「物語の作法」課題提出板 (0040)


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千田由香莉 作品3/「ばらの花」 2004年09月01日(水)14時57分34秒

………ジー、カタカタ、…ブッツ…
「あ、あ、えー、えーあー、…あ?えっ?はいっちゅう?」
きゃはは。
 暗い画面から、音声のみが姿を現した。やがて光が入り、整然と並ぶ学生服の集団が映し出された。一人づつ代わる代わる映し出されていく。照れ笑いを浮べる奴、おかしな事をしだす奴。髪をやたらいじる女子。僕らの14歳が、此処にはあった。


 「高知市立桜丘第二中学校」と印刷された茶封筒が届いたのは3日前の事だった。僕はすっかり忘れていたのだが、封を開けて中から出てきた一本のビデオテープをみるなり、ぼやけきっていた記憶が、風にのってカーテンを揺らした青葉の匂いと共に蘇えってきた。
 ちょうど10年前。シューメーカー・レビー第9彗星が木星と衝突した年、僕らは行事の一環で、10年後の自分に向けて手紙を送った。いわゆるタイムカプセルってやつだ。
僕らのクラスは誰が言い出したのか、「ビデオレター!」という発言によって、テンションのバロメーターがMAXまで上がった。撮影当日、僕ら男子は上下関係の厳しい中学における最大の禁忌である詰襟のカラーを抜いた。そして一方女子、翌日の彼女たちの髪型はきれいさっぱり変わり、髪型だけならアイドルとそっくりになっていた。
 さて、意気揚揚、狂喜乱舞、ついに挑んだ集合映像。そこに映ったのは、背伸びした詰襟も髪型も全く関係ないほどに、緊張を絵にかいたようにひきった笑顔だった。

 そしていよいよ集合場面から、一人一人の手紙の内容に挿し代わる。…はずだった。
「えっ、と……真田響です。」

 巻き戻してみた。

「真田響です。」

 今度は早送り。

 彼女、真田響が話し終えたと同時に、ビデオはガチャン、と終わりを告げ、暗転した。
「真田…?」
 僕は茶封筒を手に取り、宛名を確認した。…ちゃんと僕宛だ。
「………真田ぁ?」
 僕は、鬱陶しく高々と積み上げられた卒論の資料の上に、それを放り投げた。
「って、誰だよ」

 翌日、実家からアルバムを送ってもらい、ようやく分かった。
真田響、彼女は中1の初めに東京から越してきたのだが、病気持ちで学校も休みがちだった。そして、中3の新学期が始まる頃、彼女は2学期を迎えることなく突然、転校してしまったのだった。だから、彼女の印象は無いに等しく、言葉を交わしたことがない奴もほとんどだった。そんな彼女の事を、僕の級友に話したとしても、薄い反応しか返ってこない事は明白だ。事実、かく言う僕も、このビデオレターとアルバムの二つを要さなければ、彼女の記憶を呼び戻す事は出来なかったのだから。
 古い映像。ノイズ混じりのビデオレター。彼女は、10年後の自分に微笑みかけた。肌の色がやたらと白く、綺麗に切りそろえられた短めの前髪から、彼女が人の2倍も幼く見えた。僕は初めて真田響を正面からみた気がした。
「まてよ…、ってことは俺のビデオは真田が持ってるということか?」

―――――――― 間。

 瞬間、僕はすぐさま受話器を手に取り、アルバムの後方に書かれた電話番号を頼りに真田の家へ連絡をとることにした。冗談じゃない。俺の、こっぱずかしいだろうビデオレターを他人に見られてたまるか!!ダイヤルする指先がこの上なく速くボタンの上を駆け回った。が、真田は出なかった。仕方が無いから、卒業以来寄り付くことの無かった学校へダイヤルすることにした。
「はい、高知市立桜丘第二中学校です。」
 無愛想な第一声。多少は怯んだが、僕は丁寧に事のあらましを伝えた。
「あの、96年度卒業生の狩野言います。94年に埋めたタイムカプセルのビデオレターが間違うて別の人のが届いてしまったんですが、真田響さんに連絡をとりたいんですけど、電話番号、または住所の変更先教えてもらえませんか。」
 受話器から、ふうん、という鈍い溜息が聞えた。暫くして、小声のひそひそ話が聞えた。
「何やビデオレターがどうのって。連絡先教えてとか言いよる…。ストーカーとかいいよるあれやないろうか…。」「ええ?怖いわぁ。」
 僕は肩が一気に重くなるのを感じた。

 散々疑われて、散々尋問を受けた割には、どうにもならなかった。僕は重い気持ちで受話器を置いた後、自分の存在意義について考えさせられてしまった。そっちの事務ミスだろうが!困っているのはこっちだー!!と強く言えればよかったのだが…逆におばちゃんの小言や嫌味に撃沈された。
 そもそもだ。何で真田の手紙が僕にくる?出席番号も近くなければ、話したことも無い。面倒な事この上ない。僕は真田の悪口を考えようと頭を巡らせたが、自分のなかに彼女の記憶が無い事を改めて気づかされただけだった。何ともいえない気分になって、その日は早急に寝てしまう事にした。明日また考えてみよう…。僕は眠りに落ちていった。
 

 自態は、実に簡単な方法で活路を照らした。僕宛に実家から小包が届いたのだ。
 開けてみると、中から僕のビデオと共に、淡い桜色の便箋が添えてあった。「狩野奏汰様」
えらく達筆な字のおかげで、僕の名前が数段は高価な響へと変えられていた。母さんの字はこんなに上手くないはずだ。僕は首を傾げた。手紙には、間違えて届いていた事を詫びると同時に、左記の住所にビデオを着払いで構わないので、送って欲しい。という内容だった。最後の一文に、差出人の正体が書かれていた。
 ”真田響の母・真田久子。”
 後から気づいたのだが、留守電に実家の母からメッセージが残されていた。「家にあんた宛に来たやつ、そっち送ってやったからね。」――――― それならそうとはやく言ってくれ。
 ふう、と息をつき、伝票の差出人の住所をみた。「東京都国分寺…」…そんなに遠くない。少しの安堵と同時にやがて少しの憤慨を覚えた。自分で送ってこいよ、真田。
 僕は明日、直接尋ねて行く決意を固めた。ひとこと文句を言わねば気がすまない。


 「ここ、か?」
 蝉時雨が耳をつんざくように夏を主張する最中、住所を頼りに辿りついた場所は、学校から丁度二駅先のところにあった。緊張する指先を落ち着かせ、呼び鈴を鳴らした。
「はぁい」
 柔らかい声と共に、着物を着た品の良い初老の女性が姿を現した。が、僕を見るなり明らかに「?」を浮べた表情で、小首を傾げた。門を挟んで、僕は歩を半歩進めた。
「突然失礼致します。私、狩野奏汰と申します。」
 女性の表情が和らいだ。
「あら…お暑い中わざわざ?どうぞ、さ、お入りになって。」
 懐かしい匂いがした。

 招き入れられた畳の部屋は綺麗に片付けられていて、お香の匂いが微かにした。おばあちゃんの家の匂い…ぼくは匂いの記憶にたどり着くと同時に、心地よさをおぼえ、くすり、と笑った。 程なくして、冷たく汗をかいた麦茶と茶菓子を運んできてくれた。
「高知から、わざわざありがとう…。」
 申し訳無さそうな表情で頭を垂れた。僕は慌ててそれを制し、言葉を繋いだ。
「いえ、こっちの大学に今通ってるんです。近かったものですから、直接来てしまったのですが…こちらこそ、突然お邪魔してすみません。」
 初老の女性は微笑んだ。
「狩野、奏汰君…。」
「はい?」
 飲みかけたお茶をテーブルに戻した。
「あ、いいのよ。飲んで頂戴。」
 僕は緊張というより、むしろ居心地のよさを感じていた。
「狩野君は…響の事は、覚えてないかしら…。」
 そんなことないですよ、と言ったかもしれない。普通なら。でも、この人の前では、素直に答えてしまう、そんな空気があった。
「正直…はい。」
「そう。」
 表情を少しも曇らせることなく、女性の目は温かさに満ちていた。
「…そういえば、響さんもこちらの学校に通っているんですか?あ、もう働いてるか…僕一浪だし。」
 そう言ってお茶に手を伸ばそうとした時、僕はとんでも無い事を聞いてしまったと、後々後悔した。その人の目が、初めて微かに曇ったのだ。
「…あの子ね、死んだの。ずうっと前にね。」
 これまで黙っていたように感じていた蝉が、一気に鳴きだした。
 クーラーの冷気が頬にあたる。
「…え?」
「ほら、あの子病気ばっかりしてたでしょ?…かなり遅くに生まれた子でね。それがいけなかったのかもしれないわ…」
「あの…響さんは、いくつの時に…?」
「15歳の…ちょうど今ごろ。こんな風に暑い日。」
 初老の…おばあさんにみえたその人は、真田響の母、久子さんだった。あの達筆な。そう言って窓に目を向けるお母さんを前に、「すみません…」という言葉の発し方を瞬時にして吹っ飛ばしてしまった僕は、何もいえず、直視できずに俯いてしまった。そんな僕に気づいてか、久子さんは「いいのよ。そんな顔しないでちょうだい?」と微笑んだ。
 風鈴が涼やかにりん、と風の来訪を伝えると、久子さんは「そうだ。」と言って茶封筒を手にとって言った。
「あなたも一緒に観てくれない?」
 真田響のビデオレター。
「…観て、って。恥ずかしくないですか?」
「誰が?」
「響さんが…。」
 久子さんは笑みを深めて、柔らかく語りかけた。
「あなただから、観て欲しいの。」
ビデオがセットされると、デッキがゥウィ―ンと唸り声をあげた。時間を遡る準備は整った。
 集合映像を終え、ザラザラ…ブッツ、という音と共に、僕が見たあの冒頭の映像が流れ出した。
「えっ、と…真田響です」
 ジー……
 彼女はもじもじしながら、少し大きめなセーラー服の襟を気にしながら、少しはにかんで見せた。
「真田さん、ほら、」
 先生の声だ。小声でもばっちり入り込んでいる。僕たちは顔を見合わせて微笑んだ。
「えっと…私は、…10年後…何をしていますか?」
 真田響は再びはにかんだあと、今度は制服のスカーフを気にした。そして、意を決したように、繋いだ。
「私は…やりたいことがたくさんあります。言い出したらきりが無いので、ひとつだけ。いいます。一番なりたいのは、お嫁さんです。恥ずかしいから、誰にも言いません。秘密です。」
「聞いちゃったー」
 先生の声。真田は「あっ!」と頬を赤く染めた。
そう言って笑った彼女は、あまりにも幼く、あまりにもあどけなく、目の温かな光は母親譲りであることを知った。
 ブッツ、ザ―――――…

 僕たちは画面の砂嵐を眺めたまま、しばらくそのまま動かずにいた。あまりにも短い再会を自らの手で終らせる事はできなかった。しばらくして、ビデオのテープが自ら終わりを告げ、画面が黒く塗り潰された。
 僕は畳に目を落とし、天井を仰ぎ、仏壇に目を向けた。そこには案の定、彼女の幼い笑顔があった。ふと左横を見ると、久子さんが画面をみたまま微笑んでいた。ぼくの視線に気づいた久子さんは、微笑んだ。すごく穏やかな顔で。
 僕は喉とまぶたが熱くなるのを感じると、俯いて深く息を吸い込んだ。


 気が付くと、僕はかなり遅くまで真田家に滞在してしまっていたようだった。すっかり日も暮れた頃、久子さんは僕が断るのを振り切って、お土産を準備してくれた。玄関先で靴を履く僕の頭に柔らかい声が降った。
「実はね、ビデオが間違えて届く前から知ってたの。あなたのこと。」
 顔を上げると、久子さんの手に黄ばんだ一枚の紙が握られていた。受け取ると、下手な見覚えのある字があった。僕のだ。
「持ち主のところへ返さなくちゃね。」
 久子さんの笑みは真田響と瓜二つだと思った。僕は紙を握ったまま、記憶を辿ろうとしたが、そろそろ行かねば。歩きながら考えるとしよう。
「今日は…」
 そう僕が言いかけると、久子さんがそれを制した
「ありがとう。本当に。ありがとうね。」
「…ありがとうございます。」
「…ビデオが間違えて貴方の所に届いたの…きっと、あの子の悪戯よ。」
 僕も笑った。
 お土産を手に、僕は帰り道を辿った。久子さんは玄関外まで僕を見送ってくれた。
「よかったらまたいつでも来てね。」
 そんな嬉しい言葉を何度も言ってくれた。

 
 電車に揺られながら、いつの間にか僕は眠りについていて、夢を見た。

 そこは夕暮れの教室だった。中2の春休み最後の練習の日。部活が終って着替えようとロッカーを開けようとした。が、僕のロッカーが無い?よくよく考えると名札が消えていることに気づいた。
「何ちやー?…やちがないなぁ」
 僕はロッカーを不思議に眺めたあと、振り返った。
 そこには真田がいた。
「あれ?お前も今終わりか?」
「…ううん。私部活入ってないから。」
「ふうん…外暗いし、気ぃつけていぬれよー?」
「うん。」
 真田が笑った。

「吉祥寺―」
 飛び起きた。
 発車のベルが鳴り響く中、必死に辺りの状況を把握すると、電車を飛び降りた。
 電車を見送ったあと、人気もまばらになったホームに残された僕は家路を目指した。ポケットに手を突っ込んだ瞬間、かさっ、と何かが指先にあたった。取り出してみると、さっきの名札だった。
「さっきの…。」
 じっと名札を見つめていると、風がホームを横切った。瞬間、僕のおぼろげな記憶は、電子回路が完成し、電気が一気に巡るように、繋がった。
 真田が転校する前、僕は彼女と言葉を交わしていた。そして、春休みに関わらず真田があの時教室にいた理由は…僕の考えが自惚れでないのなら、分かる気がする。今なら。
 幼すぎたのはきっと僕のほうだ。


 家に着いて電気をつけるよりも先に、早速「僕」のビデオを観ることにした。
ガタガタ、―――――ジー…ブッツ。
「あーえっ、あーっ、1年3組、狩野奏汰。」
ピース。……まさかと思ってはいたけれどここまでとは…。とてもじゃないが直視できない。
「10年後の俺、えっと…えーっと…」
 そこには詰襟姿の、延々考え込んでいる僕の姿があった。あー、うー、と言いながら、ピースだけは欠かさない。
「狩野くん、ビデオ切れちゃうよ」
 先生の催促の声。
「えっ?!ばっさり!」
 我ながらハラハラさせられる。
「俺の夢、宇宙飛行士!ほいで……」

 切れた。
 ザー…
「…何だこれ、途中で切れてるし」

 僕は文系大学に進学した。宇宙飛行士、そうか、そんな夢もあったような気がする。
ビデオをデッキから取り出し、テープに悪態をついた。黒いテープは、そこに残された僕の14歳の瞬間を切り取っていた。夢の途中、その先の言葉を僕は一体、何て言おうとしたのだろう。あの日、命掛けで抜いた詰襟のカラーや、少し背伸びした髪型は、僕たちを誇らしげに見せていた。
 あの日僕が抱えていたものを今の僕はひとつも継いじゃいない。それでも歳を経る度にその事を忘れないようにと、丁寧にしまい込んできたつもりだった。でも、いつだって気づくのは、失ってからだった。それと引き換えに残った小さな破片がつけた傷跡によって。
 茶封筒に書かれた黒字の宛先の上に「住所変更」の赤いスタンプが押されていることに気がついた。ちょっとだけ息が苦しくなった。赤字を指でなぞり、その中に14歳の僕の欠片を残し、引き出しの奥にしまい込んだ。
  
 明日、便箋を買いに行こう。もういない君に、10年後の返事を書くつもりだ。

城所洋 作品7/神が造り給うた、神を作りし存在 2004年08月21日(土)22時59分45秒

 8月20日 曜日:土曜日 天気:晴れ

午前11:30頃

母親に頼まれて昼食を買いにコンビニへ行く。
その時、家の階段で死にかけたセミを見つけた。
もがいている姿が可哀想で、下まで持って行き、植え込みに置いてやった

最初は、慈善だった

午後00:00頃

昼食を買い終え、家に戻る。
その途中、植え込みで動かなくなったセミを見た。
「最後は土の上で死ねて幸せだったかい?」
そう呟いて、そこを後にした。

この頃のは、きっと自己欺瞞だったと思う。

午後05:00頃

週刊誌を買いに、行き付けの衣料品店へ向かう。
だって、2日も早く発売するんだ。お得だろう?
その帰り、植え込みから出て、道路の上にいるセミを見た。
触ってみる。・・・動いた、まだ生きていたんだ。
苦し紛れにもがいて出てしまったのだろう。
僕はもう一度植え込みにセミを置いてやった。

単なる偽善だった。

午後07:00頃

夕食を食べに出かけた。
行き掛けに、植え込みを見た。
セミは、激しく羽を羽ばたかせていた。
あいつの回りには、無数のアリが群がっていた。
あいつは、必死になって追い払っていたんだ。

僕は、あいつを植え込みという戦場に送り出してしまったんだ。

午後09:00頃

腹も膨れ、夜の町を徘徊していた。
ふとオリンピックの様子が気になって家路につく事にした。
僕はまた、植え込みを見た。
暗がりでよく見えない。
あいつの羽音も聞こえない。
それでも目が慣れてくると、何とか見つける事ができた。
動いていない。
ちょん、と触ってみる。
動きはしない。
持ち上げた。
昼間はカシャカシャともがいていた足。
ちっとも動かない。

お前はやっと、死んだんだ。

午後11:00頃

日記を書いている。
ふと、植え込みいるあいつを思い出した。
朝になったらあいつは、いなくなっているんだろうな。
そんな事を思いながら、日記を綴った。

僕は正しかったのだろうか。
あいつは本当に土の上で死にたかったのだろうか。
食物連鎖。
僕はそれを思い、あいつを植え込みに下ろした。
でも現実は、ただ単にアリにエサをやっただけ。
そう思うのは、僕が人間だからだろうか。
人間って、何だろう。
食物連鎖を傍観する存在。
あいつはその中で生き、その中で死んだ。
僕は、何だか自分が生きているという自信が無くなってきた。
僕は生きているんだろうか?

それを考える事すら、おこがましいようで嫌になった。

城所洋 作品6/色眼鏡 2004年08月21日(土)21時36分35秒

絡みつくネオン
立ち並ぶ看板
薄暗い空
灰色の道

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

隣にいる誰か
通り過ぎる誰か
声を掛ける誰か
それを無視する誰か

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

そびえ立つ廃墟
犇めき合う雑踏
隠蔽する現実
倒錯する虚構

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

掻き分けた人波
差し伸べる電灯
気付く筈の無い真実
誰もが疑わない街並み

ここには本当の僕はいない・・・・・・・・・。

でも、僕は知っている
本当の本当は、何処にも無いって
在るのは、それだと思われる何か
在ったのは、それに近い別物

だから僕は、全てを僕に染めていく
僕にだけ見える、僕の色に
僕の主観
僕だけの本当

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

露木悠太 作品4/不肖の空 2004年08月20日(金)15時40分48秒


 新宿駅の東口から歩いて二十分。電車を降りたのが二十三時半くらいだったから、今ちょうど深夜零時くらいだろう。空は低く、じっとりとした熱帯夜にうなだれている。開演(オープン)は少し遅れているようだ。
 ライブハウス『ABYSSAL FISH』は毎月第三土曜日の夜、米・英の大時代をごちゃ混ぜにして、心酔した若者で溢れかえる。地下へと続く階段から、道路に面した地上の歩道にまで列ができている。列と言っても大体の奴がはみ出し者で、蓋をされた臭いものばかり。きちんと並べるはずもなく、しゃがみこんだり、座り込んだり、突然バカ笑いして転げまわったり。その度にカチャカチャとスタッズやチェーンの擦れる音。詰めて真っ直ぐ並べたなら、半分くらいのスペースで足りるだろう。社会に適応できるかどうか、一目瞭然だ。
「ろくなことねーよ」
 階段の上から数えて二段目、地上を三十センチ程降りたところに俺達はいる。
「何が?」
「何がって、何もかもが」
 って、ろくなことある奴はこんなところ来ないか。
「楽しめよシュウ、せっかくの週末だろ?」
「黙れ、ロッケンロー馬鹿が」
「おっ」
「あ?」
「オープンしたみたいだぞ」
 シノダはトゲに触ることもなく、絶えず穏やかだ。俺は時々、自分がひどく子供に思えてしまう。
「…ああ」
 だらだらと進む列に従って、分厚い鉄の扉の中へ。中へ入ってさっき千切ったばかりのチケットを捨てる。煙草、酒、香水、体液。様々な臭いが染み付いて、そのどれもが強く臭ってくるような、しかしどれにも当てはまらないような。とにかく新鮮な空気など何処にも無いのだ、ここは地下である。
「ビール、二つ」
 指を二本立てたシノダ。
「奢り?」
 と聞くと、仕方なさそうに笑った。奥のフロアには見向きもせず、俺達はバーカウンターの席に着いた。
「何かあったのか」
「別に」
「最近怒りっぽいよ、お前」
「もともと神経質なの」
 とか言って。もともとも何もよくわからない、自分のことなのに。外の暑さにやられた喉に、勢いよくビールを流し込む。そういえば、朝から何も食べていない。起きたのは昼過ぎだけどさ。
「まあ、いいさ。暴れて帰ろうぜ」
 ゴソゴソとポケットを探り、カチ、と五百円玉をテーブルに置いて見せたシノダ。
「裏」
 と言ってみた。キィン、と弾かれたコインがくるくる宙に舞う。パシィン…
「残念」
「イカサマだろ」
 しかめっ面で悪態をつきながらも格好だけのバーテンにウォッカを注文した。ショットグラスを逆さまにすると、口から食道へ、そして胃を溶かすようにアルコールは走る。体中に火が点る。
「うぇ…」
 そんなことを十回も続けて、二人とも目を充血させてから、やっとフロアに向かった。すでにバンドは四組いる中の二番手だった。ズン、ズン、ズンと夜の海のように黒光りしたフローリングの床は浮き沈みして、スピーカーの音はひび割れ耳に突き刺さる。まるで大型のトラックがひっきりなしに目の前を通過しているようだ。ステージ前は半狂乱、モッシュが起きている。だれかれ構わず突き飛ばし、肩車したり、柵によじ登ったりしてダイブする。それの繰り返し。
 しばらく眺めていると、〈ウォォォ…〉とどこからともなく雄叫びがあがった。
 ドンッと俺はその瞬間、シノダをステージ前に向けて突き飛ばした。酒がまわり足元のおぼつかないヤツは、ふらふらと観客にぶつかって簡単に転倒した。
「はははっ。おいおい、無茶すんなよ」
 そう言って近づくと、シノダがニヤリと笑みを浮かべたのがわかった。ぐいっと腕を引っ張られ、逆に半狂乱の渦の中へ投げ込まれる。
「お前もな」
 くそっ、こうなりゃヤケだ。遠ざかるシノダを睨みつけながらそう諦めて、アドレナリンを分泌した。近寄る何もかもを突っぱね、腕や足を振り上げる。目の前には変わるがわるモヒカンやリーゼントやスパイキー、黒はもちろん金や赤や緑色。びっしりと鋲の打たれたライダースジャケット、ボーリングシャツ、ドクロの刺繍。指輪だらけの拳を右へ左へ。スーパーマリオのクッパみたいな奴らだ。
 肩や太腿や背中を殴られ、蹴られ。ぐるぐる朦朧とした意識の中、何故かやけにひんやりとした部分。俺はそこで考えていた。
 文化なんてもの、みんな本当に信じているのかな。影響とかいって真似っこして、所属できる場所を探してんだろ? 俺だってそうだ。まるで操り人形のように、音に合わせて揺れたり、跳ねたり、止まったり。真面目だよ、みんな。
 と突然どのクッパだか知らないが、ガツン、と倒れこんで来た誰かの後頭部が顎に当たり、ハンチング帽を飛ばされ舌を噛んだ。くらっときた後、目尻に涙がたまる。…いてぇ。帽子を拾いながらそろそろと引き上げて、壁際に向かった。
 するとシノダが先に抜けて休んでいるのを見つけた。
「テメーなに一抜けしてんだよ」
「シュウ、夜は長いんだぞ」
「それ」
「あ?」
「それ、くれよ」
 「あ、ああ」と言いかけたシノダの目も見ずに、手にしていた飲み物をひったくった。一口飲むと、それがジントニックだということに気付いた。鉄錆のような味が混じる。きっとさっき噛んだ舌から血が出ているのだろう。痺れていく口の中、鈍痛に顔を歪める。トニックウォーターと血の調合は最低だ。みるみるうちに気分が悪くなる。
「便所、行ってくる」
 頭の中に煙が充満してしまったかのように、何もかもに薄くモヤがかかっている。いいかげん体がアルコールを拒絶し始めたようだ。蛇行しながらも、とにかく人にぶつからないよう気を付けて進んだ。
 ぎこちなく足でリズムを刻み、どこか怯えながらもステージに羨望の眼差しを向ける少年。手当たり次第に女に声をかけては邪険に扱われている常連の客。背中に生えたインクの羽を幼い笑顔で自慢する女の子。酔いつぶれて役立たずのローディー。通り過ぎて行く中に知っている顔もあったが、かける言葉を見つけられない。いつからか怒りっぽくなった俺。
 ドアを開けて、奥の個室に入った。途端に壁に手をついて「うぇ、おぇぇ…ぅ」と激しくもどした。顔の端から感覚がなくなっていくのがわかる。それでも指を突っ込んで吐けるだけ吐く。…「うぅ」。ゲロの後にはいつも感傷、これだけは吐き出せないようだ。どんなに奥の方まで指を入れても、最後には胃液しか出てこない。いつからだろう週末のバカ騒ぎから、少しずつ魔法が解けていくのを感じていた。勿論、見ないふりしてたのに。
 バンドが終わり、ブースの方から軽快なトークのMC。
「…DJ、頼むからスローな曲はやめてくれ。アップテンポがいいよ、踊れないけどさ」
 ドアを背にしてしゃがみこむ。ドクターマーチンのテンホールブーツは爪先とソールが磨り減って、白い丸紐は千切れかかっている。それはくたびれているようにも、ふてくされているようにも見える。まるで自分を見ているようで、また軽い吐き気をもよおした。身を前に乗り出して、腹に力を込める。ぶわっと顔面に一気に血の気が戻り…引いていく。
 ささくれ立ってしまった心。鬱々とした感情は酒のせいではなく、常日頃付きまとう亡霊だった。行過ぎると知りつつも、いつだって晴れた空には雲がかかりそうで、曇り空には雷鳴が轟きそうだった。消化できないものは沈殿するだけ、波が立てば浮いてくる。
 抜けの良いスネアが高く響いて、柔らかなウッドベースがシャツを揺らす。ギターが泣いて、甘く切ないヴォーカルが入ってくる。バラードは売れる。みんな失恋ばっかしてるから。ターンテーブルは忙しく、一曲目がフェードアウトしたかと思えばすぐに二曲目、次から次へ、まわり続ける。音の流れない時間は一秒も無い。バンドの終わりにDJがかぶせて、DJの掛け声でバンドが出てくる。忘却の饗宴は朝まで続き、そのまま眠りへと誘う。
 バンドを見ればくやしくなり、ビートに乗れば空しくなる。焦燥や劣等、綯い交ぜになってよくわからない。澱み、底は見えない。沈めたものは、無くなったわけではないのに。…わかってたはずなのに。
「…畜生」
 俺の居場所は一体どこにあるんだろう。
 ―ベトベトの手を洗い流して、ついでに顔も洗った。いくぶん気分が良くなった。フロアに戻ってみると、シノダが下手くそなステップを踏んでいる。
「よう、下手くそ。俺、先帰るわ」
「え? 何でだよ、始発まだだろ?」
「外歩きてーんだ」
「踊ってけよ」
「勘弁しろ」
 それだけ言って、吐いた分軽くなった体でフロアを横切り、バーカウンターの前を通り過ぎた。羽の生えた天使は、背の高い男に腰を抱かれキスをしている。その紅潮した横顔はアルコールのせいなのか、それとも恥ずかしさからなのか、わからなかった。シノダの声が微かに聞こえたような気がしたが振り返らず、重たい扉を開き、地上への階段を一つ一つ上る。見上げるとビルの隙間から、深緑と群青を混ぜたような、空がすぐそこで、落っこちそう。
 ろくなことねーよ、ほんと。東京は祈る人が多すぎて、星がなくなっちまったみたいだ。俺の分は、まだあるのかな。
 階段を上りきったところで静かに鼻から新鮮な空気を吸い込む。アスファルトの熱は下がり、心地よい風が吹いていた。首のあたり、汗が冷えていく。
 朝が来る前に泣いてしまおうか。なんて考えたけど、それほど自分を支配できていないことに苦笑し、ゆっくりと目を閉じ嗚咽を洩らす。涙が落ちたわけではなかった。しかし、夜はまだ続くんだろう。



吉見幸子 作品4/はいけい神様 2004年07月27日(火)11時36分34秒

もし神様がいるのなら
そしてあなたがいろいろ決めているのなら
今までいろいろありがとうございます
あんなことやこんなこと
感謝のしようがございません

もし神様がいるのなら
そしてあなたがいろいろ決めているのなら
どうかひとつお願いを聞いてください
私の体返してください
元の元気な体にしてください
怯えず、怖がらず
そんな体にしてください

もし神様がいるのなら
そしてあなたがいろいろ決めているのなら
どうかもうひとつだけお願いを聞いてください
みんなが幸せに暮らせるようにしてください
みんなが夢をもって元気に暮らせるように

露木悠太 合評報告/ラジカル・ラジオ 2004年07月17日(土)06時42分16秒

【ラジカル・ラジオ】

 越智美帆子さん
「まず「SWEET ART MUSEUM」とは全く違った印象で驚きました。」

実は今はまだ、自分にあったスタイルを模索中なんです。どんなことができて、どんなことができないのか試しているんです。いつかは自分なりのオリジナリティを強く出した、僕にしか書けないような作品を作りたいと思っています。

 吉見幸子さん
「高校生のときの感覚ってこんなかんじだったような、そうじゃないような。。。」

そうですよね、僕もよくわからないんです。きっと高校生からそんなに時間が経っていないからだと思います。もうひとつ客観的に見れないんです。ただ僕の場合、とにかくバカで、単純だったと思います。今もそんなに変わってないかもしれません。

 志田匡平さん
「ただ全体的に、説明だとか肉付けが欲しい。っていう気持ちと同時に、それをすると『テンポ』とか、『勢い』っていうこの文章のよさを失う可能性も…。難しいですね。」

その通り。スピード感を殺さないために一つ一つのエピソードを短くしました。これは苦肉の策です。僕には構成力が足りないです。でもそれがはっきりとわかって良かった。

 野島明菜さん
1、「『SWEET ART MUSIUM』の主人公は宗一くんよりは控えめな性格っぽいけど、母性本能をくすぐるような不器用な感じ(純粋すぎるため)は共通している気がします。」
2、「改善して★いこと。それは一面だけで読めるようにしてほしいっす。下のスライド使いながら読まなきゃならなかったので、とても読みにくかったす。うーん、残念。」

1、「純粋」さ、それは野島さんの作品にもたくさん溢れていると思います。とても心地よく、僕なんかより大切に扱えているような気がします。短歌〈コイノウタ〉では、僕は野島さんの作品が一番好きです。
2、すいません。僕も気になってました。みなさん読みづらかったと思いますが、読んで頂きありがとうございました。

 土橋明奈さん
1、「まず、素敵なタイトルですね。」
2、「微妙なこ懐かしさ、のるすたじっく(ノスタルジック)さを感じ、今どきっぽさは無かった様に思います。地方(?)高校生の大らかさでしょうか。それと主人公の年齢が16歳でしたが、雰囲気に中学生、高校生、大学生と揺らぎがある様に感じました。」

1、ありがとうございます。クラッシュの「THIS IS RADIO CRASH」から引っ張ろうと決めてたので、「〜・ラジオ」にしようと思ってずっと頭の中で「なんとかラジオ」っていろんな単語をくっつけていました。で「ラジカル・ラジオ」が浮かんだ時に、なんかマジカルバナナみたいで良いなぁとか思ってそのまま付けました。
2、そうなんです、イメージは田舎です。パンクかぶれした少年の妙に政治に偏ったところ(パンクは体制批判の歌が多いので)なんかも出したかったんですけど、わかりづらいと思って控えめにしました。雰囲気にバラつきが出てしまったのはキャラの性格を優先させてしまったせいかもしれません。

 雨宮弘輔さん
「ぼくも高校一年生の時、バイトをして貯めた金で主人公と同じメーカーで同じ色のギターを買いました。ブラック、タバコ、ホワイトのスリーカラーでストラト58年モデルだったっけ? 手に取った瞬間、ドキドキしたのを覚えています。」

スリーカラーサンバーストのストラトキャスター、カッコ良いですよね。渋いし。時代に流されないカッコ良さがあります。なのでこれを取り入れました。
宮澤賢治の本買いました。もしよろしかったらまた、何か参考になる本があったら教えてください。

 城所洋さん
1、「自分もどこかしらにこういった原動力が備わっていれば、こんなドロドロとした世界観を持たずにすんだかもしれないなぁ・・・。昔の自分の体たらくさを時々呪いたくなってきます。」
2、「というか、この物語の世界を専門用語で説明している感じがしました。それを飛び交わすことによって、それっぽい世界を演出しているのですが、それにしても少し頼りすぎのような感じがしました。」

1、これは僕自身の話ではないですよ。どちらかといえば僕もドロドロです。グダグダです。
2、確かにそうなんです。批評を終えて読み返してみて、要らないかもしれない(部分もあるかも)と思いました。

 菊池佳奈子さん
1、「露木君の作品はとても力強さと感じます。それは小説を書く技術の問題とかではなく、キャラクターや描く物語の、力強さ。リアルな痛みや情けなさ、いやって言うほど人間味溢れているのに、そこで腐らない。止まらない。進みつづける。そんなイメージをうけました。」
2、「…バランスをうまくとれるようになったら、良いんじゃないでしょうか。どこまで書き込むか。どこまで詰め込むか。そういったことで、露木君の作品の持っているパワーや魅力が、ますます光る気がします。 」

1、とても誠実な批評、ありがとうございます。すごくうれしいです。後ろ向きに逃げ切れちゃうことなんて、なかなか無いんですよね。僕はそんな事を思っているのかもしれません。
2、そうですね、バランス。主人公は独りよがりでよくても、作者はそうであってはならないんですよね。

 松本紗綾さん
「個人的に、こういう感じの話は嫌いじゃありません。だから、楽しく読めました。(嫌いじゃないというのは、バンドとか、ギターとか、全然わからないので、文字だけだとチンプンカンプンになってしまうのです。だから、映像の方が好きなのです)」

僕も実は本を読むより圧倒的に映画のほうがたくさん見ています。なので映像で考える癖がついているのかもしれません。もっと読み手を意識しなければならないと思いました。

 千田由香莉さん
1、「ただ、ひとつだけ気になるところがありました。水森という少女への恋心。これをもってくるならば、もう少し彼女を登場させてほしかったです。あと、彼女の美少女ぶりの描写がもう少し欲しかったです。イメージは書かれているのですが、具体的な描写も欲しいな、と思いました。折角の高校一の美女ですから。恋心が後半からぱっと現れてしまったせいか、恋がそれほどのインパクトを私の中に残ってはおらず、その為、大好きな彼女の前を駆け抜ける…という折角の疾走感あるシーンがわたしにとって「?」が浮かぶばかりでした。」2、「でも、楽しかった。すごく楽しかったです。こういう話、本当に大好きなんです。男の子になりたくなります。」
3、「批評6/いじけるなベイベー」

1、その通りなんです。もっと水森さんへの恋を書くべきでした。でも「美少女」ってよくわからないんですよね(文章にするとき)。僕が友人に「好きな女の子のタイプは?」て聞かれて悩んだ末に「学校帰りにプレーン味のプリッツをポリポリ食べながら歩いている人」とか言ったら変な目で見られました。で主人公も変な奴にしたかったのでそれを採用してしまいました。
2、うれしいです。ありがとうございます。僕も千田さんの『檸檬』すごく好きなんです。まるで一陣の風が吹き抜けたような心地よさを感じました。だからあんなに良い作品を書く方に気に入って頂けてすごくうれしいです。千田さんの次回作も、本当に楽しみに待っています。
3、オウ! てミッシェルですよね?見逃しませんよ。とか言って間違ってたらすごく恥ずかしいです(不安です)。僕もミッシェルは大好きなんです。僕がミーハーな人を煙たがるのは、チバユウスケのファンの女の子二人組(追っかけみたいな)にライブで「つーか見えないし、邪魔だよねー」とか後ろから言われたことに由来しています。

 五十嵐 舞さん
1、「我が愚弟も同じようにギターをやっていて同じことをやっていました。私はこの主人公の姉も気持ちも解りますが・・というか私はもろ受験のナーバスな時期に横でやられてました。」
2、「この話の中に出てくる「69」という数字、これはあの映画や原作に影響されたものなのでしょうか。私も想像してみたらちょうど69年代っていったらわが両親の青春時代・・・」

1、あはは。僕は逆で姉に怒られてました。
2、説明が足りませんでした。「69」というキーワード。これは「ウッドストックフェスティバル〜愛と平和の祭典〜」の行われた年です。で、「ペプシの協賛を得て最近復活したウッドストック」というのは99年に催されたものです。いわゆるロック音楽(パンクやハードコア等の派生を除いて)の最盛期というのが60年代から70年代だったと思います(間違っていたらごめんなさい)。なので現代でロックをやるには、60〜70年代を認めたうえで、否定しなければならない。と感じます。それで最盛期の中でも最も大きなイベント、伝説となった69年のウッドストックというキーワードを出しました。99年のウッドストックのドキュメンタリーフィルムでは、99年の若者(僕らの世代)に対して「ジェネレーションX」と呼ぶ声があります。69年の若者はひとつになって大きなことをやった(学生運動なども含むかもしれません)。しかし99年の若者は個人主義でバラバラで何を考えているかわからない(X世代)。と一部の大人に言われていたのです。そして「69年は良かったよ、99年のウッドストックは偽者だ」と言う人がたくさん出てきます。どこか懐古的で、後ろ向きな一部の大人。それを前向きに突き進む主人公にぶっとばしてもらいたかったんです。でもそこまで考えるには主人公は幼すぎるので、「なんかムカつく」程度で済ませました。
とはいえ村上龍の「69」は多くの方が言うように僕も大好きなんです。参考にもしました。けれど現代を若者として過ごす僕もまた、69年をものすごく楽しそうに走り抜ける「69」を認めたうえで、否定しなければならない。そんな風に考えています。

 高澤成江さん
「ラジカル・ラジオの続きとか別のイベントの話とかも読みたくなりました。成長していく中原宗一君達を見てみたいです。」

ありがとうございます。宗一は今21歳になって、自分のことを「俺」と言い、専門学校を卒業し社会に出て働いています。残念ながらバンドはやめてしまったようです(でもロックンローラーはやめていないようです)。もちろん野望のような、強い志は持ち続けています。けれどなかなか自分のやりたいことをやれず、もがき、苦しんでいます。高2の時にできた彼女(水森さんではないです)とも別れてしまいました。彼は一人都会の喧騒に涙して、やるせない思いに深く傷ついています。彼に光は射すのでしょうか。どうか幸せになってもらいたいと強く願っています。

 寮先生、松永さん
縦書きにした時の形を考える、読み手に階段を上らせる、歌詞の引用への思い入れをしっかりする、一つずつエピソードをきちんと書く

ありがとうございました。プロフェッショナルの方の意見を聞けることは、本当に貴重でありがたいことです(男が少ないので松永さんの意見を聞けてとても良かったです)。僕が一人でやっていたら何年もかかってしまいそうなことを、今気付けたことはものすごい進歩だと感じています。まずは構成力をつけるために、また一から作品を作っていきたいと思います。


 まとめ
みなさんありがとうございました。
僕は読書量がものすごく少ないんです。自己紹介にも書きましたが、小説を読み始めてまだ二年と少ししか経っていません。小、中、高と先生に本を読めと言われれば言われるほど読みたくなりませんでした(ズッコケ三人組は好きでした)。でも大学に入って友達がおもしろそうに読んでいるのを見たら、不思議と読みたくなったんです。なので今文学賞のリサーチも兼ねてとにかく本を読みあさっています。でも読む度に思うんです。こんなすごい物語に自分は近づけることができるんだろうかって。今のところかなり無理っぽいです。でも前述のとおり、みなさんに批評して頂けることでものすごく成長できているような気がします。読み手をもっと意識すること…大事ですね。もっともっと成長して、もっともっと良い作品を作れるように頑張りたいと思います。ありがとうございました。

越智美帆子 批評6/軽快な物語 2004年07月14日(水)21時04分47秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

締切に遅れてしまってすみません。

 まず、【SWEET ART MUSEUM】とは全く違った印象で驚きました。 
『SWEET〜』のほうは、主人公の思いに力を入れていて短い文章だったぶん、小キレイで流れるような印象があったのに対し、『ラジカル・ラジオ』は勢いのある、夏の匂いのある軽快な印象を受けました。
 どちらも読みやすく、主人公にユーモアがあるところが露木作品の魅力であり、やはり鈴木清剛がお好きだということで、影響を受けているのかな、と思いました。
 バカそうな女の子と美少女を登場させるというのもおもしろく、細かいところに技が見られます。
 ただ、やはり指摘している人もいますが、横文字が多くて、そこが少し難点だと思います。物語の設定上、多くせざるを得ないとは思いますが、専門用語などをつかってある小説でも読者にわかり易く書いてあるものは多く存在します。
 それと、長さが足りないような気がしました。読み終えたとき、「あれ、もう終わり?」と思ってしまったので。58枚の作品だということですが、これなら100枚くらいでもいいのではないでしょうか。
 あとは、ロックだパンクだと言っていますが、それについての情熱がもう少し欲しかったです。キャラクターの魅力も、もうちょっと。
 文章力はかなりあると思うので、あとは魅力のあるキャラクターに力を入れるとか、思想に対する情熱とか、細部をもっと突き詰めていけば、さらに良い作品が出来上がると思います。

吉見幸子 批評6/におい 2004年07月14日(水)17時24分36秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】
若いみずみずしさ(?)があふれている、そんな印象を受けました。
高校生のときの感覚ってこんなかんじだったような、そうじゃないような。。。
ストーリーの中に歌がうまく組み込まれていて、そのリズムがこの作品の一部になっている。いろんな要素が相関しあってひとつの作品ができていくのだな、と改めて思いました。
どこか生活臭のする青春を感じられるのって高校生が限界かなと思うのです。地元で、町の中で精一杯に何かする。都市を重ねるごとに世界は広くなっていくぶん、別の楽しみが増えていく分、その分独特の空気は感じられなくなっていく。その「空気」がうまく表せたのってすごいことだと思います。

志田 匡平 批評6/青春ロッケンロー 2004年07月14日(水)16時45分42秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】

 まず、読み終わったとき爽快感が良かった。言葉だとか文章のテンポが良くて、ストーリーも爽やかなものだったからだと思う。
 それに、自分も海沿いの田舎町に生まれて、ギター少年で、楽器屋のおっさんと無駄話して、髪立てて『セックスピストルズ』のコピーバンドやって、社会の事なんて分からないのに『アナーキー』だとか、女王なんていない日本で『神様は女王様しか守ってくれない(意訳)』とか歌ったり、格好もそれっぽく…っていうかそのまんまに真似てみたり、『音楽少年』の青臭い生活がリアルで、かなり世界感が一致したから映像的にも浮かびやすくて、読み易かった。
 そんなこんなで自分はスラ〜ッと読めたんだけど、ほかの批評を見て「なるほど」って…。確かにギターの用語とかバンド名とか、『69』っていうキーワードも『ウッドストック』も、分からない人には分からないだろうし。もっと説明が必要かな?って思わされました。あと、一つ一つの出来事に物足りなさを感じたのはたしか。
 ただ全体的に、説明だとか肉付けが欲しい。っていう気持ちと同時に、それをすると『テンポ』とか、『勢い』っていうこの文章のよさを失う可能性も…。難しいですね。
 ちなみに選局は自分的には◎でした。

野島 明菜 批評6/まぶしー!! 2004年07月14日(水)10時18分08秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

ラジカルラジオhttp://ryomichico.net/wako/pttp4/2004-01b145-03.txt

読み終わって、まず思った感想は、「若さがあふれ出しているぅぅ」ということ。文章がちゃんと高校生しているんですね。会話や心の中での台詞や行動に「老け」がない。だから、とても爽やかーで、純粋で、素直な主人公が可愛いですね。社会に対して皮肉的な部分を持っていても、地元のフェスティバルに出ちゃうところとか、外見がナヨい他のバンドマン達のテクにビックリするとことか、「愛嬌があって、親しみやすい主人公」という印象を受けました。「SWEET ART MUSIUM」の主人公は宗一くんよりは控えめな性格っぽいけど、母性本能をくすぐるような不器用な感じ(純粋すぎるため)は共通している気がします。
文中で「何か良い方法ねーかぁ?」うーん、何か良い方法ないかな?とかけあう部分があったんですけど、あたしこの表現好きです。主人公のキュートさがこの表現でより一層強く感じることができました。
改善して★いこと。それは一面だけで読めるようにしてほしいっす。下のスライド使いながら読まなきゃならなかったので、とても読みにくかったす。うーん、残念。

土橋明奈 批評6/夏を掻き鳴らす。 2004年07月14日(水)00時55分45秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】

まず、素敵なタイトルですね。
内容は夏を感じました。青春熱と云うか、若さ独特の感じ。爽やか〜、です。十円玉が好き。映像でみたいですねー。と云うか、映像が似合う文。役者も決め易そう。
青春の良い所を齧った様な心地。マイナスな事件が起こらないのが良くもあり、物足りなくもありました。気になった事は時代設定、現代の話なのでしょうか。微妙なこ懐かしさ、のるすたじっく(ノスタルジック)さを感じ、今どきっぽさは無かった様に思います。地方(?)高校生の大らかさでしょうか。それと主人公の年齢が16歳でしたが、雰囲気に中学生、高校生、大学生と揺らぎがある様に感じました。後半に掛けては早足。
全体的にライトで読み易かったです。やっぱり若者向きかな。


雨宮弘輔 批評6/『世界に意味なんてあるのか?』by十七歳の俺 2004年07月13日(火)23時35分47秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】

 若さっていいですね。普段の生活が、やり場のないエネルギーで溢れている、といった感じで。ぼくも未だに無茶苦茶なことをしますけど、それは『エネルギーを出している自分の確認』であって、この物語の主人公のように『自然にエネルギーが有り余っている状態』ではないから、読んでいて羨ましかったです。
 ぼくも高校生一年生の時、バイトをして貯めた金で主人公と同じメーカーで同じ色のギターを買いました。ブラック、タバコ、ホワイトのスリーカラーでストラト58年モデルだったっけ? 手に取った瞬間、ドキドキしたのを覚えています。
「ギタリスト雨宮。ここから始める……」
 なんてことを考えながらボディーに頬擦りをして、悦に入ってました。とんだクソバカ野朗です。基本的に高校生のバカは楽器を買うだけで、一流のミュージシャンになった心地でいられるんですよね。幸せだ。
 初ライブは学校のイベントだったのですが、100人以上の観客に興奮し過ぎて鼻血を出しました。あの時、高熱を出していたにも関わらず、演奏中はステージ上で繁殖期のサルみたいに飛び回って学校の備品を壊してしまったのを覚えています。もちろん教師に怒られました。生徒の笑いはとれましたが。
 最悪で、最高のデビューでした。

……と、まぁ自分の思い出話になってしまいましたが、基本的に元気な若者を売りにした青春小説は好きです。ぼくも『69』や『17歳だった』はお気に入りの作品です。
 後、好き嫌いは別にしてこういう勢いのある文章もいいと思います。

城所洋 批評6/昔は無き青春 今は有りき? 2004年07月13日(火)22時56分25秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】
 う〜ん、青春ですな。自分はちょっとかじったというよりも、舐めてみた程度なので、全然こんな所まで到達出来ませんでした。(舐めてますよね・・・汗)
 自分もどこかしらにこういった原動力が備わっていれば、こんなドロドロとした世界観を持たずにすんだかもしれないなぁ・・・。昔の自分の体たらくさを時々呪いたくなってきます。

 さて、そこで真面目に批評ですが、まず最初に感じたのは、横文字が多いなぁ、と。(爺臭い)
 いや、専門用語と言った方がいいのですが、ちょっと説明不足がち、というか、この物語の世界を専門用語で説明している感じがしました。それを飛び交わすことによって、それっぽい世界を演出しているのですが、それにしても少し頼りすぎのような感じがしました。だから、所々詰まってしまう時がしばしば・・・。(歌関係に少しでも携わっていたら分かるだろ!・・・と言われかねないですが、何分自分は歌オンリーで楽器は人任せだったもので・・・。)
 なので、余計に野ざらしにされた用語達が目に付いてしまった訳ですよ。

 それともう一つ、ちょっと、最後が尻切れトンボで終わってしまっている感がありました。これがプロモーションビデオとかならしっくりくるのですが、小説となると、ここで切ってしまったのは惜しいと思います。これにもっと前後に肉付けしていけば、立派な長編小説になる事請け合いです。何と言うか、青春ストライク!的な、印象の良い作品ですしね。

 余談1:ちょうど今見ている漫画で、みうらじゅんの「アイデン&ティティー」という本があるのですが、この本はロックの事とかで凄く熱く語っています。少なからず、自分は影響されてしまいました。
 今と比べて大分時代が古いので、あまりしっくりこないかもしれませんが、もし目を通したことがないのであればオススメします。(というか、木曜に大学行けたら忘れていなければ持ってきます。理由は↓)
 余談2:現在夏風邪でヒィヒィいっているので、文章中に乱れがあるかもしれませんが、書き直す気力がないので、もし気に障るようなことがあったら申し訳ないです。

菊池佳奈子 批評6/力強い人間味 2004年07月13日(火)21時35分22秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】
【『1』】

露木君の作品はとても力強さと感じます。
それは小説を書く技術の問題とかではなく、キャラクターや描く物語の、力強さ。
リアルな痛みや情けなさ、いやって言うほど人間味溢れているのに、そこで腐らない。
止まらない。進みつづける。そんなイメージをうけました。

『ラジカル・ラジオ』は最初、ちょっと読みにくかったんです。
文体は全然大丈夫なのですが、ギターの専門用語など、少々うっときました。
それは私がちょっとだけギターに触れたことのある、音楽馬鹿だからかもしれません。
他の方がどうかはわかりませんが…。
でも、キャラクターがすごく生き生きとしているんです。
駅前の女の子やおじさんの描き方、主人公とのやりとりなど、とても味があって良い。
ある種ステレオタイプになりきらないものを感じます。
主人公もとても魅力的でした。
ただ、物語やエピソードが、十分に描かれていない感じがしました。
例えば駅前の女の子とおじさんの間に何か完結が欲しかった。
女の子の電話の後、曲が終わったらどうなったんだろう。ってすごく疑問が残りました。
あとは水森さんが最初にでてくるところのいきなり主人公が変なことを言い出すシーン。
つながりがほとんどわからず、少し混乱しました。
目立つところはそんなところでしたが、どのシーンもわりとあっさり。
だからこそ、全体の流れがちぐはぐな感じがします。
それぞれのシーンをじっくり描ききって、全体の流れも作ることが出来たら、素晴らしい作品になると思います。

個人的に『1』がすごい好きです。
『ラジカル・ラジオ』にも見られる、情けなさ、そして強さを感じました。
『1』の方が短く、いいたいことを言っている分、キレイにまとまっていたかもしれません。
それにしては少々言い過ぎ感がありました。
『ラジカル・ラジオ』は言い足りない。
このバランスをうまくとれるようになったら、良いんじゃないでしょうか。
どこまで書き込むか。どこまで詰め込むか。
そういったことで、露木君の作品の持っているパワーや魅力が、ますます光る気がします。

松本紗綾 批評6/学生を中心に人気が… 2004年07月13日(火)18時34分22秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】

私もこういうモノを書きたいと思いました。笑いがあって、明るく楽しい話。でも、青春風味。そして、若者からのウケがよさ様な話。
個人的に、こういう感じの話は嫌いじゃありません。だから、楽しく読めました。
(嫌いじゃないというのは、バンドとか、ギターとか、全然わからないので、文字だけだとチンプンカンプンになってしまうのです。だから、映像の方が好きなのです)

最後の終わり方のことを書かれている方がいましたが、私も同じ様なことを思いました。そのことも含め、やはり、映像で見たいという感じです。なんだか、最後のところを読んで「赤い実はじけた」を思い出しました。(こんなタイトルだったと思うのですが…国語の教科書に載っていました)話としては全く違うのですが…。


千田由香莉 批評6/「いじけるなベイベ―」 2004年07月13日(火)13時30分44秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】
 好きですね。テンポ、言い回し、設定。全てにおいて私好みの作品でした。ロックと物語を上手く絡めて進んでいく展開も、読んでいてとても楽しかったです。
 しっかし、主人公が馬鹿であればあるほど燃え上がってしまうのは何ででしょうね。私が好む物語の登場人物は本当に愚か者や馬鹿者ばかりです。そしてとことんタフ(笑)中原宗一君も見事にそれに当てはまってしまっています。読んでいて愉しいんですよね。わあ!と騒いで駆け抜けていくかんじが。
 ただ、ひとつだけ気になるところがありました。水森という少女への恋心。これをもってくるならば、もう少し彼女を登場させてほしかったです。彼の音楽を始めた動機が彼女に好れたいが為など。せっかくの水森さんが中途半端な印象にしかなっていなくて、残念です。あと、彼女の美少女ぶりの描写がもう少し欲しかったです。イメージは書かれているのですが、具体的な描写も欲しいな、と思いました。折角の高校一の美女ですから。恋心が後半からぱっと現れてしまったせいか、恋がそれほどのインパクトを私の中に残ってはおらず、その為、大好きな彼女の前を駆け抜ける…という折角の疾走感あるシーンがわたしにとって「?」が浮かぶばかりでした。
 でも、楽しかった。すごく楽しかったです。こういう話、本当に大好きなんです。男の子になりたくなります。ちなみに、私の好きなシーンは、「教えてくれよ。俺、居るべきか、行くべきか…」と「バームクーヘン」のシーンです。ここに漂う空気が何ともいえず(笑)
 露木さんの作品には常に不良がいるような気がします。ヤンキーではなく、正しい?グレ方というか…すかし方というか、ぶっ飛び方というか…ってそれ、思いっきりロックじゃん。と、のり突っ込みを入れつつ、次回作も楽しみにしています!

五十嵐 舞 批評6/空の青さと青春と 2004年07月13日(火)11時26分44秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】
 うん。青春群像そのままって感じで「若いっていいね」←自分も若いですけど、あの限られた期間というか高校時代はあとで考えると特別な想いがありますね、私自身。我が愚弟も同じようにギターをやっていて同じことをやっていました。私はこの主人公の姉も気持ちも解りますが・・というか私はもろ受験のナーバスな時期に横でやられてました。でも、このころって周りのことなどどうでもいいというところがあるかもしれません。私は自分と弟の似たような生活(作詞はあっても作曲はしてませんが弟も似たような感じ)していので、この世界観がすんなりと受け入れました。また、既成品の漫画に似たようなものを読んでいるのせいかもしれませんが。ただ、納得いかなかったのは最後の終わり方でしょうか・・・私の中では不完全燃焼です。映画の脚本でしたらこの終わり方としてはいいのですけど、あくまでこれは小説ですよね。なにが最後に言いたかったのかがわたしには伝わってこないのです。せっかく全体としてはいい感じなのに、もったいないです。またこの終わり方に何か意図があるのでしょうか。教えてください。

 この話の中に出てくる「69」という数字、これはあの映画や原作に影響されたものなのでしょうか。
 私も想像してみたらちょうど69年代っていったらわが両親の青春時代・・・というか、あの時代は高校まで学生が意識改革というか教師と対立していたそうで・・・わが父の代の大学受験はちょうどが安田講堂のときの重なって多くの東大に受ける人は就職や他大学に回ったそうで…今、こうして大学に通える幸せをかみ締めています。
人は不自由にならないとそのもののありがたみが解らないのだと感じます。
私は音楽は声楽の部活・・・先生と合わなくて3年になったら辞めましたが。基本的に親の影響でビートルズの曲は好きです・・子守唄がわりでしたから(笑)
では、授業で!!
 

高澤成江 批評6/生涯青春宣言! 2004年07月12日(月)16時29分26秒
▼課題と連絡:批評課題6/露木悠太「ラジカル・ラジオ」批評 への応答

【ラジカル・ラジオ】
「ラジカル・ラジオ」楽しく読ませていただきました。
村上龍の「69」や原田宗徳の「17歳だった!」のような青春ものはすごく好きなので飽きずに最後まで読みました。基本的に小説は一度読んだらあまり読み返さないのだけど青春ものって読み返しても楽しい。ラジカル・ラジオもそんな感じです。自分が始めてアコギを買った時とかを思い出させていただきました。私も最初はピックが無く(というかすぐ無くす)10円玉やカードなどで練習しました。あの頃は毎日、学校から帰ってギターを弾くのが楽しみだったのに今じゃ実家で埃まみれ・・・。
勢いのある、荒い文章が雰囲気にあってると思います。笑える部分もあるし。
もっと一つ一つのエピソードが長くても楽しそうです。でも一歩間違えると「69」まんまになっちゃいそうな気が・・・。69年の話題も文章に出てるし。
「69」と「17歳だった」は青春真っ盛りの高校生の時読んだのですが、21歳になった今また読み返したくなりました。少し違う見方で読めるんだろうなあ。(でも友達に借りパクされたので手元にはもう無いんですが・・・。)ラジカル・ラジオを読んでそんな気持ちになりました。
青春ものって見てるのも気持ちいいけど書くのも気持ちよさそう。今もこれからも一生青春と感じられる日々を送りたいなあ。ラジカル・ラジオの続きとか別のイベントの話とかも読みたくなりました。成長していく中原宗一君達を見てみたいです。


松本紗綾 合評/これが「壁」ってやつですか 2004年07月08日(木)19時34分12秒

まず、今日はありがとうございました。
自分の書いたものを発表することも初めてだったので、人から意見を聞くことももちろん初めてでした。なので、批評が掲示板に書き込まれるたび本当に恥ずかしくてたまりませんでした。
私が、ここに作品(といえるのかはわかりませんが)を載せる時、別のノートに書いたものを見ながら書いています。(ノートは、一回書き終えてから、言葉など変えたりと一応考えているつもりでした)ノートに書いてから、掲示板に書くまで時間が空くので、自分の中で気持ちの温度が変わる場合などありますが、その時に自分が感じたことをそのまま表したいと思い、載せていました。この点が、「書きっぱなし」という印象を与えた部分かと思います。今現時点で、もっと考えて考えて考え抜いてから書くべきか、その場のひらめきなど大切にするべきか、わかりません。
一つずつ、合評のまとめみたいなものを書いていこうと思います。

【作品1/ピースメーカー】
これは、「戦争」をテレビで見て思いついたものです。
なぜ銃なのか…という部分は「戦争」でも使われているように、今の時代の武器だからという理由です。最初ピストルにしようかと思っていたのですが、私のイメージでピストルより銃のほうが重く大きい大掛かりなというものがあったので銃にしました。
持たないことと、使わないことの違いについては、「あたし」は銃を使う度胸が無いというか、銃を使うということすら頭に無く見せびらかしている。という、銃に対して意味を持っていないような感じで持たないを選びました。
最後の一行は無しでもいいのではという意見は、全く思いつかなかった意見です。最後のオチまで書ききってなんぼだ。と思っていたので。

【作品2/愛する君へ。】
これに関して、私はひねりも何も無く素直に書いたつもりでした。皮肉にも取れるという意見を聞いてびっくりしたというより、どこが皮肉なんだとわからなかったというのが正直なところです。(今は皮肉の見方もわかりましたが)
最後の問いかけですが、これは君であり、ぼくへの問いかけです。(ぼくは、この世界の中のぼくなのか、それとも、書いている私=ぼくなのか、わからないのですが)
一箇所「僕」になったのはミスです。

【作品3/レスター】
レスターは、問題を出した人のイメージでした。ジョンでもマイケルでもよかったのですが、レスターという曲を聴いていて響きがいいと思い決めました。無意味です。
ツヨイをカタカナにしたのは、意味をわかっていない感じを出したかったからです。

【作品4/放置プレイ】
これは、決してSMを書きたかったわけではありません。SM風味をちょっと借りた感じです。(私にそんな趣味は無いですが)極端な愛情表現を使うことで、一見異常な愛を表現できるかと思ったからです。
題名は、間違いではありません。貴方はもういないのにあたしは依存し続けて…という部分をこの世界観で言ったら放置プレイかな…と。最後の部分で伝わると思い込んだ結果、こうなってしまいました。
そして、これは詩というより歌詞をイメージして書いたので言葉の並びや音に気を配ったつもりです。だから、繰り返しの部分を作ったのです。(音は考えていませんが)

【作品5/オモイ】
この世界のイメージとして、子供のような可愛いものでした。そこで、難しい言葉や漢字は一切使わず書きました。
どんどん…の部分に漢字を使い意味を変えることは考えてもいませんでした。意味を持たせるつもりは無く、使っていたので。でも、漢字を使うことで意味を変える。という方法は使えるなと思いました。

【作品6/マザー】
神父・押し付けがましい。その通りだと思います。私の中のイメージで、みんなが存在している世界を上のほうから見つめている。だったので。上のほうから見てはいるが、決して下には降りてこない。という感じで、人じゃないような、でも神でもない別の世界からこの世界への言葉みたいにしたかったのです。
最初と最後で言っていることが違うという点は、未だに自分の中で消化し切れていないというのが正直なところです。私の中では筋が通ったものとして提出したので、その書いたときのままの目線でしか見れていないのかもしれません。

【作品7/世界の中心】
これは、最初載せるのをやめようと一番思ったものです。これを書いたのは間違いなく私自身なので、この不安は私から出たものですが、これだけを読むと「ただの寂しい人」「こんな風にしか世の中を見れない、考えられない病んでいる人」じゃないかと思ったからです。実際考えることもありますが、この中の人のように押しつぶされるとかは思っていません。むしろ、そんなことを考えている自分を考えている自分を考えている…と、「想像してください。もしも…」と言われてゲーム感覚で考えているような感じです。なので、この世の中が全部嘘だと決め付けているわけでも、周りの人間にリアルを感じてないわけでもありません。自分が1考えたことを100にして書いた感じです。
最後の「自己満足」は、書いたことに対する「自己満足」です。
「アノ人」の部分への矛盾。確かに矛盾になるのかもしれません。「アノ人」の存在で一筋の光というか、息をするための空気穴というか…逃げ道みたいなものを作りたかったのです。
ラストのあっけなさは、最初の重いものからの変化みたいなものをつけたくてしゃべり言葉でさっさと終わらせました。その前の部分の突き放す感じも、本当にそんな風に思っていると言うより、そう思いたいからぶちっと言い切り終わらせた。としたかったからです。
カタカナは、存在を消したかったというかなんというか…例えば、「モノ」を物や者と書くと、意味が出てきてしまうので漢字はやめました。ひらがなは、無駄にやわらかくなってしまうと思い、無機質な感じでカタカナを使いました。

「あたし」と「ぼく」の使い分けですが、基本は「ぼく」を使っていますが、「あたし」の方が雰囲気が合うと感じた場合は「あたし」にしてます。
全体的に、作品の中に出てくる人は、書いている私と=で結び付けていいのか、全く別のものとして考えるべきか、わかりません。なので、男として「ぼく」なのかと聞かれるとはっきり答えられないのです。

わかったことは、自分が思っているまま伝わっていないことです。
そして、自分がオチというか、ヤマみたいなものを作ろうとした部分などが読み手に不快感というか、しっくりこない感じを与えることがわかりました。
そこで、疑問も出てきました。
・作品を書くとき、どこまで練ればいいのか。
・作品の中にどれだけ自分を入れるのか。(依存と言うか、=にしていいのかどうか)
・今の中途半端な書き方、表し方をなくすべきか。それとも、味、特徴と言えるようになくさず行くべきか。(なくさないのならどうすればよくなるのか)
・上のような迷いや、疑問があるまま作品を残していいのか。

今まで考えることも無かった疑問が出てきました。
が、まだ時間はあると思うので考えつつがんばってみようと思います。

志田 匡平 批評5/I'm (not) stronger!!! 2004年07月07日(水)18時48分56秒
▼課題と連絡:批評課題5/松本紗綾作品1〜7の批評 への応答


【作品1/ピースメーカー】

『強さ』っていうのが全体的なテーマになっていますよね。『強さ』は全ての人間が憧れるものだと思います。ただ確固たる『強さ』を持つというか、本当に強い人っていうのは、どこにもいないのだと思います。
自分が『あの人って強いなぁ…』と思っていても、結局は虚勢を張っているだけ、松本さん風に言えば、『銃を向けている』とでも言えばいいのでしょうか、世の中には自身の『強さ』を誇示しようと必死になっている人もいたり…。でも、結局はこの作品『ピースメーカー』のように、銃を持って牽制しているだけ、実際に銃を持つ手は震えていることが多いのではないでしょうか?
人間、誰しもそうそう『強く』は出来ていませんね…。

【作品7/世界の中心】

最初に読んだとき、『ドキッ』としました。それは似たような考えを持ったときがあったから。でも自分の場合は、『他』の存在を疑ったりはしてないし、『他』は人だけじゃなかったし、考えることが楽しくなって眠れなくなるような考え方でしたから、違うものといえばそうなんですけど…。
これは『考え』がまだまとまらないうちに書いたのではないでしょうか?他の人も触れているように、『誰かなんて存在しない世界で』といったすぐ後で、『親』『友達』『アノ人』は、存在して聞こえるのですが…。
もうちょっと『考え』にまとまりが欲しかったです。『矛盾』した文章は、読む人を困惑してしまうと思います。最後に『また書けばいいし。何度でも』とありますが、ぜひ、考えをまとめて聞かせてください。

全作品が『恋愛』における『強さ』というテーマを持っていたと思います。違うテーマの作品も見てみたいです。がんばって書いて掲示板に発表してください。

野島 明菜 批評5/自分を自分で支えてあげて。 2004年07月07日(水)16時33分52秒
▼課題と連絡:批評課題5/松本紗綾作品1〜7の批評 への応答

【作品7/世界の中心】
この自分以外の人は、虚像っていう不安は私には解かりません。なぜなら私は目の前で悲しむ人や、いがみ合っている人達を見てきたから。毎日のように私の目の前にリアルが存在してきて、決してそれが嘘だなんて思えないようなものなんだ。それは表情や声質でわかるの。本当の涙、本当の怒り・・・みたいにね。 
ここでいう不安をもっと詳しく知りたいな。
もしかしたら、私が体験してきた以上の孤独が詰まっているかもしれないね。

【作品4/放置プレイ】
松本さんの作品を全部口に出してよんでみたけど、この作品が一番、音感と内容が切なくコラボレートしていて良かったです。痛めつけられて、心と身体に快感が走る気持ちは分かるようで分からないけど、どうか自分を大切に。なんか上の作品と比べてみても、ポツンと印象に残るのは「孤独感」ですね。どうか自分と一番の友達や恋人になってあげてくださいナ。私は只今それで奮闘中です。

リンクやったら送るときエラーになっちゃいました。今パソコン詳しい人いないんで、これで勘弁してください。

土橋明奈 批評5/クラッカーみたい。 2004年07月07日(水)11時24分17秒
▼課題と連絡:批評課題5/松本紗綾作品1〜7の批評 への応答

【作品2/愛する君へ。】

なんて直球なんでしょう。
松本さんの作品を通して一番に思う事です。私が「愛する君へ。」を選んだ理由は一番短かったからです。こう云うと変な感じなのですが、
直球でオモイを伝えるのならば短くまとめるのが最善だと思うので。言葉は羅列し過ぎると真意が隠れてしまいます。

【作品7/世界の中心】

昔はこの様な事を誰もが考える物だと思って居ました。しかし、そうでもないと知り、それでも中には共感する人と話をしたりした物です。
今では笑いながらです。理系脳と文系脳の違いでしょうかね。そんな事も無いですけど。
映画も出ましたが、似た感じで云うと岡嶋二人氏の「クラインの壺」だとか。ある青年が新しい体感型ゲームの試作体験をし、現実とゲームの区別が出来なくなってしまう話でした。漫画ならAかFか忘れましたが、不二子氏も描いていた様に思います。手に触れているものの確証なんて何処にも無いですし。夢と現実の線引きも難しい。養老猛氏の脳の話も参考になります。
松本さんの作品においてそれが素直に書かれていて、しかもラストに以後の不安は在りつつもアッサリと振り捨ている処がなんとも現実的で明快です。エッセイと云うか、日記を読んだ様な人間的リアリティ。でした。

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