▲2007年06月の時の破片へ


■15 Dec 2006 流星群きらめく星兎の夜


「うさぎ、忘れなくてすむんなら、
宇宙が終わるまで忘れないよ。きみのこと」

うさぎはひと言「さよなら」とつぶやくと、ぐっと深くかがんだ。
うさぎの脚が、埠頭のコンクリートを蹴った。
まるで、地球という惑星を蹴っとばすみたいに。
うさぎの体が宙に飛んだ。
うさぎがぐんぐん遠くなる。
その時、ぼくは、うさぎが空に跳んだんじゃなくて、
まるでぼくの方が、
うさぎに蹴とばされた地面といっしょに、
どこまでもどこまでも墜ちていくように感じたんだ。
世界といっしょに、果てしない宇宙の深みに。

『星兎』より
http://mixi.jp/view_item.pl?id=46667


再びめぐってきた双子座流星群。
『星兎』は、セント・ギガの伝説的なプロデューサー
桶谷裕治氏に捧げた物語だった。
オケさんが遠い世界に旅立ってから、もう八年。
わたしはオケさんよりずっと年上になってしまった。
それなのに、いまでも、オケさんの方がずっと大人に思える。
わたしがオケさんを年下に思う日なんか、来るのだろうか。

病床のオケさんに草稿を見てもらった「夢見る水の王国」。
今年になってから、ようやく連載を開始できた。
きょうは、五回目の連載の締切り日。
一昨日、書き上がり、それから怒濤の推敲。
結果的に、細部しか直さないのだが、
その細部を読むたびにどうしても少しずつ直したくなる。
五十枚の原稿を通算五〜六回読んだだろうか。
へとへとになるが、それでも、細かい粉で磨きをかけたように、
美しく仕上がっていくのがうれしい。

「おじいさん」と孫娘の「マミコ」の別れが刻一刻と近づいている。
死者はどこへ行くのか。
死者の記憶のなかの「わたし」はどこへ行くのか。
ほんとうに消えてしまうのか。跡形もなく。
それを追いかける物語だ。

オケさんと宇山さんに、読んでもらいたかった物語。
これは、オケさんや宇山さんを探しに行く物語かもしれない。

連載が終わるまでは、この地上の人でいたい。


▼2006年11月の時の破片へ


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