ハルモニア Voice/寮美千子の詩

寮美千子がSt.GIGAで発表した[voice]と、新作の詩を載せていきます。
★=星の時 ○=水の時 ▲=新作
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○ 虹の瞑想

Wed, 14 Jul 2004 16:08:29

わたしのなかに 満ちてくる色

あか
咲きほこる南国の花
だいだい
目を閉じて感じる太陽
きいろ
水平線に昇る満月
みどり
地平線までゆれる草原
あお
どこまでも澄んだ空
あい
たっぷりと揺れる海
むらさき
夜明け前の空の色

あか
だいだい
きいろ
みどり
あお
あい
むらさき

そして満ちる まばゆい光
わたしのなかに 光はあふれ
わたしは 光になる

光になって 虹をかける

        Copyright by Ryo Michico


○ 瞑想への旅

Wed, 14 Jul 2004 16:05:24

わたしのなかに かがやくもの
わたしのなかに たゆたうもの
わたしのなかに ながれるもの

わたしのなかに かがやく光
わたしのなかに たゆたう海
わたしのなかに ながれる水

わたしのなかに ひろがる宇宙
はてしなく めぐる時

        Copyright by Ryo Michico


○ 朝の香り

Wed, 14 Jul 2004 01:43:17

夢のなかで歩いていた
森の香りが
目覚めても なお
こんなにも強く
わたしを包んでいるから
朝の光に消えてゆく
もうひとつの国を
わたしは まだ
見ることができる

        Copyright by Ryo Michico


★ 夢のパレット

Wed, 14 Jul 2004 01:42:06

森と草原から
百の緑を

空と海から
千の青を

太陽と月から
億の黄色を

炎と花々から
あふれる無限の赤をあつめた
夢のパレット

今宵 眠りのカンヴァスに描く
まだ だれも見たことのない夢

        Copyright by Ryo Michico


○ Down by the River

Wed, 14 Jul 2004 01:35:09

ゆったりと
水のように
光を感じながら

はるばると流れゆく水の
行方を思う

やわらかい
水のように
大地を感じながら

草原に遠く響く
ゆるやかな 歌をうたう

流れゆく
水のように
雲を映しながら

はるばるとやってきた空の
彼方を思う

        Copyright by Ryo Michico


○ Mother Earth

Wed, 14 Jul 2004 01:32:53

母なる大地
あなたから 生まれた
あなたに 育てられ
あなたに 還ってゆく

すべての歓びと 哀しみも
あなたから 生まれた
あらゆる愛と 憎しみも
あなたに 育まれた
すべての甘い草と 苦い草が
あなたから生まれ 育まれたように
すべては わたしに与えられ
そして 還ってゆく
あなたに

母なる大地
いつか あなたに還っていく
静かな歓びとともに
きっと あなたに還っていく

再び 生まれるために

        Copyright by Ryo Michico


★ 哀しき闇

Wed, 14 Jul 2004 01:28:36

月の光も
焚き火の灯りも 届かないところで踊る者は
さみしい

たとえ それが
どんなに眩しい光のなかでも
どんなに華やかに太鼓が鳴っても

月の光と
焚き火の灯りの届かないところは
みな 深い闇

        Copyright by Ryo Michico


★ New Moon Dance

Wed, 14 Jul 2004 01:26:56

闇のなかで踊る

大地を踏みしめ
足を踏みならして
踊る

天を仰ぎ
鈴を鳴らしながら
踊る

足音は
大地の隅々まで響き
鈴の音は
天の星々まで響く

わたしは祈る
深く眠る月が
魔物に襲われぬように
暗い道に迷わぬように

闇のなかで踊る
月を呼んで踊る

        Copyright by Ryo Michico


○ 朝露

Wed, 14 Jul 2004 01:25:33

夜になると
父なる空が
ゆっくりと森に降りてきて
わたしの母を
その
どこまでも広がる
星をちりばめた両腕で
やわらかく抱き
ひとつに溶けあうから

夜明けに
わたしが 森を歩くと
草に結んだ無数の夜露が
わたしの足を濡らし
わたしの腕を濡らし
遠い父の名を告げる

        Copyright by Ryo Michico


○ インディアン・フォレスト

Wed, 14 Jul 2004 01:20:38

光が
水のように樹木を浸す午後には
森で眠る 精霊の夢が
夢のなかで目覚めた 精霊の声が
木の葉のささやきと
鳥の歌になって
世界のはじまりの言葉を
わたしに ささやく

        Copyright by Ryo Michico


○ 花ざかりの森

Tue, 13 Jul 2004 23:05:34

だれも見ていないところで
さなぎからかえる 蝶
だれも見ていないところで
花が またひとつ開く

だれも見ていないところで
のびる木の芽を
吹き抜ける 風が見ている

だれも見ていない 深い森の奥を
見ている光が 緑の葉を透かし
蝶の鱗粉をきらめかせ
花びらは ゆっくりとめくれ
つややかな花粉を 甘く匂いたたせる

だれも見ていない 時間
日は昇り 日はかげり
木は 音もなく影をめぐらせ
雲は まぶしく空を流れ
受粉する無数の花たち

見られていない すべての者たちが
見つめている 一日

花ざかりの森

        Copyright by Ryo Michico


○ 終わりのない音楽

Tue, 13 Jul 2004 23:00:32

だれも見ていない 深い森の奥で
きょう 一本の木が 朽ちて倒れた
数百年をかけて 生きて
倒れるのは 一瞬だった

だれも聴いていない 深い森の奥に
木の倒れる音が 響くと
鳥が 飛びたち
蝶も いっせいに舞いあがる

ついさっきまで
木が立っていた その場所に
いまは 
まぶしい光が 溢れているだけ
風も 自由に行き来する

そして 再びはじまる 命の輪舞

だれも見ていない 深い森の奥で
いま ひと粒の種が 目覚める
光を浴びることなく
眠っていた種が 

だれも見ていない 深い森の奥で
倒れた木は 見ている
重なりあう 木々の枝を透かし
わずかに見える 青空を

いまは ただ 空だけを見ている
終わりのない音楽のなかで

        Copyright by Ryo Michico


○ 紫水晶

Tue, 13 Jul 2004 22:53:36

結晶のなかで
火と水が眠っている

炎の赤
水の青

燃えあがる恋
冷めきった心

抱きあえぬものたちが
重なりあい 溶けあい
ただひとつの
夜明けの色になって

結晶のなかで 
眠っている

永遠の一瞬を
夢見ている

        Copyright by Ryo Michico


○ ダイヤモンド

Tue, 13 Jul 2004 22:48:49

太古の海で
まどろんでいた生命たちは
生まれては死に
生まれては死んで
雪のように降り積もった
深い海の底に

時は
海の底を奈落に飲みこみ
途方もない熱と力とで
生命の記憶を
美しい結晶に変えた

単結晶 炭素
結晶した生命の記憶 

ダイヤモンド

そのきらめきのなかに
命の歌が聴こえる

遠い時間の果て
わたしも いつしか
ひとかけらの美しい結晶となり
歌うことができるだろうか
まばゆいこの命の記憶を

        Copyright by Ryo Michico


○ 響きの庭

Tue, 13 Jul 2004 22:41:06

ここで 葉がそよぐと
湿原の果ての 小さな沼で
またひとつ やわらかな卵が孵る

あの枝から 鳥が飛びたつと
遠い山あいの 湖で
驚くほど高く 魚が跳ねる

遠く離れていても
響きあう者たち

無限に響きあう 光と水の国で
互いに響きあう 命と命

弱った獣の子どもが
鷹にさらわれた その瞬間
森の奥で 
羽化したばかりの蝶が
はじめて 空にはばたく

        Copyright by Ryo Michico


★ 青い惑星

Tue, 13 Jul 2004 20:46:56

その惑星が
そんなに深いブルーだとは
だれも知らなかった

太陽系の果てにある 青い惑星
冷たいメタンガスの大気は
地球をのみこむほどの 渦を卷いて
巨きな 青い瞳になる

瞳は 太陽を見つめる
それは はるか四十五億キロの彼方
星々にまじる わずかに明るい点に過ぎない

ひかりは遠い
ぬくもりは とどかない
ひかりは遠い
ぬくもりは とどかない

惑星は 夢を見る
太陽に焦がれて 
まぶしい光の夢を見る
青い空
青い水
はるかな青い水
きらめく青い水

惑星は知らない
太陽系に
もうひとつの 青い惑星があることを
そこに 海があることを
その海が 青く輝いていることを

惑星は知らない
海から生き物が生まれ
まだ見たこともない 遠い惑星に
海の王の星という
美しい名を与えたことを

太陽から四十五億キロ
海王星は静かにめぐる

ひかりは遠い 
ぬくもりは とどかない
ひかりは遠い 
ぬくもりは とどかない

けれど 夢がとどく
地球の 夢がとどく

惑星は 夢のなか
まぶしい光を浴びて
波の音を聴く

        Copyright by Ryo Michico


★ 珊瑚

Mon, 12 Jul 2004 01:15:20

月が 満ちる
月が 満ちて 
潮が 満ちる

月明かりの 海の底
珊瑚は いっせいに卵を産む
それは 幾億の小さな月
海をさまよう 無数の月

月の光は ゆらゆらと
水底まで 青く射しこみ
幼い月たちの 光の揺りかごになる
波の子守歌を 口ずさみながら

月が 満ちる
月が 満ちて 
命が 満ちる

        Copyright by Ryo Michico


★ 星の消えぬ夜の物語

Mon, 12 Jul 2004 00:52:35

その夜には
どの川でも
川面に映った星は
ひとつも消えることなく
水とともに 流れていったので
次から次に 流れくる水に
次から次に 星は映り 
幾重にも重なり きらめく星が
光の帯となって
大地を 祝福しながら
ゆったりと 蛇行していったので
その果ての海は
とうとう 星でいっぱいになり
星と星とが 触れあって
ざわざわと ざわめくほど
夜明けには
空よりも明るく 光を溜めていた

        Copyright by Ryo Michico


○ 少年

Mon, 12 Jul 2004 00:45:12

坂道を 自転車で駈けおりるだけで
世界の果てまで 行けると思っていた

汗ばんだシャツを 風が吹き抜けるだけで
とてつもなく しあわせになれた

砕ける波に 体ごとぶつかっては
なんどでも 無邪気な笑い声をあげ

掌にすくった たったひと口の冷たい水で
魂まで満たすことのできた 遠い日々

ただ むきだしの自分だけで
世界のただなかに 立っていた
ひとりの少年が

いまも ふいに透けて見える
あなたのなかに

        Copyright by Ryo Michico


★ 月の謎

Mon, 12 Jul 2004 00:43:05

月がかけた謎を
人は
まだ 解けない

月は満ち 月は欠け
王国は栄え 王国は滅び
今宵再び 月が昇っても

月がかけた謎を
まだ
誰も 解けない

        Copyright by Ryo Michico


○ 秘密

Mon, 12 Jul 2004 00:40:44

だれにも言っては いけない

満月の夜
月の光が
そこだけ 束ねたように
青く輝く場所がある

そこには
夢の結晶が 埋まっていて
その重力で 
月の光が 集まるのだ

重力の強い晩など
そこから 月の虹が湧き
夢の欠片が
万華鏡のように光りながら
吸いこまれていくけれど

もし
それを見ても

だれにも言っては いけない

        Copyright by Ryo Michico


○ Liquid Sky

Sun, 11 Jul 2004 23:59:51

それは よく晴れた日のこと

空に向かって 小石を投げると
まるで 鳥のように
まっすぐに 飛んでいって
そのまま 空に 吸いこまれた

さざ波をおこして
空の深みに
どこまでも沈んでいく 小石

波は 
いく重にも 円を描いて
空いっぱいに 広がり
そして 消えた

それは よく晴れた日のこと
空に向かって 小石を投げると
鳥のように 飛んでいって
二度と 戻らなかった

        Copyright by Ryo Michico


○ 子どもの領分

Sun, 11 Jul 2004 23:53:08

まだ 
飛ぶ夢を見る
青い空のなかを
どこまでも どこまでも 高く
昇っていく 夢を

まだ 
泳ぐ夢を見る
青い水のなかを
どこまでも どこまでも 深く
息も 継がずに

心の奥にある
子どもの領分が

まだ
わたしに 夢を見させる

        Copyright by Ryo Michico


○ Cityscape

Sun, 11 Jul 2004 23:49:12

ビルとビルに
きっかりと区切られた
四角い空を
銀色の機体が 翔けていく
まっ白い軌跡を 描きながら

あの太陽の向こう側
そのずっと先の
空の深みを 見つめてみても
見えてはこない
こんな風景をもった惑星は

結晶する都市
この惑星だけの 美しい風景

        Copyright by Ryo Michico


○ Art of Tea

Sat, 10 Jul 2004 16:39:08

一服のお茶に
映る 緑
映る 鳥
映る 風

掌のなかに
映る 人
映る 雲
映る 空

茶碗のなかの 無限の宇宙を
いとおしく 両手で包み
飲み干す 一瞬

        Copyright by Ryo Michico


○ Summer in the City

Sat, 10 Jul 2004 16:31:05

空を映すはずの ビルのガラス窓が
いっせいに きらめいて
青い海原を 映す

だから こんな都市のまんなかで
ふいに
海の匂いがする

ガラス窓に映った 海のなかを泳ぐ
都市の人魚たち

ここでは 人が
海に いちばん近い

        Copyright by Ryo Michico


○ ガラスの街

Sat, 10 Jul 2004 15:44:44

ほんとうは 
ここは ガラスの街

目を閉じれば 見える
ガラスでできた ビル
ガラスでできた 舗道
ガラスでできた 街路樹の下を歩く
ガラスでできた 人々

ほんとうは 
だれもが すきとおって
だれもが こわれやすい

だれもが
遠い空の色を映す
透明な心を 抱えている

        Copyright by Ryo Michico


★ 秘密の庭

Sat, 10 Jul 2004 15:40:19

少年たちは
セピア色に煙った街から
遠い過去と まだ見ぬ未来とに
同時に属するものを集めて
その庭に 埋めた

遠い日の 秘密の庭

今夜 その庭で
青いガラスのかけらと
歯車とでできた蝶が 
羽化したことを
まだ だれも知らない

        Copyright by Ryo Michico


★ 光の音楽

Sat, 10 Jul 2004 15:38:46

光を背に
その人は いった

百年したら 芽が出て
もう 百年たったら
見あげるほどの 巨きな木になる
それから また百年たった 満月の晩
どの枝にも こぼれるほどの花が咲いて
いっせいに 実がなるんだ

呪文をとなえて 植えたのは
ひと粒の 青いビー玉

その日から 
ぼくは 夢を見るようになった
あの 秘密の庭になる
透明な果実の夢
風に揺れて鳴りわたる 光のような音楽を

        Copyright by Ryo Michico


○ 空の夢

Sat, 10 Jul 2004 15:36:12

そのピアノは
ピアノになる前
天翔ける鳥の 一対の翼だった

だから いまでも
木洩れ陽を浴びると
ふいに 空の旋律を奏ではじめる
だれも 弾いていないのに

        Copyright by Ryo Michico


○ おいしい水

Sat, 10 Jul 2004 15:34:44

ただ一杯の水が
わたしを うるおす

昼もなお 星を映す
深い井戸から 汲みあげた
ただ一杯の つめたい水が

岩を駈けおりる 小さな流れから
掌に すくいあげた
ただ一杯の 透きとおった水が

地下深く 昏い時間を旅して
いま 光のなかに躍りだした
ただ一杯の なめらかな水が

わたしを うるおす
わたしを いやす

        Copyright by Ryo Michico


○ 満ちてくる光

Sat, 10 Jul 2004 15:33:17

東の空から 微かに満ちてくる光は

眠っている森を めざめさせ
森のなかの花を めざめさせ

眠っている鳥を めざめさせ
卵のなかの雛を めざめさせ

眠っている水を めざめさせ
水にゆれる草を めざめさせ

眠っている石を めざめさせ
石のなかの色を めざめさせ

すべて 
闇のなかでまどろんでいた色彩は 穏やかにめざめ

やがて
無数の色の饗宴 無辺の光の和音を奏ではじめる

        Copyright by Ryo Michico


○ 水の彫刻

Sat, 10 Jul 2004 15:24:43

その夏の ある日
ふいに まぶしい鏡の光が目に入ると
急に すべてが 透きとおって
ただ 水だけが 見えた

樹木は ゆるやかな噴水
透明な大地から 静かに水を吸いあげ
葉は 青空を映して 揺れる

走っているのは 子どもの形の水
追いかけているのは 子犬の形の水
笑い声が 光になって きらめきながら こぼれる

飛びたつ鳥も
はばたく蝶も
咲き誇る花も

命あるものはすべて 水の彫刻
めぐりながら流れる 水の彫刻

その夏の ある日
いたずらっ子の鏡の光で 目を射られると 
急に すべてが透きとおって
ただ 輝く命だけが 見えた

        Copyright by Ryo Michico


○ 光と水の戯れ

Sat, 10 Jul 2004 15:21:31

水が 揺れるので
光は 踊り
光が 踊るので
水は 歌う
水が 歌うと
光は 歓びにあふれて笑い
光が 笑えば
水も きらめきながら笑う

まるで
恋する者たちのように

        Copyright by Ryo Michico


○ 光の旋律

Sat, 10 Jul 2004 15:17:13

木洩れ陽の射すテーブルの
一杯の冷たい水
風が吹き抜けると
グラスは光を透かし
読みかけの本のページに
小さな虹を投げかけた
まるで七色の五線譜のように

初夏の空と風がくれた
ささやかな光の旋律

        Copyright by Ryo Michico


○ Feel the Light

Sat, 10 Jul 2004 15:10:16

眼を閉じて感じる 空からの光
この頬に感じる あたたかな光

じっと 心を澄ますと
見えてくる
わたしのなかの光が

体の底から 光が応える
心になかを 光が照らす
魂からやってきた 光が

そして 知る
この光に満ちた空が
わたしの魂 そのものだと

        Copyright by Ryo Michico


○ 千億の昼と夜

Fri, 09 Jul 2004 21:02:47

百億の耳に聴こえる 百億の世界
千億の眼に見える 千億の世界

虫たちの眼に映る 空
鳥たちの耳に聴こえる 風

魚たちが感じる 昼と
獣たちが感じる 夜

風が そのなかに感じる 百億の鳥の翼と
光が そのなかに感じる 千億の蜻蛉の翅

海が感じる ゆるやかな月のめぐりと
大地が感じる まばゆい太陽のめぐりを

わたしのなかに 聴き
わたしのなかに 見つけるために

じっと耳を澄まそう

        Copyright by Ryo Michico


○ Feel the light

Fri, 09 Jul 2004 16:18:48

Feel the light

眼を閉じて 感じる
風のなかに 感じる
この手で
この頬で
この体のすべてで

Feel the light

光の 匂い
光の 手触り
光の 響き
わたしを包む 光の音楽
わたしのなかで 応える光

        Copyright by Ryo Michico


○ 鳥

Thu, 08 Jul 2004 02:46:17

飛ぶ鳥を 見つめていると
魂が 空を翔ける

        Copyright by Ryo Michico


★ 水晶の鳥籠

Thu, 08 Jul 2004 02:44:34

鳥は 星をめがけて 翔んだ

ただ まっすぐに 翔びつづけ
いつしか
はばたかずに どこまでもいける
星の林を 翔けていた

永劫の時が流れ
鳥は 
宇宙の果ての森に たどりつく

すべてが 水晶でできた 音のない森

鳥は 知る
世界は 
水晶の鳥籠に 包まれていたことを

        Copyright by Ryo Michico


★ 天の鳥

Thu, 08 Jul 2004 02:39:41

その鳥は
はばたかずに翔べる空から やってきた
その鳥は
さえずりの聴こえない空から やってきた
その鳥は
星のまたたかない空から やってきた

時間のない 永遠の国から 墜ちてきた

はばたくために
さえずるために
またたく星のした 月明かりの森で
羽根をよせて 眠るために

        Copyright by Ryo Michico


○ 鳥たちの島

Thu, 08 Jul 2004 02:38:21

だれも 来なかった
だれも 来られなかった
空を渡る 鳥たちのほかには

海原のただなかの 鳥たちの島

傷つける者も
傷つけられる者もいない
楽園

だれも 来なかった
だれも 来られなかった
翼をもった 魂のほかには

        Copyright by Ryo Michico


○ 鳥の歌

Thu, 08 Jul 2004 02:37:23

鳥は なぜ はばたくのか
天に 近づくため
星に 近づくため

はるかな時の彼方で
かつて 星だった
まばゆい記憶を 追いかけ
果てしなく 空に墜ちていく 鳥

鳥は なぜ 歌うのか
失われた 命のために
生まれくる 命のために

いまはない 星々のため
そしていま 命ある者となった
地上のすべての 魂のために
限りなく 歌いつづける 鳥

        Copyright by Ryo Michico


○ 未来の記憶

Thu, 08 Jul 2004 02:30:13

遠い昔
わたしは 海から生まれた
遥かな未来
わたしは どこへ行くのだろう

遠い昔
深い森のなかで 火を見つめていた
遥かな未来
わたしは 何を見ているのだろう

遠い昔
風や波や鳥たちとともに 巨きな歌をうたっていた
遥かな未来
わたしは だれとうたうのだろう

いま という一瞬は
いつも 一枚の鏡
巨大な時間の集積が 銀色の鏡になって
まだ見ぬ未来を 映しだす

わたしは それをのぞきこむ

すると わたしが見える
百五十億光年を遡る 二重螺旋の無限階段
わたしのなかに広がる 遠い時間と空間が

旅に出よう
古い地層のなかから
恐竜の骨を 発掘するように
わたしは
わたしのなかの 深い記憶の海の底
透明な意識の空の果てで
まだ見ぬ未来を 発掘しよう

神話のように美しい 未来の記憶を

遠い昔
夜空に 無数の神々を感じた
遥かな未来
わたしは何を 感じているだろう
星々のきらめく この宇宙に

        Copyright by Ryo Michico


○ 神の痕跡

Thu, 08 Jul 2004 02:17:29

空から 神が降ってきた

燃えながら落ちる 巨大隕石
地上を埋めつくす 恐竜たちの目に灼きついた
眩い光 の記憶

言葉を持っていなかった
だから「神」という呼び名もない
けれど 思った
あれは神だ と

大いなる水は 沸騰し
無数の塵が 天高く吹きあげ
空は 厚い雲に覆われて
太陽も月も星も 失われた
光なき絶滅 の予言

恐竜たちは 終わりのない冬を彷徨う
枯れ果てた森で 灰まみれの草原で
網膜に灼きついた 眩い光の記憶だけを
唯一の救いのように 夢見ながら

やがて 
最後の一頭が 大きくひとつ息を吐き
目を閉じて 動かなくなった

ただひとつの罪も侵さずに 滅びていった
恐竜 という名の 美しい生き物たち

隕石クレーター
神の痕跡は いつも美しい円

そして 
途方もない時が 流れ
人 と名告る生き物が
地上を埋めつくした いま
わたしたちは 知っている
青い珊瑚礁に 刻印された
こよなく美しい 満月のような円を
核実験クレーター
無数の罪を犯しながら 生きつづける
人 という名の生き物

  のひとり のわたし

空から 神が降ってくる
網膜に灼きついた眩い光 の予感
光あふれる 絶滅の予言

神の痕跡は いつも美しい円

        Copyright by Ryo Michico


○ だからイルカは微笑みながら泳ぐ

Thu, 08 Jul 2004 01:42:16

海が 抱きしめてくれるから
わたしを
わたしの愛する者たちを
やわらかなその腕で
どこまでも 抱きしめてくれるから
もう 何もいらない
愛する者たちを 抱きしめる腕さえ
わたしは捨てた
だから
自由に泳ぐだけ
ここには 確かに
哀しみよりも より多くの歓びが満ちている

この海の青は
きっと空の青より 深い
あなたがたが目指す 空よりも

陸のうえの兄弟たちよ
どうして そんなに哀しい顔をする
愛する者を抱きしめる その腕で
もっと 多くをつかもうとし
いつも 何かを創りつづけて
どこまでも 走ろうとするのは
きっと いつも何かが足りないからだ
何を探しているのだろう
いつになったら 足りるのだろう
どこまでいったら 安らぐのだろう

いつも 何かを求めて
なお さみしげな二本足の兄弟よ
できることなら
戻っておいで
ここに戻っておいで

この海の青は
きっと空の青より 深い
あなたがたが焦がれる あの遠い空よりも

        Copyright by Ryo Michico


○ オルカへの讃歌

Thu, 08 Jul 2004 01:05:47

白と黒
海から跳躍する 美しい肉体
オルカ

白は 光
まばゆい光

水が割れて 白がのぞく
滑らかなその胸が 夕陽に染まり
大きく翻って
尾びれが 海原をたたく
舞いあがる 金のしぶき

黒は 闇
深い闇

昏い水を裂いて 銀河へと
一気に躍りあがる オルカ
その肉体からだの形に 流れおちる光は
星の数ほどの
夜光虫の燐光

海から 空へ
高く もっと高く
地球から 宇宙へ
遠く もっと遠く 跳ねあがる オルカ

        Copyright by Ryo Michico


○ 遠い言葉

Thu, 08 Jul 2004 00:56:38

なぜ 帰ったのだろう 海へ

遠い昔
わたしたちは ともに
陸を目指して 海を離れた
それなのに なぜ 海へ帰ったのだろう
オルカは

わたしたちは 陸のうえで
二本の足で 立ちあがり
自由になった手で 道具をつくった
道具は 力を生み
力は わたしを自由にした
武器をつくり
都市をつくり
空を飛び
海に潜り
数式を操り
わたしは 月にまでたどりつく
地上に 無数の小さな太陽を燃やし
莫大なエネルギーを取りだし
空の果てに
宇宙のはじまりを のぞきこんだ

けれども それで
ほんとうに わたしは 
自由になったのだろうか

オルカ
生まれ故郷の海を 目指した者たち
歌いながら 海を泳ぐ
星々の間を 泳ぐように
必要なだけ 食べ
海藻で 遊び
子どもたちを 育てる
この惑星の なにひとつ けがすことなく

オルカ
きみは なにを見ているのだろう
なにを感じ なにを思い
なにを歌っているのだろう
海で

遠い時間を隔てて
わたしたちは 再び出会った
まるで 異なる惑星で生まれ育ったように
わたしたちの言葉は 通じない

けれど わたしたちは
遠い昔 陸を目指した兄弟だから
きっと いつか わかりあえる

そうしたら 教えておくれ
オルカ
きみは なぜ 海へ帰ったのかを
そんなにも美しく 自由なのか

        Copyright by Ryo Michico


○ Crystal Silence

Thu, 08 Jul 2004 00:51:51

心は 結晶して 
水晶になる
あなたを思うと

言葉は 結晶して 
沈黙になる
あなたの前では

クリスタル・サイレンス

輝きに満ちた フォルテッシモの静寂

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★ 天使の夜

Wed, 07 Jul 2004 23:29:56

その天使は
あまりに巨きく 希薄だったので
誰の目にも 見えなかった

透明な羽根のした
光の都市を まるごと
そっと 卵のように抱いたので
子どもたちは みんな
きれいな夢を 見た

生まれたばかりの赤ん坊など
ついさっきまでいた場所のことを 思いだして
ここが もう地上だと
気づなかったくらいだ

ほら
赤ん坊が 笑っている
まぶしい夢を見て
眠りながら 微笑んでいる

        Copyright by Ryo Michico


○ 結晶歌

Wed, 07 Jul 2004 23:19:46

いちばん微かな音に
耳を澄ます

降り積もる 雪の音

いちばん小さなものに
目を凝らす

ひとひらの雪の結晶

いちばん近くにあるから
いちばん遠いものに
じっと 心を凝らす

すると 宇宙が聴こえる
きっと 永遠が見える

        Copyright by Ryo Michico


○ 白い沈黙

Wed, 07 Jul 2004 23:09:58

どんな微かな音を たてるのだろう
空を漂う水が 
結晶するとき

どんな音楽を 奏でるのだろう
無数の白いかけらが
地上を目指すとき

粉雪の降りしきる空に
そっと耳を澄ませてみても

灰色の雲の海に
じっと心を澄ませてみても

ただ白い沈黙が
聴こえてくるばかり

        Copyright by Ryo Michico


○ 雪

Wed, 07 Jul 2004 23:08:53

あきれるほど饒舌な 沈黙
地上を 天上にしようとする 白い企み

        Copyright by Ryo Michico


★ 天使 ――パウル・クレーに

Wed, 07 Jul 2004 23:04:14

まだ 手探りの天使
まだ 立ち迷う天使

闇は あまりに深く
光は あまりに眩く
翼のあることさえ 知らずに

まだ ここにいる
天使

        Copyright by Ryo Michico


★ Merry Christmas

Wed, 07 Jul 2004 22:55:08

つかのまの 命
だから人は 永遠を思う

きらめく星
こおれる月
聖なる森の
聖なる響き

ながれる河
きえゆく時
瞳にうつる
一瞬のいま

つまのまの 命
だから人は 人を愛す

        Copyright by Ryo Michico


★ 月の鏡

Mon, 05 Jul 2004 15:45:44

そして また 月が満ちる
美しく 円い 鏡になって

鏡は 映す
欠けては 満ち
満ちては 欠けた
幾億の月の貌を

月は 映す
生まれては 滅び
滅んでは 生まれた
幾億の命の貌を

月光に照らされた 古の海と森
月を見あげた 獣と人の眼差し

その記憶の ひとつひとつを
真珠色の 淡い光の層にして
幾重にも 幾重にも 重ね

たったひとつの円のなかに
いま なみなみと満たし

こよい また 月が満ちる
美しく 円い 鏡になって

東の地平から 西の地平へと
天の軌道を 運行してゆく

        Copyright by Ryo Michico


★Midnight Blue

Mon, 05 Jul 2004 15:27:36

空は暗く
 青く澄んで
  人は街に
   沈む小石

流れる時に さらされながら
    人は どこに運ばれていくのか
  流れる時の 川の果てに
     永遠の 海はあるのか

空は
 暗く
  青く
   澄んで
  水の
   底で
    街が
     光る

        Copyright by Ryo Michico


▲ 木蓮

Mon, 05 Jul 2004 13:48:47

草や木が 
まだ 花を咲かせなかった 遠いむかし
その木は はじめて 蕾をつけた
掌と掌を合わせた 小さな祈りの形の蕾を

人間が 
まだ 地上にいなかった 遠いむかし
その木は はじめて 花を咲かせた
降りそそぐ光を掬う 掌のような花を

それから 星はめぐり
はるかな 時がめぐった
恐竜は滅び
猿は人になり
人は文明を生み
文明は地上を覆いつくした
愛と憎しみとの網の目で

その間も
木は 花を咲かせつづけた
蕾は 光を求め 天にのびあがり
ゆるやかに その掌を開いては
花びらの器 いっぱいに 
光を溢れさせ
ただひたすらに
命の歓びを溢れさせ
咲いては散り 
咲いては 散っていった

花の名はマグノリア
かぐわしき木蓮

果てしない時をはらみ
いまも 
なにげなく そこに たたずむ
めぐりくる 新しい春のために
無数の祈りの蕾をふくらませて

        Copyright by Ryo Michico


★ 再生

Sat, 03 Jul 2004 20:06:50

その赤ん坊が笑うと

宇宙の暗闇の果ての
光のない世界で
枯れた薔薇に埋もれて
錆びついていた古い鍵が
音もなく はずれる

すると
一度は 失われたはずの銀河が
また 廻りはじめる
数えきれない星を 両腕に抱いて
闇に 光を放ちながら

その赤ん坊が笑うと
再び
世界が
生まれる

        Copyright by Ryo Michico


★ 冬至

Sat, 03 Jul 2004 20:03:36

いちばん長い 夜の底で
ひと粒の種は いつかくる春を思う

いちばん暗い 夜の底で
一羽の鳥は 光あふれる空を思う

いちばん深い 夜の底で
一頭の獣は やわらかな夢をむさぼり

いちばん遠い 夜の底で
わたしは思う あなたを

        Copyright by Ryo Michico


★ おやすみなさい

Sat, 03 Jul 2004 15:17:05

森は 眠っているから
川も 眠っているから
行って 夢のなかで
いっしょに 遊んでおいで

空は 眠っているから
海も 眠っているから
行って 夢のなかで
いっしょに 遊んでおいで

        Copyright by Ryo Michico


★ 月と風の子守歌

Sat, 03 Jul 2004 15:07:28

夢の地平に昇る月は
昇りながら 形を変える
さっきまで 三日月だったのに
ほら もう満月

決して訪れることのない土地に吹く風が
その月を 追いかけている
いくつもの 小さな渦を巻いて
後になり 先になり

けれども つかまえられない
つかまるはずかない
形を変えて どこまでも 
どこまでも 逃げていく月

月を欲しがった子どもが
きょうも泣きながら 眠りにつく
月明かりの頬に 涙の跡を光らせ 
夢の地平から吹いてくる風を 子守歌に

        Copyright by Ryo Michico


★ 月迷宮

Sat, 03 Jul 2004 15:02:14

月は 迷っている
迷わなかった月など ひとつもない
だから 夜ごとに形を変える

わたしは 待っている
迷いながら満ちた月が
地平線から 昇るのを

それは 宇宙の迷子
まるで わたしのような

        Copyright by Ryo Michico


★ 氷の花

Sat, 03 Jul 2004 14:43:54

夢の底で咲いていた 氷の花
地平線まで咲き誇る 透明な花

あれほど夢中になって 摘んだのに
摘むはしから
手のなかで溶け
消え失せてしまったけれど

目覚めたとき
確かに わたしは
強い薄荷の匂いに 包まれていた

        Copyright by Ryo Michico


○ 時の渚

Sat, 03 Jul 2004 14:40:43

夢よりも遥かな場所で 出会った

永遠なはずのその一瞬を 掬おうとすると
指の間から こぼれて
みるみる 遠ざかっていく
潮にさらわれた 小舟のように

波が すべてを消し去り
夜明けには また
だれの足跡もない 渚に
波が 打ちよせるだけ

それでもまだ 見える

どこまでも遠ざかっていく 星々の光が
いまも わたしに届くように
彼方へと 去っていく者たちは
輝きつづける

わたしのなかで
満天の星のように

        Copyright by Ryo Michico


○ ラスト・ワルツ

Sat, 03 Jul 2004 13:56:02

そこには確かに 見えない門があって
その門をくぐると
だれもが一度 深く死んで
新しく 生まれ変わる

けれども それは
瞬きをする間もないほどの
ほんのわずかな 時間なので
だれも 気づく者は いない

ラスト・ワルツを踊ろう
この命のために
ラスト・ワルツを踊ろう
去りゆく光のなかで

あの ゆるやかな角を曲がると
そこには確かに 見えない門があって

        Copyright by Ryo Michico


○ 残照

Sat, 03 Jul 2004 13:35:46

まだ 満ちてくる海のように
まだ 満ちてゆく月のように

あなたが 去ったあとでも
わたしのなかに 潮は満ち
月は さらに美しい円になる

太陽が 沈んだあとでも
石に残る ぬくもりのように
雲を染める 夕映えのように

やわらかな輝きに 
包まれている

あなたが 去ったあとでも

        Copyright by Ryo Michico


○ ある墓碑銘

Sat, 03 Jul 2004 13:28:23

ここを すぎて のち
わたしは みず わたしは つち
わきたつ くも ながれる かぜ
もえる みどり ゆれる ひかり
わたしは この ほしに なる

        Copyright by Ryo Michico


★ 音の万華鏡

Sat, 03 Jul 2004 13:25:49

ぼくは 立っていた
ひとり 草原のまんなかに

耳にあてていたのは
大きな白い巻貝

打ちよせる波の音
風をきる翼の音
流れゆく砂の音

はじめて飛んだ蝶のはばたき
ひらいてゆくつぼみのきしみ
吸いあげられる水のざわめき

万華鏡のように
貝殻からは つぎつぎと音が溢れだし

ぼくは 立っていた
宇宙のまんなかに

耳にあてていたのは
青く光る地球

        Copyright by Ryo Michico


○ 空への翼

Sat, 03 Jul 2004 13:22:43

どの山が 空へ届いたか
届かない

どの鳥が 空へ届いたか
届かない

ただ 魂だけが
月にさわる
星にふれる

ただ 魂だけが
空への翼

わたしは 空を翔ける
山よりも 高く
鳥よりも 遠く

それでも 空の果てには さわれない

ただ 死だけが
永遠の翼

わたしを 空の果てへ運ぶ
わたしは 空の果てで目覚める

        Copyright by Ryo Michico


★ またたく星

Sat, 03 Jul 2004 13:14:58

星は 息をしている
だから またたく

星は 鼓動を打つ
だから またたく

わたしは 息をしている
だから 星になる

胸が 鼓動を打つ
だから 星になる

父のように
母のように

祖父のように
祖母のように

いつか 星になる
きっと 星になる

        Copyright by Ryo Michico


○ 大伽藍

Sat, 03 Jul 2004 13:13:13

がらんとした青空が
そのまま わたしの頭蓋だった
巨大な 天の大伽藍
目を凝らすと 
海の向こうの半島に繁る 
緑の森が見え
森の木々が見え
風にそよぐ木の葉の一枚一枚が
くっきりと見えた
葉ずれの音さえ
はっきりと聴こえる
大伽藍に反響して

すべては わたしで
わたしは 宇宙だと知った
よく晴れた美しい日

        Copyright by Ryo Michico


○ 彼方

Sat, 03 Jul 2004 13:09:28

こんなに 空が澄んだ日には 
遠くを 見よう
だれよりも 遠くを

この海の向こう
あの半島を越えて
半島のうえにかかる 
淡い昼の月の向こうがわ
空の青さに埋もれた
無数の星よりも
もっと 遠くを見よう

永遠に どれだけ近づけるか
ここで
あなたと 彼方を見よう

        Copyright by Ryo Michico


○ 都市の記憶

Sat, 03 Jul 2004 12:56:07

百年後の廃虚に
いま
棲んでいる

千年後の砂漠に
いま
生きている

無数の窓が 
鏡になって
青空を反射している
だれも 見あげない

区切られた四角い空を
すべる昼の月
よぎる鳥の群れ

大理石の壁のなかで
アンモナイトは 夢見ている
時の彼方を

エレベーター・ホールに
ときおり響く 波の音
だれもが 空耳だと思っている

一万年後に ふたたび海となる地に
いま
都市がある

百万年後に だれが
それを
記憶しているだろう

        Copyright by Ryo Michico


○ 水の色

Sat, 03 Jul 2004 12:53:17

水の色を わたしは知らない

揺れる水は 青く
砕ける波は 白い
湖は 緑に静まりかえり
せせらぎは 透きとおり
蜘蛛の巣にかかる雫は 銀色に光る
立ちのぼる水は 白い雲になり
夕暮れには その縁を 金色に輝かせる
海は一面 金の小舟を揺らし
波打ち際は 鏡になって 燃える空を映す
やがて降りてくる 夜のなかで
星を映す 川
月を映す 海

そのどれを 掌にすくってみても
ただひとしずくの 透明な水なのに
時に 空のただなかで 虹色に輝く

水の色を わたしは知らない

        Copyright by Ryo Michico


★ 重力の呼び声

Sat, 03 Jul 2004 12:50:18

目に見える すべての星の
目に見えない すでに砕けた星の
これから 生まれくる星の
星をめぐる すべての惑星の
惑星をめぐる すべての月の

呼びかける力が 聴こえる

その宇宙の すべての歌よりも
くっきりと 巨きな声で
たったひとつの わたしたちの月が
呼びかける力は
まばゆい闇から きらめく青空へ
透明なまま渡り
いま 波の響きになって
わたしに 届く

満ちてくる 海
わたしになかに 満ちてくる
遠い記憶

        Copyright by Ryo Michico


★ 水晶の森

Sat, 03 Jul 2004 12:45:16

深い時間のなか 
水晶がゆっくりと 結晶をのばす
百年をかけて 八分音符を ひとつ刻む
はるかなワルツを 奏でながら

結晶は 音楽
結晶は 言葉
惑星から 美しいものだけを析出した
透明な言葉

宇宙は 不思議
無限の 不思議
こんなに美しいものを 
ひとりでに生みだすなんて

水晶のなかに
深い時間が 結晶している
千年をかけて 八分音符を ひとつ奏でる
はるかな楽譜が 刻まれている

水晶の森のなか
 わたしは耳を澄ます
  音楽に
   遠い時間に
    透明な言葉に

    言葉の森のなか
   わたしは迷う
  迷いつづける
 そして見あげる
星を

水晶の森のなかで

        Copyright by Ryo Michico


★ 森はひとつの巨きな楽器だ

Sat, 03 Jul 2004 00:40:59

たっぷりと横たわる大地から
青空に埋もれた 星のひとつひとつへと
まっすぐに張られた 無数の弦

落葉松の森は 巨きな楽器だ

かなでる風の弓
つまびく雨の爪

虫もまた 森
鳥もまた 森

空を 七色に染めあげて 太陽が沈む  
ひとつ またひとつと 星が瞬きはじめる
星は きりきりと 弦を巻く
木が きのうより わずかに背を伸ばす

だれが 
こんなにも 美しい楽器を つくったのだろう
だれが 
こんなにも まばゆい音楽を 奏でているのか

        Copyright by Ryo Michico


○ 水の名前

Sat, 03 Jul 2004 00:24:05

その水の名前は 雲
雲は 地上にこがれて

その水の名前は 雨
やわらかい 五月の雨になる

その水の名前は 川
歓びの声をあげて 流れる

川は 大地を潤し
水は 音もなく 吸いあげられる
草に 木に

その水の名前は 花
一面に咲き乱れる 名もない花たち

その花びらを 食めば

わたしは 水

あらゆる 草や木とともに
めぐる水に 足を浸している

あらゆる 生き物とともに
わたしは
めぐる水の名前のひとつ

その水の名前は 海
無数のせせらぎは
ただひとつの 大きな水となり

たゆたう光のなか
空に こがれる

その水の名前は 雲

        Copyright by Ryo Michico


○ 満潮/干潮

Sat, 03 Jul 2004 00:20:11

(ハイタイド・コール)

月に導かれて 水が満ちていきます
いま海は もっとも 空に 近づいています
東京芝浦は 満潮を迎えました



(ロータイド・コール)

月に導かれて 水が引いていきます
いま海は もっとも 空から 遠ざかっています
東京芝浦は 干潮を迎えました

        Copyright by Ryo Michico


★ 音楽が降りてくる

Sat, 03 Jul 2004 00:16:43

音楽が降りてくる
空から 星から
音楽が流れる
川のように 絶え間なく
天の河の 透明で希薄な水が
地上に 流れこむ
水晶の水に浸されて 洗い流される地上の塵
都市は 美しい廃虚になる
潮の満ち引きのリズムを
ゆっくりと 思い出しながら

時が ゆるやかに 流れだす
わたしたちは いままで
なにをそんなに 急いでいたのだろう

体のなかの海が 静かに満ちてくる
水平線から 月が現われる

音楽が打ち寄せる
わたしのなかの 海から
そして 遥かな星から

星のしぶきをあげて 砕ける波
わたしは じっと 耳を澄まし
小さな 渚になる

        Copyright by Ryo Michico


Copyright by Ryo Michico
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