外島理香 作品3A/「melody」 2003年05月30日(金)20時52分18秒

雨の音が伝えてくれるのは 悲しみの足音
シャワーの音が知らせてくれるのは 癒しまでの針の音

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管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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