物語の作法 連句「水草生うの巻」第十一句


■作品一覧

連句「水草生うの巻」第十句まで

水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
  ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
  光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
  フランス映画は理解できない 奥野美和
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
  億万の蝶海峡わたる 寮美千子
文庫本網棚の荷に入れたきり 松永洋介
  続きがあると信じたレール 仲田純

第十一句候補

1. 雨ざらし砂に戻りて風にのる 根本紗弥花
2. 行く先は遠く近くて爪の先 小川美彩
3. 五つ子の手の中ぴかり新幹線 根本紗弥花
4. 色褪せたノートの隅の走り書き 横田裕子
5. うそっぽいほんとのことば売る少年 斉藤麻里子
6. 腕を伸ばし翼広げてつかむ天(そら) 横田裕子
7. 永遠に一つではないゴールを競う 竹野陽子
8. 音もなく小石流れる散歩道 杉山千絵
9. かけぬけた日々の写真は粉まみれ 杉山千絵
10. 眼前で超高層は崩れ去り 松永洋介
11. 築いたは螺旋階段見えぬ先 小橋美加
12. 気にするな信じる者は救われる 東條慎生
13. 錆びついたテーマパークは呼んでいる 鈴木一業
14. 皿の上行ったり来たり繰り返す 鈴木一業
15. 水槽の上も歩ける堺さん 宮田和美
16. 過ぎ去った風景たちを悔やむだけ 東條慎生
17. 出来るだけやってはみたが覚悟しろ 東條慎生
18. なにもない祈りを運ぶ影さえも 西浦多樹
19. ひと筋のひびが走ったけぶる地球(ほし) 横田裕子
20. 風船に飛べない鳥の羽を入れ 仲田純
21. 富士の底地底人を探しに来 仲田純
22. まるめたらはじけてしまったガラスの目 杉山千絵
23. 見えないがきっと先には春がある 東條慎生
24. 見なかったことにしようと目をそらし 松永洋介
25. むきだしの怒りを笑う足の裏 竹野陽子

■選句結果

第十一句決定

水草生う水の深きを悲しまず 四方田犬彦
  ただひたすらに昇りゆく泡 寮美千子
碧い空街角ノイズ耳塞ぐ 高橋阿里紗
  光に溶けるバーガーの紙 小川美彩
私から差しだす右手つなぐ恋 竹野陽子
  フランス映画は理解できない 奥野美和
色彩を抱えたこども駈けだして 鈴木一業
  億万の蝶海峡わたる 寮美千子
文庫本網棚の荷に入れたきり 松永洋介
  続きがあると信じたレール 仲田純
なにもない祈りを運ぶ影さえも 西浦多樹

投票結果

参加者がそれぞれ3句を選んだコメントです(5人分だけなので集計はしていません)。
選句の際には、作者名は伏せられていました。(⇒「物語の作法」掲示板の候補リスト

●横田裕子
▼13.錆びついたテーマパークは呼んでいる
虚しい空気が漂う言葉だなぁ。と思った。季節が季節であるだけに、その空気がさらに際立ってる感じがする。
▼20.風船に飛べない鳥の羽を入れ
意味は掴めないけど口に出して言ってみたら、すごく綺麗なシーンが頭に浮かんだので。
▼7.永遠に一つではないゴールを競う
「永遠に」という途方のなさと、ゴールを競う戦い、なんとなくわかるなぁ・・・。

●根本紗弥花
なんとなく、絶望で続けたかったので。↓
だって、高橋さん以降ずっとほのぼの路線できてるし・・・。です。
▼25. むきだしの怒りを笑う足の裏
 なんか怖いじゃないすか。
▼14. 皿の上行ったり来たり繰り返す
 行き場なくて絶望的で滑稽で好き。前とつくし。
▼11. 築いたは螺旋階段見えぬ先
 前とのつき方が好き。裏切ってて。

●仲田純
▼19.ひと筋のひびが走ったけぶる地球(ほし)
 レールという前句を背負う言葉がひび、というのは秀逸であると思う。そして地球というイメージ移動が更なる未来への飛躍につながり、水から始まるこの連句に重大な位置をしめると思う。
▼10.眼前で超高層は崩れ去り
 流れでいくと深海(暗い)方面に向かうほうがいいという思いで、感情的でもないこの一句を選んだ。ビルが付いてないからなおよろし。
▼ 5.うそっぽいほんとのことば売る少年
 少年というのがいけてる。少年の未来をも暗示した句で次にくる句がたのしみになる。

●杉山千絵
▼11. 築いたは螺旋階段見えぬ先
 バベルの塔のイメージ? 何かとんでもないことを夢中でやってて、気がつくと先も見えないし、元いた場所も見えなくなっていたという不安。
▼18. なにもない祈りを運ぶ影さえも
 私もレールの先にはなにもない気がした、そのイメージに合っていたので。何もない、光源もないのにどこまでも明るい感じがしてこわい。
▼21. 富士の底地底人を探しに来
 レールが続いていたはいいが、地底だった(笑)そろそろこんな展開もいいんじゃないでしょうか。次にどんな句がつくのか楽しみです。

●西浦多樹
▼2. 行く先は遠く近くて爪の先
 視線がうろうろしている=信じきれない(?)という表現?爪の先は沈黙かな。
▼19. ひと筋のひびが走ったけぶる地球(ほし)
 音にして綺麗。現在の地球の危機を大胆かつシンプルにうたっていてよい。
▼8. 音もなく小石流れる散歩道
 動かないはずの小石が音もなく流れている…逆に音が聴こえそうな表現で綺麗。