▲2006年12月の時の破片へ


■11 Nov 2006 入籍しました


本日、大安吉日、世界平和の日。目覚めれば雨模様。古来「雨降って地固まる」といいます。これも吉。自転車で行く予定だったのを変更、歩きとバスで奈良市役所へ。土曜日で表玄関は閉まっているので、守衛室で受理してもらいました。婚姻届は、365日、いつでも受理してくれるのです。ただし、提出書類は、市民課での事前審査が必要。日本は夫婦別姓ではないので、戸籍上は姓を統一しましたが、これからも松永洋介&寮美千子でいきます。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~ysk/
みなさま、これからも変わらず、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申しあげます。


市役所の玄関前の菊花展で記念写真をパチリ。傘の柄がきょうの思い出。背後で鹿も祝福してくれています。


■ 6 Nov 2006 日本唯一のツルハシ屋「外川産業」


姫路城観光を終え、姫路駅へ。そこから、以前訪れたことのある「外川産業」に向かう。

外川産業は、新幹線の姫路駅から見えるツルハシ製造工場だ。かつて、鉄道工事と自衛隊のツルハシは、ほとんどここが請け負っていたという。いまも、鍛造による強靱なツルハシや農機具をつくっている。最近は、ガーデニング用品も製造。もともとツルハシ屋なので、その性能は「過剰」ともいえるほどすばらしい。ガーデニングで賞を獲ったこともある相棒のおかあさんに贈ったところ、とても評判がよかった。奈良のわが家にも猫の額ほどの庭があるので、ガーデニング用品をひと揃い欲しくなったのだ。

数年前に訪れたとき「日本で鍛造のツルハシをつくっているのは、とうとうウチだけになってしまいました」と社長が嘆いていた。まだ営業しているだろうかと心配しながら歩いていくと、心地よい鎚の音が響いてきた。燃えさかる炉の灯も見えて、うれしくなった。鍛冶屋の仕事というのは、なんだかわくわくする。

事務所を訪れると、現社長と奥さまが歓待してくださった。先代の外川次郎氏は78歳。いまも現役で工場で指揮をなさっているという。先代は、旧式の鍛冶屋の仕事を改革するために、ドイツに学びに行って、当時最先端だった機械式の鍛造機を輸入。工場に設置した。

工場では、大変大きな音がするため、お互いの声がよく聞こえない。気心知れた相手でないと大怪我をすることになる。先代は、この職場環境を逆手にとり、耳のきこえない人を積極的に雇用してきた。外川産業は、聾者がハンディを感じずに働ける場となった。

外川産業のツルハシは、熟練の工事労働者の間では、伝説的な人気を誇っているという。弱らない、欠けない。減っても、工場に持っていけば鍛え直してくれる。修理を重ねたツルハシは、自分にフィットしてますます使いやすくなり、ふたつとない「マイ・ツルハシ」になる。このような品質の高さやアフターケアは、中国製では望めない。

その技術を使ってガーデニング用品をつくっているのだから、推して知るべしである。強くて使いやすい。切れ味も変わらない。工夫を凝らした「ツル次郎」製品は、大ヒットしたが、最近、異変が起きた。

中国で、そっくりの製品が大量生産されるようになったのだ。ガーデニング製品は、安い中国製にすっかり押されているという。「品質だったら、絶対負けない。まるで違うと言い切れるだけの自信があります。しかし、見かけは変わらない。素人さんには、その違いがわからない。ホームセンターで同じような品物が並んでいたら、みんな安い中国製を買ってしまうんです」と現社長。中国製は、ちょっと力を加えるとバキッと折れたり、切れ味もすぐに鈍るという。安物買いの銭失いだが、消費者はまだそのことに気づいていない。

一般消費者が見抜く目がないのは、仕方ないかもしれない。しかし、これが専門家になると話が違う。最近は、鉄道工事の現場でも、中国製が幅を利かせ、外川産業のシェアが激減しているという。工事の機械化が進み、以前のようにツルハシが工事の主力ではなくなってきて、細かい仕上げなどで使われるだけになってきたため、その耐久性など、真の品質が問われなくなってきたのだ。

そればかりか、自衛隊に納入している商社が、安い中国製のツルハシを納入するようになったという。いざ、という時に威力を発揮しなければならないツルハシが、外国製の粗悪品だとは。しかも、外国製品の導入によって、日本でひとつしかないツルハシ製造工場が圧迫されている。もし、外川産業が廃業するようなことになれば、日本のツルハシ製造の技術は完全に消滅してしまうのだ。自国で基本的な道具が作れなくなる。これは、安全保障上の大問題ではないだろうか。安ければいいというものではない。自衛隊も商社も、その辺のことをちゃんと考えてほしい。

そんななかでもツルハシ製造の灯を絶やさずにがんばってきた外川産業に、さらに大変なことが起きた。姫路駅周辺の再開発により、市から移転を勧告されたという。移転しない場合は、強制執行もあるといわれているそうだ。

「移転することはやぶさかではないのです。ただ、どこに行くかが問題。騒音問題があるので、準工業地帯も工業地帯も受け入れてくれない。工業専用地域ならいいというのですが、余りに交通の便が悪くてとてもやっていけない。行き先がないので、市に『行き先を探してくれたら、いつでも移転します』といったところ、移転先の世話はしていないという。挙げ句に『いっそ、廃業なさったらいかがですか』とまでいわれました」と現社長。

長年、障碍者雇用で姫路市の福祉にも貢献し、日本で唯一の高度なツルハシ製造技術を保持している会社に、市が「廃業しろ」とは! あまりといえば、あまりの話ではないか。物づくりの技術を絶やしたら、日本という国はダメになってしまう。ゆゆしき問題だ。

「こんど来ていただいた時に、まだ工場をやっているかどうか」と、現社長はため息をついた。

帰り際、工場を訪れると、先代がサングラスをかけ、工作機械に向かっていた。円柱状の鉄を鍛えながら直方体にする仕事をしていた。この機械は、先日、加古川で廃業した工場からもらい受けたという。

「設置費用だけで1千万円かかりました。円いものを四角にするあの仕事は、材料1キロ当たり200円で請け負っています。小さいものなら簡単なのですが、大きな塊を四角にするのはむずかしい。危険も大きくなる。けれど、手間や時間は、さほど変わらない。だから、どうしても大きな塊に挑戦する。あれは、一塊りが20キロです。ひとつやっても4千円にしかなりません。オヤジが生きているうちには、償却できないんじゃないかなあ」と現社長。
「お父さんの趣味ですね」というと、苦笑いしながら「いいえ。あれはもうビョーキです」。

巨大な鉄の鎚が機械の力で持ち上げられ、ボタンを押すとガシャンと落下する。その下に、真っ赤に焼けた鉄の塊がある。それを、工員が二人がかりで動かしている。所定の場所に置くと、また、鎚がガシャンと大きな音を立てて落ちてくる。タイミングを計って、ボタンを押しているのが先代だ。鉄は熱いうちに打たねばならないし、ぴったりと息が合わなければならない。緊張感が溢れたダイナミックかつ繊細な作業だ。見ているだけで血が騒いでくるような現場だ。先代が、いつまでも現場を離れようとしない気持ちがわかるような気がした。

日本でひとつ、世界一の技術を誇る外川産業の存続を心から願っている。

化石掘りが趣味の諸君! 外川産業では化石掘り専用の「化石掘り玄能ヅル」を開発しました。ゼッタイ買うべし!
http://www.mmjp.or.jp/soto/soto/kaseki.html

ガーデニングが趣味の方々。いい道具は作業を心地よいものにしてくれます。使い勝手のいい道具で、本格派になろう!
http://www.mmjp.or.jp/soto/soto/jiro.html

これで地震も怖くない。一家に一本、防災用の小さな斧を備えましょう。よく、アメリカの映画で出てくるような、ビルの消火器のそばにある、あの斧です。いざという時の強い味方。これがあれば、大切な命を救えるばかりでなく、壊れた家屋を燃料にするなど、地震のあとのサバイバルに使えます。
http://www.mmjp.or.jp/soto/soto/bousai.htm

みんなで、外川産業を応援しよう!


■ 6 Nov 2006  白鷺城と「天守物語」


昨晩は、黒田武彦氏の還暦記念パーティの流れで、3次会までおつきあいして、すっかり午前様。タフな黒田さんが、酒宴で眠っている姿をはじめて見るというぐらい、徹底的な飲み会だった。

姫路城のすぐそばのビジネスホテルで目覚める。さっそく世界遺産観光。お城は、遠くから見ると清らかで美しいが、もともと城塞なだけに、中にはいると生々しい。道は曲がりくねり、見通しがきかない。階段も非常に急で上りづらい。どれも、侵入した敵を困らせるための仕組みだ。小窓は、鉄砲を突き出す窓。長押には、武具をつり下げるための杭が打たれ、火薬や槍などがぶら下がっている。

昔のお姫さまたちは、このお城の中で暮らしたのだろう。いくら広いとはいえ、こんなところに閉じこめられていたら、なんだか息が詰まるなあ。村のお百姓の娘に生まれた方が、自然とも親しめていいなあ、と思ってしまった。まあ、お百姓さんはお百姓さんで、大変だったんだろうけれど。

天守閣には、小さな神社が祀られている。泉鏡花の「天守物語」の舞台だ。窓の外は、紅葉の森。妖怪のお姫さまの侍女たちが、ここから白露を餌に秋草を釣って遊んだ描写が思い起こされた。


城を降りてひと休みしていると、遠足の幼稚園児たちがわらわらとやってきた。
「ねえねえ、お城に幽霊、いる?」と園児。
「幽霊はいないよ。でもね、妖怪のお姫さまの物語があるの」
「うわーっ、妖怪だって!」
「でも、お姫さまでしょう」
「そうそう。妖怪のお姫さま」とわたし。
「お姫さま、どうなるの?」
「お侍とラブラブになるの」
「へえー」
そこへ「集まれー」の先生の掛け声。小さな女の子が名残惜しそうに聞いた。
「お姫さま、しあわせになるの?」
真剣なその眼差しに、胸を突かれた。
「どうだったかなあ。そうそう、最後の最後はしあわせになるの」
女の子は、にっこり笑って走っていった。(つづく)


■ 5 Nov 2006 黒田武彦氏 還暦記念パーティ


西はりま天文台黒田武彦氏の還暦記念パーティが、姫路であった。会場は古い酒蔵を転用した灘菊酒造のレストラン「西蔵」。琵琶の音で優雅に始まったパーティは、徐々に盛りあがり、どのテーブルでも話題が弾んで、挨拶の声も聞こえないほどだ。集まったのは百名ほど。最後には、その一人一人を、何と主賓である黒田さんが紹介するというサービスぶり。「黒田さん、働き過ぎ!」といいたくなるくらいだけれど、これが黒田さんのお人柄だ。黒田さんは、お約束の「赤いちゃんちゃんこと帽子」を着せられて、照れまくっていらした。

わたしは、黒田さんに捧げる詩を読ませてもらった。ピアニストの福田直樹氏が、即興で、とても美しい音楽を奏でてくださった。感謝。


(写真:福田直樹氏、ちゃんちゃんこの黒田武彦氏、わたし)

星を見る少年  ―還暦の黒田武彦氏に捧げる 2006/10/28

地球で 一人の赤ん坊が生まれた時
アルデバランで一筋の光が生まれ 
宙へと旅立った

その光が毎秒三億メートルで
宇宙の闇をひたすら駈けているころ
赤ん坊はやっと よちよち歩き
まだ暗かった 戦後の空には
まばゆいほどの 満天の星

やがて赤ん坊は 少年になり
きらめく星空に 心奪われた
そして 焦がれるように思った
望遠鏡がほしい と

紙筒を作り レンズを自分で磨き
はじめてのぞいた星は 七色に滲み
少年は 息をのんだ
宇宙はなんて きれいなんだろう

  その七色が 色収差だということに気づいたのは
  ずっとずっと後のことだったけれど

少年は ひとときも失うことはなかった
星への憧れ 望遠鏡への思いを

  遠くを見たい もっともっと遠くを
  遠くを見たい 宇宙のはじまりを
  わたしの命の はじまるところ
  すべての命の ふるさとを

そして この地上に またひとつ
新しい望遠鏡が 生まれた
「なゆた」 世界最大の公開望遠鏡
サンスクリットで 無限 
という意味を持つその望遠鏡は
地上の鎖を断ち切り 人々の心を解き放つ
宇宙の果て さらにその彼方まで

望遠鏡をつくった男の目をのぞけば
宇宙よりも深い空
銀河渦巻くその闇にいまも
あの少年がぽっかりと浮かんで
小さな紙筒の望遠鏡を目に当て
驚きの声をあげている

  宇宙はなんて きれいなんだろう

その少年の目に
いま 一筋の光が届こうとしている
少年が生まれたあの日 
ともに生まれた アルデバランの光が
深い闇を超えて

  宇宙はなんて きれいなんだろう
  宇宙はなんて ふしぎなんだろう

それは いまここにある望遠鏡をのぞく
無数の少年少女たちのつぶやき
そこから再び 新たな旅がはじまる
無限の彼方への旅 心の宇宙への旅が


■ 1 Nov 2006 ただいま婚約中


婚姻届に署名捺印、証人の方々の署名とハンコもいただいて、書類は揃ったものの、まだ提出に至ってない。みなさんに、早々とお祝いの言葉をいただいて、恐縮だ。

つまり、結婚の約束はしたけれど、入籍はまだという状態。これを「婚約中」といっていいのか? いや、単なる入籍前。うーん、でも婚約中ってなんだかいい響き。しばらく楽しもうかな。なんていっている場合ではない。

なぜこの時期に入籍を? もちろん、奈良での新生活を区切りに、ということもあるが、もうひとつ理由が。相棒は先月お誕生日を迎えて35歳。わたしはいま、50歳、しかし、今月23日が来ると、ひとつ歳を取って51歳になってしまう。ということは、22日までなら、歳の差が15歳ですむ! という姑息な勘定……。

もう、ここまでくればそんなこと誤差のうちなのに、こだわりたい女心に自分でびっくり。

もうひとつ、自分でびっくりしたのは、大安や仏滅の件。きょう、お互いに仕事が一区切り着いたら届けを出そう、としたところ、暦をみると先勝。「午前中は吉、午後は凶」とある。仕事が終わったのは、午後。

そんなこと、全然気にしない、と普段は思っているのに、そういわれると「急ぐわけでなし、何も慌てて今日にしなくても」という気持ちになるから不思議。これから、できれば死ぬまで続けたい結婚生活の一日目は、やっぱり佳き日でありたい。縁起にこだわるなんて、人の心ってどうしてそんなふうにできているのだろう。

というわけで、きょうは市役所にいって、書類に不備がないか確かめてもらうだけにしてきた。わたしの本籍だけ、相模原から奈良へ移転の手続も。入籍は、次の大安の日の11月11日に。ゾロ目で「いい!いい!」。しかも「世界平和の日」だそうなので、それにあやかり、夫婦も平和にやっていけるかもしれない。

というわけで、ただいま婚約中。


▼2006年10月の時の破片へ


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