物語の作法 連句「水草生うの巻」第十二句


■作品一覧

連句「水草生うの巻」第十一句まで

水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
  ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
  光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
  フランス映画は理解できない 奥野美和
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
  億万の蝶海峡わたる 寮美千子
文庫本網棚の荷に入れたきり 松永洋介
  続きがあると信じたレール 仲田純
なにもない祈りを運ぶ影さえも 西浦多樹

第十二句候補

1. あたためすぎた昼の月 杉山千絵
2. 頭は真っ白顔は真っ青 横田裕子
3. 色に変わって花になろうや 斉藤まりこ
4. 浮世の沙汰も生き方次第 横田裕子
5. 占うこともできぬ未来か 横田裕子
6. お前あいつを殴ってこいよ 東條慎生
7. かげりも見せず鳴く陽炎 東條慎生
8. 風にはためく花嫁衣装 根本紗弥花
9. 悲しい。けれどおなかがすいた 宮田和美
10. 「下半身デブは俺好きじゃない」 宮田和美
11. 崩れゆく塔赤い月 根本紗弥花
12. 覆えれ月我は神なり 仲田純
13. 煙たなびく高原の冬 松永洋介
14. 拳の中に言葉を握る 横田裕子
15. 宇宙(ソラ)の真ん中浮かぶ安心 杉山千絵
16. それでいいならそれでもいいよ 東條慎生
17. それにつけても金の欲しさよ 松永洋介
18. 焚火のあとのうたた寝のまえ 杉山千絵
19. ただ水草の碧い色彩 松永洋介
20. ツインタワーに昇る新月 松永洋介
21. 月射す光、真白い闇夜 東條慎生
22. 月のない夜に瞬く星が 東條慎生
23. 届いた手紙白い粉末 松永洋介
24. 泣いても先に進めはしない 横田裕子
25. 涙で流すな目のおくのもの 奥野美和
26. にじむ夕日に瞳は黒く 仲田純
27. のどにつまった岩のかたまり 奥野美和
28. 昇る煙に死をはらむ空 東條慎生
29. 乗り越えるべき壁は大きく 根本紗弥花
30. 吐く息の先早朝の月 西浦多樹
31. 拾い忘れた悪夢の火種 竹野陽子
32. 踏み出す先は空(くう)に描いた道 横田裕子
33. 方位指針は捨てちゃったよ 奥野美和
34. ぽっけの穴から見えた青空 奥野美和
35. 焼けた匂いに造花は散らず 鈴木一業
36. 歪んだ道をつまづき歩む 横田裕子
37. 蘇える布あとかたもなく 仲田純
38. リアルタイムで映したテレビ 松永洋介
39. 輪廻の途中でドロップアウト 鈴木一業

■選句結果

第十二句決定

水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
  ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
  光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
  フランス映画は理解できない 奥野美和
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
  億万の蝶海峡わたる 寮美千子
文庫本網棚の荷に入れたきり 松永洋介
  続きがあると信じたレール 仲田純
なにもない祈りを運ぶ影さえも 西浦多樹
  覆えれ月我は神なり 仲田純