「物語の作法」課題提出板の検索

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どうしようか の検索結果(ログ33-34)


高澤成江 批評1/あったかい感じ。 2004年04月19日(月)17時27分50秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

4▼失うこころ、咲く桜

あまりに水ばかり垂れるので
くしゃくしゃに、こころ絞りました
春風に当てて乾かしたら
ふうわりと空へ逃げました
僕はことり、と胸が痛んで
こころの風船追いかけました
夢中で走っているうちに
いつの間にかぽっかり胸に穴
なにやら暖かいので 見てみると
ぎっしり桜が詰まってました
気づかぬうちに穴は埋まって
こころは もはや小さな点です
こころの代わりに桜を入れて
僕はそのまま帰ったのです
物語性がある詩だと思う。頭の中で絵が思い浮かぶ。
「こころは もはや小さな点です」というところの意味が私にはちょっとわからなかった。
胸の穴に桜が詰まっているって表現がなんだか可愛らしくて好き。

7▼月夜の天国

群青の空に
月が出ていた
レモン色の
まんまるい月
あれはなぁに、と
君が言うので
天国だよ、と
僕は答えた
勝手に、恋人同士っていう設定で読ませていただきました。
この詩が全部の中で一番好きです。ストレートだけどロマンチックできゅんとくる。
こんなこと言ってくれる男がいたら多分惚れる。

36▼どうしようか

どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです
基本的に私は恋愛っぽい詩が好きみたいです。この子の気持ちは共感できる。
なんだかもどかしくて可愛くて切ない。


全体的に(私が選んだ詩の中にはなかったけど)「嘘」って言葉が頻繁に出てくるのが気になった。稲葉さんはものすごく嘘が嫌いなのか、嘘をついてしまったことがあってそれが胸につかえているのかな。
もっと長い詩を読んでみたいです。

滝 夏海 批評1/テンポの先へ 2004年04月20日(火)01時18分33秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

1▼夜のサーカス

ガンガラガン、と風が吹き
今日の終わりを告げました
途端に世界は華やいで
偽者の光が差し込みます

我がもの顔で車が走り
サーカスみたいな猛獣だらけ
何を信じたら いいのかな

僕は光にくらまされ
歩くのがやっと なのでした
猛獣に食べられないうちに
家に帰らなければなりません

夜はまだまだ長いから
眠らなくてはなりません

 語尾と単語の選び方など言葉の使い方が少し気になる詩もいくつかありますが、これはその文章的な言葉使いと詩のイメージが、上手く合わさっているのではないでしょうか。猛獣だけど「サーカス」と付くと、怖そうなのに飼い慣らされてそうでもあって。世界や自分を少し離れてみている感じが出ていて良いと思いました。ただ、最後の2行がどこから繋がっている(連想されている)のか分からず、ちょっと余分に見えました。


15▼洗濯の必要

痛みはたたんで隅に寄せ
汚れたこころは洗います
今日は晴れていますので
明日までには乾くでしょう

昨日も今日も洗濯日和
明日もずっと洗濯日和
必要なのは雨ではなくて
乾いた空気と洗剤です

 どこかで聞いた事のあるような内容ですが、テンポが良いので一票。文字で見るより、口に出した方が楽しめる詩です。青空を見て、ふっと呟きそう。
 個人的な好き嫌いの話になりますが、この詩は4行より2行で区切り、「昨日も〜」からの2行と「必要〜」からの2行を入れ替えた方が、声に出した時気持ちいいかな、と。これは本当に個人の趣味の話ですから。


36▼どうしようか

どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです

 とっても直球な詩で、好きです。稲葉さんの詩は、気持ちとそれを表した言葉と詩全体のイメージとが微妙にズレて複雑に見えるだけで、実はとっても素直な詩だと思うんです。それが表れているのが36『どうしようか』と37『無題』。困っている姿もまた可愛らしかったので、こっちを選びました。

 「テンポは良いけど、もう一歩」というのが全体的な感想です。それはたぶん、どこかで聞いた事のあるフレーズが多かったり、語っている内に主題から違う方へ逸れてしまったり(意図してすり替えるのは別)、どこにピントを合わせて良いか迷ってしまう部分があるからでしょう。フレーズとしてよく使われる物はテンポも良く、耳に気持ちいいのですが、その分さらっと流れてしまう怖れがあります。音の流れやテンポに拘るのも良い事だと思いますが、もっともっと稲葉さんならではの言葉の使い方をしていけば、心に引っ掛かる詩が増えるのではないでしょうか。

加賀麻東加 批評課題1/パソコン打てないよおおー 2004年04月20日(火)13時03分15秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

☆一番☆
枯れた喉
うたを歌いたくて
仕方がないのに
旋律も何も出てきません
胸を震わせ 言いたいことを
あらわす術を持ちません
だから川原へ行きました
枯れた喉を潤すために
だから涙を流しました
枯れた心を潤すために


詩の雰囲気が好きです。ピアノ習ってたんで旋律って言葉が好きですねえ〜。何か一人の人が歌を歌おうとしている姿が浮かびました。

☆二番☆
どうしようか
どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです


やっぱ恋愛の詩は読みやすいです!愛の言葉とか愛がわからないとかが共感できましたー!

☆三番☆
こんにちは
さようなら
あっけないほどに人は別れ
後には消えない余白が残る
こんにちは
さようなら
また会えたらいいですね


一期一会の出会いもあればそのなかで一生付き合える人と出会えるんだなあと思わせる詩でした。



瓜屋 香織 批評1/きもちアルバム 2004年04月20日(火)23時45分28秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

 稲葉さんの詩を読んでいると、いつかの自分の感じてたことや、場面がアルバムを開いて昔の写真をみている時のように思いだされました。
日々のきもちは、形に残しておかないと、いつのまにか忘れてしまう。
どれもこれも、ほんとうは残しておきたいんだけど。いいことわるいこと全部。
ああ、そんなきもちもあったね、なんで忘れていたんだろう、となんだか懐かしいきもちになりました。
32▼変化

変わってしまうのは
寂しいことなのかな
どうして変化を
素直に喜べないのだろう
変わらないものなんて
何一つないことを
本当は皆知っているのに
本当は皆ひとりだと
泣きたくなるほど
わかっているはずなのに
 世の中に変わらないものなんて何一つない、と表向きは私も思っていますが、心の奥のほうで変わらないもの、信じていたりします。泣きたくなるほどわかっているはずなのに、ね。
36▼どうしようか

どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです
 人に何をしてもらうかでなく、自分が何を与えてあげられるかを考えることが大事だなあと思いました。こういう気持ちが大好きです。
20▼白紙

顔の見えない教師が
問うた
本当に大事なものは
何でしょう
僕は答えが解らずに
冷たい机に突っ伏した 
いつになっても
答えは出なくて
ふと気がつくと
教室は
誰も居なくなっていた
 私もずっと考えていますが、答えは出ません。
 本当に大事なものは本当に何なんでしょう?

野島 明菜 批評1/悲しみは レンジでチンして。 2004年04月21日(水)00時08分06秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

36:どうしようか 
       
どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです


<コメント>この詩が一番私好み!なんか恋愛の初々しさが伝わってくる。この詩の当事者は若者で(予測)、その世代特有の不器用さと純粋さがホワンとにじみ出ている詩だ。そして甘酸っぱい気持ちになる。私も高校生で初めて彼氏が出来た時「どうしよう!一体何をしたらいいのだろう!」とすごくとまどったことがあったから。付き合うってどういうことなのか、今の年齢になってもわからない。だけどこの詩に書いてあるように、並んで笑っていればいいのかな・・・                       
10:旅

寂しいと口にした時点で
もう旅ははじまっていた
終わりのないかなしみの
端っこまでずっと歩いてゆくような旅
そんな途方もない旅が 
もうすでに始まってしまったんだ
自分でも知らない間に


<コメント>第二位ランクイン。この詩を読んだ時、すごく寂しい気持ちになった。「終わりのないかなしみの端っこまでずっと歩いてゆくような旅」とは人生を表しているのではないだろうか。山あり谷ありの人生。悲しいことが続かないように、楽しいことも続かないのかもしれない。いや、私はそんな風に考えたくない。きっと楽しいことだらけの旅路を見つけてみせる。詩の批評にもどるが、「自分でも知らない間に」と体言止めを使ったことで、この詩の悲しみを一層ひき出していると思う。

 
41:内側

青い光に黒い影
ガラスの向こうに
散る落ち葉
夕日は悲しい光を帯びて
さよなら叫んで
堕ちていく
青い光に僕の影
夕空青く 月 白く
僕はいつまで 
この部屋に?
扉はずっと開かない


<コメント>「まるで刑務所の中にいるよう」。この詩を読んでそう感じた。この詩の主人公はまるで刑務所の中に隔離されたかのように、自分の中に自分の存在を閉じ込めている。人は落ちている時、このようになると思う。はじめに出てくる「黒い影」。次第にその影は自分のものだと気付いたのだろうか。「扉はずっと開かない」という一文から、主人公の落ち込み具合が相当なものだということを感じさせる。また、この一文が最後にきていることから、落ち込みから抜け出せる希望という名の光が、まだ当分差しこまないようである。    

松永洋介(アシスタント) 批評課題1で選ばれた作品の集計結果 2004年04月25日(日)00時15分40秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

批評課題1で、稲葉祐子さんの詩集「冷凍庫には入れないでください」から各自3編を選んでもらいました。その集計結果です。
単純に、1回選ばれたら1票と数えました。順位をつけてくれた人もいましたが、重みづけ(たとえば1位3点・2位2点・3位1点とか)はしてありません。また、今回選ばれなかった作品は省いてあります。

⇒稲葉祐子 作品1「冷凍庫には入れないでください」
⇒批評課題1の投稿一覧

▼批評課題1集計結果
票数作品選んだ人
743▼街と夢越智、城所、松本、露木、寺岡、土橋、前澤
56▼はるうらら雨宮、露木、寺岡、土橋、前澤
536▼どうしようか高澤、滝、加賀、瓜屋、野島
41▼夜のサーカス児玉、滝、千田、室橋
34▼失うこころ、咲く桜越智、寺岡、高澤
37▼月夜の天国雨宮、高澤、藤森
314▼枯れた喉五十嵐、加賀、吉見
315▼洗濯の必要志田、滝、室橋
28▼回送列車松本、五十嵐
210▼旅吉見、野島
232▼変化城所、瓜屋
237▼無題藤森、加賀
250▼選択の世界菊池、露木
253▼無味乾燥土橋、前澤
254▼アルバイター雨宮、千田
12▼水の便り菊池
13▼夜粒室橋
15▼いつかの僕の夢吉見
19▼口笛を吹く余裕城所
111▼箱の中千田
118▼幸福の王子菊池
120▼白紙瓜屋
121▼かまいたち児玉
123▼蜂蜜ハニー志田
124▼東京の夕暮れ五十嵐
129▼この心越智
134▼無題児玉
135▼川藤森
140▼もしもこれが夢だったなら志田
141▼内側野島
148▼不動の自由松本

高澤成江 課題2/夢物語 2004年04月26日(月)18時47分15秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【空からの回帰】

ゆうらり、ゆうらり。少女には視界に映るもの全てが揺れて見えます。キラキラ瞬いて見えます。光が前方から差し込まれてくるのを感じながら、少女は一段一段歩を進めて行きます。ざぷん。水中の階段を抜けるとそこは小さな部屋でした。
その部屋を見回すと最初に、壁に掛けられた白い翼が目に入りました。羽の一枚一枚が輝いて、窓はないのに何処からか吹いてきた風に揺れています。次に見つけたのは奥にある扉です。アンティーク調の模様が彫られている木の扉。鍵はかかっているのかしら、と少女は思いました。その他には水色の壁に、茶色くすすけたポスターが貼ってあるだけのシンプルな部屋です。少女は自分の体が乾いていることに気がつきました。今さっき水の中にある階段を通ってきたのに、長く茶色い髪も、膝まである白いワンピースも乾いています。足元だけは、まださっき上ってきた床下に続く階段に浸かっているため濡れています。しかしその感触はありません。
「ああ、これは夢なのね。」
少女は呟きました。たまに夢の中で、「今、自分は夢の中にいる。」と気付くことが少女にはありました。そんな時自分の意思で目覚めることが出来るのを少女は知っていました。
「起きようかしら。」
そう考えましたが止めました。別に悪夢でもないし、目を覚ました時、現実の自分が眠り足りなかったら嫌だったからです。
彼女は階段から完全に出て、翼の前に向かいました。その瞬間、階段の水は全て、音もなく引いてしまいました。まるで最初から何も無かったかのように。
翼を間近で見ると毛の一本一本の色が違うことに気がつきました。カーマイン、ウルトラマリン、ビリジアン、見たことも無い色、知らない色。こんなにたくさんの色が使われているのに全体を眺めると翼は純白に見えるのです。少女が翼に触れようと手を伸ばしたその時。
コンコン。
奥の扉からノック音が聞こえてきました。少女はいきなりの音に驚き、小さく体を飛び跳ねさせました。
「だあれ?」
扉に話しかけるとビー玉をコンクリートに落としたようななんとも不思議な声が返ってきました。
「初めまして。お嬢さん。」
少女は扉の近くまで行ってドアスコープを覗きました。ドアスコープは魚眼レンズになっていました。なんだか焦点が合わないのか、外にいる人の姿がぼんやりとしか見えません。
「あなたは誰?」
少女はもう一度問いかけました。
「私は魚です。本当は階段から伺いたかったのですが、どうにもこうにも水が引いてしまったようで。」
彼がそう言った瞬間、魚眼レンズ越しに魚の姿がはっきりと見えました。扉の向こうはよく見たら水中でした。
「何の用かしら?中に入る?」
少女がそう聞くと魚は、いやいや、と首の辺りを振っているような動きをしました。
「そちらには水が無い。私はえら呼吸しかできないからね。」
「あら。残念だわ。」
私は肺呼吸と皮膚呼吸しか出来ないのにどうしてさっき水中の階段を上がってこれたのかしら?ああ、そういえばこれは夢だったわ。少女は一人でぼーっとあれこれ考えていました。次の瞬間、いきなり魚が少女の目の前にいたので、少女は驚き飛び上がりました。魚がドアスコープにぐっと近づいたのです。
「お嬢さんよくお聞き。翼があるでしょう。」
少女はまだ心臓をバクバクさせながら魚の話を聞きました。
「その部屋の壁に翼が掛けてあるでしょう。それを背負ってごらんなさい。おっと、服を着たままじゃ駄目だよ。肌に直接背負うんだ。そしたら体と一体化するから。翼と体がくっついたら動かすんですよ。パタパタと。空が飛べるよ。」
魚は口をパクパクさせながら喋っています。
「どうやって翼を動かすの?」
少女が質問すると魚は少しむっとした顔をしました。
「君はどうやって右手を動かしているんだい!?今の君の質問はこう聞いているのと同じだよ。くだらないことだ。翼をつけてごらんなさい。そしたら動くんですよ。パタパタと。」
パタパタと・・・と、もう一度ビー玉みたいな声で繰り返しながら魚は遠くの方へ泳いでいってしまいました。
少女はまた翼の前に立って、まじまじと毛の一本一本を眺めました。
「どうしようかしら。」
口の中で小さく呟いて翼に触れました。その感触は出来立ての綿菓子のようにふわふわで、焼きたてのホットケーキのように暖かいのです。毛の一本一本が少女の肌に優しく撫で付けられ、もう手を放すことが出来ません。これが私の体の一部になるなんて、そう思うと少女は翼を背負わずにはいられなくなりました。
少女は白いワンピースの肩紐をはらりと落としました。露わになった少女の肌は、翼に負けず劣らずのきめの細かい白さです。その肌に翼を思い切って背負いました。
見る見るうちに翼は背中に吸い込まれるようにくっ付き、少女の一部になりました。
「まあ不思議!」
少女は右手を動かすように翼を動かしてみました。ファサ。一回羽ばたきました。ファサ、ファサ。二回羽ばたきました。ファサ、ファサ、ファサ、ファサ。翼は意外なほど簡単に動いてくれます。翼が羽ばたくたび毛が少女の背中を心地良くくすぐります。少女はその場で軽くジャンプをしてみました。そしたらもう少女の足が地面に付くことはありませんでした。
「わあ、すごい。飛べたわ。」
少女は部屋の中を二、三周飛んでいるうちに大空を飛び回りたい欲求に駆られました。
「でもこの部屋には窓が無いわ。」
がっくりと下を向いたその時、瞼に風と光が差し込みました。なんと、さっきまで何も無かった東側の壁に1m四方の窓が現れたのです。窓の外は一面の青空。雲一つ無い青空。少女は顔いっぱいに喜びの表情を浮かべ、窓の淵に手を掛けました。
「この大空を飛んでみたいわ。」
少女は窓の外にぐいっと体を出し、翼を勢いよく広げ、窓の淵に足を掛けました。
「3,2,1、・・・。」
少女は窓の淵を力いっぱい蹴り、大空へ飛び立ちました。
「うわあ!」
視界いっぱいの青青青。下を見ても地上は無く青。上を見ても太陽は無く青。遠くの方に光る何かが浮かんでいるだけで他はすべて青です。気がつけばさっきまで居たあの部屋も無くなっているではないですか。少女はこの美しすぎる風景に少し涙を浮かべていました。風も心地よく、飽きもせず長い時間空を飛んでいました。少女はふと、あの遠くの方の光る何かの元へ飛んで行こうと思いつきました。翼を何度も羽ばたかせ、光る何かに向かいます。
「すごく遠そうだけど行ってみよう。」
少女はそう思いながら何度も何度も羽ばたかせました。
「なかなかたどり着かないわ。」
本当に、長い長い長い長い時間飛んでもたどり着きません。それでも光る何かの元に向かいます。少女はため息をつきながら一人呟きます。
「ああ、でもいつ私はこの夢から覚めればいいのかしら。」
光る何かが少しずつ近づいてきました。ぼんやりと見える、その目指している場所が少女には天国に見えて仕方がなかったのです。

管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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