▲2006年08月の時の破片へ


■31 Jul 2006 相棒のアパート、両親の部屋を返却


▼家がやっと一軒になる
きょうは、借りていた家の返却が2件あった。ひとつは、同じマンションに借りた両親のための部屋。4LDKという広さで、眺めもよく、ホテルのスイートより居心地のいい部屋だった。それなのに、だれも一晩も泊まらないままに返すことになり、残念至極だ。

近鉄不動産御用達の業者さんがやってきて、部屋をチェック。全然使っていないので、傷むわけもない。が、新品の家具を置いたところだけ、家具の足の形に絨毯が凹んでいた。その絨毯を取り替えるという。絨毯も新品だったのに、もったいないことだ。両親のために買った家具は、取りあえず、わが新居に運びこんだ。

この業者さんは、家の洗い屋さんでもあり、改装も手がけるという。「うちの掃除は徹底的です。ほら、こういうところ、触っても埃がつかないでしょう」と、桟をすうっと指で撫でるが、本当に埃がない。、浴槽の側面の板も外して見せてくれた。すっかり掃除が行き届いている。「こんなところもきちんと掃除しているんですよ」と誇らしげだ。

「実は、昨夜、わが家の浴室の壁にカビが出たので、専門家にお掃除してもらったばかりなのにどうしてだろうとよく見たら、浴室の扉のパッキンがカビだらけだったんですよ。見てもらえますか」といって、わが家にきてもらった。試しに、浴槽の側面の板を外してみると、ごっそりと髪の毛がからみつき、水垢がまっくろにこびりついている。「こういうところをきちんとしておかないと、匂うんですよ」と、業者さん。壁のカビも、扉からきているらしい。

そういえば、台所の足許の温風器の吹き出し口にも、綿埃が一杯に詰まったままだった。わが家が頼んだのは、見えないところは手を抜くという主義の業者さんだったらしい。不動産屋さんの紹介できてもらったのに、がっかりだ。いずれ、この新しい業者さんに改めて清掃とガスレンジの取り替えを頼もうと思う。

もう一軒、相棒のいた奈良のアパートを不動産屋さんに引き渡す。相模大野、奈良のアパート、奈良に用意した両親のための家の、すべての引っ越しと引き渡しが終わり、4軒あった家が、ようやく中辻町のマンション一軒にまとまった。そのかわり、そのすべての家財がこの一軒に集中。悲惨な有様である。段ボールの隙間で生活している。


■30 Jul 2006 相棒のアパートを引き払う/高畑でパーティ


▼アパートを引き払う
相棒は昨年1月から漆工芸の修行のために奈良で暮らしてきた。師匠の工房のすぐそばにアパートを借りての生活。そのアパートも、とうとう明日で不動産屋さんに引き渡しだ。28日に引っ越しは済ませたが、まだ多少の荷物が残っているし、清掃もまだだ。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、徹底的に掃除をする。

気持ちのいいアパートだった。結局、1年7カ月のうち4ヶ月間は、わたしもこのアパートで暮らし、奈良の春夏秋冬を経験した。だからこそ、奈良への移住も決意できた。夏の暑さも冬の寒さも、噂ほどではないと体感した。夏は、昔の夏休みの暑さ。木陰には入れば涼しい風が吹く。木造の平屋や2階建てがほとんどの旧市街には、クーラーのない家も多く、開け放たれた窓にすだれが揺れている。クーラーの熱風にうんざりさせられることもない。冬でも、ビル風に吹き飛ばされそうになるような非人間的なことはない。確かに、桜の開花は東京より遅かった。けれど、体や心に感じる寒さは、東京の方がずっと過酷だ。奈良にはまだ、人間らしい暮らしが残っている。

アパートの南のベランダからも、北のベランダからも、キリスト教の教会が見えた。アパートは、二つの教会に挟まれて建っていたのだ。不思議と神聖な感じのする、アジールのような場所だった。日曜日になると、二つの教会から賛美歌が聞こえてきた。北の教会からは、ロック音楽が響いてくることもあった。わたしは、南の教会から聞こえる古風な賛美歌が好きだった。子どもの頃、父が買ってきたスコットランド民謡のソノシートに入っていた曲が、風に乗って微かに聞こえてきたときは、夢の中にいるような心持ちがした。それは、私が特に好きだった曲で、いまでも歌詞をそらんじている。音の悪いソノシートを、何度も何度も繰り返し聞いてて、覚えてしまったのだ。

春の日の花の輝き みどり濃き髪も
神の定めのままに 褪せる日が来ても
清き心 保つきみを 命かけて慕う
太陽を慕うひまわり 我が身さながらに

教会から聞こえてくる切れ切れの歌詞は、神を讃える別の歌詞だった。けれど、清潔で明るい旋律はそのままだった。

台所の流しをゴシゴシ洗い、換気扇もガス台もピカピカに磨き、お風呂場もお手洗いもすっきりとさせると、部屋はもう次の住人を待つ顔になった。青春時代を過ごした下宿を去るような、そんな気分になった。

▼M口家でパーティ
汗まみれで掃除を終えると、もう暗くなっていた。きょうは、東京からM方さん、大阪から鳥海ご夫妻がやってきて、高畑のM口家でパーティとのことで、お誘いがあった。シャワーを浴びて自転車で出かける。引っ越したばかりのご近所に知り合いがいるのはうれしいことだ。

M口氏宅は新築の木の家。立派な和歌山産の梁に目がいく。天井もぐんと高くて、吹き抜けの空間もあり、広々としている。やはり一戸建てはいいなあと、改めて思う。ゆとりがある。お好み焼きをいただいて、ワインを飲む。先日、勝沼醸造から買ってきた白のプレスワインを持参。ぎゅっと凝縮された気取らない味が、お好み焼きによく似合った。

歓談をして、12時頃お開きに。高畑から中辻町までは、ずっと緩やかな下り坂なので、ほとんど漕がないで戻れてしまう。5分もかからなかった。余りの近さにびっくりして「もう着きました」とM口家へ電話をすると、先方も驚いて笑っていた。


▼2006年05月の時の破片へ


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