「物語の作法」掲示板 (0004)
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鈴木一業 課題4
2001年08月19日(日)01時42分43秒
いろいろと書いてみて、物語らしくまとまったのがこれでした。これはタイトルと絵が先に出てきて、そこからぐいぐいと引き出していきました。そんなに深く考えず、すらすら書けた感じがします。そうなると、書きたいものと書けるものは違うなあなどと思いました。うん。
>寮先生
「ぱろる」掲載作品の話はその後どうなりましたか。もしもまだ間に合えば、「ぺよらま」の代わりにこの「ざぶねこ」はどうでしょうか。お願いします。
あと、だいぶ遅れましたが相模大野のリーディング面白かったです。ああいうのは初めてだったのでとても新鮮でした。でももっとゆったりとお茶でも飲みながら聴きたいような気もしました。挨拶ぐらいしようと思っていたのですが、なにせ寮先生がたくさんの人に囲まれていてびびってしまったのと、小田急線およびバスの冷房にやられてやや体調不良になったため早急に帰らせてもらいました。ごめんなさい。
ざぶねこ
ざぶねこを知っているかい。ざぶねこは空を泳ぐおおきなねこさ。夜の空をゆっくりと泳ぐ。そのからだはぼんやりとすけていて、まっしろいかすかな明かりにつつまれている。
ざぶねこは月のない夜にあらわれる。ざぶねこをこわがってはいけない。こわがれば、まっかにさけたおおきな口でひとのみにされてしまうよ。
でも、なかなか見ることができないんだ。ものすごい気まぐれでね。おばあちゃんはね、ちいさなころ見たことがあるんだよ。
ぼくのおばあちゃんはいつもこのはなしをする。知っているよとぼくが言っても、何度もする。おばあちゃんはたまにぼくの名前をまちがえる。とつぜんどこかいなくなったりするし、かえってくるとわすれものをしていたりする。
そんなおばあちゃんのはなしだから、ほんとうかうそかわからない。ぼくはあまり信じていない。おばあちゃんがこどものころならまだしも、いまはいるわけがないんだ。ここはビルもたくさんあるしとにかく都会なんだから。
それでもぼくは、こころのどこかでちょっとだけ信じていた。都会といっても、ビルがたくさんあってひとがたくさんいるということのほかはよくわからない。ぼくには都会もすこし信じられなかった。
だから月のない夜になると、ぼくは窓をすこしあけて空をのぞき見る。ざぶねこがどこかにいるんじゃないかって。でもキラキラと星がさみしそうに光るだけだ。しばらくぼくは窓のそばにいるんだけど、いつになってもざぶねこは来ない。そうするとぼくは、そんなものはいないんだと決めつけてふとんにもぐりこむんだ。
いないいないいない。そんなふうにして眠ると、ぼくはゆめのなかでざぶねこと会えることを知っている。ゆめのなかでなら会える。
ゆめのなかは、ほわほわとしていて気持ちがいい。わたげにつつまれているように暖かい。
ぼくは、自分の部屋の窓から外をのぞいていた。夜空を見あげて、ぼーっとしている。月はどこにも見あたらないざぶねこの夜だった。ぼくはやっぱりざぶねこを探していた。
そのときものすごい風がふいた。なま暖かい、甘いにおいの風がふいた。空のはしっこのほうがぐらぐらゆれている。ぼくは目をまんまるくして、そっちを見た。
まっくろくひずんだ空に、まっしろなざぶねこのからだが浮かんでいた。
ぼくははっとして、外に飛び出ようと玄関をめざした。けれどもぼくの手足は、水のなかみたいにゆっくりとしか動かない。それでもなんとか玄関にたどりついた。ぼくはドアをおもいきりあけた。おおきな音がひびいて、ぼくはすこしびっくりした。
外へ出ると、まっくらだった。ひんやりとつめたい風が、顔にあたった。さっきまでの家のなかの暖かさが急になつかしくなる。すっかりここは別世界だ。ぼくはすこしだけこわくなった。くらやみのむこうに、なにかえたいの知れないものが立っている。ぼくはまわりを見わたした。たくさんのビル。そうだ。ここは都会なんだ。こわがることなんてなにもない。
見あげると、ざぶねこがいた。ざぶねこは、おおきい。ぐーっとのばしたからだのむこうに、星がちらちら見えている。ながくて、ぴんとしたひげ。のんびりとした顔。からだはまっしろなのに、目だけがつきぬけるようにくろい。その目をおおきくしてぼくを見たかと思うと、ゆらりゆらりとちかづいてきた。
ぼくは、ただぼうぜんとしていた。おばあちゃんの話は、よくおぼえている。そう、こわがってはいけない。こわがったら、食べられてしまう。
ぼくの目の前に、ざぶねこがおりてきた。ゆっくりゆっくりと。たしかめるようにして、そっと地面に前足をつけた。ぼくはざぶねこの顔をのぞいた。ふかいくらい目は、ぼくの顔ぐらいの大きさだった。ざぶねこは、じっとこっちを見つめるばかりだ。
ざぶねこが、のどをならした。ぼくは、その声にさそわれるようにちかづいてみた。すると、ざぶねこはかがんでぼくをせなかにのせた。がっしりとぼくがつかまると、ざぶねこはゆっくりと空へのぼっていった。
ぼくは今、ざぶねこにのっている。風がふいて、ざぶねこがゆれた。ぼくは、目をつぶってざぶねこのせなかに顔をうずめてみる。みずのような感じ。でもふんわりあたたかいんだ。もうこわくない。
ざぶねこが、ないた。ほそいけど、とおくまでひびく声だ。ぼくははっとして顔をあげた。そこには、ビルの群れがならんでいた。
都会の空を、ざぶねこが泳ぐ。ビルとビルのあいだ。たくさんのひと。ひとがあんなにちいさい。ふとこどもの手からはなれた風船が、目の前を流れて夜空に消えた。
ゆらゆらただよう。海のそこにさす光のように。うかんだりしずんだりをくりかえしながら。ときどきおおきくのびをしたりもする。ネオンの海。そこは海だった。きらきらと光る波のように、ビルのすきまからうねるような色彩があふれていたんだ。
「すぐそばにこんなきれいなところがあったんだ!」
そのとき、ざぶねこがみぶるいをした。ぼくは、ざぶねこのせなかから飛び出してしまった。あわてて、ざぶねこにつかまろうとしたんだけどやっぱりだめだった。そのまま、まっさかさまにふくざつな色の都会のなかへ落っこちていった。ぼくの目には、ざぶねこのうしろすがたがうつっていた。たしかに、ゆらゆらと夜空へすいこまれていくざぶねこが。
光がみちて、目がいたい。
ぼくは目をさました。けとばしたふとんが、足のしたにまるまっていた。ここはぼくの部屋だ。窓がすこしあいていて、太陽の光がまっすぐにさしこんでいた。
ゆめのなかでだけなんだ。ざぶねこと会えるのは。でも、ぼくの手にはたしかにふれた感じがのこっている。それがぼくをまた、あのゆめのなかにつれだすんだ。
そしてまた月が見えない夜がきたら。
ぼくは窓をすこしあけて、どこかにざぶねこを探しているんだ。
(⇒この記事に応答する)
ネモト サヤカ 課題5
2001年08月11日(土)16時33分49秒
実はこちらの課題として書いたものではなくて、プロゼミの合宿の課題として書いたものです。
合宿参加人数8人でそれはそれでとても面白かったのですが、もうちょっといろんな意見を聞きたいかな、と思って、こっちにものっけてみました。
誰かお手すきでしたら感想お寄せください。
よろしく。
(あ、ちなみに、課題のテーマは「エロ」(笑)でした。)
「紅い唇」
黒くピカピカ光る御影石のゲートをくぐると、正面には白いマリアの像が見える。登校時間になるとこの像は、同じ灰色のセーラー服を着、同じような背格好の無数の女の子たちの波に、流れの中の石のようにぼけっと突っ立っている。けれど、この時間には誰もいない。
校舎がトンネル状にゲートを作る、その先にグラウンドがあって、朝練の運動部の声が響いてくる。
加奈はマリアを見上げ、ふっと短いため息をついてうつむき、下駄箱に向かった。
教室にはまだ誰もいなかった。
加奈はゆっくりと教室を見回してそのことを確認すると、窓際の自分の席につく。ほう、とため息をつく。
早朝の柔らかい日差し。窓を開けると、早朝の澄んださわやかな風が吹き込んでくる。揺れるカーテンが、天井に光の模様を描き出す。
「みずのなか・・・。」
加奈は口に出して言ってみるが、それは頼りなく響き、行き場を失う。
ふわり、と風が吹き、カーテンを大きく揺らした。赤いスカーフが頬にはためく。加奈は左手で風と太陽を避けながら、目を細めて窓の外を見やる。そこは何日かぶりの青空で、裏庭には葉が青々と生い茂り、草が競って天に向かって背伸びしていた。むせるような、生命力。眩しいほどのひかりの渦。
加奈はそれから隠れるように、手元に目を戻し読みかけの文庫本を開く。濃い緑地の花柄のブックカバーがかけてある。
吹奏楽部の練習する音が、遠くから近くから響いている。フルート、トランペット、クラリネット、ホルン・・・それぞれが好き勝手な場所で、好き勝手なところを練習しているので、ハーモニーはめちゃくちゃである。何万匹ものカタツムリの這う音のようだ。
きゅっきゅっきゅっきゅっ・・・
足音がする。リノリウムを上履きのゴム底が擦る音。
きゅっきゅっきゅっきゅっ・・・
加奈のいる教室の前で止まる。
がらり、と、戸が開く。
加奈は反射的に振り返る。入ってきた耀子と目が合う。
長い沈黙。
二人とも、黙ってしまったことを後悔している。しかし、どちらも金縛りのようになって動けない。
「・・・・・・おはよう。」
はじめに口を開いたのは耀子だった。
「・・・おはよ。」
耀子はさっと自分の席につき、鞄から本を出して読み始める。耀子の顔は加奈の位置からは見えない。本のタイトルも見えない。
加奈もまた文庫本に目を落とすが、すぐに閉じてしまう。窓の外に目を向ける。
加奈は以前、こうやって耀子と二人きりになったことを思い出す。その時は、何かのきっかけで、自然に話をしていた。
――きれいな髪ね・・・それ、ほど解いてみてもいい?
耀子はそう言って、加奈のおさげをほど解いた。加奈の髪は色が薄く、光に透かすときれいな栗色になる。おさげを編んでいたせいで、髪に緩やかなウェーブがかかっている。
――きれい・・・
耀子はうっとりした目で加奈を見つめ、髪を手にとって光に透かす。そしてその手をおもむろに顔に近づけ、加奈の髪に口づける。
加奈はそれをぼうっと見ている。それが、異常な行為なのか、正常な行為なのか、すでにわからない。耀子の眼鏡の向こうの、震える睫毛、白い肌の中で浮き立つ、紅い唇。それが、まるで別の生き物のようにゆっくりと形作る。言葉はそこだけ消されて加奈の耳には届かない。カーテンから卵色の光がさして、その風景全てをセピアに染めていた・・・。
耀子はじっと動かない。
本に没頭した振りをしている。そう、振りをしている。そのことは加奈も知っているし、加奈が知っていることを耀子も知っている。しかし、二人ともどうすることも出来ず、動けないでいる。ただそれだけのことだった。
あのときの言葉が、と加奈は思う。
「あのときの言葉がちゃんと私の耳に届いていたなら、今、こうして気まずい空気を味あわなくて済んだはずではないかしら?」
窓の外では相変わらず木々が風にそよいでいる。池の噴水に金魚が跳ねる。加奈を挑発するように何度も。耀子の顔は見えない。あか緋いひれが翻る。飛沫が飛ぶ。それはぶわっと大きくなって、アメーバのように加奈に張り付き包み込む。鼻と口が塞がれる。全身の動きが鈍くなる。そして、いつか固まる。それがわかる。全く動けなくなる。耳には水の音だけが木霊する。目の前では緋の金魚がひれをくねらせて何匹も泳いでいる。揺らめくいくつものあか緋いひれ。加奈の目の前を泳いで通り過ぎる。金魚の泳いだ軌跡が緋に染まる。身動きは取れない。緋の軌跡は幾重にも重なり、いつか加奈の視界は緋だけで染まる。揺れる、掻き回す、跳ねる、水の音。緋の濃淡だけの世界。ゆらりゆらりと揺らめき、うごめく、濡れた金魚のひれを透かした世界・・・。
「深谷さん」
気がつくといつのまにか耀子が背後に立っている。金魚のひれが、すうっと目の端によけていく。
「チョコレート、食べない?」
そう言って、耀子は加奈の返事も聞かずに細長いチョコレートバーの包装紙を剥く。揺れるカーテンの光に照らされた耀子の白い肌。細い、黒い縁の眼鏡。その奥の伏せられた長い睫毛。加奈は一心にバーの包装紙を剥く耀子にみと見惚れる。
外から、何かに反射した一筋の光が耀子の頬にのっている。それは耀子の頬を台形に切り取り浮き上がらせ、肌の白さ、きめの細かさを引き立たせている。
加奈は無意識に近頃気になりだしたにきびに手をやる。金魚のひれが耀子の頬を撫でる。
耀子がバーを一口囓る。紅い唇から白い歯が少しだけ覗く。表面のチョコレートが少し溶けかかって包装紙にこびりついている。耀子の唇にも少しチョコレートの色がのる。齧られたチョコレートの縁が唾液で濡れて光っている。チョコレートバーの中にはどろっとした粘着性のヌガーのようなものが詰まっている。
耀子は囓ったバーを加奈に差し出す。
「いい・・・」
耀子は怯まない。加奈の目を見つめる。結局受け取り、脇を申し訳程度に一口囓って返す。
受け取った耀子は加奈の齧ったところの上から齧ってまた加奈に押し付ける。また加奈が齧る。加奈が齧ったところを耀子が齧る。それを繰り返す。
開け放った窓から微かにバレー部のかけ声が聞こえる。カーテンの光が揺れる。だんだんと加奈の意識が遠のいていく。どちらが上で下なのか判らないような浮遊感。耳元で水音が聞こえだす。金魚の薄いひれが目の中にちらつく。
耀子が最後のひとかけらを指先でつまんでポイと口に放り込み、チョコレートのついた指を舐める。耀子の目はまだ真っ直ぐに加奈を見据えている。紅い唇の間から薄桃色の舌が覗く。丁寧に舐めら取られた指先はぬらぬらと光っている。
何かしたい。
加奈はそう強く望むが、それが何なのか分らない。ただじっと、あか緋いひれの向こうの耀子の目を見つめている。お互いに吸い付けあうようで逸らすことが出来ない。
最後に唇についたチョコレートを長い舌で舐め取る。つばで、耀子の唇が一層紅く、てかてかと光る。そこだけ他の動物のようだ、と加奈は思う。
加奈は半ば放心状態でありがと、とだけ呟く。耀子も、「ん。」とだけ答える。
席に戻りかけた耀子がふと振り向いて、
「深谷さんの髪、綺麗ね・・・」
と言い、加奈の髪に手を触れる。
「ほど解いても、いい・・・?」
視線が絡まりあう。
ぱしゃん、と遠くで水音がする。カーテンが風で揺らめく。ゆらりゆらりと、緋に染まっていく。
二人の目はすでに恍惚としている。耀子が一歩加奈に歩み寄る。加奈の髪に手を伸ばす。ゆっくりと加奈が頷く・・・。
「おっはよ! いつも早いねぇ。」
唐突に現れたクラスメイトに、二人はハッと我に返る。
「今日、朝礼講堂だってさ。もう開いてるみたいよ。」
その女生徒は二人が行くのを待っている風だ。
「早く行ってバレーボールしましょう!」
「・・・・」
加奈はまだ現実に戻りきれない。目の前を浮遊するあか緋い金魚。それと女生徒がダブって見える。
「・・・行きましょうよ。」
耀子が席を立つ。加奈にニコッと笑いかけると少し首をかし傾げてみせる。
女生徒が先に歩いていく。他のクラスの生徒と合流し、歓声を上げつつ小走りになる。
後ろにいる加奈の隣に、そっと耀子が近付く。指先が触れ合う。もつれるように、二人も走り出す。繋ぐともなしにお互いの手を触れあわせる。そこから何かがじわり、と生み出されてくるような感覚。二人の目は前を向き、お互いの顔を見たりはしない。けれども小走りでもぴったりと歩調は合っている。
講堂の近くに来るとぽつりぽつりと他の生徒の姿が見え始める。二人はそれを流れの中の石のようにして左右に分かれる。二人の指は解け、言葉はなく、しかし示しあわせたように別々の入り口から入っていく。
朝礼の開始時刻を知らせるチャイムが鳴り、二人の姿は同じグレーのセーラー服を着た、同じような背格好の無数の女の子達にまぎれて見えなくなった。
(⇒この記事に応答する)
ネモト サヤカ 杉本さんの選択は正しかった。
2001年08月11日(土)16時24分59秒
突然ですが、幾つかの方面からアクションがあって身の危険を感じないでもないので、このホームページにもフルネームを公開することを控えたいと思います。
でも、カタカナでならわかるでしょ♪
最近個人の手におえないネット犯罪も増えてきているし、そうでなくとも、この20年で数々の恨みをかって生きてきているので(笑)、YAHOOなんかの検索エンジンで自分の名前が出てしまうのにはやっぱり抵抗があるのです。(今さらだけど)
というわけで、できれば過去のログなんかの名前も訂正したいのですが、できるでしょうか?
それから、私だけでなく、他の皆さんも、ちょっと考えた方がいいんじゃないかなぁ、と私は思うのです。
どうでしょうか?
(⇒この記事に応答する)
鈴木一業 句会の感想
2001年07月08日(日)22時08分45秒
すこし遅れましたけど、句会の感想を書きます。
率直な感想は、「案外面白かった」です。
その場で言葉を紡いでいく作業は、新鮮でした。
音楽に似ていると思います。言葉のアンサンブルという感じです。
リズムやコードに、自分のメロディーを乗っけていく。
作者に、自分の句の意味をしゃべらせる時間があるとよかったです。
「よく分からん」とみんなで言っていた句もあったわけですし。
あんな感じの雰囲気で、また句会ができればいいと思います。
おしゃべり会のような感覚で。
そしたら、また参加したいと思います。
(⇒この記事に応答する)
寮美千子 課題3(7) 八句目選句
2001年07月07日(土)02時00分20秒
連句は快調! とても美しい流れになってきました。
いよいよ八句目です。
授業で配った第八句候補に、追加が三句あるので、注意してください。
この中から三句選び、選評もつけて、月曜日いっぱいまでにメールしてください。
結果は掲示板に載せます。
■連句「水草生うの巻」第七句まで
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
フランス映画は理解できない 奥野美和
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
■第八句候補
1. 打ち捨てられた星座を回す
2. 億万の蝶海峡を渡る
3. 鏡に映る未来の幻
4. 限りない夢空へと放つ
5. 踵を返し放った言葉
6. キリコの街に閉じ込められた
7. 空(くう)彷徨える紅い風船
8. 仮病の午後の退屈しのぎ
9. 転んだぐらいで泣くな息子よ
10. 坂の途中に林檎ポロポロ
11. 坂道の果て汽船横切る
12. ざわめくカフェのボサノバの風
13. 食卓の上にペッパーレッド
14. 死んだ木馬が踊る明け方
15. 畳のほこりが零れる季節
16. 天使に逢えなく欠伸する
17. 遠くで吠ゆる犬の声聞く
18. 溶けだしながら季節を廻す
19. ネイルカラーの色重ねゆく
20. 博物館の中のベーゴマ
21. 蜂蜜色に輝ける月
22. 日々の挾間を行き交い遊ぶ
23. 広い犬小屋狭い大空
24. 星は白抜き縞は紅白
25. モグラの穴に青を捨て行く
26. 大和撫子顔は山姥
27. 輪郭を思い出した砂漠
28. わたがし探すきつねのお面
29. 笑顔の花が呼んだ薫風
30. 幸せ運ぶは羽根がなくても
31. ステップたたとん誰の足にも
(⇒この記事に応答する)
西浦多樹 句会の感想
2001年07月06日(金)01時15分08秒
その場で言葉が生れているというだけでなく、
それが刻々と育っていくのが面白いと思いました。
みんな素直に書くし、言うし、だからいいと思います。
句会の、そういういいところが、存分に出た会でした。
それにしても、みんな人物自体(?)が面白くて、
どうも興味津々になってしまいがちです(笑)
(⇒この記事に応答する)
杉本果也 句会の感想
2001年07月05日(木)15時31分31秒
私もとても楽しかったです。
確かに作句自体は一人でするものですが、
ああいう風に大勢居る場所でやると自然に気分が高まって、
すごく刺激的でした。参加して本当に良かった!
次回は是非、寮先生のお宅で夜通しで
大連句大会を開催していただきたいと思います。
誰も寝ちゃだめ! 部屋からも出ちゃだめ!
作って作って作りまくりましょう!
とりあえずこの「水草の巻」は、
みんなが一句ずつ選ばれるまでやれればいいなあ。
ってか私が頑張れって感じですが。お互いにね。
(⇒この記事に応答する)
杉山千絵 課題4
2001年07月05日(木)02時43分46秒
まずは、ごめんなさい。
ひとつ前の投稿の下に、膨大な空白が入ってしまいました。
以後、気を付けます。
まだ、物語の半分も進んでないのですが、途中経過と言うことで、書き込みます。
「そらとみちのうた」
この森で、君は生まれた。
空と海と土を巡る水のように、
何度も、絶え間なく生まれ続けた。
全てが、終わりの予感に身を委ね、
それでも、まだ、美しく、
流れのままに生きている。
そこは、森の中。生きるに剰るエナジーで満たされた大気を震わせて、森中に拡がる泣き声の波紋。時折差す陽光に虹を宿す、しっとりと柔らかい苔の真ん中に、未だ光を見たことも、言葉を発したこともない、ただ泣くことだけを心得た生き物が納まって居た。
毛のない体、前だけを意識するように配置された顔の部品、森にあっては、およそ機能的とは思われないまっすぐな背骨、風に揺れる木々の葉でさえも、たやすく傷つけてしまいそうな頼りない皮膚。何処を取っても、その場に異質なその生き物は、生まれて間もない人の子供だった。
泣き声は止む気配さえない。もの見ぬ眼から溢れる涙は、あまりにもとめどなくて、このまま泣き続けたら、乾涸びてしまうのではないかと思われた。
抱き上げて、あやしたいけれど、何で出来ているのやら、ひどく柔らかそうな体は、触れた途端、ぷちんとはじけて消えてしまいそうな気がした。触れようか、触れまいか、迷う木々の様子は、まるで、人の父親が泣く子を前に、どうしていいか分からず狼狽えて手をひらひらさせているようだった。
そんなふうにして、頭上の木々の葉がやさしく揺れて、まぶたに呪文のような影を落とすと、ようやく、人の子は泣き止んで、よく澄んだ、風を渡る砂粒が、陽の光を受けて煌めくような声をたてて、笑った。
その声の幸福なことといったら、もう、両手でも抱え切らない悲しみでさえ、溶かしてしまうかと思えるくらいだった。だから、その子が一声笑った瞬間にはもう、森は、その子を生かしたい気持ちになっていた。
その森はとても豊かで、いつも、何種類もの果実や木の実が枝を撓らせていた。森が選んだその子の最初の食べ物は、やわらかいオレンジ色の果実で、薄い皮の内側には乳色の、甘いみずみずしい果肉がいっぱいに詰まっていた。その実をつけた木は、よく熟れた実のなる枝を思いきり弓なりに逸らせて、一気に緩めた。すると、今にも落ちそうだった完熟した実は、勢いよく飛ばされて、その子のすぐそばの木の幹にあたって、つぶれた。甘い乳色の汁は、幹に生えたサルノコシカケに受け止められ、その木を這い登るのを小休止して垂れ下がっていた蔦を伝ってその子の口元まで運ばれた。蔦の先から滴る乳色の汁をその子が懸命に飲んでいる間中、森は不思議な喜びに満たされてざわめいていた。
こんなふうにして、森は、その体を食物として与え、その体で布を織り、その全てで人の子を育てていった。その子がすっかり少女になった頃、森は、触れようか、触れまいかと迷ったあの時以来の迷いを感じていた。
その頃、木の実や魚を採りに度々森にやってくる、森が育てた少女と同じくらいの年頃の少年がいて、名前をみちといった。もしも、森にやってきたのがみちでなかったら、あるいは森はそんなふうに迷ったりはしなかったかもしれない。少女を人に会わせようなんて、思いつかなかったかもしれない。けれど、森にやってきたのはみちで、ふたりが出逢うのはきっと自然なことで、森だってそれを望んでいた。だけど、いつか人と森との狭間に立って苦しむだろう少女の事を思うと、森は迷わないではいられなかった。このまま、森の中で、森の一部として生き終える事を思わないではいられなかった。
(⇒この記事に応答する)
杉山千絵 句会の感想
2001年07月05日(木)02時29分10秒
私個人は連句に慣れていないので、あまり没頭できませんでしたが、
次々出来てくるみんなの句を読むのは、とても楽しかったです。
言葉と、音のリズムで、イメージのセッションをするという行為は、
なかなか魅力的です。
ほろ酔い気分で、ちょっと連句でも。
と言えるくらい、自分の自然な表現の手段になったら楽しいだろうと思いました。
(⇒この記事に応答する)
奥野美和 句会の感想
2001年07月02日(月)16時21分29秒
楽しかったです!とても。
なんだか、なんだろ?なんか・・・。
そう、すごい自分の中でテンションが上がっていきました。
初めての経験だったのですが、次回も参加したいです。
そうそう。私の句は最初、「理解できないフランス映画」
だったんですけど、前の竹野さんの句も、名詞で終わっているし、
上下、かえた方が、いいのではないか?という、
杉本さんの意見で、上下かえたら、なんだか、
いろんなふうに読み取れて、イイ感じになりました!
こういうコミュニケーションをとれるのも、
句会の素敵なところなのかな?と思います。
俳句つくるの、楽しいなあ!!!
またはりきっちゃいますね!
(⇒この記事に応答する)
寮美千子 課題3(6) 第八句目作句
2001年07月02日(月)13時39分39秒
連句「水草生うの巻」
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
フランス映画は理解できない 奥野美和
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
▼
これに続く第八句目を作句してください。
七・七ですよ、間違えないでね。
締め切りは今週の木曜日。
寮美千子までメールで。
mail@ryomichico.net
また、先日のラシエット句会に出席した者は、はじめての句会の感想を
短くてもいいから、書いてください。こちらは、掲示板の方へ。
▼
29日の授業の後、午後2時より相模大野のカフェ「ラシエット」にて、
希望者による連句の座を持ちました。その場で句を詠むというはじめての体験。
ビールやワインなども入って、リラックスしながらも、緊張感漂う句会独特の空間が出現。
そこで生まれたのが、上記の句でした。
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
に続く「恋の句を」というのが前回の課題。
第五句は次の句に決定しました。
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
その前の二句、ストレスフルな都市の風景のなかで、
前向きの、明るい恋の気持ちが、希望を感じさせてくれます。
素直さや健康な心のありようが感じられるのも、とてもいい。
さて、ここで「恋」が出たので、次も「恋」の関連の句を。
「恋」は結構ヘヴィーなテーマなので、連句では、一句で終わらせないで、
二句詠むのが常です。
フランス映画は理解できない 奥野美和
明るくまっすぐな恋をする若者。
でも、こむずかしいフランス映画はさっぱり理解できない。
もしかしたら、ふたりはデートで評判の映画を見に行ったのかも。
そして、ふたりとも???????状態か?
おかしみの漂ういい句です。
さて、ここで恋は終わり。いよいよ転じる場面です。
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
フランス映画らしいおしゃれ感いっぱいの場面。
すごくうまくついたよね。
では、次をどうするか?
▼
ここは、急激な場面転換ではなく、この句に続く状況を描いてみたいもの。
「駈けだして」の結末がついていないので、それがどうなるか?
あるいは、この子どもはどんな風景のなかで駈けているのか?
都市なのか? 田舎なのか? 植民地なのか?
どんな音が聞こえているのか?
そんな場面を想像しながら、次の第八句を作句してください。
▼
この連句、すごくいい流れになってきました。
「物語の作法」に集った個性溢れる面々の句でつないでいけば、
きっと最後まで、活気あるいい連句になると思います。期待してます!
(⇒この記事に応答する)
小橋美加 課題2(1)
2001年06月29日(金)00時04分32秒
未完成で文章が中抜けしている状態ですが、いったん提出します。
流れが見えてこないと思いますが、すみません。
(題未定)
その日、僕は川の土手でひなたぼっこをしていた。腹がたつまま無茶苦茶に自転車をとばして、ついた先がそこだった。時間が経つにつれていらだちは消え、僕の中にぽっかりあいた空間が生まれていた。
初めての会う土地。初めて会う人。
『どうして想いが伝わらないのだろう』‥‥まるで言葉の違う国に来たみたいで。
急にさむくなったような気がして、土手に寝ころんでみる。太陽と土があたためてくれる気がしたから。
僕は夏が好きだ。僕の気持ちが熱いように錯覚できるから。
行き場のないコトバたちが流れていって‥‥
いつの間にか僕はねむりこけていた。
目をあけると、森がひろがってたんだ――――
きーんとなって、少しの静寂。風の音。
音と一緒に、目には真っ白なものが飛び込んできた。
毛布みたいにふかふかした毛皮、真っ黒い目、そのおっきな体に似合わない、ちょこんとついた耳‥‥それが君だった。湖のまえにある木に、体をもたれかからせて君はいた。
おそるおそる僕はちかづく。君はちらっと僕をみて、それからなにごともなかったかのように、まっすぐ前をみた。気持ちよさそうに目を細めて。
おそるおそるだけど、もうちょっとちかづいてみる。君はまっすぐ前を向いたままだ。
もうちょっと、もうちょっと、とちかづいていって‥‥‥僕は君の顔をのぞきこんでいた。
君は真っ黒な目をめいっぱい見開いて、僕を見る。そして、口が開かれて‥‥めいっぱい笑い出した。‥‥‥食べられるかと思った。
それから、横の地面をぽんぽんたたく。
「すわれ、ってこと?」
僕は首をかしげて尋ねてみる。
「そ。」
君も首をかしげて答えた。
返事はそっけなかったけど、顔は笑ってた。
僕は君の横に座って、君の視線の先を追う。
視線の先は青空。君は風の吹く方に顔を向ける。太陽から風がふいているんだと君は言う。僕には何もみえやしなかったけど‥‥
だけど、(だから?)目を閉じて風の音を聴いた。はっぱがこすれる音が聞こえた。僕の髪がざわめく音が、感じがした。とくん とくん 僕の音も合わさる。子守唄にあやされる、僕は森の赤ん坊になったような気がした。
耳をすまして君の音を探しているうちに、僕は眠りについていた‥‥
見なれた白い天井、パズルの散らばった机。ブラインドの隙間から、差し込む朝日。僕の部屋だった。
「ゆめ?」
記憶を辿る。昨日は学校に行って‥‥そう、むしゃくしゃしてたから自転車をとばして川にったんだっけ‥‥それからそれから。
記憶が曖昧になる。どうして家にいるのか、さっぱりわからない。でも、そんな事ホントはどうでもよくって。
『おしいことしたなぁ。夢なら夢で、もうちょっと見ていたかったのに。』
なんて考えてる。
夢には『明日見れる確証』なんてないから‥‥
そんな事を考えて、『今日』が始まるって事にため息をつく。この『今日』ってものに僕は少し飽きかけている。かわりばえのしないだろう『今日』に張り切るのが、ちょっと窮屈だったりするから。
それでも、僕は今日も学校にいく。
c2=a2+b2
昨日の半日の二乗と今日の半日の二乗を足しても、明日丸一日の二乗にはならない。昨日と今日は直角に交わるとは限らないから。だから、予測可能な明日はない、そう考えてしまうから。
僕はまたあの土手にいくだろう。あの夢がもう一度みたいから‥‥
ながいながい石段をのぼりきると、朱い鳥居が見えた。人気はない、だけど、真っ白の巨体があった。柵に体をもたれて下の方をみてる。
「やあ」
僕が声をかけると、君は手を挙げて返事返す。
横に行って、同じように柵の外を見下ろす。光に反射する広い海に、ちっちゃな家がたくさん。僕の住む町だった。
高い所から見る景色は、ちょっと気持ちがよかったりする。
どうしてかを君に問いかけてみる。
下を見たまま君は言う。
「いろんな方向からみると、せかいが違って見えるよ」と。
そして僕の顔を下から覗き込む。巨体を一生懸命曲げる姿が可笑しくて、僕はふきだした。君も笑っているようにみえた。
君には、どんなせかいが見えているのだろうか?
同じ目線で見れたらいいのに、そう思った。
僕を呼ぶ声が聞こえる。まだ君といたいけど、もどらなきゃならないみたいだ。
それから、君に会えないままで夏休みが始まった。
僕は毎日のように土手に向かった。
よく眠れるように、こむずかしい本をもって。
それでもなかなか眠れなくって、こむずかしい知識が増えていく。
その知識も僕を熱くはしてくれるけど‥‥
両手を太陽に向かってのばすと、光に溶けて空と僕が一つになった気がした。
今日はいいお天気で、とってもあったかいよ。
僕のせかいの中で、真っ白な君がイチバンあったかそうに見えた。
両手をのばしても、もう君には届かないかもしれないけれど。
ときどきむしょうに君にあいたくなる。たとえば、君みたいに真っ白な猫を見かけた時。
ふかふかしたあったかそうな毛が、君を思い出させる。
このせかいにも君はいるんだろう?
どこかの木に体をもたれかからせて、きっとあくびをしている。
真っ黒な目を潤ませ、退屈を紛らわす何かを探してる。
ぬいぐるみを買ったんだ。君によく似た真っ白な。
机の端にあるそれにときどき話し掛ける。返事が返ってきそうな気がして。
そうだ。これから、絵を描きに行こう。ぬいぐるみをもって、木のある所へ。
楽しい絵が描ける、そんな気がするよ。
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松永洋介 第三句、投票結果と選句評
2001年06月19日(火)00時47分33秒
■連句「水草生うの巻」
【第四句 投票結果】
■5点句
▼ 8. 千の呼吸に淡くなる影 杉山千絵
(選:宮田和美、竹野陽子、小橋美加、高橋阿里紗、鈴木一業)
宮田:「千の呼吸」という言葉がいい。好き。普段は忘れている存在への不安、アイデンティティに対する不安、「消えてしまいそう」感がでてると思います。
竹野:三句から続くと、なぜだか夏のギラギラした都会が浮かんで、せまい道をぎゅうぎゅうと歩く人々の熱気やかげろうが、濃くて短い夏の影すらぼやかしてしまう、というイメージがこれから来る夏への期待と重なったから。
小橋:私の趣味で入れます(笑)呼吸して、生活していくたびに何かが失われていく。規則正しく生活して、保守的になる度に薄くなって溶けそうになる自分。なんか、そんな気がしました。ちょっとセンチメンタルに(笑)
高橋:都会の雑踏にまぎれて自分が消えていってしまいそうな錯覚に陥ってく様が、前の句と対になっているような気がする。
鈴木:沢山の人に紛れてしまう不安。前の句の空気をうまく引き継いで、都会の人の心情をうまく捉えていると思います。
■3点句
▼ 7. こころのなかのうたをうたって 奥野美和
(選:宮田和美、杉山千絵、鈴木一業)
宮田:やわらかい言葉のなかに潜む切実な思い。
杉山:
鈴木:都会の場面を引き継ぎながら、前の句の閉鎖的な雰囲気から抜け出している句。街の喧噪を歩く少女。もしかしたら、彼女の目にはこの街が、希望に満ちた世界に映っているのかもしれません。うきうきする瞬間。前向きで暖かい「うた」。イメージがわかりやすくて良いです。
▼22. 並行線に差した約束 西浦多樹
(選:仲田純、竹野陽子、鈴木一業)
仲田:良くわかんない所がいい。
竹野:お互い好きなのに別れるしかない二人。そんな一場面が浮かんだ。突然のどしゃ降り。みたいな。そういうクサイ恋愛ドラマじゃないとしても、言葉からの情景がニオイ立つような印象を受けたので素敵だと思いました。
鈴木:「約束」のある日。それだけで一日が楽しくなってしまう。退屈な日常から解放される感じ。前の句に対し、気持ちの変化を感じさせるのが良いです。
▼23. 無限のループささやかな日々 鈴木一業
(選:奥野美和、西浦多樹、杉本茅)
奥野:前の三句にぴったり温度が合った句
西浦:まず「無限」と「ささやか」、「ループ」と「日々」という言葉の組み合わせに一票。前の3句の言葉の連なりをきれいに受けて進めている。広がりがあって、なおかつシンプル。美しい幾何学模様を見ている感じがするのも素敵。音にした時すっきりしているところも好き。
杉本:ノイズに耳を塞いでいる人物さえも、そのノイズに巻き込まれているというのを、感じました。
▼25. 眼鏡に映る近未来風 鈴木一業
(選:宮田和美、東條慎生、西浦多樹)
宮田:「眼鏡」という言葉と、「近未来」という言葉。硬質なイメージのふたつですが、「近未来風」という言葉が、いい具合にくだけていてなんだかかわいらしいな、と思ってしまった。作者は別のこと思ってんのかもしんないけどー。
東條:空を眺める人の目に映る都市の光景という場面の流れが良いと思います。
西浦:研ぎ澄まされた眼に映ったものが風、しかも「近未来風」というのがいい。耳を塞ぐと、一瞬空の彼方から風に運ばれてきた未来が見える。近未来の街の光景が浮かぶのは、「近未来」という言葉のせいばかりではなく、「眼鏡」というアイテム越しでもあるかもしれない。
■2点句
▼ 1. 明日になったら忘れる言葉 東條慎生
(選:奥野美和、杉本茅)
奥野:言葉は、なんだか、不思議で、消えちゃうのか、残っていくのか、わからなくて、そう、かたちにならなくて、こころにのこる、血になる、肉になる、わたしになる、言葉がほしい。いま。自分でつくれ。つくる。
杉本:ノイズに耳を塞いでいる人物さえも、そのノイズに巻き込まれているというのを、感じました。
▼ 3. 渦巻きの中私は迷子 杉本茅
(選:西浦多樹、高橋阿里紗)
西浦:外部から流れ込んできた音を遮断したことによって、自分の内側を覗き込んでいる、それを、“音”を使わずに表現しているのがよい。「渦巻き」という言葉によって耳を想像させ、自分の心の中の言葉という、まだ聴こえない“音”の中をさ迷っている気がする。
高橋:都会→人ごみ→渦巻き(自分の感情?)。発想の展開がおもしろい。耳を塞ぐと、足元がグラグラして自分の思想の渦にまきこまれていくような感じになっていくのが生々しくて良いと思う。
▼ 6. 声よみがえり立ち尽くす道 小橋美加
(選:東條慎生、高橋阿里紗)
東條:都市の喧噪の中で感じる孤独感というものがよく出ていると思います。
高橋:何も聞こえない中(聞きたくない)、頭によみがえる言葉がある。なんだか心が前に進んでいく様が希望的で良いと思った。
▼21. 踏み固めるは尽きない予感 西浦多樹
(選:杉山千絵、竹野陽子)
杉山:
竹野:「予感」がいい予感なのか悪い予感なのか、どっちとも考えられるけれど、あふれてくるモノを、「踏み固める」というのは何かきっぱりとした強い意思を感じたので、ニ句までの無抵抗な雰囲気から変化したのでいいと思った。
▼24. 空しき鼓動があるとも知らず 仲田純
(選:東條慎生、杉本茅)
東條:騒音に掻き消される小さいものへの視線が上手いと思います。
杉本:ノイズに耳を塞いでいる人物さえも、そのノイズに巻き込まれているというのを、感じました。
■1点句
▼ 4. オヤジーランドに一輪の花 鈴木一業
小橋:新宿のくたびれた(失礼)スーツの群れの中に、子供が一人。とっとっと〜と駆けて行く姿が。他にもいろいろと『花』は思い浮かぶんですけど。おねぇちゃんとか‥‥ 親父ギャグっぽいとは思いつつも、これ好きです。
▼10. 薔薇(そうび)の間に瞬きの熱 西浦多樹
仲田:程度と状態のバランスがいい。雰囲気を壊さない。
▼14. でも君は言うあれは生きる音 杉本茅
杉山:
▼18. 熱は残りて静けさ戻り 横田裕子
小橋:夏の熱気に高ぶらされた気持ちの余韻は残るのに、どこか冷めてくる。空回り。夏の夕暮れ時に感じる気持ちを思いだした。
▼27. 人混み泳ぐ背中にドラマ 竹野陽子
奥野:街。ビル。クルマ。人。人。人。確かに街は耳の塞ぎたくなるなるようなノイズに溢れている。でも、あの人の背中にも、この人の背中にもドラマがある。そう思うと、「あれは生きる音(14)」なのかなあ。
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寮美千子 第四句決定/課題3(5)五句目募集
2001年06月18日(月)22時17分07秒
■連句「水草生うの巻」
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
▼四句目 小川美彩さんの句に決定
小川美彩さんの「光に溶けるバーガーの紙」に決定しました。
都市を表象するものとしてハンバーガーを包む紙を選び、
それを簡潔に「バーガーの紙」と言い切ったところに冴えがあります。
あのぺらぺらの頼りない紙。使い捨ての「今」という時。
それがいかにも都市的。
それが「光の溶ける」。
光や熱に当たってシュワッと溶けてしまうような感じ、
あるいは、わたしのイメージでは、露出オーバーの写真で、
バーガーの紙が真っ白に飛んでしまっている一瞬。
そんなものを連想しました。
小川さんは、実際どのようなものをイメージして書いたんだろう?
掲示板で教えてください。
▼これはあくまでも連句です!
前回よりもだいぶましになったというと思われるものが、他者のイメージ。
連句は、あくまでも他者の句に、イメージを連鎖させていくもの。
作句のときもそうですが、選句も同様です。
すばらしい句でも、全然ついていなかったり、離れすぎだったりしたら、アウト。
今回、みんなの人気がいちばん高かった5点句は
杉山千絵「千の呼吸に淡くなる影 」
これもすごくいい。確かにわたしも目を引かれました。
前句にもついている。
けれども「連句としての流れ」を考えると、
これはベターではあるけれど、ベストではない。
この句であれば、たとえば春の山などを詠んだものと考えることも可能です。
植物たちのひそやかな気配、という解釈もあり。
都市を離れても、充分やっていけてしまう。
そこが、この句の魅力でもあり、弱点でもある。
一方、小川さんの「バーガーの紙」はもう、街の景色でしかありえない。
二句目から三句目に思い切ってジャンプしたので、
ここはおとなしく都市の景を詠みたいもの。
というわけで「光の溶けるバーガーの紙」を選びました。
この句に一票も入ってなかったのは、ちょっと? かな。
▼五句目のヒント
水辺・水辺・都市・都市 ときたので、五句目はどうするか?
ここは外界の情景ではなく、内面の情景、それも恋、ということにしてみましょう。
諸君、恋の句を詠むべし!
季節は雑がベスト。
季節が入る場合は、連句なので前には戻れない。
というわけで、春の句は不可。
入れるなら、夏。
秋、冬も、だめというわけではない。
以上の条件で、五句目を詠んでください。
▼他者を忘るなかれ!
恋なら、なんでもいいってわけじゃない。
ちゃんと「光に溶けるバーガーの紙」につくように。
そして、その前の「碧い空街角ノイズ耳塞ぐ」と重ならないように。
青、空、ノイズ、そして耳を塞ぐとか、聞きたくないとかいうアイテムはダメです。
▼健闘を祈る!
というわけで、みずみずしい恋の句、楽しみにしています。
きっと、いろんな恋が出てくるだろうなあ。
今週は、みなさん自己紹介、よろしくお願いします。
▼29日のこと
その次の29日は、課外授業で、相模大野の喫茶店ラシエットへ行きます。
二上貴夫師匠をお呼びして「水草生う」の巻を集中的に先へ進めたいと思います。
つまり、ラシエット参加者によって、連句会の座が開かれるというわけ。
成績には関係ないけれど、参加しないと、句もとってもらえないよん。
みなさん。ふるってご参加ください。参加費は、コーヒー代300円です。
(⇒この記事に応答する)
松永洋介 第四句候補のリスト/課題3(4)
2001年06月16日(土)16時08分10秒
■連句「水草の巻」
水草生う水の深きを悲しまず | 四方田犬彦 |
ただひたすらに昇りゆく泡 | 寮美千子 |
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ | 高橋阿里紗 |
■第四句候補
課題3(3)で投句された第四句です。
だいたい五十音順に並べ、作者名を伏せてあります。
- 明日になったら忘れる言葉
- あなたの声さえ聞こえぬままに
- 渦巻きの中私は迷子
- オヤジーランドに一輪の花
- 雲のあいだにわたしのメロディー
- 声よみがえり立ち尽くす道
- こころのなかのうたをうたって
- 千の呼吸に淡くなる影
- 線路が震え踏切が鳴る
- 薔薇(そうび)の間に瞬きの熱
- 旅人たちの遠い足音
- 食べたくないなあのビルディング
- 連れ去られたのは排気ネオン
- でも君は言うあれは生きる音
- 透明人間街を闊歩す
- 途絶えぬ地鳴り迷子の風船
- 鳴り響くベルさよならの時
- 熱は残りて静けさ戻り
- 蜂蜜色の月が光るる
- 光に溶けるバーガーの紙
- 踏み固めるは尽きない予感
- 並行線に差した約束
- 無限のループささやかな日々
- 空しき鼓動があるとも知らず
- 眼鏡に映る近未来風
- 見上げた先の光に思う
- 人混み泳ぐ背中にドラマ
■課題3(4)
候補の中から、よいと思う句(第四句にふさわしい句)を3句選ぶ。
選んだ句(と番号)、どうしてその句がよいと思ったかを必ず書いて、
電子メールで送ってください。件名は「和光/自分の名前/課題3(4)」。
それぞれの選句評は、あとで公開します。
期限は17日の日曜日いっぱいです。
(⇒この記事に応答する)
松永洋介 第三句の投票結果と選句評
2001年06月15日(金)02時52分12秒
こんどは学生のみなさんによる選句の結果です。
「水草の巻」
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
【第三句 投票結果】
■5点句
▼18 知らないが結局戻っていくらしい 鈴木一業
(選:宮田和美、根本紗弥花、東條慎生、西浦多樹、小川美彩)
宮田:
根本:やめよう、やめようと思ってたのに、入れちゃいました……。だって、はじめのインパクトがあまりにも強かったんですもん。大爆笑。“知らないが結局戻ってい”っちゃったのでした。
東條:三句目の条件という奴からはことごとく外れてる気がするが、衝撃度は最高。別れるだの別れないだの、ごたごたしてた恋人たちの結末を、冷ややかに傍観している、という印象を受けた。言葉のリズムと突然突きつけられる淡々とした叙述が非常に印象的。これはどうしても外せない。
西浦:なんなんだ、これは。おかしい。私の中で妙な具合に収まってしまった。この句は、前の2句が醸し出す世界にも言葉の広がりにも入り込まず、かといって、作者が作り出す「世界」をぶつけてもいない。真剣さや厳しさは人に対しても自分に対しても向けられない。逃げも隠れもせず、手にしていない。持っていない。だからきっと卑怯からも遠いだろう。そう、何からも遠いのだ。しかし、まるで生れたときから人生を投げているようではないか。いや、投げる力さえも加えないという無力、その独特の存在感。まるで空ばかり見ているナマケモノが、天敵に襲われそうになって、掴まっていた木から手を離し、落ちた川に飄々と流されていくみたいに。微かな分類できない温度に、つい心地よく可笑しくなってしまうのだ。
小川:迷ったのだけど、無闇に素敵だったので。
■3点句
▼9 きっぱりとのどをながれたソーダ水 奥野美和
(選:根本紗弥花、小橋美加、小川美彩)
根本:
小橋:いろんな意味の解釈のできる句がいい句、とおっしゃってたから、この褒め方は良くないのかもしれないが、この句は映像がすぐに頭に浮かんだ。のどに痛い炭酸の感じと、夏の日ざしを思い出していた。
小川:きっぱりと、というのが清清しい。
▼13 言の葉は玉虫色に駆け出したまま 西浦多樹
(選:宮田和美、東條慎生、高橋阿里紗)
宮田:
東條:条件付きで。最後のままを削ると良いと思う。駆けだしてよりも駆けだしたという過去形にした方が広がりを感じる。二句目とは、昇りゆくと駆けだしたという解放または疾走する感覚が繋がっているように思う。葉も草と親戚関係の言葉だけど、意味が全く異なるのが面白いと思う。
高橋:
■2点句
▼22 魂ぬけしきみ微笑めり霊安室 宮田和美
(選:根本紗弥花、鈴木一業)
根本:
鈴木:意表を突いた句だと思います。おおきなものではなく、「霊安室」という特定された場所を題材とすることで、読み手に対し明確なイメージを与えています。また、「泡」から「魂」への連想。死を扱っていながら潔さを感じさせる言葉の選び方。「微笑めり」の気味悪さ。などがよいと思います。
▼24 罪の手を星に伸ばして蔦になる 杉山千絵
(選:根本紗弥花、西浦多樹)
根本:
西浦:植え付けられ、やがて自ら摘み取ってゆく罪の意識。時に、生れてきたという抗いようのない現実は、ひたすらに生きていた直後に訪れる崩壊にも似ている。それによってしても壊され得ないもの、それは、罪にまみれてさえ星に眼を向け手を伸ばしていける、あるいはそうするしかない現われかもしれないが、無意識の強かさという美しさでもあるのかもしれない。この句は、前の2句が映す地球から宇宙へとすんなり空間が移動し、緩やかに伸びていく時間が感じられるためか、安心感がある。悲しみ深くあるべきでない原罪の有様が素直に広げられている。
暗黒を背景に人の手が繊細な植物と化していく…… そんな東逸子さん的な絵が浮かぶ感じも素敵だと思う。
▼35 燃え尽きぬ宿りし形は彼岸花 西浦多樹
(選:小橋美加、杉山千絵)
小橋:緋だなぁ、っと。しかも、今までが『淡い青』、初めの句がちょっと青緑っぽくって、次に水色だったのに、って所で。女の人が入水自殺して、それでも情念のような想いが残っていて、なんて話を考えてしまった。
杉山:はっとする色の変化が美しい。前の句と無理なく繋がる。
▼37 呼び覚ますあおばの香り深き穴 小橋美加
(選:杉山千絵、西浦多樹)
杉山:何処までも昇りゆく泡と、何処にも繋がっていないかもしれない深い穴の対比が恐くて好い。
西浦:水から土へ。海から陸へ。クジラの世界から、ヒトの世界へ。溢れる青葉の香りに呼び覚まされた「深き穴」とは、水の中で「悲しまず」にいた、その感情のことだろうか。場をとりまく息吹に呼び覚まされたものとしての感情、命が根源的に持っているものに名付けているのは、もしかしたら、神でもヒトでもなく、場所なのかもしれない。この句において「深き穴」を導いている「香り」というのは、地上において生きる者の快だと思うが、苦悩が湧き出る深き穴のひとつである言葉よりも、もっと深いものを呼び覚まされるような気がしてしまう。そういう部分でも、次ぎの句を予感させる余地があっていい。
■1点句
▼1 碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
(鈴木選:東京の日常の断片。「碧い空」「街角」「ノイズ」という、異質の情景をぶつけることで、都会の混沌をうまく表しています。第一句第ニ句の自然の風景から、一気に現実に引き戻されました。ほんの一瞬のイメージがフィードバックしていく感覚がよいと思います。)
▼3 十六夜のガラスの檻に光満ち 根本紗弥花
(高橋選:)
▼5 駆け抜けて拭うひまなし流るる涙 根本紗弥花
(鈴木選:青春の一コマです。陳腐な言い方かもしれませんが、そう思いました。泣きながら走る姿は、間抜けで、かっこ悪くて、でもなぜかキラキラしている。前の句(特に第一句)のじめじめした空気をすっとばす清々しさを、言葉に感じます。刹那に生きる少女の群像。すごく妄想的でよいと思います。)
▼6 陽炎に石が溶け出す坂の上 東條慎生
(小川選:夏の坂を登るイメージが伝わってくる。特に毎日坂をを上っている私には……)
▼8 硝子玉奢れる闇に突き刺して 西浦多樹
(杉山選:強烈で切実な意思に闇は気付くのか。)
▼11 月面にペネトレーター打ち込んで 松永洋介
(杉本選:実はペネトレーターと言うのが何なのか知らないのですが、この外来語の使い方が魅力的だと思い選びました。誰が打ち込んだのか、何で打ち込んだのか。そんなことを考える楽しみをくれます。)
▼14 呉服屋に浴衣並びて足を止め 横田裕子
(奥野選:打越と前句の雰囲気を持続させつつ、新たな場面展開がおこなわれている。前句との繋がりは「泡」から「浴衣の模様」をイメージしたのだが、作者はどうだろう? なんだか、少し落ちこんで、ぼんやりした気持ちになっていた少女が新しい浴衣をを目にし、顔を輝かすところがパッとうかんで、この句に決めた。かわいらしくて、とても好き。わたしは、三句選ぶ時に、なるべく前向きなものにしようと思ったので、この句はぴったりだった。)
▼19 彗星に恋した日からぼくは海 仲田純
(宮田選:)
▼23 たわむれど時は過ぎゆき歩くみち 小橋美加
(奥野選:女の子が好きな男の子とのデートの帰り道、まだ一緒にいたいけれど、どんどんお家に近付いて、なんだか寂しい気持ちになる。というのと、過去の恋を思い出し、じゃれあった日々は、もう戻ってこないけれど、わたしは歩きはじめるね!! という明るくて可愛いくて、強い女の子が浮かんできた。どうしても女の子が出てきてしまうが、いろいろイメージ(シチュエーション)が浮かんでくるのでこの句を選ぶ。もっともっといろんな場面が浮かびそう!!)
▼29 走り続けて涙をぬぐうひまもなし 根本紗弥花
(杉本選:これは、5番でもいいと思うんですが、5番の「流るる」と言うのが少し引っかかって、こちらにしました。言葉は生きていると思うので、現代の人間は現代の言葉で俳句を作る方が、私は美しいと思います。私のコンセプトに近いので、選びました。)
▼30 日の沈む坂走って転ぶ 小川美彩
(杉本選:これは上の句と下の句を間違えてしまったのでしょうか? それとも、日の沈む 坂走って 転ぶ とか詠むのでしょうか。どちらにせよ、情景が目に浮かぶし、広がっているように思います。それと、先生が上昇のイメージを詠んだのを、敢えて下降に持っていくのが面白いです。29と、まるで一つの句として作られたようにぴったりしてますね。ただしぴったりし過ぎていて、かなりつまらないですが。)
▼31 ビルディング酸欠金魚溢れてる 高橋阿里紗
(小橋選:夏。町中。道路からの照り返し。人ごみ=金魚(?)。そんな中でも歩き続けてる。前のニ句が涼し気だったのに対して、暑苦しさ(息苦しさ)を感じた。)
▼33 ブラインド朝を呼び寄せペンを置く 杉本茅
(奥野選:この前の課題で、生まれて初めて締めきりに苦しんだ。でも、わたしの家にはブラインドなんてカッコイイものはないんだけど。なんだか、共感(?)したのでこの句を選ぶ。)
(⇒この記事に応答する)
松永洋介 第三句について、二上貴夫氏による評/作者名公表
2001年06月14日(木)03時26分12秒
6月1日の連句の特別授業でお話しいただいた二上貴夫氏から、すべての句に評価とコメントをいただきました。今後の作句のよい参考になると思います。
作者名もここで公表します。
■二上貴夫氏による評
皆さんの付け面白く拝見しました。
今回第3句目の付けのポイントは、第1句-2句目の水辺からの場面転換と「昇りゆく泡」にどう付くかが課題でした。
ともかく「初めてにしてはやるじゃないか」の感想を送ります。
トルソ「水草生う」の巻(2001.6.1〜)
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
- ○碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
都会への場面転換、この場合季語のない雑の句に移ったのが成功しているし、「昇りゆく泡」と「ノイズ」という言葉同士が互いに新しい雰囲気を作り出している。 - △朝が来る風が吹くのか窓が鳴る 東條慎生
朝、室内への場面転換、まあまあです。 - ○十六夜のガラスの檻に光満ち 根本紗弥花
夜、秋への場面転換。「昇りゆく泡」それはいざよいの月、詩的ですね。 - △美しきをんなの裏にとげがあり 横田裕子
人物への転換。物語的なところへ引っ張っるのはいいんですが、離れすぎ。連句は不即不離で付ける。 - △駆け抜けて拭うひまなし流るる涙 根本紗弥花
人物、恋への転換。 - △陽炎に石が溶け出す坂の上 東條慎生
陽炎は春の季語、水草生うも春の季語、連句は前に前に進むのがルールです。
特に打越に戻ってはいけない。惜しい句。 - ○風向きが鋭角になる屋根の端 松永洋介
住宅地への場面転換。「昇りゆく泡」を受けて視線を屋根へ、上方に移したのは正解。 - ○硝子玉奢れる闇に突き刺して 西浦多樹
詩的な言葉使いで、作者の感性がいい。 - △きっぱりとのどをながれたソーダ水 奥野美和
ソーダ水は夏の季語で、夏への転換。泡はソーダ水に。 - △くすぐって彗星虫に目がキラリ 仲田純
抽象的な付け。虫で秋への場面転換。 - △月面にペネトレーター打ち込んで 松永洋介
月で秋への転換。 - △腰に手を当ててビールを飲みほせり 横田裕子
ビールで夏への場面転換。 - △言の葉は玉虫色に駆け出したまま 西浦多樹
言の葉に転換したのは良い感覚です。 - △呉服屋に浴衣並びて足を止め 横田裕子
浴衣で夏の場面へ。 - △サイダーの向こうに歪む蝉時雨 鈴木一業
サイダー、蝉時雨で夏へ転換。 - △シャボン玉光ってうつるきみの目に 奥野美和
分かりやすい付けですね。分かりやすさは、読者の共感を喚ぶひとつのテクニックです。
シャボン玉が春の季語で戻るのが残念。 - △ショーウィンドー夏服の横映る私(わたくし) 杉本茅
夏、町中への場面転換。 - △知らないが結局戻っていくらしい 鈴木一業
述懐の句。 - △彗星に恋した日からぼくは海 仲田純
感覚はいい。これを第3句目に推したいのですが、残念なのは、第1句目の水とこの句の海が打越になるので‥‥惜しい。 - ×世界の端から船がこぼれる 小川美彩
今回は、七七じゃなくて五七五ですよ。 - △宙(そら)深くうさぎは星を跳び遊び 根本紗弥花
夜の空への転換。 - △魂ぬけしきみ微笑めり霊安室 宮田和美
建物の中への場面転換。霊安室は死=無常を表わす。 - △たわむれど時は過ぎゆき歩くみち 小橋美加
第1句の「水の深きを悲しまず」と似たような述懐になって戻ってしまう。 - △罪の手を星に伸ばして蔦になる 杉山千絵
蔦が水草と障る。こういうのをイメージの打越といいます。連句は観音開きになってはいけないのです。 - △ときどきにくるま通るか田んぼ道 仲田純
田圃道だと場面転換にならない。 - △鳴きながら踊る枯葉をなでる雪 杉山千絵
第1句目の水草とこの句の枯葉、雪への移りが不自然な感じをあたえます。転じすぎ。 - △日直もまだ来ぬ教室朝練の声 小川美彩
室内への転じ。 - △ネオン咲く夜の街飛ぶ猿の群れ 横田裕子
ネオン街への場面転換。猿の群れの象徴は面白くも分かりにくい。 - △走り続けて涙をぬぐうひまもなし 根本紗弥花
恋の場面への転換でわるくはない。 - ×日の沈む坂走って転ぶ 小川美彩
七七では不可。 - △ビルディング酸欠金魚溢れてる 高橋阿里紗
金魚は夏、建物の中への場面転換。 - △ヒールもげ見上げた空は夏近し 杉本茅
夏への転換。 - △ブラインド朝を呼び寄せペンを置く 杉本茅
室内への場面転換。 - ×まばたきの瞬間離れた風船 鈴木一業
風船は春の季語になり打越に戻るし、リズムの破調が気になる。 - △燃え尽きぬ宿りし形は彼岸花 西浦多樹
とても抽象的な凝縮した詩を感じます。残念なのは、彼岸花は秋ですが、第1句目の水草と植物同士で打越になるのです。 - △湯の中で笑う豆腐と語り合う 杉山千絵
室内への転じ。泡が湯の中の豆腐? - △呼び覚ますあおばの香り深き穴 小橋美加
青葉は初夏。植物同士で打越なので‥‥。
※みんな「初めてにしてはやるじゃないか」キフウより。
……というわけでした。
みなさんの選句による得票と選句評は、もうちょっと待ってください。遅くなってすみません。
さて、第三句となったのは
ご案内の通り「碧い空街角ノイズ耳塞ぐ」です。
四句目(こんどは七七)の投句は、きょう(14日木曜)の夜10時までにお願いします。
メールの件名は、例によって「和光/
自分の名前/課題3(3)」です。
それでは、がんばってください。
(⇒この記事に応答する)
寮美千子 課題3(3)/連句 第三句決定
2001年06月11日(月)23時17分55秒
連句 水草の巻
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
▼
第三句は、高橋阿里紗さんの「碧い空街角ノイズ耳塞ぐ」に決定しました。
「ただひたすらに昇りゆく泡」ということで、視線が上へ誘われる。
見上げた視線の先には、紺碧の空。
場所は、ノイズ溢れる都市。
そのノイズに思わず耳を塞ぐ。
映像のようにきりとられた一瞬。すばらしい句だと思います。
▼
不即不離で、ついているというのも、選んだ理由のひとつ。
発句の水から引き継がれた水のイメージを、
青い色彩だけ残して、すっぱりと空に転じているところが、見事。
場所も、水辺という自然の情景から、都市へと鮮やかにジャンプしています。
それでいて前句と「関係ない」と感じさせない、イメージの連鎖があります。
▼課題3(3)四句目 短句
さあ、四句目です。
発句 5・7・5
脇 7・7
第三句 5・7・5
ときたので、次は
第四句 7・7
です。5・7・5を長句、7・7を短句といいます。
今回はこの短句を作ってください。
わかった? 短句だぞ。7・7だからな。こんどは、間違えないようにね。
▼四句目/作句のヒント
さて、三句目で、場所が水辺から都市へと移りました。
三句目で、大胆に場所を転じたので、
四句目は、場所を変える必要はなく、同じ都市の風景のなかで詠むといいでしょう。
都市のアイテムを使うもよし、そこで暮らす人の気分を詠むもよし。
雑の句(季語なし)でもぴったりですし、
季語を入れるのなら、発句が春だったので、夏か秋。
みんな、がんばれ!
この調子で頑張って、できあがったら9月の連句大賞に応募しよう!
もう決めたよ。
▼締め切り
今週の木曜日(6月14日)いっぱい。
夜の10時までにメールしてください。時間厳守。
朝、送ってもらっても、見たりリストに加える時間がありません。
がんばってください!
▼みなさんの選句結果
みなさんによる選句の結果は、ただいま整理中。
近日中に掲示板に載せます。
(⇒この記事に応答する)
松永洋介 課題3(2)/第三句のリスト
2001年06月09日(土)15時35分30秒
連句「水草の巻」
水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
そして、以下が
課題3で投句された第三句です。
五十音順に並べ、作者名を伏せてあります。
- 碧い空街角ノイズ耳塞ぐ
- 朝が来る風が吹くのか窓が鳴る
- 十六夜のガラスの檻に光満ち
- 美しきをんなの裏にとげがあり
- 駆け抜けて拭うひまなし流るる涙
- 陽炎に石が溶け出す坂の上
- 風向きが鋭角になる屋根の端
- 硝子玉奢れる闇に突き刺して
- きっぱりとのどをながれたソーダ水
- くすぐって彗星虫に目がキラリ
- 月面にペネトレーター打ち込んで
- 腰に手を当ててビールを飲みほせり
- 言の葉は玉虫色に駆け出したまま
- 呉服屋に浴衣並びて足を止め
- サイダーの向こうに歪む蝉時雨
- シャボン玉光ってうつるきみの目に
- ショーウィンドー夏服の横映る私(わたくし)
- 知らないが結局戻っていくらしい
- 彗星に恋した日からぼくは海
- 世界の端から船がこぼれる
- 宙(そら)深くうさぎは星を跳び遊び
- 魂ぬけしきみ微笑めり霊安室
- たわむれど時は過ぎゆき歩くみち
- 罪の手を星に伸ばして蔦になる
- ときどきにくるま透るか田んぼ道
- 鳴きながら踊る枯葉をなでる雪
- 日直もまだ来ぬ教室朝練の声
- ネオン咲く夜の街飛ぶ猿の群れ
- 走り続けて涙をぬぐうひまもなし
- 日の沈む坂走って転ぶ
- ビルディング酸欠金魚溢れてる
- ヒールもげ見上げた空は夏近し
- ブラインド朝を呼び寄せペンを置く
- まばたきの瞬間離れた風船
- 燃え尽きぬ宿りし形は彼岸花
- 湯の中で笑う豆腐と語り合う
- 呼び覚ますあおばの香り深き穴
■課題3(2)第三句の選句
リストの中から、よいと思う句(第三句にふさわしい句)を3句選ぶ。
選んだ句(と番号)、どうしてその句がよいと思ったかを必ず書いて、
電子メールで送ってください。件名は「和光/
自分の名前/課題3(2)」。
それぞれの選句評は、あとで掲示板で公開しますので、気合いを入れて書いてください。
期限は10日の日曜日いっぱいです。
(⇒この記事に応答する)
管理者:Ryo Michico
<mail@ryomichico.net>
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