「物語の作法」課題提出板 (0045)


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露木悠太 批評11/文は人なり 2004年11月17日(水)07時05分11秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

いくつかの引用からぶつかっていきたいと思います。

『「日本の高校生は気楽でいいですね。世界には小学校にさえ通えずに、日々労働を強いられている子供たちがいるというのに……」と教師はマイクを使って、あからさまな皮肉をぶつけてきた。日本の高校生は気楽だ? そんなわけないだろ。俺たちだって様々な苦悩を押し付けられている。やりたくないことを遣らされたり、笑いたくないのに笑わせられたりしている。それに……別に好きで学校に来ているわけではない。』

 気楽でしょう、と突っ込みたくなってしまいます。というのは教師への反抗心をあらわにした後半の部分が弱すぎる。その程度だったら、日々、労働を強いられる子供たちの方がよっぽど大変に決まってる、と一蹴したくなってしまいます。高校生という立場や主人公の目線になったとしても、そうは簡単に納得できませんでした。

『「多分、女子のケイタイだよ。それもとびっきりのゴス系だろうな」
 友人は十字架のストラップを眺めた後で、そんな予想をした。』

 十字架のストラップ=ゴス系というのが全く解かりませんでした。強引過ぎて驚きました。

『 こんな悲痛な想いを吐露できるとは。杉山さんを、かなり信頼している娘なのだろう。でも、ごめん。メールを読んでいるのは、君とは何の関係もない数学とブロッコリーが嫌いな男子高校生なんだよ。
 罪悪感で胸の奥が痛んだ。その痛みはなぜか、引きちぎれそうなほどに、強く絞られた雑巾を思い出させる。』

 ユーモアは良いと思います。けれどタイミングが悪すぎる。後に続く文章の方が主人公の感情なんだろうけれど、これでは相反していて書き手が見えてしまっています。主人公の立場だったら言わないと思うんですけど、どうでしょうか。


こうして止まってしまうところが度々あったので、どうしても物語に入ることができませんでした。一人称の主人公と書き手の目線にズレが生じてしまっていたように思います。主人公の言葉として聞くことができませんでした。人物像がどれも一方的な完結した解釈でできているようで、書き手と距離なく物語を説明するためにいるようで、人間らしさを感じることができずイメージが浮かびませんでした。何かを描くということ、人間を描くということ、「わからないもの」を描くんだという前提、心構えが必要だと思います。
批評課題などからもあらわれている雨宮君の小説に対する探究心や向上心にはいつも驚かされます。それだけに、どうしても作品のインパクトが弱く感じてしまいました。もっともっと行けるでしょう、と思って。辛辣になってしまいすいません。

『 最初のメールは夜の九時ごろだった。その時、ぼくは椅子に座りながら、夏目漱石の『明暗』を読んでいた。ちょうど、主人公が恋心を抱いている女性の後を追うために、汽車に乗る箇所だった。』 漱石を読み返してみてはいかがでしょう。「人間」というものの深さ、複雑さ、簡単には説明できないということ。今ならさらに受け取れることができると思います。

土橋明奈 批評11/他意な自然さ。 2004年11月17日(水)03時02分13秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

サクサクと読み易い文章でした。
学生らしい主人公達(高校生と云うより大学生の様な感じ)の他意のある日常風景。
『数学とブロッコリーが嫌いな男子高校生なんだよ。』『シャープペンシル二本分ほどの間を空けて、杉山さんの隣に座った。』
等、言葉の選び方や爽やかっぽい雰囲気はこれが雨宮さん節なのだろうと思いました。
若々しくて愛らしいけどあまり可愛らしくは無い柳田さんと杉山さんのキャラクタは魅力的で良いのですが、
その出会いは何だか今時っぽくはありますが、ドラマ的過ぎて爽やかな青春物にしては暑苦しく感じてしまいます。
言葉の格好良さや雰囲気が読み処で内容は目標地点と着地点を何処に定めたかったのかイマイチ掴めませんでした。
全体的には面白く独特なバランスの良い文章でしたので、今後のテーマ選びとウエイトが楽しみです。期待。

滝 夏海 批評11/線に沿った視界 2004年11月17日(水)01時24分34秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

 使用アイテム・キーワードを見てみると「転校生・登校拒否・携帯電話・忘れ物(落とし物)」と狙っているのか分かりませんが、かなりベタな物語です。ストーリーも「気になる転校生・拾った携帯に謎のメール・彼女と仲良くなってめでたしめでたし」と基本的な展開になっています。にも関わらず、読み終わった後に置いてけぼりを食らった感じが残ります。
 原因は他の方々が指摘しているように、周りが描けていない部分にあると思います。背景描写も動作の描写も、もっとあって良いのでは。また、現在書かれている描写も、描写というよりは主人公の説明のようでぎくしゃくしていて、違和感がぬぐえません。例えば
二通目のメールは夜中に送られてきた。ベッドに寝転がり、眠りにつこうとしていた途端の出来事だ。
 これは「二通目のメールは夜中に送られてきた。ベッドに寝転がり、眠りにつこうとした途端、携帯が震えだした。」くらいの方が、情景が見えやすくなります。こういった「出来事」や「〜なのだ」という語尾は説明口調になってしまうので、入れ方によっては読者が物語の流れから一旦離れてしまう場合が結構あるので、テンポに気を付けてください。
 展開が速い事も、原因の1つでしょう。謎のメールを受け取るシーンは、一晩だけ書いて一週間後にするのではなく、もっと小出しにして、せめて3日分くらいは欲しところです。毎日、生活をきっちり書かなくても「次の晩も、また次の晩もメールは届いた。携帯を拾ってから3回目の夜が来た時、メールの内容が変わった」とか、やりようがあると思います。その中で、相手が杉山さん本人だとなんとなく気付く描写があると、最後も急な感じではなくなります。もしくは、初めから分かっているとか。
 ぶちっと切れるような終わり方は、嫌いではありませんが、それをやるにはこの文章が長いような気がします。ぶった切る文章も、ただのお惚気恋愛物みたいでなんだか内容とあっていないような。
 全体的に言えるのは、主人公が説明しすぎている…というか主人公の説明に頼りすぎているので、周りの事だけではなく彼自身の感情もよく見えてきません。雨宮君は面白い言い回しができる人なので、逆にそれに頼ってしまったような印象を受けました。もう一歩、書き手が全体を見て補っていけば、面白い話になるのではないでしょうか。

 と、批評はこれくらいにして、非常に個人的な感想を少し。
 これだけB組B組と言いながら持ち主が全然違う組でも、良いかもしれません。
 いっそ転校生ではなく自分のクラスの登校拒否(なりかけ)の子とか。
 それで携帯を拾ってから後、その子が来なくなったのでメールの相手はたぶんそうなんだろうな、と主人公が思ってみたり。
 なんて事を、読んでから考えてました。基本的なだけに、いろいろと弄りようのある作品です。

菊池佳奈子 批評11/完結 2004年11月16日(火)22時34分09秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

私は男性の書く小説があまり得意ではなく、普段あまり読むことがありません。
悪い癖だなとは思うのですが、苦手なものは思わずさけてしまいます。
雨宮君の今回の作品は、男性視点の恋愛もの(?)ですが、やはり読み終わってちょっと「うっ」としました。
その後一旦ひいたところから何度も読み直してみたところ、入れないということを感じました。
確かに一人称男性には私は入りにくいかもしれない。だけれど問題はそういうことではなく、二人にだけ近づいていて、その二人を追っていることばかりという、近視的な物語の展開にある気がします。
漫画で言えば人物のアップばかり。視点を引いて背景を書き込んだり、サイドを描いたり…そういうコマがほとんどないのです。
そうするとどうしてもバランスが悪い。
一歩引いて外からみると、主人公の二人の間でいろんなものが完結してしまっている気がします。
その結果、私は悪酔いをしてしまったのだと思います。

例えば最後の部分で杉山さんが柳田君である「ぼく」がひとりでいたところを見たと言っていて、そのことが結構重要な鍵になっている。
でもその台詞の前に全然そんな部分が描かれていないからその台詞がすべってしまう気がします。
杉山さんと会話をする前に杉山さんはでてこないけれど、ぼくがひとりでいるシーンとかを描いたら、伏線的で良いかもしれません。
せっかく二人とも同じ学校の生徒なのだから、学校や周囲の人物をもう少し描いても良いと思います。
それはどこかに友人のエピソードをいれるなど大きな構成の枠ではなく、アップのコマがふたつ続いたら次はひいてみる。といった具合に少しずつ書いてみたらどうでしょうか。

細かいところで気になったのは、杉山さんとぼくとの最初の会話の部分。
「じゃあ、どうすればいいんだよッ、と」のッがカタカナというところにひっかかってしまう。
あと「自分がいい人だということを彼女にアピールするのだ。」という部分。
この一文で主人公の心理状態についての思いが混乱してしまいました。
杉山さんは魅力的には書かれていない一方で、どうして主人公が「いい人」でなければならないのか。
またなにを「彼女にアピールする」のか。
読んでいて困惑してしまいました。

あと気になるのが主題を説明してしまっていること。
そこまで説明しなくても良いかなと思いました。
読者をもっと信頼してみてはどうでしょうか。

いろんなことを偉そうにごめんなさい。
雨宮君の文章には、ときどきすごく笑えて的確な表現がでてきたりして、とても良いなと思います。
主題もいつも優しくて。
これからもがんばって作品を書いて下さい。

城所洋 批評11/作品は八方美人であるべき 2004年11月16日(火)16時31分33秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

 こまかい突っ込み所はともかく、良いストーリーだと思いました。
 内容としてはシンプルなのですが、雨宮さん独特、というか、個性的な描写のおかげで、それも特に気にせずに読む事ができました。
 ただ、最後の展開が少し、引っ掛からな過ぎたかもしれません。こちらは追々語るとして、まずは、突っ込みを。

 最初に感じたのは、少し描写が少ない、という所でしょうか。
 例えば、友人達との会話シーン。席を立った、とか、椅子に背をもたれさせた、という事から教室で椅子に座って向かい合いながら、コロッケパンを食べた、という所から昼休み後半、という感じには想像できるのですが、如何せん、自分の脳で補わなければならない部分が多い。
 他にも、視聴覚室という違う教室なのにどうしてピンポイントに携帯を渡せたのかも気になりました。時間割とか、席順とか、そういった描写が無いと、こんな些細な所でも十分リアリティが損なわれてしまう可能性があります。
 あと、杉山という名を聞いた時の驚きは、嬉しいのか、残念なのか、イマイチ分かりにくかったです。(笑顔が崩れた、とか、ガーンという擬音で判断出来ましたが)
 それ以前に、杉山さんは主人公から見て可愛いのか可愛くないのかもはっきりとは分かりませんでした。それが上記の?を引き起こした原因だと思います。ゴス系じゃない=可愛くないというのは、どうも繋がり難い気がします。(好みの問題で)

 続いて最後の展開ですが、主人公が言ってしまうのは、少し安易だったかな、と感じました。分かっていたのなら、分かっていたなりの表現がないと、あまりにも突拍子がない上、こういったストーリーは展開が読まれ易いので、その裏をかく必要があったと思います。
 オススメとしては、知っているのに言わない。しかも彼女も言わない。だからそのメールは今見ている彼女のものではなく、彼の見ていない所にいる彼女のもので、それをまだぼくには見せてはくれない、的な感じだと面白いかな?と個人的には思いました。
 何か伝えたい事があったら、コッチに連絡〜的な展開に持っていきたければ、「友達に伝えてよ。俺も相談相手になるって」とかいう風に補えそうですし。んで、普段は背中合わせに見えて指先は正面を向いてる〜、とか。

 以上の事で、結果的に、作品全体が最後に向かって集約していくように見えながら、肝心の主人公がそれをあっさりと受け流してしまい、空振った感が否めない気がしました。このような短い作品だからこそ、一層インパクトのある結末を置いた方が印象が強く残るのではないでしょうか?
 いや、作品の雰囲気自体は良く、細々と突っ込めてしまうのが惜しいなぁ、と思いました。
 

千田由香莉 作品2A/「檸檬」 2004年11月16日(火)14時04分28秒

「レモン、って漢字で書ける?」
「緊張」という二文字を額に貼り付けて、私は、初めての「講義」に挑んでいた。広い教室…いや、講堂という未知の空間に、自分という存在を小さく感じながら座っていた。そんな私の耳には、周囲の話し声や雑音がやたらと響いて聞えていた。
 右耳に、突如として聴きなれない低音がするりと入り込み、ぐるぐると渦巻き模様を描き出す。この声は…どう考えても男の子だ。声のした方向へ恐る恐る目を向けると、見事に的中。いつのまにか、席を横ふたつ空けたところに座っていた黒いシャツの彼は、出席表をトントン、と人差し指で叩いて答えを促していた。トントン、紙を叩くその小さな音が、ざわついた部屋の中で際立って響いた。その音は、まだ制服の頃、進路希望調査書の小さな枠の中に、精一杯の未来を描く私を浮かび上がらせた。
 4月。私は大学生になり、これまでの生活は一変した。でも、そこにあったのは、知らない建物、知らない顔、知らない景色、知らない匂い。これまで見ていたものからは、遠く離れた場所のような気がした。入学式の帰り道は、新しさを主張するかのように薫る桜の匂いを、複雑な気持ちで嗅ぎながら歩いた。
 駅の改札。ピンコン!と道を閉ざされた。赤いランプの横で、”NO”と受け付けてもらえなかったのは、高校のときの定期券。うっかりしていた。慌てて新しい定期券を探した。鞄にはない。焦ってポケットに手を突っ込むと、発見。あった。突き刺さる沢山の視線と溜息が背中に注がれた。行き先は以前とは全く逆方向。未だ乗り換えには慣れず、やたらと人の多い列車に足をもたつかせながらなんとか乗っている。逃げるように改札を潜り抜け、定期券を新しいものに入れ替えた。

トントン、という音が答えを急かす。
「…書け、ません」
ようやく搾り出した声に、彼はふうん、と言った別段興味がないかのような顔をし、ゆっくりとした動作で頬杖をつくと、机に向き直った。
「…え?」
当たり障りのない「何で?」を彼に投げかけると、彼は黒板を指差した。
「俺、目悪くて」
彼の指先から指し示すものを点線で繋ぐように辿ると、そこには“お勧め本「檸檬」”とあと二、三個述べられて書かれていた。そう言えば、先生が生徒を適当にさして「今まで読んだ中で一番印象的だった本は?」と、聞いていたような気がする。この人、興味がなさそうな感じだったのに、本当は黒板の字が読めなくて困っていたのだろうか?私は、改めて黒板の文字を食い入るように見たが、先生の字があまりにもミミズすぎて、ただでさえ難解な漢字なのに本当の“檸檬”の字が分からない。
「すみません…」
「いやいやいや、ありがとう」
眠そうな目をした彼は、この場所にすでに居慣れた感じがした。年上の先輩だろうと思った。いまだに緊張が解けないまま、私も彼にならって前に向き直ろうとしたとき、彼の後ろ髪が少しだけはねているのが見えた。その瞬間、何だか段々と話し掛けられたのが嬉しくなって、何とか会話を繋げようと必死に”つなぎ”を搾り出した。これは、友達を増やすチャンスかもしれない。勇気を振り絞った。そして、
「バラ、は書けますか?」
彼は「?」という顔をした。しまった、すべった。瞬時に体から全身の血が引いていくのが分かった。不思議ちゃんと思われたに違いない、穴があったら入りたい。そして、数十秒沈黙を置いた後、彼は真剣に考えた様子で答えた。
「…書けない」
 妙な間が滑稽で、思わず噴き出してしまった私を見て、彼は、不思議そうな顔を浮かべながら首を掻いた。自分の笑い声がはじめてざわざわの中に聞こえた。回ってきた出席表に目を落とす。彼は「梶井」と言うらしい。そして、同じ一年生だという事が分かった。私はその隣に自分の名前を書き込んだ。
 講義は何だか難しい話を延々聞かされているだけのものだった。寝ている人、机の陰に隠れてメールをしている人。ふと、右隣が気になった。気付かれないように、周りを見るふりをして首を左右に動かす。横目で見てみると、…彼は寝ていた。しかも、私が見た瞬間は決定的で、頬杖が見事にかくん、と外れて、それはそれは漫画のように、それはそれは強力な頭突きを机にお見舞いしていた彼の姿。私の数えた限り、合計3度。尋常な戦数ではない。
 終業ベルが鳴り、「長かった〜」と誰もがベルと同時に帰り支度を始めた。そんな言葉を聞きながらそうかな?と首を傾げた。私は不思議と退屈していなかった。

 以来、この授業が始まると、決まって彼は私の視界に存在していた。私は、彼の目の先にあるものを追いかけた。彼の興味の対象は様々で飽きなかった。あくびする猫、きらり、と光る先生の頭。天井、無造作に描かれた机の落書き、窓の外。そして、彼はペンを器用にくるくると回す癖があった。それは決まって講義が中盤に差し掛かる頃で、それが合図であるかのように眠りに落ちていった。
 今日は何を見ているだろう。私から3列前、左斜め前の猫背の背中。いつものように彼の視線を辿っていくと、ある一点に定まった。それを目にした瞬間、胸がどすん、と鈍い音をたてた。何かで殴られた後、抉られた感じがした。視線の先にあったのは、女の子。彼女の手には、文庫本が握られていた。白地に黄色い楕円が描かれたシンプルな表紙。あと少しで読み終わる残り少ないページを丁寧に彼女はめくっていく。指の綺麗な女の子だった。その日、彼の横顔は机に戦いを挑むでもなく、ただ一点を見つめていた。
 今日の授業はやたらと長かった。ベルと同時に誰よりも先にこの部屋を出ようと出口を目指した。と、私より先に誰かの手がドアノブに伸びた。
「あ」
 梶井君だった。
「ああ、」

 私たちは特に話すでもなく坂を下った。彼は、ちょっと待ってて、と駐輪場へ向っていった。
「荷物のせる?」
 そう言って現れた彼の右横には自転車が。何でもない姿なのだけれど、どうしても彼が”自転車”というイメージとは程遠く、その異様なコラボレーションに笑えた。
「これで毎朝来てるの?」
「うん、そうだよ」
「あんまり…似合わないね」
「何だよぉ」
 噴きだす私を前に、そう言って彼は照れくさそうに笑った。すると彼は、何かを探すように鞄の中を探り出した。鞄の口から、色々なものがちらちらと顔を出す。ペンケースやらファイルやら、彼の持ち物はすべて黒や灰色、紺色など、そのまま夜空を切り取ったような色ばかりだった。つぎつぎと鞄の底から沸いてくる彼の持ち物を眺めていると、白い文庫本が、瞬間、姿を見せて消えた。白地に、黄色い楕円。見覚えがある色たちがモンタージュのように組み合わさって浮かび上がった。黄色い楕円、あれがレモンだったことを知った。ただの円だと思っていたのに。「梶井基次郎・檸檬」とかかれた表紙に描かれた、真っ白く四角い空間の中になじんでいる様で馴染んでいない檸檬の色が、瞼の裏に焼きついた。
「いる?」
「いる?」という言葉と同時に、薄黄色の丸い物体が二、三個視界を横切り、私はそれを両手で受け止めた。メントスだった。
「ありがとう」
彼は、自転車には乗らずに転がして歩いた。
「あ…乗って良いよ?」
彼は、「俺、徐行出来ないから」と言った。カラカラと響く車輪の音に、胸の奥が熱くなって、思わず彼にもらったメントスを握り締めた。
「じゃあ…私、後ろに乗ってもいい?」
手のひらの中で、メントスが少し溶けていくのが分かった。
「だって、そうすれば徐行しなくてもいいし」
こんな卑怯な言い訳を並べる自分がいることをはじめて知った。どうか、嫌な顔をされませんように。アスファルトに向けていた視線を彼に向けた。
「いいよ」

 自転車の後ろに乗るのは何年ぶりだろう。まずは乗り方に困った。あんまりもたもたしてもいられないから、脳内シュミレーションでの試行錯誤の末、結局、とある映画を真似て横に座ることに決めた。
「いくよ」
 彼は、蹴りだした足をすぐ元に戻した。何でだろう?と、思うより先に、はっとした。
「あっ、重い?」
 今更、ダイエットしておけばよかった。そんなどうしようもない事を考えた。そもそも、こんな場面に遭遇すると分かっていたなら、もう少し考える事が出来たのに…微かに自分を呪いながら降りようとした。
「ん、いいや、そうじゃなくて。ちゃんとつかまってないと落ちるよ」
 彼の目線は私の手元に落ちていた。サドルの下を掴んでいた手を、彼の背中に近づけた。
「そうそう、いくよ」
 私には心臓の音しか聞えていなかった。地面を蹴り上げると、景色が流れだした。加速していく。景色は流れていくのに、時間は普段の3倍くらいゆっくりと息を潜めながら流れていくように感じた。私は手に少しだけ、力を込めた。
「梶井君…」
「バラ、って漢字で書ける?」
 風が前髪と袖を揺らしていく。背中越しに、彼が笑った。
「書けない」
少しはねた後ろ髪を見つめながら、さっきから呪文のように反芻していた言葉を呟く。
「…じゃあ、レモンは?」
 多分、数十秒。車輪の音だけになった。
「書けるよ」
 …知ってるよ。
 彼の視線の先には、「檸檬」と彼女がいたのだから。通り過ぎた風に夏の匂いを感じた。気がつけば春は終わりを告げ、景色は綺麗な青に染まっていた。生温い風を受けながら、速度を上げて坂を下ってゆく。何だか心地よい匂い。風も、景色も、何もかもが鮮やかに彩られて見えた。
 舌の上で転がしたままのメントスを噛むと、すっぱくて、ほの甘い曖昧な味が広がった。それが何味であるか、私にはすぐに分かった。

千田由香莉 課題11/「コミュニケーション・ツール」 2004年11月16日(火)12時04分51秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

 携帯電話を使ったコミュニケーションの話。用いられた「携帯電話」が現代っぽくて良かったと思います。これが携帯普及以前だったなら、どんなコミュニケーションで成り立たせようか?とか色々考えてしまいました。
 出だしも良くて、全体的に良かったと思うのですが、「杉山さん」について気になったところがあります。

「……あたし、二年B組の杉山」
(省略)
「あぁ、転校生の杉山さんだね。どう? 学校は慣れた?」
 ぼくは何気ない会話を試みた。
「そんなこと、どうだっていいじゃない。十円玉がなくなるから早く話をつけたいの」

 この辺りの流れが長いなあ、と正直思いました。私が読んでいて思ったのは、早く話をつけたいのなら、「何時に何処で待ってる」と単刀直入、一方的に決めた後、ぶちり、と切ってしまえばいいのでは?彼女ならそれが出来たはずなのでは?と思ってしまいました。あと、後半の

 <彼女はスカートの上に両手を置きながら、うなずく。>

 という姿。杉山さんならではの雰囲気が無くなってしまったな、と思いました。実は…と秘密を明かすということから、ちょっと普段と違う変化があったとしても、これは分かりやすすぎて、物足りなかったです。せっかくのクライマックスなので、杉山さん→知らない彼女の姿へと変わる瞬間を、もうちょっと練ったならもっと劇的になって良くなると思いました。最後まで気が強い杉山さんで、垣間、かわいらしいなと思える…そんなのが見たかったです。それから、私も言えたものじゃないのですが、「台詞」の後に改行が入ってない所がいくつかありました。注意です。
 最後に、冒頭でも書きましたが、「コミュニケーション」「携帯」という図式が何か、本当にいいなと思いました。正しく”今”なところが。なので、たくさんの意味をこめてこのコピーにしました。

 

松本紗綾 批評課題11/プロとアマチュア 2004年11月16日(火)01時15分17秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答

面白かったです。普通に笑ってしまいました。ブロッコリーのくだりで。
学校の作文を皆で読もう!みたいな授業は、正直私は嫌いでした。素人の作文なんか読むより、プロが書いたものを読むほうが、比べ物にならないぐらい面白いからです。アマチュアは、プロには勝てないとずっと思ってきたし、これからもその考えは変わらないと思います。でも、この作品は、面白かったです。よく想像できたし、共感も出来、身近に感じることが出来ました。こんな作品が書けるのは、凄いと思うし、それまでにいろいろ苦労をしてきたのだろうと思い、考えさせられました。
ただ、そこは重視していなかったのか、狙いなのかはわからないけれど、驚きというような意外性がないように思えました。プロかプロじゃないかの違いなのでしょうか…

五十嵐 舞 批評11/そんな時期あったような… 2004年11月15日(月)11時19分22秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答


まあ、私も似たようなことをしていたな(携帯は持っていなかったけど)…授業しながら内職と呼ばれる英語の和訳などの宿題を国語の時間にやったり、窓側の席にいればそこ見える富士山や丹沢山系をみていたりしていたことを思い出した作品でした。まあ、真面目に受けていたほうらしいですが、地元では進学校って言われていたわりにはあまり教師の方々は五月蝿くなかったですね、そのへんは。自由と規律の精神を尊んでいたのかただ面倒だっただけなのかは判りませんが。
 まあ、基本的には読みやすい印象をうけたのですが、読みやすい分=あっさりしている分あまり後味が残ると言うか読後の内容に対するインパクトに欠けている感じを受け、また未消化なまま終わった感がありました。それを具体的にいうとするなら物語に入る序章のような感じであり、映像にするなら映画のポロローグ的な部分でこれから二人の恋愛というか心の交流が繰り広げられるんだな、さあこれからどうなんだろうな?この二人と思った瞬間ブチッという感じで切れていてすごく読んでいる側としてはあまり読後感が良くないですし、これで続きがあるものならいいのですが、終わり方としては私個人的には好きではないですし、この締めくくりの仕方は問題だろうと思います。せっかく文章の話の内容としては良かったほうなのにこの最後の終わり方で全て台無しに近いです。「結局なにがいいたかったのか・何を表現したかったのか」が明確に読者側に伝わってこない感じなのです・・・残念!!というかこういう風に次に続けたい終わり方にするにしろもうちょっと文章は必要ではないでしょうか。
 −その反抗的な表情は悪くない。
これから彼女はどんな表情をぼくに見せてくれるのだろうか  というような感じで文章をいれればもうちょっと違うで雨宮君の雰囲気を壊さずに締めくくれるような感じするのですが、こんな感じは駄目ですか。
 すいません、なんか加賀さんと違って辛辣な厳しい意見というか批評を述べてしまって、一読者として判らないというか納得出来なかったのです。まあ、雨宮君がこの終わり方にした意図があるかもしれないので、それを授業で聞きたいものです。ではまた。

加賀麻東加 批評11/ハワイとロシアの温度差 2004年11月12日(金)12時49分26秒
▼課題と連絡:批評課題11/雨宮弘輔「暖かい受信」批評 への応答


今風の分かりやすい話だなぁ、というのが印象でした。

勝手な想像ですが、この話をドラマ化すると主人公の男の人は「ウォーターボーイズ」に出てる男の子達の中の一人か、森山未来(だったかな?最近確か「世界の中心で愛を叫ぶ」の大沢たかおの青年時代の役をされた若手俳優さん)がピッタリです。
お相手役の女の子は土屋アンナ(モデルさん)でしょう!ちょっと気が強そうな所なんか彼女のイメージに合ってます。(知らない方はぜひファッション雑誌を!)
BGMはスピッツの「空も飛べるはず」とかどうですかね!?
舞台はすごーく素朴な町の家並みがあるところだったり、ちょっと年期の入った校舎の学校が頭にうかびました。
結末が爽やかで、今時の若者の悩みだとか胸の中の孤独や寂しさが等身大に描かれていてウケが良いと思います。
私のお気に入りが「ぼく達の温度差はハワイとロシア位にかけ離れているようだ。」のフレーズ。かなり笑えましたね。相当離れてる!とツッコミたくなるくらい。
あと「でも、ごめん。メールを読んでいるのは、君とは何の関係もない数学とブロッコリーが嫌いな男子高校生なんだよ。」のところ。ブロッコリー…!可愛すぎる!
気づいた点は雨宮さんの文章や表現に独特の面白さが見えました。
例えば「ぼくの笑顔は崩れた。顔の筋肉が抜けていき、ハニワのように口をぽっかりと開く。心臓が一回、大晦日の寺鐘のような音をたてて鳴った。その振動が血管を伝って脳に届いた。昔の漫画でよくみる『ガーン』という文字は、このことを示すのだろう。」など、凝った表現で想像しやすい。味がある。
それと女の子が女の子らしいのが良いと思います。
この女の子の台詞ですが
<あたしね……学校に行くのが、すごくツライの。きっと、原因はあたしにあるんだろうけど、みんなが話しかけてこなくなった。だから何だか、透明人間になった気分だよ。ううん。透明人間なら、まだマシかも。だって、みんなから見られる心配がないものね。あたしはね、一人ぼっちの自分が、周りから見られていると思うことがツライの。>
よく書けたなぁと思います。
私も高校三年の時似た事を思いました。中途半端に存在があるならばいっそのこと誰も見向きもしない透明な人間になりたいとか。
内容の面で言うと、確かに爽やかで読みやすいんだけれども、ちょっと物足りなさを感じました。
隠し味の塩少々を忘れてしまったような、微妙な所なのですが。
何がそうさせるのか…と考えると先が読めてしまったことがそうさせたのかもしれません。これは狙ってそうしたのですか?
それと、もっと女の子の弱い部分を見せて欲しいと思いました。
この作品のイメージは、一つの完結した作品というよりはこれから起こる話のプロローグ的なものに感じました。
ユニークさや文章表現の技術が見習うくらい持っていらっしゃる方だと思うので、内容に少し工夫を凝らすだけですばらしいものにかわるのではないでしょうか。
これからもがんばってください!


松本紗綾 批評課題10/作者と読者の知恵比べ 2004年11月10日(水)19時30分02秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

ずっと読み進め、最後のオチ(という言葉で良いのかはわかりませんが…)で、「…ぅわ…」と思わず声を出してしまいました。作者の意図にまんまとひっかかったな…という感じです。
恋人の死という、現実逃避したくなるような事実を持ちながら、現実に生きなければならない…というなんともいえない部分が、バイトなどといった日常を描くことで、伝わりやすかったのではないかと思いました。
ドラマや、映画を見てもよく思うことなのですが、結末を知らないときは、何てことない台詞や、行動でも、結末を知ってからもう一度見返すと物凄い意味を持っていて、感情がさらに…となることが多いと思うのです。(もちろん、作者がそこまで計算したからこそだと思いますが)この作品も、一回全部読んだ後にもう一度読み直すと、また読者がやられた!と思える何か大きなものがあると面白いのではないかと思いました。(じゃあ、どんなことがと聞かれても、これだ!と言えない自分がもどかしいですが)

提出時間が遅れてしまいごめんなさい。

雨宮弘輔 批評課題10/『純』 2004年11月10日(水)19時09分52秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

 丁寧に物語を描いている、と感じました。
 主人公の一日の出来事が目覚めた時からラストまで、順序良く描かれているので読み易かったです。それと流れる汗、夕陽の落ちてゆく状況が細かく描写してあり、頭のなかで具体的に想像できました。
 高沢さんの文章は明確で、緻密な部分があるので、読者に対し「最後まで読ませる力」があると思います。この力が今後、更に伸びてゆくのを期待しています。
 ただ、出だしを〈「あ」〉という言葉のみにしてしまったのは残念に思います。そこを評価する方もいますが、ぼく個人としては少し違和感を持ちました。
 この方法は読者の目を惹きます。多少、目が疲れていても「まず読んでみるか」という気にさせます。それ位、賢い一行です。しかし……というか、だからこそ、この「あ」という主人公の驚嘆の声を用いた作品が多くなっています。ぼくが高校時代に受けた文章作法の授業で「あ」という出だし(もしくは他の一文字)を使った小説が多く発表されました。それだけ誰にでも使える妥当な手法なのです。
 高沢さんの文章力を考えればこそ、非常にもったいない冒頭の一行だと思いました。
 それと主人公が、恋人が死んだ事実を忘れるというラストに引っかかりました。主人公は、恋人に関する過去の辛い部分だけを忘れたのでしょう。しかし、結構この自己防衛のための記憶喪失というのは難解で、小説として扱う際には注意が必要になります。これは、授業の時に話したいと思っています。
 最後に、期待していた通りタイトルが最高でした。「夏の足跡」という表題を観ただけで、ちょっと切ない気分になってしまいました。

 ※投稿をする際に、ミスをしてしまって締め切り時間を過ぎてしまいました。申し訳ございません。


室橋あや 批評課題10/悶々とする。 2004年11月10日(水)17時24分29秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

設定も状況もとても分かりやすくて、良かったです。
ただ、どうしても何度読んでも物足りない気がしてしまいました。
恋人の描写があまりないので、主人公の悲しさも特に理解できないまま、最後に爆発してしまって置いていかれた感じです。
最初、「あ」で始まるセリフの部分は好きなんですが、そのあとの「うわあ」とか、後で出てくる叫び声もちょっと投げやり過ぎかなと思いました。漫画では絵と一緒に雰囲気が出ても、文章だと絵がないぶん説明が足りない上に、乱暴に思えてしまいました。
!とか?と同じで視覚的な効果が強いものは扱いが難しい、と考える今日この頃です。

滝 夏海 批評10/正の引っ掛かり・負の引っ掛かり 2004年11月10日(水)16時22分22秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

 高澤さんの作品は、心理描写や情景描写などで惹かれる書き方をしている部分があります。が、今回はそれ以上に技術的な違和感が目立ってしまったように思えます。
 私が一番強く引っ掛かったのは、出だしの短い台詞と地の文が何度か重なっている部分です。方法としては面白いのですが、一人称で書かれている文なので生かし切れてないように感じます。カギ括弧を外し、地の文に埋め込んでしまっても良かったのでは。
 また、他の方も指摘していた「うわあああ」の叫び声や、蝉の鳴く「ジージージー」なども気になります。擬音語の類は情景を彩る要素として有効ですが、入れ方によって逆に安っぽくなってしまいます。蝉は直前の描写が綺麗なので、抜いてしまうか前回の「ファサファサ」のように一捻りした独自の擬音語にした方が、しっくりくると思います。入れないでこの間を表すのはなかなか難しいのですが、そこが腕の見せ所ですよ。
 読んでいて、少し上滑っている印象があるので、登場人物の設定や人間関係、ここに至までの流れなど、もう少し掘り下げてからリライトしてみたらどうでしょう。今は埋もれている良い部分がもっと光ってくると思います。

城所洋 課題10/適切な調理 2004年11月10日(水)13時43分28秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

 物語は非常にシンプルでした。
 亡くなった人を忘れていたのに、ある日突然思い出して、という話の王道ですね。

 ただしかし、あまりにもそれに頼りすぎている気がします。そういう話をどこかで聞いた事があるから、あるいは、その展開がすでに確立されているから、あえてこの短さでやれたのだと思うのですが、実際の所、これが初見であれば「・・・?」と思うくらいの短さでした。

 まず、最初の出だし。一個の物語としては面白い出方なのですが、内容にはそぐわないと思います。
 いきなり「何か(大切な物)を無くした!」と言われても、それに対する感情移入もまだ出来ていないので、本当に単なるアイテムとしてでしか使われていないです。そしてそれを補うかのように、取扱説明書のようなアイテムの講釈。
 その方法は良いと思うのですが、今回のケースにおいては逆効果のような気がしました。

 そして、最後の結末。これも、王道パターンですね。
 しかしながら、それに対する伏線があまりにも少なすぎる。
 「果たしてどうなったんだ!?」という気を起こさせる前に、ただ淡々と物語は進行していき、何時の間にか終わっていた、という感じでした。


 それを含めて、今回の作品の全体的な批評としては、感覚としては、まるで鋭利な刃物で適切なシーンのみを鋭く切り取ったように思えました。
 だが、今回のテーマは感動物。つまり、主菜(大筋)ではなく、その脇にあるサイドメニューに力を注ぐべきだったのだと思います。
 それがもし、肉(ストーリー)本来の美味しさ(面白さ)を味あわせたいのであれば、それだけドン、と鉄板の上に乗せて塩と胡椒で食べさせればいいのですが、今回のようなものは、その肉にありつくまでに他の様々な副菜を経て期待を膨らませて、それでようやく口に入れた時の感動を覚えさせるのが狙いだと思うのです。
 
 つまり今回においては、材料も良かった、調理技術もある、でも調理方法が駄目だった。そんな風に感じました。

寮美千子 嘲笑は批評ではない 2004年11月10日(水)12時27分07秒
野島 明菜 課題10/ははは への応答

作品は、作者が自分の魂を剥き出しにする場です。
批評は、その魂と真剣に関わる場です。
それもまた、魂の真摯な表現の一つです。

ですから、批評というものは、いつでも真剣勝負。
相手に敬意を払いつつも、忌憚なき意見を語らなくてはいけません。

ふざけ半分の批評はもってのほか。
作品に瑕疵や矛盾があったとしても、それを突くときには、
正面切って、人としての品性と礼節を保って、
きちんと語らなければなりません。

そうしないと、それは批評ではなく、
単なる嘲笑になります。
相手を貶めることになります。
対等になり得ません。
そして、そこからは対話は成立しません。

作品に対して忌憚なき批評・批判をすることと、
相手の人格を否定したり傷つけることは、まったく違うことです。

わたしはこの授業で、作品を書くスキルを向上してもらうことだけではなく、
まっとうな批評の態度を身につけてもらうことを望んでいます。
ここで、そのような批評の仕方、語り方を身につければ、
社会のどんな場所に行っても、他者との対話が成立するでしょう。
いいえ、他者と対話するためには、その方法を入り口とするしかないのです。
「教養を身につける」とは、そのように、
だれとでもきとんと対話できる能力をつけることだと思っています。

>死んだら、かよちゃんより先に電話がくるだろうよ。

という言葉遣いは、批評の言葉になっていません。
親しみを表現しようとしたものかもしれませんが、
却って作者を馬鹿にしたようにしか響きません。

タイトルの「ははは」というのも、嘲笑にしか見えません。

このような言葉遣いは、それだけで相手との距離をつくり、
対話の機会を失わせます。
相手を貶めることになり、同時に、
自分自身を貶めることにもなるのです。

きちんとした批評の言葉で、もう一度書き直してください。

野島 明菜 課題10/ははは 2004年11月10日(水)11時07分09秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

「あ」という始まり方がとても読み手のワタシを引き込んでくれました。ワタシ好みの始まり方ですね。
かよちゃんと浮気していたという展開と予想していたが、まさか彼、死んでしまうなんて。ビックリしました。現実味にかけていて。死んだら、かよちゃんより先に電話がくるだろうよ。

菊池佳奈子 批評10/密度 2004年11月10日(水)10時29分54秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

恋人が実は死んでいて、それをずっと自分で認められなくて…
ストーリーはわりとありきたりまではいかないものの、よくある話で終わってしまう。
けれども、このテーマで流れで最後まで文章の密度が欠けることなく作られている。
短編を書こうとすると、一部だけぼこっと書き込みすぎたり、反対に全然書き込んでないところがあったりするのが、文章量のバランスをきちんと保っている。
それが高澤さんのすごいところだな。と思います。
あと景色が止まるシーン。あそこの書き方はすごくうまい!
すんなりと情景が浮かんできます。
ただ、いまひとつ足りないのは、表現力だと思います。
わりと頭の中にすでに入ってたりするストーリーだけに、高澤オリジナルになるには、なにか強いものが必要。
そこで、ひとつひとつの情景をもっと書き込んでみたらどうでしょうか。
孝紀についてもっと書き込んでも良いし、みっちゃんがでてくる部分を膨らませても良い。
実は…ってオチを高澤さんが意識しながら書いたのかなぁって思うくらい前半がなにか抑え込まれている感じをうけます。
あとすごく気になったのは句読点の「、」がほとんどないこと。
そこまで読みにくい印象はうけませんでしたが、やはりどこか奇妙に感じました。
一文が長い場合はどこかに入れた方が、すんなりと入ってくると思います。

次の作品も楽しみにしています。
がんばってください。

土橋明奈 批評10/白く消え透明に残る輪。 2004年11月09日(火)15時22分41秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

何だか最初はSFかファンタジーかと思ったんですが、恋愛物だと途中で気付きました。
映像を文章に移行した様な読み心地で、まま情景が浮かび易かったです。
純粋に女の子を真っ直ぐに書けているので、読んでいてほわりと気持ちが和みました。
」前の。は気になりました。
主人公の女の子はこの前日や前々日は一体どう過ごして居たのだろうか、その彼は一体どの位前に亡くなったのだろうか、もやもやと気にさせます。主観で進んでゆく中で、説明的だったり感情的だったりしていて何処の時点からの目線なのかが曖昧で落ち着きませんでした。ドラマチックでリリカルでセンチメンタル。やっぱり指輪が何処へ消えたのかが気掛かりで、この前後の話は在るのでしょうか。実際にではなく、ストーリィとして。それと、どんな事柄に触発されてこの作品は出来上がったのか教えて下さい。

千田由香莉 批評10/「指輪の行方」 2004年11月09日(火)05時43分28秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

 出だしからすらすら読むことが出来ました。ですが、中盤に差し掛かる手前、かよがバイトに出掛ける前の場面では、ところどころの語尾が少し読みにくかった気がしました。「〜だ」などの形態から急に話し言葉のような「また探すか」という生(?)の声になってしまうところで、読み手の私のリズムが少しもたついてしまった気がします。
 あと、ラストの号泣シーン。既に書かれていましたが、私も台詞なしのほうが良かったなぁ…と思います。主人公が彼方へ追いやろうとしていた会いたい気持ちを、咳をきったように一気に吐き出す。あとからあとから願望や後悔、色んなものが込み上げてきて自分でも処理できない、収集がつかない…切ないです。でも、その折角の気持ちが泣き声の台詞ひとつでチープなものに思えてしまいました…。
 個人的には、友達のみっちゃんとの会話シーンが好きです。結末を知った後、もう一度読み返すと、「みっちゃんは話し掛けてこなかった」って一文に、みっちゃんの背中が浮かんで、何も知らない主人公がそれを見つめながら「?」を浮かべている図が、描かれてもいないのに浮かんでしまい、この図、すごく痛いなぁと思いました。あと、勝手に気になった事なのですが、リング=大切なモノの紛失…。孝紀と共に指輪は永遠に戻らないままなのでしょうか?読者として気になります…。

児玉武彦 批評課題10/どんでん返しの難しさ 2004年11月09日(火)02時21分02秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

『サイコ』や『めまい』、『情婦』に『シックス・センス』など最後のどんでん返しに全てを賭けた映画などでは、必ず最初に「どんでん返しがあるよ・・・」と断りを入れているので(プロモーションや作中の雰囲気で)ただ自分達はそれを待ってればいいわけですが、今回の「夏の足跡」では伏線となるエピソードが脆弱だったのか恋愛物とどんでん返し物とが不自然に同居してしまっている感じが否めませんでした。どんでん返し物の掟は読み返してみたときに伏線となった箇所を見つけて「やられたなぁ・・・」と納得させる力があることだと思います。だから指輪がないという冒頭シーンなどで、ただ単に「なくしてしまったんだろうなぁ」と納得させずに何か強烈に違和感を抱かせることが必要だったんじゃないかなと思います。また、それを知った友人の反応も読み手からすると「恋愛のもつれの予感か?」位で納得してしまうのではないでしょうか。しかし、普通の恋愛小説風にどんでん返し物をやっちゃうっていうのは新しいとも思いました。

露木悠太 批評10/文章の探究 2004年11月09日(火)01時59分04秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

【課題2/夢物語】では扉越しの水中で話す魚について、『扉に話しかけるとビー玉をコンクリートに落としたようななんとも不思議な声が返ってきました。』という比喩がありましたね。僕はこれがすごく好きでとても印象に残っています。逆に【作品2/夏の足跡】では、そういった要素がほとんどなく、それが良くもあり、悪くもあると感じました。
良いと感じたのは、物語が一点に向かっているため、イメージがずれることなく最後まで離れず読めたということです。悪いと感じたのは、傍観するように読めてしまったということです。主人公や登場人物の表面的なところしか感じることができず、深く入り込むことはできませんでした。叫んだ声や流した涙が、他人のものにしかならなかったんです。
わかりやすく書くのは大切なことだと思います。でも、解かりやすい、平易な文章ってすごく難しいですね。深いところで描く力が無いと、やっぱり良い文章になってくれないと思うんです。読み書きしながら丁寧に言葉を探すこと、自分の(ピッタリくるような)言葉を探すこと、それが一番大事なんじゃないかって僕は思うんです、…どうでしょうか。

『 涙が溢れる。そうだ、私は忘れようとしていたんだった。幸せなままでいたかったから。だって孝紀とずっと一緒にいたかったから。汗が流れる。孝紀はもういないんだ。いくら探しても見つからないんだ。どこにも、どこを探しても。もっと好きだっていっぱい言えばよかった。私が好きだってもっといっぱい言えば孝紀は死ななかったかもしれない。そんなこと関係ないのはわかってる。でももっと一緒にいたかった。いなくなったこと信じたくなかった。信じられなかった。声が聞きたい。触りたい。キスしたい。抱きしめたい。会いたい会いたい会いたい。』
最後の一歩手前、すごく素直な感情。メロディーを付けたら歌になってしまいそうです。こういう部分を、読者にもっと分けて欲しい。メロディーを付けていくように、【課題2/夢物語】で垣間見ることができた読み手を引き込むような表現を加えて、なお解かりやすい文章で書けたなら、すごいと思います。高澤さんの言葉を伝える文章の探究を、ぜひ、これからも頑張ってください。

越智美帆子 批評課題10/ちゃんとした物語構成 2004年11月08日(月)21時47分55秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

 最初はどんな恋愛ものなんだろうと思いながら読んでいましたが、孝紀の位牌と対面するシーンで物語は一転、この話がただの恋愛ものではないことを思い知らされました。
 死んでしまった恋人が、まだ死んでいないと思い込む主人公という構図は多々見かける物語構成ですが、この物語では冒頭の指輪をなくしてしまったシーンが彼の死の伏線であり、それがちゃんとラストシーンに繋がっていて、思わず納得させられました。
 特に秀逸だと思ったのは、

『蝉の声がまだする。ジージー。ジージー。
 ジージ…。

 蝉の声が止んだ。
 夕日の色も消えた。
 丸いオレンジも消えた。

 孝紀は笑顔を私に向けて待っていてくれた。
「かよ、なんだよ。いきなり」
 彼の太く響く声が私の耳に響いた。響いたが聞こえなかった。』

このシーン。ただ、「実は孝紀は死んでいたのだった」とせず、主人公の感覚情報で彼が死んでしまったことを描写しているところが素晴らしいと思いました。ただ、一行空けはいらないと思います。間の三行を際立たせたいのであったら、改行のみ、もしくは、例えば「蝉の声が止んだ。夕陽の色も消えた。それから、丸いオレンジも消えてしまった。私は突如、静かな世界に放り出されてしまった。」とか、前後の文章を微妙に変えてもう少し行数を多くして書いてみてはいかがでしょうか。それと書いていて気づいたのですが、夕日の色が消えたのなら、丸い「オレンジ」ではないのでは? それとも、夕日の射す光の色が消えたということなのでしょうか。
 次に、主人公が叫ぶシーン。
 この物語では見せ場だと思うのですが、「うわあああああ」という文字を目にした途端、肩透かしを食ったような気分になってしまいました。
 この場合、叫び声を入れるよりも、描写のみで叫んだことを表したほうがいいと思います。
 その後の「涙が溢れる〜会いたい。」までの主人公のモノローグ。主人公が孝紀をどれだけ愛していたか、ということを読者に感応させてなんぼのシーンだと思うのですが、あまり伝わってきません。イメージとしては、泣きながら説明してる感じ。つまり、少し説明くさいのです。
 孝紀のことがすごく好きだった、だから死んだとは思いたくなかった、ということをそのまま説明してしまったことによって、良さが半減しています。
 孝紀のことをどれだけ好きだったかということは、彼との思い出や彼の声や肌の感触、彼といたときの自分の気持ちなどを描くことによって自然と伝わると思います。
 いろいろ書きましたが、高澤さんのオリジナリティが前面に押し出されていて、とても良い作品だと思います。
 もう少し枚数を多くして、それぞれの情景描写を丁寧に描くことによって、さらに良いものが出来上がると思います。
 えらそうにすいませんでした。



五十嵐 舞 批評課題10/ 良かったけど・・・ 2004年11月08日(月)01時10分46秒
▼課題と連絡:批評課題10/高澤成江・短編「夏の足跡」の批評 への応答

高澤さん自体の作品は全体この文量でよく書けているほうだと思います。ただ、ネタに使っているものは正直私にはちょっとツライものがあって、というかこの主人公の気持ちが痛いほどわかってしまうので・・・理由については授業で話しますが。一つ気になっているところは、主人公がバイトでの仲間とのやりとりがあって、帰りに寄り道して(亡くなった)彼氏の家に行き着くまでの展開が速すぎるのではないでしょうか、また彼がどうして亡くなったのか、事故や自殺など何故主人公が好きって言えばよかったという後悔の理由が不十分・・・というかこの分量ではそれをうまく描くのは難しいのかしれませんが、もうちょっと手直し、この前後にエピソードを書けばちょっとした青春小説が書けるかもしれません。ちょっときついことをいってすいません。次回作も期待しています。

児玉武彦 自身満々、外れなし! 2004年11月04日(木)10時11分39秒
▼課題と連絡:課題8/わたしの勧める3本の映画 への応答

1.ディア・ハンター  原題:THE DEER HUNTER  1978年アメリカ
監督:マイケル・チミノ/出演:ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、
ジョン・カザール、メリル・ストリープ

[ストーリー]
ベトナム戦争に参加したペンシルバニア州の若者の変化を通して、戦争がもたらした狂気をリアルに描いた、青春映画秀作!!監督のマイケル・チミノは、全編を大きく三つのエピソードで構成し、そのいずれも緻密に描く...

[コメント]
スピルバーグ、ルーカス以降のジェットコースター映画に慣れてしまった人には前半1時間は苦痛かも知れない。しかし、僕はこの作品以上の戦争映画(特にヴェトナム戦争もの)を見たことがない。3時間ちょっとという長尺でも最後まで我慢して観てみる価値はある。あまりにも有名なロシアンルーレットのシーンは物議をかもしたが、観ているこっちが気が狂いそうになるほどの臨場感。今ではすっかりおじいちゃんのデ・ニーロとウォーケンの鬼気迫る演技合戦は映画史に残る名場面。必見!

2.殺人の追憶 2003年 韓国
監督:ポン・ジュノ /出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン

[ストーリー]
ソウル近郊の小さな村・華城(ファソン)の用水路で、手足を拘束された女性の変死体が発見された。地元刑事のパクは捜査に当たるが、約一か月後、何ひとつ手がかりのないまま新たな犠牲者を出してしまう。ソウル市警はついにソ刑事を派遣し捜査にあたらせるが、性格も捜査方法も違うパクとソは対立を続け、容疑者を特定できない焦りから衝突ばかりを繰り返す。そんな彼らを嘲笑うかのように、増え続けるこの猟奇的殺人の被害者たち。しかし、ついにパクたちは有力な容疑者を特定する―。

[コメント]
日本の映画誌では最も有名なキネマ旬報で、多くの批評家から早くもサスペンス映画ベスト10に挙げられた名作(その中には『太陽がいっぱい』、『第三の男』など超名作も含まれている)。
次々と起こる猟奇殺人に追い詰められ、次第に理性を失っていく刑事達の姿にゾッとさせられる。語り口調は王道ながらサスペンスとしての面白さは一流で、中盤少しドラマチック過ぎて冷めてしまいそうにもなるが終盤での盛り上がりは、それを帳消しにして余りある迫力である。坂本順二もコメントしていたが、正に若かりし頃の黒澤明を彷彿させるパワー。『天国と地獄』にも負けずとも劣らないエンターテイメント・サスペンス。今後アジア映画を牽引していく一人になるのは間違いない。

3.ファイト・クラブ  原題:Fight Club 1999年 アメリカ
監督:デビッド・フィンチャー /出演:ブラッド・ピット、エドワード・ノートン、ヘレナ・ボトム・カーター

[ストーリー]
不眠症気味のエリート青年 ジャックの人生は不思議な魅力を放つタイラーと出会ってから激変する。自宅の火事ですべてを失ったジャックはタイラーの家へ転がり込み、それを機に2人は駐車場でファイトするようになる。やがてそのファイト目当てに集まる男たちが増えてきた。ついにタイラーは“ファイト・クラブ”の設立を宣言。だが、クラブは次第にテロにも似た活動へとエスカレートして行き…。

[コメント]
現代版『時計仕掛けのオレンジ』といったところか・・・。フィンチャー監督の『セブン』や『ゲーム』であった最後のどんでん返しもしっかり用意されている。自身がCMなど映像の現場で実績を重ねてきただけあって、画の構成、アイディア、色彩などそれだけでも十分刺激的だが何と言ってもブラピの格好良さが光っている。男も惚れる・・・というより男が、惚れる映画ではないだろうか。

千田由香莉 課題8/「光の名前」 2004年11月04日(木)01時29分34秒
▼課題と連絡:課題8/わたしの勧める3本の映画 への応答

「海がきこえる」(1993/スタジオジブリ/望月智充)
大学生の森崎拓は、駅のホームで懐かしい顔をみかける。あれは確かによく似ていた。が、本当に彼女なのか…?半信半疑の拓は、大学受験を迎える高二の夏、東京から武藤里伽子という偏入生がやってきた、あの蝉時雨の夏に思いを馳せる。「高知、夏、17歳」
 雰囲気がいい!そして、これはジブリ作品の中でも異色作。(近いのは「耳をすませば」だけど、これをつくった近藤監督は、どうやら、この「海がきこえる」に関わっていたようだ)何がいいって、何もない感じがとてつもなく好き。空も飛べなければ、別世界へ迷い込むでもない。教室の窓辺から差し込む夏の光が何ともいえない。

「四月物語」(1998/ロックウィル/岩井俊二)
 春。大学入学に伴い北海道から上京してきた“私”の視点から描かれた日常。
 不純な動機と彼女の持つ秘密という淡い光がいい。淡々としているのにみとれてしまう。ただ、この作品。好きなんだけれどもラストシーンが…勿体ない気がする。

「花とアリス」(2004/ロックウィル/岩井俊二)
 花とアリスはいつでも一緒。ある日、友達のアリスが毎朝駅のホームでみかける二人組の片方に一目惚れする。「君には弟をあげるからね」二人は、彼らの制服と同じ高校に入学した。ある日、花は、あの片方の男の子が道端ですっ転び、頭をうった場面に遭遇する。咄嗟に「先輩は記憶喪失です」と嘘をついてしまい、そして自分は彼女だと名乗ってしまう。
 淡い光がいい。アリスがハートのエースを渡すシーンと、紙コップで作ったトゥシューズでバレエを踊り続けるシーンが歪で好き。少し、細かい設定が煩わしいと思うところもあるけれど、こういう雰囲気が好き。

室橋あや 課題8/宣伝と内容がまったく違うことが多々ある。 2004年11月04日(木)00時47分21秒
▼課題と連絡:課題8/わたしの勧める3本の映画 への応答

「王立宇宙軍 オネアミスの翼」 (1987年 日本 アニメ)
今をときめくガイナックスの記念すべき第一作らしいことは最近調べて知りました。主人公の声が森本レオで、音楽が坂本龍一でなかなか豪華。舞台は地球によく似た世界で、でも異世界。戦わない軍隊王立宇宙軍がいろいろな困難を乗り越えて初の宇宙飛行を遂げるという内容。親父の棚でみつけたこのアニメはテープがすり切れるくらい見ました。「子供のころは、空軍のパイロットになりたかった」(森本レオ)で始まるシーンは今思い出しても空が飛びたくなる。そして音楽もやばいくらい良い。和光の図書館にあります。ぜひ。

「ダスト」(2001年 イギリス・ドイツ・イタリア・マケドニア)
マケドニア革命を下地にマカロニウエスタンで責める、ある兄弟の数奇な運命。血とか多いんで苦手な人もいるやもしれません。ストーリーテリング形式というらしい話の運びで、最初は老婆アンジェラのところに強盗に入った黒人青年エッジが老婆から昔話を聞かされるところから始まります。老婆の思い出なので、話の途中で食い違ったり、1900年の空に突然キティーホーク号が飛んだりしてでも映像美。美。美しすぎる。役者もデヴィット・ウェンハムとジョセフ・ファインズで有名どころが揃ってます。そして兄弟の持つ拳銃は生唾もの・・欲しい。同じ監督のミルチョ・マンチェフスキーで「ビフォア・ザ・レイン」も ダストが気に入ればぜひ。というか監督もっと映画作ってください。待ってます。

「キャメロットガーデンの少女」(1999年 イギリス・アメリカ)
衝撃的現代版フェアリー・テールらしい。一時期話題になったサム・ロックウェル主演映画。閉鎖的なキャメロットガーデンに済む少女デヴォンとそこで草刈りをしている青年トレントとの奇妙な関係。最初はロリータみたいな年の差カップルの禁断の恋かと思ったんですが(実際そういう宣伝だった)違った。最後のファンタジーなくだりは賛否両論らしいけど、あれがいいんだよ!畜生!ロシアのおとぎ話、バーバ・ヤーガ(バビヤガ?)にそって話が進んでいって最後のシーンは妹と一緒に飯を食う箸が止まるほど打ちのめされた。


アメコミ映画も好きです。特にX−MENが!あとスパイダーマン。
昨日話題の「ソウ」を見てきました。怖すぎで死にました。胃に良くないので、もう二度と見たくないです。

松本紗綾 課題8/泣いて、笑って、考えて… 2004年11月03日(水)22時29分59秒
▼課題と連絡:課題8/わたしの勧める3本の映画 への応答

【ディープインパクト】1998年 アメリカ ミミ・レダー
これは、今まで何度も見たのですが、何度見てもアホみたいに泣けます。ラスト30分ぐらいは嗚咽を漏らしながらボロボロ泣きます。家で一人、ティッシュを抱え、すっぴんで見たい。そんな映画です。泣きたいときに見れば間違いなく泣けます。

【ドーベルマン】1997年 フランス ヤン・クーネン
これは、DVD買いました。バカバカしいのですが、男同士の友情、仲間というものに惹かれる私は、好きな雰囲気の映画です。でも、下品な表現や、「痛たた…」と目を背けたくなるようなところもありますが、かっこいいです。

【CASSHERN】2004年 日本 紀里谷和明
これは、後引く映画でした。内容と主題歌の意味などを静かに考えさせられ、涙より、溜息が出る感じでした。「マザー」を書くきっかけにもなりました。(というほどのもの作品かは別として…)キャシャーン実写って…と、バカにしつつ…という感じでしたが、ごめんなさいと謝りたくなりました。

みなさんの中に出てきた映画では、「エヴァンゲリオン」「シカゴ」「茶の味」「フィフス・エレメント」「LOVERS」「2046」「もののけ姫」「ネバー・エンディング・ストーリー」「ハリーポッター」「バック・トゥー・ザ・フューチャー」「CUBE」「スタンド・バイ・ミー」「パイレーツ・オブ・カリビアン」を見ました。ということで、この中にも好きな映画はありましたが、かぶらないように3つ選びました。

■一つ前の過去ログ:「物語の作法」課題提出板 (0044)


管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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