2003年10月6日(月)〜10日(金)
於:和光大学附属梅根記念図書館 梅根記念室
和光大学 表現学部 表現文化学科専門科目「物語の作法」受講生によるオブジェと詩の作品展
⇒課題内容
目覚めたら、手の中にあった夢の欠片……。 |
外島 理香
お好きなところに
「あなたの鍵」をさして下さい
7つの鍵穴は
7色の世界に
あなたを誘います
さあ、どうぞご自由に!
開くドアを選ぶのは
あなた自身ですよ
外島 理香
遠くから聞こえる
川のせせらぎと
はしゃぐ声
遊ぶ子どもの中に僕の姿はない
真夏なのに真っ黒な服を着ている
覗き込んだ水面には僕の顔が映る
僕は僕にお辞儀をしているのか?
緑色に輝く道を
どれほど先へ進んでも
遊ぶ子どもの中に僕の姿はない
外島 理香
恋をしてひとつになりたいと願うのは
人間に限ったことじゃない
地球で流星雨が美しかった日
宇宙の彼方まで雪が降り注いでいた
それは最初で最後の恋をした惑星同士の悲しい欠片
外島 理香
夜明けの透明な色と
蜃気楼に映るもの
耳を澄ませば
聞こえてきます
外島 理香
あなたに会うために私が選んだ姿
風に乗ってあなたのもとへ
久しぶりの再会で話がたえない幸福の時
室橋 あや
まず心配していたのは後ろから拳銃をつきつけられて、
「freeze!」なんてことにならないかだ。着いた途端に空港
が占拠され、ジョン・トラボルタみたいな顎の割れた東洋系の男に
人質にされて94年型のレンジローバーに押し込まれる。そして
興奮する犯人に両手をあげて発音良く、「f**k you」。
パリに着いたころには予想外なことに大立ち回りができないほどに
疲れ果てていた。ややメガネのずれた日本人は誰にも相手にされる
ことはなく、構ってくれたのは「こんにちわ」といらぬ日本語で話
しかけてきたフライトアテンダントくらいだった。
もちろん空港だって占拠されてなんかいない。
室橋 あや
年齢不詳のイギリスのウェイトレスの英語は、これっぽっちも聞き
取れなかった。ナイフとフォーク。
友人三人と顔を合わせて慣れない食事に精を出す。
何事にもリズムが大切だ。
パン、野菜、かうひい、談笑。パン、野菜、かうひい、談笑。
だんだん口数が減っていく。隣に目をやると黒いコートに身を
包んだ女の人が音も立てず5本の巨大ソーセージを平らげていた。
店のガラス戸には英字新聞が張り付いてまた風に飛ばされていく。
しばらく静かだった友人達と顔を見合わせて思う。
ここは日本じゃない。
室橋 あや
チューブだ。階段をずっと下った先にかまぼこ型の地下鉄が待って
いる。テルミニからチプロミュゼイヴァティカンまで狭い車内でポ
ケットに手を突っ込んだまま正面に座った女の子と無言でお互いを
探っている。黒髪と小さな耳には銀のピアスがある。彼女は目を泳
がせて、物珍しそうにアジアの四人組を眺めている。その視線が腰
に来る。私が手を暖めている場所だ。また視線が動く。隣の子の鞄
でとまる。視線の意味に気付いて鞄を押さえると再び彼女の視線が
動く。やせ細った足首をぶらりと投げ出して、唇から少し間の空い
た歯が覗いて奇妙な笑みを浮かべたまま表情は変わることはない。
瞬きすらしない。
室橋 あや
コロッセオ、ドゥオモ、サグラダファミリア、ヴァチカン、エリゼ
モンマルトル、メトロ、トラム、ミカドポッキー、オペラ、アクア
ナチュラーレ、ピースレインボーフラッグ!
一週間もすればブロックの街も歩きやすい。
夕食を買いに外へ出ると、
車を停めてたむろしている若い男女がいる。
目は青くて鼻は高い。いつか映画で見た風景。
私達が彼らを見るように、彼らも私達に目を向ける。
高い男の声が叫んだ。
「ィイエロゥーーーーーー!!!」
室橋 あや
私の髪は黒い。
鼻は低くて目も黒い。
人間だが日本語を話す。
東京に住んでいて、一回引っ越した。
今は大学に通っている。
母と父と妹がいる。
別に自分で選んだわけじゃないが、
日本人だ。
菊池 佳奈子
うまれてくるのは
どんなものでも
かならず天使です。
菊池 佳奈子
アタシはいったい誰で
なんのために存在するのか
神様でない
アタシの存在理由が
此処にあって欲しい
菊池 佳奈子
幸せの青い鳥は
およそ64億羽いるそうです。
気が付いたらそばにいるものですが
待っているだけでは見つかりません。
閉じ込めてもいずれ
何処かへ消えてしまいます。
くれぐれもお気をつけ下さい。
菊池 佳奈子
僕は王様
自分という小さな国の
たったヒトリの王様
他の誰にも
なれない王様
菊池 佳奈子
ビタミン
ミネラル
食物繊維
そんなのサプリメントでとれるけど
元気だけは
自分のココロの力は
頑張らなくちゃ
手に入らない
高橋 阿里紗
夏休み、おばあちゃんちの裏の川まで、僕は旅にでる。
勇者の武器は、虫かごと虫とりあみ。
かごの中には、琥珀色に輝くセミの抜け殻。
たった今、一瞬の生を、絞るように歌っているモノの、抜け殻。
高橋 阿里紗
おばあちゃんが言ってた。
裏の川は、土砂崩れのせいで、化石が取れるんだって。
ジャブジャブ川に入って、化石を探す。
気付いたら一時間。
僕の手にしたものといったら、綺麗な流木のカケラ。
それと、年輪がきっかり刻まれた木の化石。
彼等は、昔、一つの大きな大木だったんだ。
母なる大木からはぐれ、一方は流木、もう一方は化石になった。
なんという運命の皮肉。
彼等は全く別のモノになってしまった!
高橋 阿里紗
とっても綺麗な石を見つけたんだ。
これは、きっと昔水晶だったに違いない。
ただの水晶なんかじゃない。
神秘的な太古の占い師。彼の相棒の水晶玉。その、カケラ。
彼の告げる未来、喜びも悲しみも、呪いのように当たりすぎた。
そして、ある日、占い師は悪魔として処刑されてしまう。
死体は川に。祈りは空に。
彼の腕には、相棒の水晶玉。
僕の手の中には、そのカケラ。
高橋 阿里紗
指輪を落としませんでしたか?
十字の模様のついた、壊れた指輪を拾ったんです。
これを落としたのは、真っ白くて、髪の綺麗な天使。
いつだってはばたくことに夢中な君の瞳は、天と神しか映さない。
落とした指輪に気付くことなく、大きな翼で去ってしまった。
高橋 阿里紗
夜、遊びつかれた僕は夢の中。
昼間、川で拾った化石たちが歌を囁きはじめる。
自分の歴史を、過ぎた時のカケラを。
その歌は、僕の夢を電光石火で駆け抜け、いつしか宇宙に辿り着く。
そして、僕の惑星を中心に、ゆっくりと廻りはじめる。
僕もいつか、そこに還る日がくる。
それまで、化石の歌は響くよ。
僕の、深い深い、真夏の夜の夢の中。
島本 和規
夢の標本箱2003臨時支店
島本 和規
サイズは少々小さめですが
持ち運びには便利なサイズなので
お出かけのさいに最適です。
お子さまとの行楽にいかがでしょうか?
展示の商品はサンプルです。
実際の商品とは多少異なる場合がございます。
島本 和規
こちらの商品は4時間のあいだ
月の移動を利用者の思うがままに
動かすことができるチケットとなります。
三日月、満月あなたが思うがまま。
なお、もしも他の星にぶつかるなどの
トラブルが起こった場合は
お客さまの責任となりますので
操作にはくれぐれもご注意ください。
島本 和規
我が社の特捜班が発見した正真正銘のつちのこです
いびきや跳んだりといった特徴的な動きが
愛らしいとご好評をいただいております。
昔、つちのこを見つけることのできなかった方などに
ぜひお勧めの商品でございます。
この機会に触れあってみるのはいかがでしょうか?
こちらの商品は特別公開という形をとっており
また商品の性質上、写真などの撮影は禁止とさせていただきます。
島本 和規
このきんちゃく握るとあなたの
欲しいと思う物が袋の中に現れます。
参考までに経営者である私が握ってみました。
あくまで夢でありますので
袋から取り出すことはできません。あしからず
五十嵐 舞
あの翼に人はどんな願いや想いを乗せるのだろうか
その小さき翼には幾つもの願いが込められているだろうか
今…この地上の何処かで 生まれる小さき君に
幾千の友と共に生まれ・・・消えていく君に
君は身勝手な僕らを恨まないのだろうか
きっと君は僕らの想いや願いを託された希望という翼で
微笑みながらこの蒼き空を天高く羽ばたいているのだろう
そして君は役目を終え、死と再生の炎の中で消えていった
小さき翼の君、君がいない現実が僕を孤独という奈落へと沈ませる
そして知る、君がもう僕の手の届かない場所へと旅立ったことを
五十嵐 舞
ひらひらと天上から雪の妖精たちが降り立った
舞い降りた地は摩天楼が咲き乱れ夢も現実も汚れている街Tokyo
ぎらぎらとした電飾に侵食された聖夜の日
街に取り残された孤島のような小さきEden がここにあった
もう朽ち果てそうな大きなモミの木がひっそりとそびえ立っていた
その姿に僕は息飲んだ・・・遠い記憶の彼方にあった庭のモミの木
かつて面影はもうない、
けれども僕にはあの幸せな頃の華やか姿が浮かび上がった
ふと気がつくと涙が一筋流れ、歪んだ視界の先に星が輝いている
ちょっとセンチメンタルになった夜だった
五十嵐 舞
巨樹の根と苔むした岩々が絡み合っている大地の海
それは樹と岩で創り出された神々の世界
その醸し出す雰囲気に飲み込まれ圧倒され茫然と立ちつくす自分
古代の人々はそうこの世界が持つ圧倒的な存在感に神を見出した
そんな事を漠然としながらもふと思った自分が急に愛しくなった
それから僕は目を閉じてひたすら全身でこの世界を感じていた
生命の営みや息遣い、そして神の気配を・・・ふと見上げると
もう漆黒の夜空には女神が零した涙の光達が瞬いていた
ここで眠るとしよう、疲れきった身体が夢の世界へいざなっていく
澄み切った水の如くしみ込んでいく朝の光が僕を起こしに来るまで
五十嵐 舞
紅に染まる大地を駆け抜けた騎馬の民今この地を生きる
馬と共に生きた風の子供達 大地を走る彼らの鼓動
風と騎馬が奔り抜ける草原は交易の富と勇者を生む
蘇れ!!叙事詩が歌う大地へと 輝かし軌跡をまた歩んで
生き様は子から孫へと受け継がれ語られていく伝説となって
五十嵐 舞
七色の光の音色を奏でる瑠璃の玉
それは妖精たちの忘れ物
ガラスの小瓶に詰め込まれた光の涙たち
輝きは【地球】の息吹の証のようでいて
星々が燈す命の灯火のように、儚く美しい
日の光に翳して眺めた真夏の昼下がり
口にはちょっぴり甘酸っぱいレモン味
簾越しの風が静かに眠りの世界へと僕を誘う
武井 杉作
行きはヨイヨイ
帰りは怖い。
武井 杉作
今日はここまで
続きは明日。
武井 杉作
離さないでね。
武井 杉作
あの子の唇。
武井 杉作
刺しても死ねない。
瓜屋 香織
ともだちがいいといったクツもバッグもまねしてかいました。
ともだちのカレシなのにほしくなってねてしまいました。
わたしはどうもなにがいいのかわたしだけでは
わからないみたいです。
だれかがいいといったら、わたしもいいとおもう。
それだけです。
で、朝起きたらこんなものになってました。
瓜屋 香織
たくさんの人が僕を好きだといいました。
でも自分が好きではない人に思われるのは
めんどくさいし、気持ちが悪いです。
僕は量より質だと思います。
恥ずかしくなるような過去ならなかったことにします。
で、起きたらこんなものになってました、罰ですかね?
瓜屋 香織
成績がいいとか、家がお金持ちだとか、お父さんが社長だとか
綺麗なママだとか、そういうことばかりが気になります。
気になるというか、それがすべてです。
だから私は自分のランクにあったそこそこの人間と
つきあうようにしています。
で、今日の朝みんなの朝食を作るために起きたらこんな姿に
なっていたのです。
瓜屋 香織
ミニスカートをはくのは、みんなにかわいいあたしをみせたい
からです。かわいいあたしにあたしも満足です。
学校も、かわいい制服のとこに決めました。
かわいいかかわいくないかがあたしのものさしです。
みんな、みて、みて、みて、
でも、みんなとはいっても、そこの息の臭いオヤジやチェック
シャツの眼鏡に言っているわけじゃありません。
朝起きるとこうなってました。でもかわいいから、いっかー?
瓜屋 香織
誰かとてっとりばやく仲良くなるためには、誰かをいじめて
悪口を言う事が、イチバン効率が良かったのです。
今日の朝起きるとこうなっていたけど、このままの方がいい
気がしてきました。早く捨ててください。
久我 真紗子
昔、すべての生き物は花から産まれた。
アリもトカゲも九官鳥も虎も金魚も、もちろん「ヒト」も。
一輪のふっくらした蕾に頭までくるまれると、茎が吸い上げる
紹興酒にも似たアルコール度35%地球酒に胎児は酔う。
冬が過ぎ、春が十分に熟す頃、蕾はしっとりと花びらを開き
育った子らはそれぞれの地に散っていった。とさ。
まだ、「ヒト」が死に絶える前の話。
久我 真紗子
複雑な線が放射状に伸びている。なにかの情報保存品ではと言われ
ている。また、眼球の造りと似ているため「ヒト」のミイラ化した
(大人と子どもの)片目だという意見も。
もしそうなら、この子達は何を見てきたのだろう。
お湯をかければ元に戻るかもしれない。
久我 真紗子
神さま お願い ちょっとだけ
よそみをしてて
あなたの優しいまなざしで
あたしの最期を汚さないでね
久我 真紗子
貝殻でできた銀色の都には酸の川が流れておりました。私はそこで
城の番兵と抱き合い、キスをして、彼を感じ、感じられ、最後に川
に突き落としました。彼は音を立てて消えました。私は溶け残った
骨を拾って、もうどこにもいない彼のからっぽさと彼の残した満杯
の余韻に、ただ幸せすぎて泣きました。そんな夢を見た時、目が覚
めても彼の溶けた骨を持って帰ってきたような気がして、ずっと動
けませんでした。起きたらすぐに全部忘れてしまうと解っていたか
らです。試験管に眠るあなたは忘れない夢を見続けているのですね。
「ヒト」はどんな夢を見るのでしょう。科学者に起こされるのは
もうすぐですよ。
久我 真紗子
東大陸側沿いのある島で発見されたもの。年代は6千年前。
コナシカビの繁殖経路に当たったらしく、島はカビと細菌以外住め
ない場所になっている。発見物の状態は非常に良い。今回の調査の
最大の収穫は、発見物付近の土から「ヒト」の細胞らしきものを収
集。ただちに検査、復元を開始した。成功すれば、謎とされていた
古代生物の実態が急速に明らかになるだろう。発見物に記された文
字らしき記号を取り、我々はこのプロジェクトを“M”と名づける。
滝 夏海
「昔、偉大な魔法使いが
あらゆる国を駆け回り
あらゆる物を閉じ込めた。
一枚残った空きカード
寂しがり屋だから
あんまり覗き込むと
君を吸い込むよ 」
滝 夏海
「え、知らないって?
とある王国の伝説だよ。
姫の星と王子の星。
光は届くのに
触れる事は叶わない
切ない恋の物語 」
滝 夏海
「魔法の時間が化石になると
砂糖菓子になるんだってさ」
滝 夏海
「その国で使うランプは
時を燃料とするそうだ。
今でも燃え残った時間達が
ほら 」
滝 夏海
「物語はこれでお終い。
さぁ、サイコロを振って
君の人生を進めなさい 」
越智 美帆子
ある朝起きたらカゴに施錠されていた。
それもご丁寧に鎖でぐるぐるに巻かれて。
本来は透明だったそれは、カゴの中で黒く鈍く光っている。
困った。
鍵を探さないと。
越智 美帆子
というわけで、早速ベッドの下を探ってみた。
するとそこにはピンク豚のぬいぐるみが。
首には鍵。
それをそっと抱き締める。
って癒されている場合ではない。
Rの刻印がされたその鍵を鍵穴に差してみたが、
鍵はくるくると手ごたえなく回るばかり。
これではないみたいだ。
越智 美帆子
次に庭に出た私は、幾つもの房を付けた大きな木を見上げた。
真っ赤な、ハート型の木の実が大量に揺れている。
そこに混ざってFの刻印がされた鍵はあった。
木に上りそれをむしり取る。
ようやくの思いでそれを鍵穴に差すと、
これもまた残念、
差したままの状態でびくともしなかった。
越智 美帆子
もうどうにでもなれ、という思いで
寝酒用のウイスキーを棚から取り出した。
ついでにそこにはドイツ煙草のカルメが。
さらについでに鍵も。刻印はNだ。
今度こそ、と鍵を差す。
が、しかし
鍵はがぶりと指に噛み付き、そのままどこかへ逃げていった。
越智 美帆子
かわいいのだけれど
耳たぶがひっぱられて痛いピアス。
そこにも鍵がついていた。
今度はLの刻印。
ピアスじゃなければ、と思い
そっと願いをこめて鍵穴に差す。
見事的中。
難なく錠は解かれ
それはまた元の透明な姿に戻りましたとさ。
というのは、愛に飢えた私が見た最近の夢。
奥野 美和
歩くおと心臓のおと転ぶおと
いいおとのするおとこのこです
奥野 美和
痛くなるほど首まげて電線を
目的もなくふたりで追った
奥野 美和
つまらないからだまってるわけじゃない
これはなついた証拠なんです
奥野 美和
わたしには失うものがもうなにも
ないから君をうばってあげる
奥野 美和
もっていく荷物がいがいと少なくて
おどろきつつも空に家出を
東條 慎生
透明な板の間に挟まれた鏡は太陽光をさまざまな色に変換して反射
する。見る方向を変えるごとに反射の仕方も変化し、多彩な模様が
見て取れる。鏡面の色は基本的に銀だが、緑色のものや青色のもの、
向こう側が透けて見える半透明など。かなり巨大なものまである。
先史文明人の遺跡に残されたこの物体は至る所で発見された。
仮説1 食糧。本体の一部と同質のもので構成されている本物体は、
先史文明人の機械的身体を構成する一種の栄養源。
仮説2 美術的嗜好品。ものによってかなり多彩な模様が認められ
るため、体内に取り込み特定の光を当てて、視覚的な娯楽とする。
どちらにしろ、嗜好品の一種であるとする説が今は有力。
東條 慎生
先史文明人の身体から大量に発見される物質の一つ。小さいものか
らかなり巨大なもの、また細かな形状の違いもあり、種類には膨大
な数がある。腱や筋肉が骨と骨をつなぎ合わせているように、この
物体も機械的身体を構築し、維持するために不可欠のものであると
推測される。しかし、この物体はかなり自由に取り外しが可能であ
るように見えることから、機械的身体とはいくつかの決まった種類
のパーツをこの物体を使用し、適宜組み合わせて構築されているの
ではないか、という説が昨年提出された。現在の我々から見ればか
なり実感しにくい話だが、身体の一部と同じものが単独で大量に発
掘されている現在の状況はその新説を裏書きしている。
東條 慎生
薄い板であることが多く原則的に緑色。ものによって黒や赤などの
色であることもあるが数は非常に少ない。先史文明人の身体を構成
している基本素材で、細かな線や銀色の結節点が多彩な模様を描き
出す。線と線、点と点の繋ぎ目には内臓の一種と思われる大小様々
な物体がつながれている。きわめて直線的な先史文明人の身体の特
徴は基本素材が平板であることから来ている。
先史文明人の機械的身体の特徴の一つは、平面を組み合わせて立体
的な身体を作りあげているところにある。外からみれば立体に見え
る彼らの身体は、細かく見ていけばすべて平面や方形に分解できる
のである。「身体パーツ説」の論拠もこれである。
東條 慎生
先史文明人の外形的な特徴のもっとも目立つ点は、至る所から出て
いる長いひも状のものである。これによってつながれた物体はそれ
相応の役割を果たし、外部に露出した臓器であるかに見える。議論
が分かれるのは臓器と臓器をつなぐ血管にも見えるこのひもがつな
ぐものである。つながれている外部の臓器らしきものは、個体によ
っては単に内蔵されているというものも多く、個体差が激しい。個
体差が激しいとはいっても、特定の群を作るような傾向はあり、そ
れをして先史文明人の「性差」であるとする者もいるが、「身体パ
ーツ説」以来、そのようなわれわれの生態をむやみに対象に当ては
めようとする説が説得力を持つことはないだろう。
東條 慎生
先史文明人の身体において中心的な役割を果たすと思われる部位。
という説が有力ではあるが、数多の仮説のうちある程度説得的、と
いうにすぎない。先史文明人の研究については結局のところ、遅々
として進んでいないというのが現状の妥当な把握だろう。そもそも、
われわれのような有機生命がなぜ過去の地層から発見されないのか、
その点についての究明がまったくなされていないことこそ問題であ
る。それを待たずして、なぜこのような機械的身体が多く現在にま
で残ることになったのか、そして先史文明人の生態とは何であった
のか、そのような問いに答えることはできまい。そもそも、われわ
れが「先史文明人」と呼ぶものは、ほんとうに「文明」なのか?
古内 旭
いいかい、よく聞くんだ。
もし、仮にだ、君の頭を電ノコか何かでがりがりっと空けてみたと
する。そしたら、本当にそこに脳みそが入っていると思うかい?
もしかしたら、脳みそのかわりに小さなチップと乾電池が入ってる
かも知れないんだぜ。
証明できるかい?君の頭に本当に脳みそが入ってるって。
古内 旭
かつて、巨大な国家を支えていたのは、たった1本のネジだったん
だ。誰かが抜いちまったんだよ、それを。そんなものさ。
古内 旭
むこうの世界ではさ、常に計算が行われているんだよ。毎日毎日、
それは膨大な量の計算さ。俺たちの世界は、その計算の産物なんだ
からな。これだけのことを計算するのは、それは気が遠くなるぐら
い骨の折れる作業だろうぜ。
古内 旭
過去も未来もクソ食らえだぜ。ちょっと消してみればいいんだ。最
初はわずかな差異だが、計算を進めるうちに決定的差へと変わる。
過去を消そうぜ。未来を変えるんだ。
古内 旭
世界を繋ぐ扉がないんだとしたら、それは不公平な話だ。むこうか
らはアクセスできて、こっちからはできないなんてさ。
どこかに扉があるはずだ。
圓山 絵美奈
なんて身勝手なやつ。確かな存在が欲しいとかつぶやいて
僕を作り出しておいて。僕はいつも傍にいた。
そして君に歌を歌った。何度も何度も甘い言葉をあげた。
なのに人間じゃないなら意味がないだって。
ヒステリックに君は僕を壊す。
よく見ておけばいい。君がした残酷さを。
圓山 絵美奈
私はあの子の目をつぶしました。
あの子が私にそれを望んだのです。
最初は汚いものを見えなくしてあげました。
次は手に入らないあの人を見えなくしてあげました。
最後にこの世にあるすべてのものを見えなくしてあげました。
そしたら今度は嫌な事を耳にしないように
「あれ」を使うそうです。
あの子は人形にでもなりたいんでしょうか?
圓山 絵美奈
嫌になるわ。男に媚びる女って。
どんなに私は違うって言ったって、
じゃあ誰のためよ?その厚化粧。
ムカツクから私を使う時はその唇
大きく腫らして紫色にしてやるわ。
どれもがいい子に真っ赤な
唇にしてくれると思うなよ。
圓山 絵美奈
「何も持ってないの」そういう事いうやつに
かぎって足元に小さな花咲かせてる。
同情が欲しいなら「これ」を貸してあげるから
それを摘み取ってからにしてよ。
ねえ、あんたは気がついてないの?それとも見えないふりをしているの?
大きな口たたくけど、
「これ」をすべてに使う勇気なんてもってるのかしら?
圓山 絵美奈
デブは褒め言葉です。
太っている人は幸せな人です。
私はまだ72キロしかありません。
ちょっと悲しいです。
友達は90キロあると自慢してきます。
正直くやしいです。
あなたの愛が栄養分です。
最近足りないのでお菓子を見つけてきました。
あなたから私への嫉妬心や憎しみを固形にしたものです。
横田 裕子
あなたの指にはめられるはずもないのに
ぴかぴかに磨いて 願をかける
横田 裕子
走れ 走れ
逃げろ 逃げろ
アイツが敵になるか 味方になるか
人生は でたとこ勝負
横田 裕子
水底の貝殻は外界を知らず
自分が誰よりも海の美しさを知ってると
言い張ってる
横田 裕子
交わされることのない約束と一緒に
ココロも一緒に留めておく
君のココロと
私のカケラ
横田 裕子
いつもと違う化粧をしたら
性格変わるかも と思って
ひいたルージュは赤いワインと同じ色
重ねた唇は糖度70%のいちごジャムの味
そんな夜はルージュと同じ色のワインのにおい
菊池 佳奈子
見世物小屋の中で
捕まえられた妖精
ピエロにぼやく
空は赤く汚されて
海は灰色濁っているし
左耳は悲鳴をあげて
右腕はすでに逃げてしまったけれど
何故かアタシは此処にいるんだ。