奈良少年刑務所の「社会性涵養プログラム」で使用している、朗読劇のテキストです。
原作は寮美千子作の絵本
『どんぐりたいかい』 (チャイルド本社 2009/11)
出演者は6人
大ちゃん、のっぽ君、美人ちゃん、普通くん、栗太郎、正義くん
どんぐりたいかい(2012年秋版)
きょうは ねんに いちどの どんぐり たいかい。
はらっぱは どんぐりたちで いっぱい。
だれが いちばん えらいか みんなで きめるのです。
ぴょんと おどりでたのは ふとっちょ どんぐり。
大ちゃん ぼくが いちばんだい!
おもたいのが いちばん えらい!
のっぽ君 ちがう ちがう かっこよさで きめるんだ。
いちばん かっこいいのは この わたしだ!
美人ちゃん ちがうわ ちがうわ。かわいさで きめるのよ。
いちばん かわいいのは この わたしよ!
普通くん (横から)こらあ。かわいいのと えらいのは ちがうぞーっ。
栗太郎 (みんなを押しのけながら)えーい、どけどけ、どけどけーっ。
大ちゃん/のっぽ君/美人ちゃん/普通くん (叫ぶ)きゃあ〜〜!。
栗太郎 いいか、みんな、よくきくんだ。
いちばん えらい どんぐりは なんてったって おれさまさ。
おおきくて おもたいし せも たかいし まんまるで
そのうえ かわいい。
どうだ まいったか。
みんな しーんとして しまいました。
大ちゃん ん? なんか へんだぞ。
のっぽ君 おまえ……どんぐりじゃ ないな。
美人ちゃん あっ。あなた くりでしょ!
普通くん そうだ! いがいがの くりたろうだ!
栗太郎 (頭を抱え)しまった ばれたか。ごめん。
くりたろうは こそこそ きりかぶから おりていきました。
大ちゃん なあんだ。やっぱり ぼくだ。ぼくが おおきい!
のっぽ君 ちがう ちがう わたしだ。わたしが かっこいい!
美人ちゃん ちがうわ ちがうわ。かわいいのが いちばんよ。
栗太郎 かわいいのと えらいのは ちがうぞーっ。
みんな もう おおさわぎ。
すると、いちばん こえの おおきな どんぐりが いいました。
正義くん ちがうーっ。そんなのは うまれつきだ。
おおきくても ちいさくても
まるくても ながくても ちっとも えらくない。
たいせつなのは こんじょうだ! こんじょうで きめよう。
大ちゃん/のっぽ君 そうだ そうだ こんじょうだ!
美人ちゃん/普通くん/栗太郎 そうだ そうだ そのとおり!
みんな さんせーい!
普通くん でも どうやって?
正義くん 「くるくるまわり」で!
みんな そうか。「くるくるまわり」か!
大ちゃん/のっぽ君 そうしよう そうしよう。
美人ちゃん/普通くん/栗太郎 それがいい それがいい。
正義くん よーし。じゃあ いくぞ。みんな よういは いいかい?
みんな いいよー。
正義くん よし。よーい どん!
まわる まわる どんぐりが まわる。
きりかぶの うえで くるくる くるくる。
みんな いっしょに くるくる くるくる。
おおきいのが まわる。ちいさいのも まわる。
ながいのも まわる。まるいのも まわる。
みんな みんな くるくる ぐるぐる。
ああ めが まわる めが まわる。
くるくる ぱたん ぐるぐる ぱたん。
とうとう みんな ひっくりかえって しまいました。
正義くん おーい。だれが さいごまで まわって いたんだ?
みんな わからな〜い!
正義くん しょうがないなあ。この つづきは らいねんだ。
大ちゃん らいねんは まけないぞ。
のっぽ君 なあに こっちこそ。
美人ちゃん また おあいしましょうね!
普通くん うん また あおう。
栗太郎 (心配そうに)ねえ、ぼくも いれてくれる?
みんな いいとも!
みんな にこにこ さよなら またね。
みんな さようなら〜 バイバ〜イ (手を振りながら わかれる)