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越智 美帆子 1C ケーキボックス
2002年11月01日(金)22時05分42秒
彼女が言うには、人には寿命がありそれは人々がそれぞれ決めることができたり、運命に逆らえないものであったり、それは産まれたときから決っているものである、らしい。僕はそれを聞いたとき、一瞬納得したもののあとから考えると少し首をかしげるような発言だと思った。
彼女の浮き出た腰骨
彼女の少し赤茶けた髪の毛
彼女がいつもつけていたトワレ
彼女の壊れそうな精神
彼女に侵食されそうな自分
花火
声
僕の指輪
ケーキ
僕はただ恐かった。それ以外の感情がどこかにいってしまって、ただ恐怖にのまれ、その恐怖から逃れるために失うものを惜しまなかった。というより手放す他なかった。
「さようなら」という幾層にも言葉が紡ぎだされたメール
彼女の闇をわかろうとして、彼女に取りこまれてしまうことを恐れた自分、彼女をどうすることもできなかった自分、嫌いでたまらない彼女がかもし出す恐怖のもと、ケーキ、飴がけされたケーキ、僕のつくるケーキ、ケーキを食べる彼女。
彼女の印象。それは一番近しい言葉で表すとすれば淡い、だ。全てが、彼女の全てが淡く儚く、今にも消え失せそうな、もともと存在していなかったような…。
彼女は存在していたのか?メール、ケーキ、手に残っている感触、感覚。本当に彼女は存在していたんだろうか?
…わからない。
久我真紗子 2A「黒コウモリは朱色の空によく映える」
2002年10月30日(水)13時57分47秒
つまりさ、私が空を見上げないのにはちゃんと訳があるんだよ。そりゃ教えたって別に構わないけどね。ただ、うまく説明できるかどうか分かんないよ。ほらよくあるでしょ、きのう見たホラー映画の怖さを全部伝えたいんだけど、言葉だけじゃどうしても出来ないもどかしさみたいなものって。いや、出来るだけやってみるよ。ただこの事があって思ったんだけどね、なんて言うか・・もしかしたら、遠くにでっかくあるもの程頼りないものなんじゃないかってね。まぁとにかく話してみるよ。
もう夏も終わりの頃だったかなぁ。風はまだまだ暑くて、土手の上をアイスキャンディー屋さんがゆっくり自転車で走っていた。5時には日も傾いて、今日の最後の一仕事に蝉が思いきり鳴いていた。紅の花を塗りこんだみたいに空は朱色になって、雲も白いスポンジに色が付くようにゆっくり染まり、夕日を受けた川は林檎色の砂漠みたいになってちょっとうねりながら流れていてね。その川のほとりで、私とあの子はコウモリ取りをやったんだ。言いだしっぺはあの子だよ、間違いない。だってさ、こんな面白いことそうそう忘れられないじゃないか。
まるで世界の重大な秘密を打ち明ける時みたいにひそひそ声で、確かにあの子はこう言った。「コウモリを捕まえに行こう。コウモリというのは目から超音波を出していて暗闇でも絶対モノにぶつからない。でも弱点もあってね、目の前のモノと同じ動きをしまうだって。右へ行けば右へ、左へ行けば左へってね。これはお腹が空くのとおんなじくらいどうしようもない事なんだって。本能ってゆうんだよ。その本能を利用してさ、コウモリを捕まえに行こうよ。」って興奮しながら言ったっけ。私はあの子のこうゆうトコロが好きなんだよな。
私たちの立てた作戦は、あの子がコウモリの鼻っ先にボールを投げて、本能に逆らえずボールといっしょに落ちてきたコウモリを、すかさず私が虫取り網で取るってやつ。私とあの子は、かつて誰も成し得なかった冒険に挑むように、心がワクワクして、力が溢れて、少しだけ体の隅が痺れていた。
コウモリは川のふもとの年取った大きな木に住んでいて、夕方になるとパタパタいっぱい飛んでくるんだ。その時も、土手沿いに川を上っていくと朱色の空の中に真っ黒いかたまりがたくさん飛んでいた。私はその黒いものをもっとよく見ようとして、空を見上げたんだ。なんとなくなんだよ。本当、意味なんてなかったんだ。でも次の瞬間あまりの恐怖で体が金縛りみたいに硬直してしまった。
頭上には、すぐ目の前に燃え盛った巨大な空が恐ろしいほどの圧力で私を押し潰そうと迫っていたんだ。弓なりの、覆いかぶさってくる空は重く、その背後にずっしり背負った宇宙は更に重くて、そんな果てしなく巨大なものすべてが私にのしかかっていた。
私の体は、見てはならない領域に遭遇した直感的な恐怖で満たされた。眩暈がするほど近い空を猛スピードで抜けると地球はみるみる小さくなって、宇宙が、巨大な太陽系の星々が莫大なエネルギーで音もなく回転していて、あっという間にそれも後ろへ何億もの星の中にまぎれてしまい、その銀河は何百何千と群れをなして、また宇宙が始まって。そこでは過去現在未来は何の意味も持たず時間は永劫であり一瞬。宇宙の一瞬は、永劫に生きる事である私の存在など、無いも同然である事を、のしかかる空とその後ろの宇宙は示していた。私はただ、絶対と信じていた地盤を失った恐怖の中で僅かな自我を奮い立たせ、潰されまいと体中の血を逆流させて今すぐ跪き許しを請いたい衝動をぐっとこらえて踏ん張っていた。でも冷や汗が滲み足が震えて、もう倒れそうになるその刹那、目の前を黒い影がフラフラ横切った。
コウモリだった。ふっと気が遠くなり尻餅をつき、辺りを見ると、蝉が鳴いていて、静かな夕焼けとゆるく流れる川と風に揺れる木々の影があった。横を見るとさっきよりずっと近くの場所であの子が笑いながらボールを空に投げていた。
杉井武作 7A「空の上のサイクリング」
2002年10月30日(水)04時14分58秒
1
・・・ここどこ?
気がつくとあたしは、クリーム色の空間に浮いていた。
視界に入るものといえば、溶けそうに淡い青。
きれー・・・なんだか心が透明になる。
だっていつも目開けてたらなにか目にはいってくるのに。
地平線も見えない、こんな澄んだ景色ははじめて。
ん?なんかスースーすると思った。
あたしは着たこともないような真っ白いキャミソールを着てた。
白は着ない、色白だからね、服まで白いと消えちゃう。
いつもは黒か派手めのを着てる。
でも、白も着てみたら好きかも。
なんだか今日はあたしじゃないみたい、でもこーゆーのもたまにはいいな。
あいつにこのカッコみせたら、なんて言うかな?
ちょっとはかわいいって言ってくれるかな?
・・・あいつってだれだっけ?
んーべつにここがどこだろうと、あたしがどうなってても、どうでもいいや!
だってこんなにきれいなんだもん!
このままこの景色にあたしの全て吸い込まれちゃえばいいのに・・・。
しばらくあたしは、なにも考えずに青に見とれていた
2
我に返るとあたしはためしに足を前にだした。
空回りするだけで前に進んでる感覚はないけど、身体が少し風をきったような気がする。
たぶんこれで進んでるんだろう、そう思ってしばらくしゃかしゃか足を動かした。
前に進む、か・・・。
あたしはもうどのくらい、前に進んでないんだろ?
普段そんなこと、気にしたことなかったけど。
まあいいや、こうやって歩いてるのも楽しいな。
どこまでもおなじ景色だと安心するし。
見るものぜんぶせわしなく動いてる街はキライ。
・・・・・・?
なんか目がヘン?
いつのまにか小さな黒い点がぼんやりと目に入ってきた。
だんだんその点は大きくなる、目の錯覚じゃない。
それは徐々にはっきり見え、小さな黒猫であることがわかった。
「あー!ねこだぁぁぁ」
あたしは猫に駆け寄った。
くりくり愛らしくて澄んだ目の子猫。
かわいいにゃぁ。。
ただ、チ○○がマジであることを除けば。
なぜかその子猫の股からはいまにもはちきれんばかりのモノが隆々とそびえたっていた。
しかも色も形も人間の成人男性のそれそのものだった。
・・・まあそれは気にしないどこぉ。そこ以外はかわいいから。
私はしゃがんで「にゃー」と呼んでみた。
猫は最初怯えていたが、指を出して何度も呼んだら、おそるおそる近づいてきた。
そして急にものすごい速さで私に襲いかかった。
3
「ええやん!わてかてこわいんや!」
猫は何故か流暢な関西弁で叫んだ。
「ちゃうてそんなんちゃうて!お二ィさんなんもいたいことせーへんて!おとなしゅーすればすぐ済むから!」
「ちょっちょっと・・・なんなのー!」
「なみだがでるくらい好きなんや!こんな切ない気持ちははじめてや!わかってぇやはぁはぁ!はう!もうしんぼーたまらん!」
猫は跳躍してあたしの顔にはりついてきた。ふわふわの毛と股間の生々しい感触があたって実に気色悪い。
「きゃー!」
あたしはねこをひっぺがした。
「えーー?えーーー?あんたなんなのよーー」
「おまえこそなんなんやーーー罪の無いこねこを乱暴にあつかいやがってホンマ・・・」
「ここどこなのー!?」
あたしは急にこわくなってきた。
はぁ・・・そうだ、今あたしはあたしじゃないんだ。だからこんなわけのわからない状況になってるんだ。
「ちゃうよーここはおまえのなかやでぇ」
猫は急に冷静な声で言った。。
「・・・は?」
「あぶないとこやったんやでぇ、俺がつれもどしにきたんや」
「なにいってんのかさっぱりわかんないよ。つれもどすってなに?」
「まあこまかいことはぬきにして・・・」
猫はいきり立つ○ン○をとりだして襲いかかってきた。
「今この場を楽しもうや!もう神も仏もないわ!おとーさんもおかーさんもゆるしてくれるやろ!かんにんやーもうコレやむをえないんやー青い衝動はだれにもとめられないんやーーーー」
「しつこいなぁ!」子猫だからすぐふりほどける。
「ここはどこなのさーーーー?ふぇーーん帰りたいよーーー」
あたしはたまらず泣き出した。
「どこへ帰りたいんや?」
「ふびゃあぁーーーーー」
「お前の住んでる現実世界に帰るのか?」
「ぶえぇぇぇぇぇえ」
「聞けや!!」
びくっ
「うん、聞く」
「おまえ、自分の人生ふりかえってみいや。楽しいか?」
「ふぇ?」
その言葉が頭をめぐるのに少し時間がかかった。
「ん・・・・楽しいよ」
「うそつけ。ヒドイ人生や」
「へっ?そうだっけ・・・」
「ちゃんと自分のこと振り返ってみぃや」
「ん・・・あんま自分のこととか考えるの苦手なんですけど・・・」
でも、そのとき子猫の目を見てたら、なぜか自分の心の闇をさらけだしても許されるような気がした。
心を見透かされるような目をしてる・・・・どこかで見た、なつかしい目だ あたしは・・・
そうだ、あたしは惚れっぽくて、いつも好きな人のあとを追いかけてたな。
恋をしたらとことん相手に入れ込んでいった。
恋をすると他のことを考えずにすんだし、すべてを相手に委ねることができた。
だから拒絶されるのは大嫌いだった。
別れられたらわけがわからなくなるまでお酒飲んだり薬飲んだりして、色んな人のところに行ってつらさを紛らわせてた。
みんな優しくしてくれた。
その中から次の恋が生まれる。その繰り返しだった。
「やだーーーーこんなこと考えたくないよぉ」
ちゃんと振り返ると、なんだか吐き気がしてきた。
自分のことじゃないみたい・・・。
「ねっ?徹底的に現実から目をそらしてるだけやないの」
「その言い方なんかエグいよ、恋するのが好きなんだよ」
「おまえが綺麗な言葉に逃げとるんやってば。嘘のぬくもりに身を委ねて夢見てるだけやん」
「そんなことないもん、ぜんぶ本気だもん・・・」
「本気ならもっと長続きするだろフツー、その年で寝た男の回数、睡眠薬とアルコールの摂取量。ダメ女・・・ってかダメ人間やなおまえ。あははははは」
ダメ人間・・・そんなこと言われてなくてもわかってるのになぁ・・・。
「だってあたし嫌いな人とかいないし・・・」
「え?どんなとこで男の人とかと知り合うん?」
「インターネットとか、街歩いてたら声かけてきてくれて、優しくしてくれるよ」
「それダマされてるだけだよォーーやりにげじゃーーん」
何故急にコギャル口調?
「なんで?なんで男にいいように扱われてたの?とっとといっちゃいなさいよ(オネエ口調で)」
「わかんない。疑ったことないし・・・必要とされてるような気がしたから・・・・たぶんどうでもよかったんだよ」
「あいどんの〜は〜〜〜〜あ〜あう♪ゆ〜わ〜だぃぼ〜てっど♪ゆ〜わ〜ぺぼ〜〜てっどとう〜〜〜♪あいどんの〜は〜〜〜〜あ〜あう♪ゆ〜わ〜いんぼ〜〜てっど♪の〜わんあら〜てっどとう〜〜〜♪あいるっくあっちゅ〜お〜る♪すい〜ざ〜ら〜ぶぜあ〜ざっとすり〜ぴんぐ♪ほわいるまいぎた〜じぇんとり〜ういぃ〜ぷす♪るっくあっちゅ〜お〜る♪すてぃ〜るまいぎた〜じぇんとり〜ういぃ〜ぷす♪(WHILE MY GUITER GENTLY WEEPS/THE BEATLES)」
なにいきなり歌ってんのこいつ・・・・・
ってかよく考えたらなんで子猫にそんなこと言われなきゃいけないの?
「もういいよ、あんたとしゃべりたくない」
あたしは猫から離れようにした。なんだか嫌な気持ちになったので早く忘れたかった。
「わかりやすい子やなぁ。俺の力がなかったらこの空間から抜けだせんぞ」
「・・・いいよ別に」
「ちゃんと目ぇ見て話せや。死ぬこともできんぞ」
「人の目を見るの苦手。いいよ、ここきれいだし」
「ワイは、猫や」
4
「はぁ〜わかったわかった。いいからとりあえず、漫才コンビ組もうや」
「いっ嫌だ」いきなりなにを言い出すんだこいつは。なぜあたしが漫才?
「コンビ名どうしよっか?」
「あたしそんなんやらないってば」
「まぁ、とりあえずネタ聞いてくれや」
そう言うと猫はおもむろに自分の考えた漫才を朗読しはじめた。
いやー最近めっきり外寒くなってきたね!
ほんまやねぇあたしなんて風邪ひきましたわ!
風邪かぁそれはあかんね!風邪にもいろいろあるわ!
そやねーあたしが一番キツいのはハナ風邪!ずびずびいうててかなんわ!
うまそうやん!
なんでやねん!!!!
「どや?ナウなヤングにバカウケでしょ?」
「いやわけわかんないよそのネタ」
「これを発展させて面白くさせていくんやがな」
「はぁ・・・ってかなんで漫才なんてやらなきゃいけないのさ?」
「オマエがこの空間から脱出できる方法やからや、まあそれはいずれわかるやろ。とりあえずコンビ名を考えたんやけど、『白い服の女とグロいチ○○のクロネコ』ってのはどや?」
「そのまんまやんけ!」あたしは思わず叫んだ。
「それ!いまのツッコミいいね!」
猫が急に声を張り上げた。
「今のはおもわず言っただけ」
「いや!今の絶妙の『間』のとり方!やっぱり俺が見込んだ通りやった!オマエにはツッコミ芸人の血が流れてる!」
こいつ一体あたしのなにを見込んでるんだろうか。
「ってかそのコンビ名はないよ。長すぎるし・・・」
「そうか?」
「うん。まず前半削って、『グロいチ○○のクロネコ』を変えてみよう。『グロ』と『クロ』がかぶってるから、『グロチン○ネコ』とか・・・」
う〜ん、それでも長いな。
「グロチン○ネコか・・・グロチン・・・グロチン・・・・・・・グロチウス?」
「あっそれいいじゃん。ひらかなで『ぐろちうず』なんてどう?」
「それ、決定!おもしろくなってきたぞ!」
こうしていあたしは流されるままに漫才芸人の稽古をすることになった。
まあいいか、どうせ他にできることもないんだし。
「なんでやねん!」
「手の返し方が違う!」
「なんでやねん!」
「角度が違う!このド素人の四流芸人が!」
「ハイ!先生!なんでやねん!」
いつの間にかあたしは真剣に子猫とネタ合わせをしていた。
5
「よし、ネタもカタまってきたし、劇場に立つか!」
猫が突然言い出した。
「は?劇場って何?」
そう尋ねるやいなや、これまで青一色だった辺りが急に暗くなった。
「わっ!え?どうなってるの?」
前を見回すと沢山の人が座っている。
「ここは・・・劇場?」
「大入り満員やな!これは一発カマすしかないで!」
あたしは不思議とその状況の変化に驚かなかった。それ以上に身体が熱くなってくるのを感じた。わけわからないけど、こうなったらもう、やるしかない。
「どうもーぐろちうずで〜す!」
「いやー最近めっきり外寒くなってきたね!」
「ほんまやねぇあたしなんて風邪ひきましたわ!」
「風邪かぁそれはあかんね!風邪にもいろいろあるわ!」
「そやねーあたしが一番キツいのはハナ風邪!ずびずびいうててかなんわ!」
「うまそうやん!」
「なんでやねん!」ぴしー!
会場からはどっと笑いが沸き起こる、よし、ツカミはオッケー。
「そのハナ水ミズバナかアオバナかどっちや?」
「アオバナや」
「ほんじゃ三億円で買いとるわ!」
「なんやねんな君それ変わったスカトロやな!」あっこれはちょっと引いたか?
「こないだなんて熱出してもうてひどかったで!病院行ってみてもろたわ!」
「はい、次の方どうぞー」
よし、こっからはしっかり合わせた「お医者さんゴッコネタ」だ。
※作者注)ネタが低俗なため中略させていただきます。
場内の空気がヒートアップしてる!
あたしのツッコミがキまるごとに客は涙を流して爆笑の渦だ!
ムード、テンポ、タイミング、何もかもが完璧だ!
こんなにキモチいいことがあったなんて!
よし、いよいよクライマックスの「すっぽんネタ」だ!
あたしが猫のチンポ(やべ伏字忘れた)に思いっきりチョップするツッコミで締めだ!
「はーすっぽんすっぽんすっぽんすっぽん!!はーすっぽんすっぽん!!!」猫がチンポを振り回してブレイクダンスを踊る。
「なんで」
手刀を頭上高く掲げ、さぁ、フィニッシュ!
「やねーーーーーーーーん!!!!!!!!!」
ぶちーーーーーん!
「ほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」とオタケビを上げた猫のチンポが根元から切れてしまった!
そのどすグロい棒はしかし地面に落ちず、空中を旋回しながら巨大に膨れ上がり、チューリップが花開くように先端の割れ目を徐々に広げた。やがて人の身体がすっぽりハマるブラックホールになると、突然あたしの顔に襲い掛かってきた。
「きゃーーーーーーー!」
あたしは猫の亀頭にすっぽり飲み込まれてしまった。
6
真っ黒な闇のなかに落ちていってる。
ここはどこなんだろう?この世じゃないのかな。
あたし死んじゃうの?死にたくない・・・。
しばらくすると眼前に映像が広がってきた。
ここは・・・
あたしが通ってた中学の通学路だった。
見覚えのある男が話をしているのを聞いた。
あれは・・・憧れの先輩だ。
「ねぇねぇおまえ今日告られたらしいじゃん!で?相手はどんなだったの?」
「えーやだよなんかネクラそうで」
「あ、もしかしてあいつ?やべーよなあいつオタク系じゃん」
そうだ、あたし中学二年の終業式に先輩に告って、振られたんだ。
そしてこれはその帰り道、未練が残っていて後をつけてたんだ。
そのときに聞いた会話だ。
あのときははとても深く傷ついた、けど・・・。
場面が切り替わった。
春休みが過ぎ、三年に進学したときだ。あたしはいつもかけてたメガネをはずし、お祝いに買ってもらったコンタクトをつけて学校に行った。
「誰?あのコ!メチャかわいくない?」
そんな声がクラスじゅうを飛び交い、あたしはたちまちクラスの人気者になった。
みんながあたしに優しくしてくれた。嬉しかった
憧れのあの人も優しくなった。
あたしは尋ねた。
「ねぇ、なんであたしと付き合ってくれたの?」
「だっておまえかわいいじゃん」
そう言われて、あたしは頬を赤らめた。。。
あのときあたし、本当に嬉しかったのかな?
あたしは誉められたい、かわいがられたい。
綺麗なものが好き、かわいいものが好き、空想するのがすき。それだけ・・・それだけなのに・・・。
7
あっ、ここはあたしが通ってた中学校の教室だ。
そして今教えてるのは一年生のときの数学の先生だ・・・。
「はいそれじゃこの問題誰か解ける人?今回のはちょっと難しいぞぉ〜」
「はい!」あたしはすかさず手を上げた。
「おぉ〜〜〜パーフェクトだね!ホントあたまいいなぁ〜」
「スゲー!よくあんなむずい問題すぐ答えられるよねー」
なんだ、こんな問題簡単だ。みんなばかだなぁ。
きーんこーんかーんこーん
「先生、先生」
「ん?さっきはよく答えられたな。いいコいいコ」
「えへへ・・・」
「ん?どうした?目がとろんとしてるぞ」
問題解けたら先生に頭撫でてもらえる・・・そのことだけが楽しみであたしは毎日がんばってた。
ある日のこと・・・
「はい!はい!」あたしはいつものようにすかさず手をあげる。
「なんだ、解ける人はいないのか?」
先生はあたしを無視して教室を見回した。
「はい!はい!」
先生、あたし解けるよ!先生、見えないの?あたし手あげてるよ・・・
しばらくすると別のコも手を上げた。
「おっ!それじゃ君いってみようか!」
きーんこーんかーんこーん
「先生、あたしさっきの問題のこたえわかったよ!ホラ、すごいでしょ?」
「うん、うん」
「先生、ごほうびは?なでなでは?」
「あのね、あなたがすぐ問題解いちゃうと授業になんないんだよね〜」
そう言って先生は行っちゃった。その時から先生は二度とあたしを指してはくれなかった。
せんせぇ・・・だいすきなせんせぇ
せんせぇ・・・あたしいっしょうけんめいかんがえてるよ・・・・。
せんせぇ・・・せんせぇ・・・どこ?
「おなかが・・・おなかいたい」
それからのあたしは毎回数学の授業が始まると腹痛に襲われるようになり、保健室に駆け込んでいた。
寒くて冷たい、保健室のシーツ。
8
ん?ここは保健室じゃない、れっきとした病院だ。
「おじいちゃん、どうしたの?痛いの?」
あたしはおじいちゃんの看病をしていた。
両親が忙しくて当時まだ10才だったあたしがおじいちゃんについてたことがあった・・・。
ここに漂う薬品の匂いとか雰囲気が大嫌いだった。
老人の悲鳴も看護婦の事務的な口調も・・・美しくない世界のなにもかもに拒否反応を示していた。
「イターーーーイタタタタ・・・」
「おじいちゃん、痛むの?」
「イタイイイタイイイタイ!早く!そこにある座薬をいれてくれーーー」
おじいちゃんはあたしに尻を突き出した。
「うーーーー・・・くさい」
あたしは座薬をむりやり押し込もうとした。
「イタイタイタイタイ!尻のホネにホビがはいってんねん!!もっとやさしゅうしいや!」
「うーーー嫌だよぉ・・・なんでこんなこと・・・」やっと座薬がはいった。
おじいちゃんがあたしのことを睨んでる。
「さっき『くさい』って聞こえたが・・・気のせいかのぉ」
あたしは黙ってうつむいてた。
「こっち向かんか、おじいちゃんのオシリはくさいんか?」
おじいちゃんはニタニタ笑っていた。
「おじいちゃんとぉ〜〜〜〜っても傷ついぞぉ。おじいちゃんのオシリはくさいんか?一回ためしに舐めてみるか?ほれほれ、ここじゃ、ここ」
あたしは走って逃げた!
ここはあたしの世界じゃない・・・怖いよ!あたしの世界はどこにあるの?
とにかく無我夢中で走った。
9
映像が途切れた。
ここはなにもない闇のなか。
あたしは自分の手のひらを見つめた。
熱い。劇場の熱気がまだ手の中に残ってる。
そうだ、あたしはいる。あたしがいる世界がここだ。
ここがあたしの居場所だ。
闇が光に吸い込まれていった。
10
目が覚めるとひどく頭が痛い。
かなりの量の寝汗をかいていたらしく、布団全体が湿っている。
ここはマンションの一室。
化粧品もカップメンも雑誌も服も無造作にちらかっている。
枕元には、鎮痛剤と睡眠薬がビンからばらばらこぼれている。
つけっぱなしのテレビに目をやると、その下にはアイツが忘れていったお笑い芸人のビデオが落ちている。
あたしはがんがんする頭を押さえながら起き上がってそれを手に取る。
そうだ、アイツはもういないんだ・・・。
あたしはベランダに出る。
雲一つない青空。あたしは深く深く息を吸い込むと、力いっぱいそのビデオを投げる。
あぁ、やっぱり空は広いなあ。
奥野美和 11C「あやとびの工夫」
2002年10月29日(火)20時19分42秒
少しだけもっと知りたいって思っただけ今なら平気まだ大丈夫
許されたように外には雨が降るだから今日だけめそめそさせて
東條慎生 5A「塵のように無数の」(連作「水」4)
2002年10月26日(土)19時01分18秒
駅の改札を抜けると、飲み屋の引き戸が目の前に明るい光を放っていた。右手にある踏切は、赤い点滅と死を連想させるあのノスタルジックな音をこだまさせている。今降りてきた電車が少しずつスピードを上げ、ゆっくりと夜の中を走り去っていく。音と車体が遠のいていくのを線路の先に消えるまで眺めた。混雑する人通りの街並には飲食店の肉や酒の匂い、車の排気ガスの臭いが混ざり合う。踏切に通じる狭い道をゆく車の列、そのヘッドライトの間をまたいで帰り道を急いだ。
暗い空にぼんやりと浮かぶ電線の下を歩きながら、学校での出来事を思い出す、思い出しながら歩く。選択を迫られるのはいい気分ではない。しなくてはならない選択が迫ってくるとわざとそれを無視してしまう。しかし、それが避けようのない壁に対してそのまま突進していくように無謀で無駄なことだということは分かっている。ただゆっくりと生きていたいだけなのに。そんな時、何もしたくなくなる。何もせずにぼうっと空や雲を見ている時のような気分に、渦のように落ち込んでいくことを望んでいる自分が見える。平然として選択している皆が未来に何を見ているのか分からない。ぼくには何も見えないし、今時分のことも何も見えてはいないというのに。無重力空間の中で漂うようなもので、上を向いたところでそれが上だということは確かめようがないのに似ている。しかし、彼らは自信ある歩兵隊のようだった。陸続とたゆみなく地面を踏みならす、侵攻すべき敵のみが目に映っている頑強な歩兵隊。その敵は本当に存在しているのか。どうなんだ……
向こうから来る電車の近づく音に合わせて、踏切の音はだんだん小刻みに早くなっていくように聞こえる。線路を滑る音が近づき、高まり、そしてすべての音を塞ぐ轟音が耳を圧し潰した。
線路沿いの明るい通りから、土地の人しか来ないような暗い、街灯もない住宅地の裏通りに入った。家と家の間、塀と塀の隙間、明りの漏れることのない街の狭間に、うっすらと月の光だけが射している。ぼんやりと歩いているうちに、自分が歩いていることまでも時に忘れてしまうことがある。闇の中、それと一緒に自分のことも忘れてしまう。
≪足音をかつかつと響かせて虚無の中へ歩み入っていくのは、ありうる中で最高の死に方にちがいない≫ 誰かが書いたこんな文章に、密かな憧れを抱いてしまうこと自体が、なにやら禁じられたもののように感じられる。それは逃避だからだろうか、闇への逃走だからだろうか。違うと思いたいのだが、やはり、そうでないとも言いきれないものを感じる。そしてそれを振り切ることができず、いつまでもどこかでまとわりついてわだかまっているのだ。そんなときにこの言葉は浮かんでくる、あるイメージを伴って。暗闇の中で、足音だけが後に残り、それを街に響かせながら、ぼくだけは散らばるように消えていく。そして何となく、自分自身の消えゆく背中を眺めているもうひとりの自分が思い浮かぶ。しかしまたそれを見ている他の誰かがいて、何人もの背中が次々と暗闇へ消えていく。闇の中ではものの境界が消えうせてしまうあの感覚で、溶ける。闇の中ではものが消えてしまうのではない。境界が取り去られ、すべての中身が等分に空間に拡散する。夜の中の闇に混ざり込む。
歩いている影にふと胸を突かれて立ち止まってしまう。街灯が明々と照らし出す影が少しずつ伸びあがるように歩いているのを目にして。それでも影は歩いている。影はいつでも歩いている。
住宅街の壁に覆われて空が切り取られた場所から、川沿いの開けた道に出た。それでもやはり人通りは少なく、並んで立っている灯は点々と小さく道路を照らし出すだけの飾り物に過ぎなかった。歩きながら水を飲むために鞄からペットボトルを取り出した。それには「月の雫」いう文字が、月と水滴とを組み合わせたデザインで描かれている。キャップを回して二、三口飲み、またふたをしようとしたら、その透明なペットボトルの中の水が黄色く輝いた。はたと立ち止まり、ペットボトルの外装の膨らみで拡大されて見えるその眩しい光を眺めた。ペットボトルの中にいきなり光が舞い込んでいた。違う。気が付いて、ペットボトルを動かすと、その目線の先に奇妙な月が現れた。川の流れに映り込んだ、ばらばらと揺らめく月。流れによって幾たびも、万華鏡のごとくに表面の形を変えるスクリーンに映り込む月。同じ川には二度と入ることは出来ない、というがその月も時間の経過した分だけの数があるんだろう。月の下半分は流れの中で、欠けたり満ちたり、瞬間ごとに変わっていく。
川と歩道を分ける緑のフェンスの上に「月の雫」を置いて、じっとその月を眺めることにした。川の中に映る無数の月は、ゆらゆら揺れて二度と同じ姿を見せることはない。すべてを見るには一度の瞬きもせずに、時の始まった瞬間から眺め続けていなければならない。ずっとその月だけを凝視していたあいだ、その道を通った人たちはどう思ったことだろう。汚いドブ川をずっと見つめている学生をなんと思うだろうか。対岸の道をスクーターが走っていく。ヘッドライトを引きずりながら視界の上を滑っていった。川の下には黒い鯉が泳いでいて、夜の中で黒い水を叩くことがある。波紋が広がり映る月や街灯が揺らめくことでそれが分かる。波紋の形に景色が歪む。光の映らない川面はただ黒い。どこかで鳴っている川の流れる音と、水と草の匂いが漂っていた。
しかし、鯉でもなく、川の流れでもない波紋が水の月を歪ませた。月の真ん中から波紋が拡がっていく。もう一度。もう一度……
空を見上げた。瞬間。月から雫が落ちてきて。黒い川の中の水の月。に落ちた。
空の月から黄色い雫が滴り落ちてきていた。形を変えることなく夜の中に不動の月を見上げた。山の遙か上の方にある月から、雫が落ちてくる。円周がじわりと膨らんで、それがゆっくりと下に集まって水のかたまりが出来る。じっと見ているとそれが少しずつ膨らんで、限界を超えるとぽつんと落ちる。
ぼくの側の地面に。黄色い水が跳ね散ると、そこにはぼくが歩いていた。友達と歩きながら楽しそうに話をしているぼくがそこに。クラスが変わって時間がすれ違い、このごろ一緒に帰ることのめっきり少なくなっていた彼がいた。何を話していたのだろうか。期末テストに範囲外の問題を出す教師の悪口だろうか、それとも誰と誰が付き合っているらしいと言う伝聞の噂だろうか。彼とは何を話していたのか忘れてしまった。二人の手にはそれぞれ、美術の授業で描いた絵があった。ぼくは丸めて振り回し、彼はゴムで縛ったそれをしっかりと持っていた。ぼくは乱雑にそれを扱い、フェンスに当てながら歩いたり、細く強くなるように、何度も繰り返して丸めたり解いたりを繰り返していた。彼はどちらかというと大事そうに、しかしいくぶん気軽にそれを扱ってはいた。紙が曲がるほどではなかったが。何もぼくの絵が悪い評価だったというわけではない。むしろ彼の方が絵に対する評価は低いものだった。評価は関係なく、ぼくにはもうそれが不必要で、彼にはそれが必要だったというだけだ。それだけは良く覚えている。彼らふたりは、そこを歩いている格好で、一時停止の映像のように止まっていた。
もう一つ、雫がぼくの後ろに落ちた。しぶきが散ると、そこには傘を持ったぼくが一人で歩いていた。歩いていると言うよりは、歩き損ねている。それは、今の学校に入ってすぐの時だったと思い出した。慣れない登校の電車内、いつも人がひしめいているが、雨の日にはそれがよりいっそう緊密に、息苦しいものになるのだった。その日も雨で、駅前の道は当然のこと、改札前もぐしゃぐしゃの人のかたまりが異様な臭気を漂わせていた。雨の湿気のせいで臭いがよりこもって体中にべっとりと絡みつく、気持の悪い日だった。学校の中でさえ、廊下は湿って滑りやすく、階段で転ぶ人を見かけた。ひとりの女生徒がひっくり返っていたが、周囲の人たちはまだ見知らぬ同級生への遠慮からか、そのさまを見つめたり、からかったりする人はいなかった。机も湿ってべとついた。その日の帰りだった。朝よりはまだましな帰りの電車の中で疲れ切ってしまい、足取りも覚束ない様子で傘をさしたまま下を見て歩いていた時、足下になにやらガラクタが落ちていたのを見つけたのだった。そのままそれを踏みつけて通り過ぎようとしたら、その瞬間ボールを踏んだ時のようにぼくの足は弾かれてしまい、そのまましりもちをついてしまった。雨の日のアスファルトに、尻と両手をついたまま、数秒じっとしていた。転げた自分を笑って、懐かしむようにして転がった傘を眺めていた。その時の転ぶ瞬間、自分がまだ転ぶことになるとは気がついてないぼくを、しぶきは映していた。
ぼくの目の前に一雫。ぼくがこっちに向かって歩いてきているのが見えた。姿形が全体的に明るく、朝のことだと分かる。持っている厚い封筒を見て、それが今日の朝のぼくなのだと気づいた。切ったばかりの髪の長さも今朝見た鏡の中と同じ、それは数時間前のぼくだった。視線は低く、フェンスの向こうの明るい中を流れる川を見ながら、なんだか暗い表情を浮かべている。眉間にしわを寄せて、何かに憤っているようにも見える。何を考えていたのか、すぐに思い出した。これからのこと、これから選ばなければならないこと、これからしなければならないこと、それの決断を迫られていたことを、考えていた。今も同じ様なものだ。時間に押し潰されそうで、しかし決して押し止めることは出来ず、刻一刻と迫り来るものが壁のように立ちはだかっている。
その映像が動いた。目があった。顔を上げた朝のぼくはあの表情でぼくをじっと見つめている。睨んでいる。胸の奥底から嫌悪感が湧いて出た。もう一人のぼくはじっとぼくを睨みつけている。その時、数時間前のぼく、ぼく自身であるが故に誰よりもぼくを知る、もう一人のぼくは敵に他ならないということに気がついた。あらゆる過去は自分の醜い残像でしかない。だからその残像から逃げ去ろうと、ぼく自身の醜さから逃げ切ろうと、ぼくは時間を生き続けているのだった。時間が流れると言うことは、その瞬間ごとに、数限りないぼく自身を増殖させるということだった。彼から目をそらした。
しかし、いくら目を逸らそうとも、雫が跳ね散るたびに影は続々と増えてゆき、辺り一面を覆い尽くしていく。時間それ自体を半分の半分のまた半分と分割していけば、時間が経たずともいくらでもぼくは増えていく。空気は粒子に敷き詰められて手に触れるほどになっていた。誰かがぼくの手を握った。十年前のぼくが、人混みで親とはぐれて迷子のぼくが、ぼくの方を悲しそうな顔で見上げている。目が合うと、その重い残像はゆっくりと破顔した。
空に浮かび輝く月を見上げた。ぼくにぼくを見せつける金色の月を見上げた。それは空の中で落ち着き払って佇んではいるが、その実何故かぼくを標的にして延々と過去を見せつける気まぐれな道化者だ。一体何をしたいのか、ぼくに何を見せたいのか、そいつは何をしているのか。いくら月を睨みつけても、ぼくのまわりに居座る止め絵の残像が消えることはない。月は残像以上の敵だった。月は笑いを浮かべている。月の円周がふたつに分かれるみたいにすうっとずれたと思うと、絞り出されたように水分がゆっくりと下弦に集まってきた。それは見ている合間に大きくなり、膨らみすぎたその出っ張りは、親の体から離れるのが名残惜しいのか、最後の最後まで粘ってからやっとぷつんと切り離された。それは、真っ直ぐにぼくの額に落ちてきて、冷たい感触と共に目の前で雫が飛びはねるのが見えた。すると飛び散るしぶきの一滴一滴、一粒一粒にそれぞれの月が現れた。たくさんの水滴の中の月は、カットされた宝石に映り込む景色や、合わせ鏡の映し出す数限りない虚像のように、膨大な数になっていた。見上げると、空の月もまた水滴の中の無数の虚像と同じく、数を増やし、空を一面埋め尽くしていた。暗い空は見る影もなく、眩いばかりに金色の天幕を広げた空がぼくの上に現れていた。月、月、月、月。塵のように無数の月。暗い場所に射し込む光が、浮かんでいる無数の塵の存在を露わにするように、ぼくに落ちてきた雫は世界の裏の空に浮かぶ無数の月を露わに映し出した。そして、その輝きはぼくを責め苛む眩しさを持って、ぼくを照らし出した。気狂いのように無数の月が無数の光でぼくを刺し貫いているようだ。全身を眩い感触にさらされて、腕や腹を掻きむしらずにはいられなくなっていた。首や耳元、手の甲や肩甲骨の辺り、至る所にかゆみが現れ、掻けば掻くほどかゆくなる比例の法則がそれを支配している。体中に熱が溜まりぼんやりと薄れていく感覚の中で、冷たい水滴が落ちた時のようにはっとさせる感触を手のひらに感じた。右脇腹のところに硬い、生々しいものではない機械的な異物があるのだ。体の中に突然現れたその異物に対してたとえようもない嫌な感じが噴きだした。どうしようもない嫌悪感から逃れることはできないからこそ暴走していく感情をとどめようもなくて、ひたすらに両手で脇腹を掻きむしり続けていると、皮膚が破れ、中の異物がぐっと外に押し出されてきた。爪先でひっ掴んで無理矢理にそれを腹の中から引き出そうとして、何も考えずに力任せに引っ張った。ある瞬間から抵抗がぱったりと止み、あっけなくそれは体の外に吐き出された。金色に輝く月。手のひらより少し大きいくらいの空に浮かぶのと同じ形をした円盤状の月が、指から滑り落ち、地面に落ち、金属質な音を響かせた。脇腹の皮膚の裂け目からはそれを合図に、満月や三日月、糸のような細い月、まっぷたつに割れた皿のような月が次々と流れだし、足下のアスファルトを埋めていく。壊れた機械が延々とメダルを吐き出し続けるような音とともに、足下には綺麗な月の絨毯が敷きつめられていった。
そしてその絨毯の上に、何者かの右足が一歩踏み出しているのが見えた。すぐに背中が目の前を塞いで立ち現れた。黒い髪を湛えた後頭部も目に入る。誰かがぼくを取り残して月の絨毯の上を真っ直ぐ向こうへと歩いていく。歩みは弛まず、時間の止まったような世界の中、それは何ものをも省みることなく、ぼくを振り返ることもなく、少しずつ遠くなっていく。とどまることのない残響が薄く鳴り渡っている。それを覆い尽くしていく叫びが波紋のごとく膨らんで、辺りの壁に跳ね返り、ぼくを目掛けて押し潰す。耳からだけでなく足も腹も頭の中にも反響し、轟々と唸りまくる音、誰かの発した叫び声。
あいつは遠くへ消えた。時間は彼のものになってた。声が叫ぶのはぼくが時間の中から外れたせいだ。
奥野美和 10C「ノーノーノー」
2002年10月24日(木)22時40分43秒
ワルモノにしてしまったのは私です泣いてわめいて同情かって
今すぐに会って直接好きですと言ってしまいたいジョッキ2杯目
奥野美和 9C「ヘッドフォーンオーケストラ」
2002年10月23日(水)07時54分09秒
もう平気ダッシュで切り抜け笑って言った 早く帰って部屋で泣きたい
あの頃の自分みたいな恋したいそう思えたのでもう大丈夫
わたしたちあの電柱でキスしたり別れ話をしたりしたよね
あの日からずっと会っていない でもなぜか君の視線と暮らす毎日
丁寧に塗ったマスカラもマニキュアも君の前ではぎくしゃくしてた
横田裕子 標本2A 食べかす
2002年10月22日(火)21時41分51秒
食べることに飽きてしまっても
食べることを止められない旅人の
ある日の食事
小川原 君依 1B「プロット」
2002年10月22日(火)11時07分17秒
朝
学校
少女(保健室)
裏庭
帰り道
家族
夢
学校
階段
サーカス1
箱
サーカス2
両親
白い世界
融合
箱2
空
対立
対立2
卒業
小川原 君依 2A「霧現消景」
2002年10月22日(火)10時58分30秒
その日の夜、草音は泣いた。
雪の夜、どこからともなく流れてくる淋しさを、その胸の中にしまって、泣いた。
風は凪いでいた。
誰も知らない、草音だけの、涙。
朝がやってくるのが早かったのか草音が泣き止むのが遅かったのか。
暁色に染まった空がやってきていた。
しいんと静まり返った朝。何十段もある高い階段を上りきった境内から草音は海の町を見下ろして、涙をすすった。頬の赤みが、寒さでかちこちに凍っていた。
ふとその頬を、温かい手が包んだ。片音である。
「今日も泣き虫、草音」
草音は僅かに微笑んだ。「まっかっかだよ」
「片音は、雪のように白いね、ほぺた。寒い?」
差し出してくれた手袋をはめて、草音も片音がしたように、その両頬を包みこむ。
「これがあったかいから、平気さ」
笑顔。
片音の声は、天上の音楽のように心に響いて、凍てつく空気の中で白くなって宙に還る、一瞬ののも。それがたまらなく綺麗だと静音は言っていた。
その時、階段を静音がかけてきた。手に持っていたのは缶ジュース一本。
「心配したのよ」
怒りながらも、静音がそれを草音に渡した。あたたかい。
「ごめんね、静ちゃん。どうしても、一人になりたかったの」
「何故」
「なにがあったんだ?」
二人が、草音の顔を覗き込む。
「…もう、忘れちゃった」
えへ、と草音は舌を見せた。”このやろう!”と片音が草音を押さえ込む。静音はくすくすと笑っていた。静音の声も、地球を覆う大気のように優しいと、草音は思う。
風は凪いでいた。
寒いのに、あったかい。
まるでバリアを張ったみたいに、世界にいるのは今たった三人だけだ。朝を健やかに迎えさせる小鳥の詩も、町を覆っている海の波の音も、今はどこにもない。
この時が好きだ。
そう、本当はとてもとっても大切なことだったのに、
それを忘れてしまうくらい、今が大切。今、だけ。
「さぁて、泣き虫お姫様も元気になったし、ゆっくり還るか!」
「無理はしないのよ、草音」
二人が立った。草音は「ちょっと待って…」と弱々しくいうと、静音にもらった缶ジュースのピンを取った。
湯気が、缶の中から飛び出した。それは、二人の吐く息よりも、もっともっと白かった。それが広がって、あたりは真っ白…霧が立ち込めた。
「片音ちゃん?静音ちゃん?」
手から缶が落ちて、カシャン…となった。
あたりを見回すと、二人がどこにもいない。
霧が深すぎて、何も見えない。階段を踏み外さないように慎重に降りながら、草音は二人の名をずっと呼びつづけた。
「片音ちゃん!静音ちゃん!」
―階段を降りきった時。急に静音は二人を探すのをやめた。
いつのまにか、手が冷えている。
家に、かえろう。
玄関の扉をはさんで、母親が帰りを涙目で待っていた。
頬に、鋭い手のひらが飛んだ。
「…―もう、これ以上あなたまでいなくならないで頂戴……」
その場に母親が泣き崩れる。
その横を素通りして、草音は階段を上がっていった。
寮美千子 11/16 「安東ウメ子ライブ アイヌの歌と語り」を課外授業にします
2002年10月22日(火)02時11分09秒
11月16日開催の「安東ウメ子+寮美千子ライブ アイヌの歌と語り」への参加を、正式に「物語の作法」の課外授業にすることにしました。参加費は、大学より支給してもらうよう、手続きをとります。
11月14日の「物語の作法」の授業では、その予習として、アイヌ文化について学びます。特別講師に、北海道早来から、アイヌ文化に詳しい山田雄司氏をお招きします。
山田氏には、アイヌの文化の根幹を解説していただくとともに、16日のライブで踊る「バッタキ」の踊りを指導してもらいます。
16日には、この「バッタキ」をウメ子さんの歌に合わせて踊り、会場の人にも参加してもらって、なるべく多くの人で盆踊り状態にしたいと考えています。
また、アイヌの口琴「ムックリ」をこちらで用意し、当日ウメ子さんに指導してもらって、みんなで演奏することも考えています。ムックリの代金も、大学から支給してもらうよう手続きをとります。
というわけで、なるべく多くの諸君の参加を求めます。日本の先住民であるアイヌの文化を知るためのまたとない機会です。ぜひ! 人数を確認したいと思いますので、参加希望者は寮美千子までメールを。メールのタイトルは「アイヌ」にしてください。
また、友人を呼びたい人はどしどし呼んでください。友人の分までは大学から経費が出ないので、申し訳ないのですが、参加費が1000円、希望者は別途ムックリ代金が500円(ぐらい)かかります。それでも、安い! ウメ子さんがこの夏吉祥寺のライブハウスでやったときは、当日券4000円だったんだから! しかも、それで立ち見ぎっしりの大入り満員。
じゃあ、よろしく。前もって勉強したい人は、下記の本が適切です。
『アイヌ、神々と生きる人々』藤村久和著 小学館ライブラリー
planets0002.html#planets20021013235914
奥野美和 8C「オルガン」
2002年10月21日(月)09時45分50秒
そういえば相合傘をする時に持つのはいつもわたしだったな
あてつけに夜遊びばかりしていたよ「オトメ」な私ひきちぎる為
滝 夏海 8A「言葉のスケッチ:その3」
2002年10月20日(日)18時04分16秒
自分をみて
隣をみて
町をみて
国をみて
世界をみて
宇宙をみて
もう一度自分をみたら
小さな発見
滝 夏海 7A「言葉のスケッチ:その2」
2002年10月20日(日)18時02分20秒
善ってなんですか
悪ってなんですか
正義ってなんですか
平和ってなんですか
幸せって一体何なんですか
本当は誰にもわからない
だから自分で探そう
滝 夏海 6A「言葉のスケッチ:その1」
2002年10月20日(日)18時01分14秒
月の時間 ただ1人
ぬくもりに包まれるお湯の中でも
自分を抱きしめるベッドの中でも
泣くことは出来ないのに
太陽の時間 人の群
プラットホームで電車を待つ間や
授業中隣の窓へ視線を移した瞬間
何故だろう ひどく泣きそうになる
奥野美和 7C「しぼり器からホイップクリーム」
2002年10月20日(日)10時00分41秒
あれからね成長したって思うんだ君に褒められたかったけれど
変わるかなこの結び目が解けたらおなか抱えて笑えるのかな
なんとなく話したくなっただけだけど電話したいな許されるかな
こんなにも時間が掛かってごめんなさい今やっと私失恋できる
山口 文女 標本1B/冬眠
2002年10月17日(木)22時52分07秒
▽課題/夢の標本箱の文章 への応答
くたびれて、石ころ蹴飛ばす帰り道。
そんなとき、ポッケにどんぐりひとつ。
どんぐりは秘密の穴ぐら。
かわいた落ち葉を毛布にして・・・。
冬眠しよう。
どんぐりにもぐりこもう。
こころが温まったらニョキっと起きるよ。
じゃぁ、またね。おやすみなさい。
・・・Zzz。
東條慎生 標本1B「夢プラグ」
2002年10月17日(木)20時09分59秒
夢プラグ取扱説明書
本製品は切断されたかに見えるコードの拡散端子部分にて脳波を受
信し、膨大な夢のエネルギーを大幅に低減させ、通常の映像信号と
して扱うことを可能にした画期的製品です。
使用方法
1.当プラグをビデオデッキの入力端子に接続して、録画予約を
してから、そのすぐ近くで眠ってください。
2.時間があえばその時見た夢を録画でき、そのまま再生すれば
奇妙奇天烈な夢の世界をご家庭のテレビでお楽しみ頂けます。
注意事項
1.使用継続時間約10分 2.耐用使用回数1回
斎藤多佳子 標本2A「旅する彼等の昔の話」
2002年10月17日(木)17時46分04秒
「じゃあ、このサイコロで決めよう」
首から下げたサイコロを手にして彼はそう言った。
「よし、大きいほうを出したほうが勝ちだ」
いきがる僕に彼は首を横にふる。
「いや、1の目を出した方が勝ちさ。
たった一つの宝物を手にする奴は1回で多くを手にする奴じゃない。
たった一つの赤い目をずっとずっと追える奴さ」
彼はにやりと笑って賽を投げる。
僕はズルイと笑って賽を見る。
放り出されたサイコロは空高くに舞い上がり光にさらされ輝いた。
滝 夏海 標本2B「行商人お薦めの一品」
2002年10月16日(水)20時11分51秒
▽課題/夢の標本箱の文章 への応答
「旅人さんよ、この中には
赤ん坊の最初の微笑み
ってのが入ってんだ」
男は小瓶をちらつかせて自慢気に言った。
「幸運のお守りですか?」
「いいや、惚れ薬さ」
齋藤亮 標本1A「KATZE」
2002年10月16日(水)14時50分36秒
▽課題/夢の標本箱の文章 への応答
彼が七瀬と知り合ってから、一年が過ぎようとしていた。
初めて彼女に贈り物をした時、彼は既に七瀬のことを愛していた。
同じ家で暮らし、同じ空気を吸うようになり、
彼女も自分を愛してくれていると思っていた。
ある日、七瀬は見知らぬ男を連れてきた。背の高い男。
親しげに話す彼女は、今まで見たことがないぐらい楽しそうで。
直感で、俺では七瀬の恋人にはなれないんだな、と理解した。
愛する人と初めて出逢った公園へと走った彼は、
砂場に光るビー玉を見つけ、初めて彼女に贈った物を思い出した。
そして暮れ始めた空を見上げて、「にゃあ」と鳴いた。
小川原 君依 標本1A「光の欠片」
2002年10月16日(水)13時10分10秒
▽課題/夢の標本箱の文章 への応答
還る場所がまだあったとき
席を並べていた友と行く路がてら
僕の周りは光に満ちていて。
世界の隅に置き去りにされいた
ただ静かに揺らめく光の欠片を
無邪気になって集めていた。
―還るべき場所へ
受け入れてくれる人に見せようとして―…
(それは、牙をもった鋭い光だったけれど)
庭の片隅に―埋められてしまったけれど。
奥野美和 標本2A「ガールフレンド」
2002年10月16日(水)09時36分00秒
どこまでも
歩いていこうよ
ガールフレンド
悲しむことも、
悩むことも
不安に思うことも
自信を持って、ね!
きっとわたしたちの体は
無限大の可能性
秘めている
あ、そのお洋服かわいい。
奥野美和 標本2A「歩いた先の新しい世界」
2002年10月16日(水)09時29分30秒
話すことって楽しいな
そう思えた
軽い夕やけ
帰り道
くしゃみをしたら
これが出てきた
奥野美和 6C「あの子に会える可能性がわたしの歩幅を大きくする」
2002年10月16日(水)09時24分59秒
がむしゃらに恋をするって決めたから傷つくことも嬉しいくらい
本を読むきみの横顔 硬そうな 睫毛ぼんやり見てるのが好き
ねえ知ってる?女の子はねさみしさをチョコレートパフェで埋めているのよ
奥野美和 5C「むくんだこころ」
2002年10月15日(火)07時52分36秒
本当にうそが上手な男の子どこかにいたら恋人になって
ひとつぶのミルキーふたりで食べたのは静かで暑い夏の日でした
わたしたちそこから逃げて来たんでしょ いまさら自由が欲しいだなんて
退屈な5限日本史それよりも君のレキシが知りたいのです
現実をビールと一緒に飲みこんだ甘い記憶がガラスの底に
そういえばパピコ半分わけるひと もういないんだ 駄目だ慣れない
宮田 和美 27A 日々のかけら
2002年10月13日(日)23時39分13秒
デートみたいなこと
1
たまごぱんみたいな形のヘッドフォンは
もっとちっちゃいやつに変わってた。
ジャケットの中に着ていたTシャツは、
約束してたけどいっしょに行けなくなってしまった
ロッキンフェスのやつだった。
でも、顔をみたら
ああ、そう、こんなだったって
おでこのとこの生え際とか、めがねとか、毛のうすい手とか
体に比べてちっちゃいリュックとか
口のしたの傷とか
すとんと重なる
そう、こんなだった。
2
「これいいね」
と言ってわたしが見せたのは、
朱色にちかいオレンジで、ジャージみたいな襟のとこだけ黒い
ジップアップのコート。
「うん、かっこいい」
「高度成長期ってかんじの色だよね」
「それはわかんないけど」
こういう風に買い物つきあってもらったりって、
前は全然しなかったよね。
君は、女の子の洋服を見てはかわいいを連発してる。
わたしは君のこと、なんにも知ろうとしてなかったのかもね。
青と黄色のスカートを手に取ろうとしたとき、
腕がちょっとだけくっついた。
そして、そうっと、遠くなる。
今のわたしたちの距離。
ひょっとしたら、これくらい離れてるから、だから君は優しいのかもね。
3
恋してるときのわたしって、
声がちがうんだって。
知ってます。
ちなみに今日も、変わってました。じつは。
4
ちがう
あれは恋じゃなかった。
ドラマとかの恋ってきっと、あんなに苦しいものじゃないし、美男美女だし、
もっとドキドキしたり、すっごい会いたくなったり、
いっつも笑ってて、けんかばっかじゃなくて、そんなだから
だからこれも、これからも恋じゃないし、きみとわたしは恋には向いてない。
ってことにしときたい。
5
クイックジャパン1冊
岡崎京子の漫画3冊
ピチカートファイブのCD1枚
つじあやの1枚
今日、返すもの。
ずっと、返さなきゃって片すみにあって、
でもどう返せばいいのかわかんなくて、どう返したいのかもわかんなくて、
郵送とかもできなくて、今まで持っていたもの。
「長いことごめんね」
そう言って、ABCマートの袋ごと差し出した。
ばいばい。
岡崎京子2冊、やまだないと1冊。
「これかす」って、交換みたいなかんじで出てきた。
「またおかざききょーこかい。ほかの貸せ」
とか言ってみた。
よかった。
これでまた、君と会える
6
ねえ、わたしのこと送らない?ここで降りてさ。
あとちょっとのところで言えませんでした。
あーあ。なんでだろ
奥野美和 4C「きみ」
2002年10月12日(土)07時01分35秒
話したら話した分だけ好きになる君は私に好かれる天才
君のシャツ変な柄でも許せちゃう他の男が着たら反則!
奥野美和 4B「図書館で邪魔してごめん」
2002年10月12日(土)09時37分49秒
カタ想いなんて言葉が怖いから好きだなんて認めないんだ
醜いね君にニキビを見つけてさこれでライバル減った?だなんて
つないだ手思った以上に分厚くて男子の君を見つけた気分
宮田和美 標本1B
2002年10月11日(金)21時27分43秒
ほんとだよ。
このあめをたべると
ほんとに世界がきらきらするの
きれいだったな。
一度くちから出しちゃったから、もうあの頃にはもどれないけど。
きれいだったな。
さみしいな。
貝殻は、あの頃のわたしからのおみやげ。
宮田和美 26A 日々のかけら
2002年10月11日(金)03時22分26秒
向かいのホームには人がたくさんいる。
そこに各駅停車がやってきて、とまって、人が降りて人が乗って、
過ぎ去っていった後の向かいのホームは、さっきまでと打って変わって、がらんとしていて、寒々しかった。
そうじきで、くまなくそうじされたあとみたい。
そんなことをぼんやりと考えていたら、
こっちのホームにも電車が入ってきたので、それに乗って、吊り革につかまりながら、わたしは暗い車窓を見る。
きのうまではもっと、暗闇をはしる電車の窓がすきだった。
それなのに、今日のわたしときたら
窓にうつるじぶんの顔を眺めては
なんでこんなにかわいくないんだろうって、
そんなことばっかり考えてる。
もっとかわいかったらいいのにな。ドアのところに立っているあの女の子くらいに。
そうしたらもっと、この恋だってうまくいってたかもしれないのに。
わたしがすきな分だけあのひとも、わたしのことすきでいてくれたかも知れないのに。
宮田和美 25A 日々のかけら
2002年10月11日(金)01時44分52秒
かえりみち
目のまえから、空き缶をけりながら
あのこが歩いてきた。
左手には、わたしの知らない女の子の右手。
わたしは、その女の子がどーとかっつうよりも
今朝ねぼうして、そのままで来た
すっぴんの顔がはずかしくて
下を向いて、とっくりに顔をうずめて歩いた。
空き缶はまだからからいってる
すれちがって、しばらくして、
そうっとふりかえって
もういるはずもない道のむこうをみつめた。
なんでうまくできないんだろう。
前みたく、バイバイとか
授業のはなしとか、どうしてできないんだろう。
ほんとうは、わかってる。
いやだったのはすっぴんなんかじゃない。
となりの彼女
そして、すっぴんになれない
厚化粧のわたし。
会いたかったのに、ばいばいって言いたかったのに
彼女なんかつくらないでって言いたいのに
それができない、厚化粧のわたし。
寮美千子 30字×10行
2002年10月11日(金)01時03分01秒
▽標本1A『最期-ケツマツ-』 への応答
これを守ってくれないと、展示できません。
みなさん!
「夢の標本箱」の本文は30字×10行。厳守のこと。
タイトルは別です。
タイトルは活字を大きくするので、一行25字まで。
(タイトル+自分の名前)でに入るように!
わかった?
奥野美和 2C「守れない約束はセンチメンタル」
2002年10月10日(木)22時15分52秒
深刻になったら駄目ってあの日から思い込もうとしていたんです
悲しみは消えないのずっと 当たり前だから騒がない そっとしておくの
やつあたりする人が君しかいない 私をいらない君しかいない
走って逃げた恋でした私は君と友達なんて無理だったのです
もし僕がいつものように深刻になってしまったら君のユーモア分けて下さい
電線を見ながら歩くゆらゆらと どこかで君に会える気がして
これからは不安と一緒に眠ったりしない 私のベッドに遊びにおいで
ちょっとだけ腕をつかんでみたくなった くやしい わたし、恋をしている
杉井武作 標本1A 落語幽霊 〜世界中にコマネチ〜
2002年10月10日(木)13時52分42秒
▽課題/夢の標本箱の文章 への応答
「さて、今日ご紹介する商品は『落語幽霊』です。この折り紙を説
明書に従って幽霊のカタチに折って頂くと、主人にとりつき、巧み
な落語をしゃべりはじめます。笑いのツボを敏感に察知するため飽
きません。ぐちゃっと握りつぶしていただければ効果は消えます。
『ソレデソレデ、カンジンノオネダンノホウハ!?(外人)』
これに『漫才幽霊』『コント幽霊』もお付けして、ナント!いちま
んきゅうせんはっぴゃくえんでのご奉仕です!」
一週間後、世界はお笑い幽霊で支配されていた。何も考えずにひた
すら笑っていられるだけの生活。それはきっと素敵なものだろう。
「コマネチ!」「よしなさい!」
管理者:Ryo Michico
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