「物語の作法」掲示板 (0016)


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杉井武作 8B「『endless weave』ある阿呆の生涯 第二楽章」 2002年11月27日(水)09時27分54秒

柔らかく惑わせる壊れた瞳に
いつの間に迷い込んだのだろう
貴女の水は澄み渡り
溺れる僕の謎が解けた
終幕を奪い合った二人は
血塗られた身体
何度も見せつけ微笑んだ
子供みたい無垢な唇は
ふいに背中を擦り抜けて
違う玩具を釣上げて
今は何処で踊る
死魚になった僕は
空へと続くはずだった
崩れ堕ちてゆく螺旋階段
その幻覚に目が塞がれて
真実の扉に届かないよ
つかの間の虚ろな夢は
ときおり独り歩きして広がるほどに
醜さだけが目に焼き付く結末
されど僕を縛る
釣り糸の快楽はその痛み
嵩を増し続ける血液で
自分の存在を確かめるだけ 
あのときからほつれたままの赤い糸
ここではない空へと
はばたいてゆく羽根を
いつまで編み続けるだろう
艶やかに染められた
空白の底に沈みゆくけど
今でも僕を操る
その糸を捨てられないのは何故?

越智 美帆子 8A あかいクマのぬいぐるみ 2002年11月24日(日)17時44分45秒

 まるで、ひと昔前に全米を賑わせた、24人の人格を持つ殺人鬼ビリー・ミリガンが片手にぶらんと、しかししっかりと手を繋いでいたぬいぐるみのように、彼女はそのあかいクマのぬいぐるみをしっかりと胸に抱き、かすかに保護室と呼ばれる重層に鍵のかかった部屋から聞こえる叫び声や、何かにものをぶつける音を気にも止めず、病棟内を歩いていた。その出で立ちはまるで幽霊のようだった。青い月のわずかな光が、外界にある、まだできたての水たまりに反射している。彼女はそれに一瞬だけ目を止めて、また病棟内を彷徨い始めた。
「この子は、こないだピンクのかわいいクマを産んだの。」
「どうやって?」
「それはね、あたしが手伝ってあげたの。」
「方法は簡単。はさみとおはしがあれば、取り上げられるの。」
「この子のおなかを切り裂いて、おはしで赤ちゃんを取り上げたの。」
「しゅじゅつはせいこうしたの?」
「うん。だから安心してね。」
彼女はそうぶつぶつと呟きながら、亡霊のように薄暗い廊下を歩く。
 と、そのとき彼女の主治医が彼女の横を通り過ぎようとした。彼は背が高く、細い指をしていた。その指が彼女の腕にふれるとき、彼女はその冷たさに酔いしれた。彼女の腕の細い細い血管を探す彼の真剣な面持ち。何度も針を指しては逃げてしまう彼女の血管に彼は苦戦していた。その様子がまるで、遠い昔に彼女のからだを、彼女の顔色を伺いながら滑るように触れていった誰かに似ていた。
「どうしたの?眠れないの?」
主治医は聞いた。彼はこの患者の状態に、少々戸惑っていた。彼女の状態は彼が初めて受け持つ患者にしては手強い。彼女は思春期という、ただでさえ難しい年頃のうえに、少し前に自ら階段から落ちて流産していた。彼女の恋人だった男は、彼女が妊娠しているとわかった瞬間、経済力を理由に別れを切り出した。よくある話だ。
 彼女は、主治医に気付くと、彼にじゃれるように抱き着いた。彼は彼女に抱き着かれる度に、医者としての自分を忘れまいと自分に言い聞かせた。
「先生、赤ちゃんは?」
彼女がそう聞くと、彼はマニュアルを思い出して、その手順通りに彼女に言い聞かせた。
「赤ちゃんは、ちゃんと保育器の中で順調に育っているよ。」
主治医はそう答えると、ちゃんと自分の役割を彼女の中で演じれている自分に満足した。彼女はやっと彼を手放すと、にっこり笑って、そう、よかった、と笑みを浮かべた。
 彼女は自分の居場所を知らない。ましてや、もう子供が存在しない事実など、知る余地もない。

 あかいあかいクマのぬいぐるみ、あたしの赤ちゃんのかわり。パパはどうしてお見舞いにこないのかなぁ。お仕事が忙しいんだよ、きっと。そうだね。そうだよ、今にいっぱいのおもちゃや赤ちゃんの服を買って持って来てくれるよ。うん、楽しみだね。そうだ、あたしが切り裂いたおなかは大丈夫だった?うん、大丈夫だよ、ちゃんとうまくとりだせたね。そっか、よかった。けどね、もうわかってるのよ。

 彼女は主治医に言った。
「先生、実はわかってるの。もう子供なんてどこにもいないって。」
主治医は驚いて、彼女に訪ねた。
「じゃあ君はここがどこかわかっているの?」
「うん、精神科の閉鎖病棟でしょ。とても居心地がいい。ぬいぐるみを持って歩いていても何も言われない。」
彼女はそう言うと、あかいクマのぬいぐるみを隠し持っていたはさみで切り裂いた。
「こんなもの、こいつが私を拘束してた。この子は赤ちゃんを産んだ。あたしは産めなかった。」
彼女はそう言うと、にっこりと笑って、主治医に抱き着いた。彼女の髪の毛からは、かすかにいい香りが匂いたっていた。
「先生ともお別れだね。」
彼女はそう言うと、自分の病室に戻っていった。そして、ベットカバーのシーツを細く切り裂くと、丸い輪っかをつくって首にかけた。全てわかってしまった。こんな悲しい結末ってある?彼女はそう一人言を言うと、切り裂いてつくったシーツの輪に全体重をかけた。彼女の心臓が動かなくなるのに、そう時間はかからなかった。
 巡回しにきた看護婦が彼女を見つけたとき、彼女はもうすでに息絶えていた。その顔はとても安らかだった。看護婦にすぐさま呼ばれて、その現場に駆け付けた主治医は、何とも言えない喪失感に襲われた。自分は医者として失格だ、と彼は自分に言い聞かせたが、涙が彼の表向きの意思に逆い溢れ出た。
「○○先生に電話して。」
主治医はそう看護婦に言うと、彼女の遺体の前に置かれた手紙に気付いた。

先生へ
ありがとう。いろいろと。私の寿命はここまででした。ありがとう。ありがとう。

 あかいクマが彼女の均衡を保っていた、と後にカウンセラーは言った。それを自ら壊すことで現実の世界に彼女は引き戻され、同時に全てを知ることになった。それが、自殺の原因だと。主治医だけはそう思わなかった。彼女は最初から、全てを知っていたのだと。けれど、その過酷な現実を忘れたふりをしてここで生きていた。そして、それにも限界が来て自殺したのだと。
 全ては闇の中。彼女の自殺は周りに不可解なことを残した。主治医は切り裂かれたあかいクマのぬいぐるみを抱えて、彼女を思いだした。弱々しい肩、細い血管。あかいクマのぬいぐるみの切り裂かれた腹から、小さいクマのぬいぐるみがその愛らしい顔を覗かせていたことに、主治医は気付かなかった。
 

杉井武作 12A「えせ書評」(変態ワールド三部作) 2002年11月23日(土)21時37分02秒

穏やかな心持ちにさせてくれる、ゆったりとした時間の流れが心地よい作品である。主人公であるごくフツーの女子高生「岡下伊代」が登校する最中、三軒茶屋のババアから「伝説のげそいため」を見つけないと脳挫傷で死ぬと通告されるシーンで、物語ははじまる。しかし思い出横丁ですでに味をしめていた伊代はお馬のヒンベと共に宇宙へ。香ばしい白みそでハニワの脳髄を満たし、髄液のドクターペッパーにも似たなつかしい味わいが口いっぱいに広がるエロティシズムは、ケンちゃんラーメンもさすがに新発売ではなくなったが禁煙パイポのCMはいつまたリバイバルさせるのか恐れる有り様。小鹿の首をコキッと締めた中盤、流星から百億の入れ歯が降ってくるメルヘンチッキシズムさはかつて聖闘士星矢萌えしていた熟女たちですら発情。なにしろ重低音がすでに聞こえるのだから。深遠と深遠の狭間で私語する毛ジラミたちが。銀河と墓石の狭間で呟く毛ジラミたちが。犬はよろこび庭かけまわり、猫はこたつで発情。猪木の首をコキッと締めた終盤、クライマックスの尻から伸びる大腸が観覧車の窓を突き破ってペスの鼻毛と一体化するシーンで優しい気持ちになれない者がいるだろうか?いや、いる。惜しむらくはスクリーントーンがコマからはみ出ている。100%の恋愛小説「魔法少女ちゅうかなぱいぱい」。決して開かないジェラルミンのハードカバーでフランス書院より定価三万兆円のところを三兆円で絶賛販売中(即発禁)力石に勝つ方法;あしたのためにその1 -ジャブ- ひじを左わきから離さぬ心がまえでやや内角を狙いえぐりこむように打つべし あしたのためにその2 -右ストレート- ジャブで攻撃の突破口をひらいたならばすかさず右ストレートを打つべし その際全体重を右拳にのせ、ぶち抜くように打つべし
この夏映画化も決定されている今作。主演はオードリーヘップバーン。15歳未満は力石オリジナルねりけしプレゼント。これならお子さんでも食べられるかもしれません。

杉井武作 11A「かつ江」(変態ワールド三部作) 2002年11月23日(土)21時34分03秒

ゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・・

くっそーマジ超ヒマだぜ・・・宇宙航海がこんなタイクツなモンだとはなぁ〜。地球は青かったとかって感動は最初だけじゃねーか。片道二年なんて設定すんじゃなかった。寂しいなぁ。地球はいまごろどうなってんだろ?たまごっちブームまだ続いてんのかな。

オチャガハイリマシター

おお、そこ置いといてくれ。
この超高性能アンドロイド「かつ江」もさっぱり相手になんねーし・・・。通販で慰安用アンドロイドってんで購入したのによぉ〜プログラムされた行動しかしねーのは何故なんだ?せっかく高い金だして松浦あやや仕様にしたのに(コスチュームはトロピカ〜ル恋して〜るのヤツ)。まぁもう少し待ってみるか。

三ヶ月後・・・・・・・・・

おーいかつ江、将棋しないか?

ショウギトハナンデスカ?

将棋っていうのはだな・・・はぁはぁ・・・これが飛車で・・・こうすると・・・王手だ!
ぐりぐり

アアッソコチガイマス・・・ヤメテクダサイハァハァ・・・ヤメロッテイッテンダロぼけガッ

ドカーン

ぐふぅ・・・なんでこいつワイヤーアーム使えんだ・・・まあいい、こいつが俺のモノになるのは時間の問題だ。

さらに三ヶ月後・・・・・・・・・

おいっ!なんだそのモップのかけかたは!?そんなんじゃ汚れが落ちないだろ!

モウシワケアリマセンゴシュジンサマ

謝って許されれば姑はいらないんだよ。ホラまだこんなにホコリがついてる!もっとキュッキュってなるまで拭くんだ!ほらこんなふうに・・・キュッキュって・・・やるんだ・・・おォう・・・かっかつ江。わかるか?ん?わかるか?(^−^)

コロサレナキャワカンネーノカたまなしへなちんヤロウけつゲぶちヌイテオクバいわすゾ

ズドーン

げほっげほっ・・・なんでこいつエルボーバズーカ搭載してやがんだ・・・。

さらに半年後・・・・・・・・・

くっそーカンペキ人間の構造なはずなのに!ホントはもーうずいちゃって仕方ねーんだろ?わかってんだよどこまでヘンタイなんだお前は!コレくわえてご主人さまと言えばいーんだホラホラホラ!はぁはぁもうあかんリビドーが限界や・・・どぴゅっ

アラアラ、おいるガモレテマスヨ

オイル?オイルってなんだ?そーいやオレ身体ががっちゃんがっちゃん言うなぁ・・・。



原案;古内旭

杉井武作 10A「真・テスト」(変態ワールド三部作) 2002年11月23日(土)21時30分02秒
1B「テスト」 への応答

 僕たちがやってきたのはあのホテルだった。
 僕はたった一度だけ、友達とホテルに入ろうとしたことがあった。その時は、度胸試しをしようとしただけだったのだが、先端を少し挿入してから、すぐに怖くなって引き返してしまった。尻の中はあまりにも臭そうで、邪悪だったからだ。
 僕たちはホテルに踏み込んだ。
「怖い」と彼女は小さな声で言った。それから、彼女は僕のアレを握った。
 彼女は上手かった。すでにコチコチだったが、まだカウバーは出ていなかったはずだ。ホテルに一歩入るまでは、常識的な大きさだった。尺八のテクは、何とも名状し難い。この世の中に存在する、どの種類の快感とも違うものだった。蕾も濡れていた。まるで溢れ出る果汁のようだった。それが肺を甘酸っぱく満たしていく快感があった。さて、ブチ込むか。
 欲棒は進むにつれ、さらにキツく締まり良くなっていった。巾着さえも、不確かな感触となり、底無し沼のようにずぶずぶと沈んでいく感じがした。周囲の不気味な蚯蚓千匹は、古代生物のように見なれぬ奇妙な動きをしていた。それから悩ましげな喘ぎ声だ。呻いているような淫靡なものだった。それは耳の奥にこびりついて、じわじわと脳まで迫ってきた。
 女唇の中には道とでもいうべきものがあったが、それはしだいに細くなっていった。僕たちはしっかりとつながれていた。わずかに彼女のインディカ米は震えていた気がする。しかしそれは僕の震えかもしれない。区別はつかなかった。
 やがて、花芯の最も深いところに辿りついた。道はなくなっていた。そしてムスコたちの先には一つの巨大な蛸壺がそびえたっていた。どこまで伸びているか分からない。この花園全体を支えているかの様なだった。
「じゃあ、あたしイクね」と彼女は言って、腰を動かし始めた。僕は彼女の動きに合わせた。
「テスト?」
「そう」
 彼女はそう言って、僕の瞳をじっと見つめた。僕は彼女の瞳の奥を初めて覗いた。彼女の瞳はしわしわだった。僕はそこに引き込まれそうになった。
「ア〜ア〜鬼のように突き上げてぇな〜」
 彼女の乳房は見る見る張りを失いだらりと垂下がってゆき、窮屈な肉壁の締りが徐々に緩くズルズルになり、蜜のヌメり気ですらも水っぽく濾過され、接合部は不快な感触だけが残った。
「やっぱりおばちゃんなんかより若いコのほうがエエの?」
 気付くと彼女はどこにもいなかった
 僕は78歳のババアとホテルの中にいたのだ。

 それ以来、僕は彼女と会うことはなかった。翌日から、彼女は学校には現れなかった。不思議なことに、学校の誰もが彼女のことを気にしていなかった。担任の先生は出席さえ呼ばなかったし、ドッヂボール・クラブのキャプテンも、彼女は始めからいなかったのだ、とでもいうかのように、何事もなく日々を過ごしていた。男の子たちは相変わらずカラーボールやらファミコンやらで遊んでいた。
 僕は、あれから何度もマスをかこうとした。しかし、もう遅かった。ムスコは、かつての姿ではなくなっていた。どこにもあの不気味さはなかった。種無しカボチャとなっていたのだ。


 こうして、僕は小学六年生の冬を終え、やがて卒業した。世界は変わっていた。


(おわり)



原作;古内旭「テスト」

水落麻理 6A 月の虫 2002年11月23日(土)16時04分16秒

月の光が海を照らすと、
そこには道ができる。
白く、点々とした道は、海におりてきた星たちのよう。
その道は、どこへ行くのだろう。
月へまっすぐ続いてるのか、海の底へと続いてるのか、
誰かの心へ、続いてるのか。

光る月の周りには、白い虫達が。
ざわめきあい、海に向け音をたてる。
私たちはそれを、海の音だと思うでしょう。
でもそれは、月に集まる虫たちの音。
私の心を無にした、月からの音。

昼とは違う海。夏の夜とも違う海。
ここにあるのは、月で凍った、冬の海。

水落麻理 5B  最後の願い 2002年11月23日(土)15時45分19秒

止まった時間、音の無い静かな今。
ここには、固く閉ざした私の心があるだけ。
あなたのくれた、たくさんの優しさと
あなたのくれた、たくさんの嘘。
優しさは、私の心に輝きをくれて、
嘘は、私の心の時間を止めた。
気付いてた。本当は全部わかってた。
手をつながなくなったこと。好きって言わなくなったこと。あなたの瞳が嘘をつけなくなっていた。
鉛のように重い涙に押し潰されて、身動き取れない私の心。
ただじっと、すぎることのない時の中うずくまる。
今はまだ、今をみつめるのが怖くて。
きっと思った以上に深い傷を負う。それを知るのがとても怖くて。
この時を再び動かすあの言葉を、心のどこかで期待しながら。
動けなくなった心を解き放つ、たった一つの合言葉。
悲しくて苦しい合言葉。だけど、あなたの得意な優しい嘘より、ずっと優しい合言葉。
さようなら。
あなたの声で聞かせてほしい。
あなたにできる最後のこと。
わたしのする、あなたへの最後の願い。
それすら言うことのできないあなたは、なんて残酷な人なのでしょう。

水落麻理 5A 最後の願い 2002年11月23日(土)02時24分34秒

止まった時間、音のない静かな今。
ここには、固く閉ざした私の心があるだけ。
あなたのくれた、たくさんの優しさと
あなたのくれた、たくさんの嘘。
優しさは、私の心に輝きをくれて、
嘘は、私の心の時間を止めた。
気付いてた。本当は全部わかってた。
手をつながなくなったこと。好きって言わなくなったこと。
あなたの瞳が嘘をつけなくなっていた。
鉛のように思い涙におしつぶされて、身動き取れない私の心。
ただじっと、すぎることのない時の中うずくまる。
今はまだ、今を見つめるのがただ怖くて。
きっと思った以上に深い傷を負う、それを知るのがとても怖くて。
この時を再び動かすあの言葉を、心のどこかで期待しながら。
動けなくなった心を解き放つ、たったひとつの合言葉。
悲しくて、苦しい合言葉。でもきっと、優しい嘘より、ずっと優しい合言葉。
さようなら。
あなたの声で聞かせてほしくて。
私のする、あの人への最後の願い。
あなたにできる最後のこと。
それすら言うことのできないあなたは、なんて残酷な人なのでしょう。

久我真紗子 2B/今にも落ちてきそうな空の下で 2002年11月21日(木)10時05分43秒

踏ん張ってる
頭上の重みに
今にも押しつぶされそうだけど
まだ踏ん張ってる
まだ行ける
きっと力み過ぎて歪んだ私は
ひどい顔してるんだろな
本当は誰にも見せたくないけれど
見せなきゃそれこそ潰れそう
だからせめて
眉間にしわ寄せて
口の端をニッと上げる
悪人笑いでもしてみようかな
少しはカッコよく見えるかも
昔の
輝く笑顔じゃなくっても
これはこれで魅力的

踏ん張ってる
もしかしたら潰れるかも
でも 今は踏ん張ってる

越智 美帆子 7A 公衆電話 2002年11月19日(火)02時06分29秒

 緑のライトに照らされて、その公衆電話は静かに佇んでいた。

 二人に一人は携帯電話を持っていて、小学生もその所持率が高いこの時代に、公衆電話はもう無用の産物として、ほとんどその存在意義をなしていないように思えた。しかし、僕は夜毎、ある公衆電話に何かを求めるように電話している。毎晩夜中の2時、街中の隅にひっそりと存在している公衆電話に。5回だけコールして、誰も出なかったら切ることにしている。何故僕がそんなことをするに至ったか、それはある少女の願いがきっかけになっている。

 それは少し前のことだ。僕はサークルの後輩との飲み会で、恥ずかしくも記憶が飛んでしまうほどに飲み、一人どこかのもう閉まってしまった店の前に寝転んでいたことがあった。そのとき、僕はその場所に公衆電話があったことなんて、気付きもしなかった。しかし、酔いがいよいよ僕を眠りへと誘い始めたころ、たしかにそれは鳴っていたのだ。僕は不思議に思いながらも、鳴り続ける公衆電話の受話器を取った。酔っていたせいか、こういうこともあるのだろう、とのんきに思いながら、もしもし、とその受話器の向こうの相手に喋りかけていた。すると、受話器の向こうで、歌が聞こえた。それは、たしかに人間の声で、僕は相手が歌い終わるまで受話器を持ったまま立ち尽くしていた。甘い甘い歌い声、それにとても優しく悲しい歌。そして、その歌が終わると、相手は喋りはじめた。
「もしもし?私の歌を聞いてくれて、ありがとう。」
僕は驚いて、いえいえ、という言葉が口をついて出た。電話の向こうの相手は、そしてこう続けた。
「この歌を、いろんな人に伝えてほしいの。でも、とても間接的に。あなたの友人や、親族や同僚ではなくて、あなたが知らない人に。」
僕はその不思議な申し出に、何故か同意してしまい、もう一度次の日にテープレコーダーを持って、同じ時間、深夜2時にその公衆電話のところへ来る約束をした。しかし、次の日二日酔いの頭を抱えて目覚めたとき、あれは酒がつくり出した幻覚か夢なのではないかと思った。それを確かめるために、2時より少し前にテープレコーダーを持ってその公衆電話の前で僕は待機していた。そして深夜2時ちょうどに、確かにその公衆電話は鳴ったのだった。僕は酒が全く入っていなかったせいもあるが、それよりもこの奇怪な現実に驚いた。
「もしもし?」
電話の向こうで、あの甘い声が弱々しく呟いた。
「もしもし、昨日の…」
僕は言った。
「あぁ、よかった、覚えててくれたんだ。」
そう彼女は言った。
「じゃあ、歌を。テープレコーダー持ってきたから。」
僕がそう言うと、彼女は、うん、と言って歌い始めた。今思えば、どうして彼女がそのようなことをしようとしたのかわからなかった。そして、僕もどうして彼女が自分の歌を僕の知らない誰かに伝えて欲しかったのか、聞かなかったのかが今でも謎だ。彼女は歌い終わると、昨日言ったように、あなたの知らない誰かにこの歌を伝えて、と言った。
「どんな方法で伝えればいい?」
僕がそう彼女に聞くと、私と同じ方法で伝えればいいのよ、そして必ず伝えた人にも同じようにテープレコーダーに録ってもらって、この歌を誰か知らない人に伝えて、と言って電話を切った。そして僕の手元には、彼女の歌が録音されたテープだけが残った。

 それから、僕はまるで使命を与えられたように、毎日毎日その公衆電話にかけている。しかし、今までまだ一度も受話器を取ってくれた人はいない。今日ももうすぐ深夜2時だ。僕は自分の部屋の電話の受話器を手に取ると、その公衆電話にかけた。5回目のコールと共にがちゃっという音がした。
「もしもし?」
僕は緊張しながら、応答した。
「もしもし?あの、今から歌を流すので、これを他の誰かに伝えてください。」
テープレコーダーからは、あの日録音した彼女の甘い歌声が流れた。

 この腕の中にいたあなたは
 もうどこにもいない

 あの日見た朝焼けは
 きっとあなたの目には残っていないでしょう
 けれどいつか思い出して
 私といた時間を
 どんな些細なきっかけでもいいから

 澄んだ夜空で
 猫の爪のような月が
 私を切り裂く
 血はどめどなく流れ
 体温を奪い去る

 夜闇を切り裂いて
 朝はやってくる

 いつかきっと
 あの空に陽が上りますように

 そしてあなたが幸せになれますように

「…この歌、知ってる。」
電話口の、女(おそらく少女だろう)はそう呟いた。
「え?」
「これ、今、噂になってる歌だよね。新しい都市伝説みたいに。」
都市伝説、この歌を僕に託した少女はただひたすらこの歌を世間に蔓延させたかったのだろうか?
「悲しい歌だよね。」
電話口の少女はそう言うと、歌いだした。そうか、この歌はもう世間に広まり始めている。
「この歌をつくった人ってさ、もう死んじゃったんだよね。」
電話口の少女はそう言うと続けた。
「で、自分がずっと好きだった人にこの歌がいつか届くように、こうやって関節的に公衆電話をつかって伝染させていったらしいよ。あなたも彼女の
歌に魅せられたうちの一人?」
僕はそう聞かれて、初めてそうだったのだと気付いた。僕はなんでこんなめんどくさいことを、毎日ずっと続けていたのか、それは無意識に歌をつくった彼女の思いを感じとっていたからだったのかもしれない。
「そうかもしれない。でも、どうして彼女は、その歌をつくった人は死んだの?」
「噂では、自殺とも病気とも言われているけど、本当はわからない。だいたい、これは大手芸能プロダクションが仕組んだ、新人のデビュー作だとも言われているし。」
本当のところはわからない、か。彼女は生きているのだろうか。それとも、噂どおり、もう彼女はこの世にはいないのだろうか。しかし、彼女は何らかの意図があって、このような特殊な方法で自分の歌を世間に、もしくは誰かに伝えたかったのだろう。僕はあの日話した少女が今、都市伝説としていろいろな形で生き続けていることが、とても不思議だった。

 真相を知ったのは、ある週刊誌に目を通しているときだった。ある女子高生が自殺を図って亡くなったこと、彼女は死ぬ直前に自作の歌を公衆電話をつかって何人もの人々を媒介に世間に広めていったこと、そしてそれが今ベストヒットになっていること。週刊誌には、こう書かれていた。「愛した人にいつか自分の思いが伝わるように、彼女はとても特殊な方法で自作の歌を広めていき、それが巷で都市伝説のように語り継がれていった。」と。
 僕は彼女の思いが、報われたらいいと思った。そして、あの日酔っぱらってあの公衆電話の横に寝転がっていた自分が、彼女と接触した奇跡的な偶然を思い出し、彼女のために泣いた。

松永洋介(アシスタント) 「安東ウメ子+寮美千子ライブ」感想書いてください/今週(21日)の授業 2002年11月18日(月)04時31分57秒
11/16 「安東ウメ子ライブ アイヌの歌と語り」を課外授業にします への応答

イベントは無事終了しました。お疲れさまでした。
とくにムックリ教室、バッタキの時間は、学生のみなさんの活躍によって
えらい盛り上がりを見せました。よかったよかった。
お手伝いありがとうございました。

今週21日の授業では、今回のイベントについて扱います。
各自感想文を書いて、この発言への応答として雑談版に投稿してください。

あと進行しだいで久我さんの作品もやりますので読んでおいてください。

それから、イベント会場ではバタバタしていて名簿のことまで手が回りませんでした。
先週押さなかった人は必ずハンコを持ってきてください
よろしく。

古内旭 4A『ルイーズ』 2002年11月16日(土)06時29分19秒



   1



 少年はこの時まで、人が殺される瞬間を見たことはなかった。


 死体ならいくらでも見たことがある。街を二ブロックも歩けば、蠅のたかった人の体をいくらか見ることになるのだ。
 寒さと霧で、街全体に漂う悪臭さえも薄れる夜だった。
 少年は、路地の角に建つ小さな宿屋の壁にへばりついていた。湿気を含んだ壁の表面が、乾いた音をたてて剥がれ落ちる。少年が見やる先は、街灯も無い、細く薄暗い裏通りだった。古くなって屋根が落ちかけている倉庫と、ユダヤ人が何人か住んでいる小さなアパートがあった。わずかに届く月の光が、湿った路面をぬらぬらと光らせていた。
 そこに、一組の男女があった。女は娼婦に違いなかった。そこはしばしば彼女たちの仕事場として利用されていたのだ。彼女たちの中で、建物の中で仕事が出来る者は限られている。金も若さも美しさもない哀れな娼婦には、その夜をどう生きるかという状況において、その場で身を安売りする他には手段はないのだ。そのことを少年は知っていた。
 普段ならば、そこで四十を過ぎた娼婦たちが何をしていようと、少年は何を思うこともなく通り過ぎていた。そこで行われている行為は、思春期を迎えた少年にとってもほとんど興味をひかれるものではなかった。
 この時少年が立ち止まったのは、しかし娼婦が美しかったからだ。少年は、その美しさに目を奪われたのだ。
 美しい、というのはある意味においては間違っていた。彼女は、やはりすでに四十近い年齢に見えた。しかし、彼女は非常に柔らかくて、温かく懐かしい印象を少年に与えたのだ。清潔であった。少年が知っている娼婦とはほど遠い。彼女は、桃色のドレスに身を包み、黒いビロードで縁取られた麦わら帽子を被っていた。
 少年が見た時、彼女は相手の男に顔を寄せて、何かを話していた。
 相手の男は、長身で鳥撃ち帽を深く被っており、表情はほとんど分からなかった。
 少年は息を飲んだ。
 男が、突然コートの中からナイフを取り出すと同時に、女を切りつけた。刃渡り十インチはあろうかというナイフであった。それは、女のドレスを下から上に切り裂いた。その切れ端がひらひらと舞い、真っ赤な鮮血が斜めに飛んだ。
 男は、女の口元を押さえながら、今度はその咽喉にナイフを一閃させた。ぶしゅっ、と勢いよく血が吹き出し、それは男の体を染め、さらにその後方の壁にまで届いた。
 崩れ落ちた女に男は覆い被さり、なおもナイフを突き立てた。
 少年は身動き一つせずに、その光景をじっと見つめていた。



   2



 イーストエンドと呼ばれる地域がある。文字通りロンドンの東端である。そこには、細い路地が迷路のように入り組み、巨大な工場が所狭しと建ち並んでいた。産業革命により国内外から多くの労働者が流れ込み、すぐに人口過密となった。少ない求人を多くの者が争ったが、ほとんどの者がまともな職にありつけず、安い賃金で重労働を科せられ、犯罪に手を染めていった。大英帝国の発展に逆らい、街は荒廃していったのである。
 イーストエンドの東部、ホワイトチャペルでは、昼間でも太陽の光が届かない場所が多くあった。人ひとりがやっと手足を伸ばして横になれるような部屋の中に、家族が何人かで住むというのは当たり前のことだった。床は腐りかけ、窓ガラスにはひびが入り、壁は湿気を含んで剥がれ落ちた。満足に入浴や洗濯も出来なければ、下水施設も充分ではなく、糞尿は路上に捨てられた。


 青年は、黒いコートを羽織り手袋もはめていたが、夜のホワイトチャペルを歩くには十分ではなかった。
 秋になるとロンドンはかなり冷えた。
 イーストエンドでさえ、夜には簡易宿泊所に人が溢れ、外にはほとんど人影がなくなる。路上で朝を待たねばならぬ者たちは、ジンで体を温めながら寒さを少しでもしのげる場所を探す。
 青年は、早足だった。早く家に帰り着こうと思っていたのだ。ようやく仕事が終わった頃には、既に夜の十一時を回っていた。それから仲間とパブで三シリングほど飲んだ。店を出る頃にはすでに夜中の二時を過ぎていた。外では、凍て付く様な寒さが彼を待ち構えていた。


 青年の両親は、アイルランドからの移民だった。飢餓と貧困から逃れ、少しでもまともな生活を求めてロンドンにやってきたのである。しかし父親は定職に就くことができず、家族の生活は貧困を極めた。父親は過労に倒れ、やがて胸膜炎を患って死んだ。また、青年には二人の弟と一人の妹があったが、彼らもみな幼くして肺炎にかかって死んだ。イーストエンドを覆うスモッグのためである。
 母親は娼婦に落ち、青年は泥棒になった。
 青年はそうして少年時代を過ごしたが、十三を迎えた時、母は仕事中に強盗に殺された。
 身一つになった青年は、泥棒から足を洗った。そして運良く鮮魚運搬業に働き口を見つけることができた。
 以来、彼はそこで十数年働き続けているのだった。経験も長くなった彼は、仕事における権限も拡大し、今では週に三ポンドは稼げるようになった。ホワイトチャペルにおいて、それは裕福な方だった。


 地下鉄のホワイトチャペル駅を抜け、ブレイディ・ストリートに入ると、もうほとんど人影はなかった。その先にはユダヤ人墓地があり、夜ならばなおのこと誰も近寄らない。しかし、青年にとってはそこを通るのが近道だった。
 そして、バックス・ロウの細い路地に差し掛かった時だった。
 前方に、女の姿が見えた。
 娼婦に違いなかったが、この辺りで仕事をする娼婦にろくな者はいない。大抵はアルコール中毒の年寄りだ。青年は通り過ぎようとしたが、そうすることはできなかった。
 一瞬見た彼女の姿が、あまりにも美しかったからである。
 彼女は桃色のドレスを身にまとい、黒いビロードで飾られた麦わら帽子を被っていた。歳は二十代にしか見えない。
 彼女は、微笑をたたえながら青年を見つめていた。魅惑的な吊り目はインテリジェンスの光を放ち、カールした長く美しい赤毛は、上流貴族のごとき優雅さであった。肌は真っ白で、頬のみがほんのりと朱色に染まっていた。少しだけ開かれた小さな唇からは、切なげな吐息をもらしていた。
 青年は、彼女との距離があと三歩ほどになると立ち止まった。しかし言葉は出てこなかった。彼女の美しさに絶句するのみであった。
「どうしたの?」
 最初に声をかけたのは彼女だった。
「いや………、君は一体………」
 何者だろう、と青年は思った。娼婦ではあるまい。このように美しい女が、ホワイトチャペルの裏路地で客引きをしているとは思えない。
「君はここで一体、何をしているんだ?」
「………ここで何をって、見ての通りよ」と彼女は言った。そして、青年との距離を一歩詰める。
「信じられない。ここはホワイトチャペルのバックス・ロウだ。君のように、美しい女性が夜中に立っているところではない」
 青年は、頭を抱えながら言った。
「残念だけど、ここは私の仕事場なのよ。残念だけど。あなたは、どうしてここを通ったの? 寂しいからではなくて?」と彼女は言った。伏し目がちになると、長い睫毛が瞳を覆った。
「違う、ここが家への近道なんだ」
 女は、更に一歩、男との距離を詰めた。近くで見れば見るほど、彼女は完璧に美しかった。青年が心に描いてきた理想の容姿の持ち主だった。
「私はルイーズ」と彼女は言った。「あなたは?」
「ルイーズだと!」



   3



 少年は見ていた。
 男は、ナイフで女の咽喉を掻き切り、胸を裂いた。そして体中を突き刺した。血が噴水のように沸きあがり、時々それが月光に照り返った。
 男は、すでに死んだ女のドレスをたくし上げると、ナイフを真っ白な両腿の間に突き刺した。二度だ。じわっと血が滲んで、路面を染めていった。
 男は立ち上がり、ナイフを投げ捨てた。そして、少年とは反対側に歩いていった。
 少年は、震える両足に力を込めて、一歩前へ進み出た。そして、女の死体に向かって走り出した。少年は涙していた。
 女は目を開けたままだった。右の耳の下から、顎にかけて深い裂傷があった。まだ血がとくとくと流れ出ており、血まみれてその表情は分からなかった。咽喉は横一文字に裂けており、首が切断される寸前であった。ドレスはびりびりに裂けており、中の体も同様であった。ドレスは血を吸って真っ黒になっていた。
 少年は、女の足元に落ちていたナイフに目をやった。十インチを越える大きなナイフである。
 少年はナイフを手に取った。何度か握りなおした。月の光が鋭く刃に突き刺さった。少年は一瞬光に目を背けた。
 少年は、ナイフを強く握り締めると、男が去っていった方向へと走り出していた。





 一八八八年八月三十一日。
 イラスト夕刊紙は、ホワイトチャペルのバックス・ロウにて、メアリ・アン・ニコルズという四十三歳の売春婦が殺されたと報じた。





(おわり)




越智 美帆子 1D ケーキボックス 2002年11月13日(水)19時26分31秒

 彼女の長い、もうずっと伸びっぱなしの髪の毛は、まるでそのとき彼女の背中からはえた羽のようだった。
 公園の遊具を見た瞬間、彼女は、その無垢な目を輝かせて滑り台にのぼった。彼女はそよぐ、もう少し冷たくなった風を目をつむって感じていた。
「まるで、子供にもどったみたいね。」
私がそう言うと、彼女はこちらを向き、そして空を仰いだ。
「ほら、空が近いよ。」
そうだ、彼女は今、本当に子供に戻っているのだ。姿形は大人のまま、現実と過去の入り交じった世界で生きているのだ。
 その後、彼女はブランコに乗った。勢いよくこぎだして、ブランコを支える鉄骨とブランコが描く弧がちょうど扇型になったとき、私はその彼女の伸びっぱなしになったままの長い髪の毛が、まるで羽のように見えた。陽に透けた琥珀のロングヘアは、ブランコが大きく弧を描く度にふんわりと一瞬遅れて彼女の背中に戻る。まるで、羽を何度も開いては、その度にためらって飛べないでいるように思えた。いったい、どこに?
「ねぇねぇ、世界が反転する。」
彼女ははしゃいだように、私に言った。
「それはあなたが反転してるからでしょ。」
そう言ってから、私ははっとした。きっと、私が子供なら彼女と同じように、そう言っただろう。彼女のほうを向くと、彼女はブランコから降りて、正面のどこか一点を凝視していた。その顔は、悲しそうでも怒っているふうでもなく、ただ人形のように無表情だった。
「帰ろっか。」
ぱっとこちらを向いた彼女の顔は、にこやかだった。でも、私にはそれが悲しそうに思えてならなかった。彼女はどこにいるのだろう。いったい、彼女の中で私は誰なのだろう。
 彼女はブランコで空に飛び立とうとしていたのだろうか。必死に真剣に、その横顔は、その彼女の背中に見えた羽は彼女をどこに連れていこうとしているのだろう。私は本当に、あの瞬間彼女が天使のように見えた。私のイメージでの天使とは、協会で聖母マリアを慕う天使だ。あの子供の天使はどこから来たのだろう。もしかしたら、水子?そう思うとぞっとした。彼女は、彼女の子供のところに無意識に向かおうとしていたのだろうか。何もかもが、彼女のいる風景が悲しく思えた。

横田裕子 6A 生き方、ってさ。 2002年11月12日(火)22時27分31秒

失敗とか恥とか後悔とか傷とか、自分にとってかっこわるい
と思う何もかもが
気づかないうちに色鮮やかなひとつの絵になってたりする
かっこよく生きようとじたばたする
その姿は自分では直視できないくらいにハズカシイ
誰かはそれを見て輝いてる、と言うかも知れないけど
気付くはずもない自分は
いつも何かでもがきながら 一生
かっこわるく生きていくんだと 思う

杉井武作 9A「ETERNAL SCENE」 2002年11月12日(火)10時32分44秒

Wards and Music SUGI

過ぎさった季節は
やわらかな風に寄せて
共に見たあの景色の
輝きを消さぬように

今はその瞳のなか
違う夢 見つめてるね
僕には映らなくても

山を超え
あの雲を切り裂き
この歌は傷 解き放つ

傍に居てくれたあの日々が
優しさに今 変わるよ!

杉井武作 8A「bloody fish」 2002年11月12日(火)10時17分23秒

柔らかく惑わせる
壊れた瞳に迷い込む
貴女の水は澄み渡り
溺れる「私」は解けて逝く
初めて覚えた愛し方
虚無を全身着付け合い
終幕を奪い合うFunction
血塗られた身体
何度も見せつけ微笑んだね
子供みたい無垢な唇は
ふいに背中を擦り抜けた
違う玩具を釣上げて
今は何処で踊る
死魚になったココロを
せめてあざ笑ってくれれば

取り残された血液は
嵩を増し続けるけれど
途切れることを願う私
どこまで沈みゆくのだろう?

松永洋介(アシスタント) 今週(14日)の授業 2002年11月11日(月)15時19分01秒
11/16 「安東ウメ子ライブ アイヌの歌と語り」を課外授業にします への応答

今週14日の授業は、16日の課外授業にそなえての
アイヌ文化についてのレクチャーと「バッタキ」の講習会です。

⇒詳細はこちら


先週から持ち越しの久我さんの作品
杉作くんの作品は来週以降にやります。

というわけでよろしく。

なお16日には、各人の費用申請のためハンコが必要なので、持ってくるのを忘れないでください。


↓「安東ウメ子+寮美千子ライブ アイヌの歌と語り」についてはこちらで

http://www.linkclub.or.jp/~chico/

松永洋介(アシスタント) あす(7日)の授業は齋藤亮作品 2002年11月06日(水)22時23分48秒

連絡おそくなりました。

あす11月7日の授業では、
齋藤亮さんの作品
を取扱います。

あと宮田さんが書いてきたプロット、進行によってはこれもやります。

よろしくー


久我さんの作品は来週に延期します。

奥野美和 13C「禁酒宣言」 2002年11月06日(水)11時12分18秒

うすれてく下くちびるの居心地もドライフルーツ杏の皺も


杉井武作 6B「鏡の果実」 2002年11月06日(水)07時22分06秒

ぼく かがみをみるのがだいすきなんです
きょうも いちにちじゅうみています
ぼく とってもかわいいんだ
かおも からだも さこつも かわいい
あれ ここはどこでしょう
みぎも ひだりも ぼくだらけ
ぼく いつのまにか かがみのなかにすいこまれちゃったみたいです
じかんをわすれて ぼくをながめていました
うん とってもすてきなせかいです

ぼく くまのぬいぐるみをみつけちゃいました
かわいいかわいい くまちゃん
ぼく ひとめぼれしちゃいました
ぶーさんって なまえをつけました
ぼく ぶーさんがほしいなぁ
でも ぶーさんはかがみのなかだけでみえるのです
だから みてるだけのひびでした

しらないおとなのひとがやってきて
ぶーさんのことを たたいたりちぎったりしました
つぎつぎと しらないおとなのひとがやってきて
ぶーさんをいぢめたのです
ぶーさん ぼくのぶーさんがよごされていく
ぶーさんは ひょうじょうひとつかえませんでした

ぶーさんが めのまえにいます
かがみのなかじゃないです
さわることできます
ぶーさんだ わあい
ぼく ちからいっぱいだきしめました
つよく つよく だきしめて だきしめて

ぶーさん こうしていると キモチいいね
ぼく ぶーさんのおちんちんをいぢくりまわします
どうぶつはこうするとキモチいいってならいました
ぶーさんは ひょうじょうひとつかえませんでした
ぶーさん なんかしゃべってごらん
ぼくのぶーさん
ぶーさんのおめめをもいであげました
おくちをひきさいてあげました
おててとおあしをちぎりました
おちんちんをかみちぎりました
おしりにさけめをいれます
ぼくのおちんちんをぶちこみます
ぜんごうんどうさせます
はなちます

ぶーさんは ひょうじょうひとつかえませんでした
がんきゅうのないめで ぼくをみてます
どこまでもひややかなぶーさんなのです

ぶーさんは いなくなっちゃいました
こどもたちをうんで いなくなっちゃったよ
かわいいかわいい こどものぬいぐるみ
それは ぼくでした
さこつのきれいな ぼくのぬいぐるみでした

ぶーさんは ひょうじょうひとつかえませんでした

ぼくのぬいぐるみが やまのようにつらなって ぼくのゆくてをさえぎります
いま おめめをもがれたところです。

滝 夏海 9A「言葉のスケッチ:4」 2002年11月04日(月)23時24分28秒

ねぇ
僕の全てを
あなたが壊してよ

頭も心も何もかも
とうの昔に狂っているのだから

ねぇ
最後まで残ったネジを
あなたが外してよ

そうしたら
きっと 僕は幸せ

杉井武作 4B「tears’Ring」 2002年11月04日(月)21時52分40秒

また誰かが扉をたたく音
静かに眠らせてほしいのに
雨の日に限って押し入ってくる
殺風景なこの部屋で
決まって凍え死ぬつもり
一糸纏わぬ客人は
わたしの腕に身をあずけ
混ざり合おうと誘いかけ
その美しさでみちづれを示す
けれどこの部屋は寒すぎて
曇った瞳を持つわたし
伝わるのは胸を濡らす涙
その生ぬるい感触だけ
触れるほどに冷たく崩れ
朽ち果てていくのがわかる
わたしのなかでまた一人
命の花が散って往く

死顔をつたう
指ですくった糸の輝きは
わたしの心を優しく縛る
環になる
だからもういくことにする
柔らかく編み込まれた
光の海のかなた迄
あの音で目覚めなくなる迄
二度と目覚めなくなる迄

宮田和美 プロットなんか考えてみたり。 2002年11月04日(月)19時53分21秒

●登場人物
・今日子(21)…大学三年。女性。気さくで明るい性格。一見誰とでも打ち解けられるように見えるが、実際は周囲に対して素直になれず、弱音を吐けない。一度わかれた恋人と、もういちどよりを戻す。恋人の気持ちより自分の気持ちのほうが強いのではないかという不安がつきまとっている。電話に出ることを怯え、アリバイを作るために犬小屋で生活をする。        

・ナオ(20)……大学二年。女性。今日子のルームメイト。今日子に恋をしている。過去の恋人は男性である。性格は直球型で素直。今日子への気持ちは強いが深くはない。嫉妬深く、傷つけられたら傷つけ返す。

●あらすじ
(1)今日子とナオが暮らし始める。今日子は白い犬小屋を部屋に置くが、そこに入らない。二人は気ままに楽しく暮らす。
(2)ナオは今日子へ好意を抱きだすが、同時に同性を好きになったことに悩む。そんな時、ナオは友人に「付き合ってほしい」と言われる。答えをあやふやにしたままどっちつかずの関係を続けるナオに今日子は「それは相手を傷つけることだ」と怒る。ナオは今日子に告白する。今日子はナオになんとなく知ってたと言って、キスをする。
(3)ある日今日子は以前の恋人と偶然出会う。長い間片思いをしていた相手であり、付き合っていた間今日子は犬小屋でくらしていた。今日子はナオに内緒で恋人と会いはじめる。
(4)今日子は以前のようにまた犬小屋で生活を始める。ナオはそれを不思議に思うが今日子はナオに何も言えずにいる。
(5)今日子の外泊が多くなる。学校もたびたび休んでいるのを心配して、今日子の友人がアパートをたずねる。何も知らないナオに友人は今日子が会っている男のことと、犬小屋で暮らすようになったいきさつについて話す。ナオはすべてを知っている今日子の友人とその男に嫉妬して、今日子のことを避けはじめる。
        

奥野美和 12C「サンキューガーベラ」 2002年11月02日(土)09時02分09秒

すこしだけ寄ってる君の目の中に自分の顔をうつしてた日々

「いーれーて」って君のポケットわたしの手いつまでこうしていられるのかな

私より君のくしゃみが小さくて練習してみたけど無理で

コンビニで新商品を探してる君のねぐせも今日でバイバイ

待ちぼうけくっても君を待っていた来てくれることそれがすべてで


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管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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