物語の作法・課題2 東條慎生(1)

あたまをとりはずす

 石けりあそびにあきたとき、きがつけば、ボクはどこにいるのか、わかりません。
 石けりあそびにむちゅうになって、しらないばしょに、きてしまったようです。
 空がオレンジ色になっていました。そろそろ、かえるじかんです。
 まわりにはだれも、いないようです。まわりはかべばっかりで、せまい道です。
 せまい道はむこうにつづいていて、むこうからは、人のいる音がしています。
 まえを見ながら、道をあるいていくと、だんだん人のこえが、大きくなってきました。

 しょうてんがいが、そこにありました。
 たくさんの人がいて、たくさんのものがあって、たくさんのこえがきこえます。
 でも、そこにはいつもとちがうものが、ありました。
 いいえ、あったのではなく、なかったのです。
 そのしょうてんがいをあるく人たちには、みんな、あたまがないのです。
 くびからうえしかない人たちが、たくさん、あるいてます。
 
 ここはおばけのくにです。
 そうおもって、いちもくさんに、かけだしました。
 しょうてんがいから、くびなし人からにげようと、はしりだしました。
 そのとき、まえからあるいてきていた人に、ぶつかってしまいました。
 「おやおや、あぶないじゃないか」
 せびろをきたおとこの人はいいました。
 「おや、きみはなんであたまがついているのかな?」

 ボクはおばけにつかまりました。
 たぶん、ひあぶりとか、はりのやまをあるかされたりとか、させられます
 まちがいありません。おかあさんがいってました。
 でも、そのおじさんは、やさしいこえでいいました。
 「よし、おじさんがとってあげよう。このままだと、いろいろまずいからね」
 しんせつなおじさんは、ボクのあたまをポンっとはずしてくれました。

 「ありがとう、おじさん」
 ボクはうれしくなりました。みんなはおばけじゃなかったのです。
 でも、これだとおうちにかえれません。くびなしおばけだと、おもわれてしまいます。
 「おじさん、ボク、おうちにかえりたいんだ。あたまをもとにもどしてよ」
 するとおじさんはすこし、おどろいたようすで、こういいました。
 「おや、ちょっとそれはむずかしいなぁ。ところで、おうちはどこなんだい?」
 「○○まち」

 「それはむずかしいなぁ」
 おじさんはおなじことを、いいました。
 「そこにいくには、あしをはずさないとだめなんだ」
 「じゃあ、あたまをもどして、あしをはずしてください」
 ボクはおじさんにたのみました
 「うーん、それはできないんだよ。あたまをはずしたら、もう、もどせないんだ。あしも、はずそうとしてはずれるもんじゃないからねぇ」

 あたまをつけようとおもって、いくらやっても、あたまはもとにもどりません。
 これでは、かえれません。ボクはどうしたらいいのかわかりません。
 「おじさん、ボク、どうしたらいいの?」
 おじさんはすごく、こまったような、こえをだしました。
 「おうちにはかえれないんだ。ここから、あそこにいくには、とおすぎるんだ」
 ボクは、なきだしてしまいました。でも、かおがないので、なみだはでません。

 かおのないこどもたちが、ボクのそばに、ちかよってきていました。
 その子たちは、ボクたちといっしょにあそぼうと、さそいます。
 「ああ、この子とあそんでやってくれ。この子はまだここにきたばかりなんだ」
 「わかった。ねえ、きみ、あっちであそぼうよ!」
 ボクは、みんなにつれられて、くさのはえたあきちにつきました。
 ボクは、ふしぎにおもいました。
 さっきからそらはオレンジいろのまま、くらくも、あかるくもならないのです。
 ずっと、ゆうがたでした。

 なきながら、ボクは、みんなとあそびました。
 みんな、とてもなかがよくて、すぐにボクもみんなとなかよくなりました。
 あたまのないボクたちは、ずっとあきちであそびます。
 おかあさんや、おとうさんにあいたいけれど、ボクのあしははずれてくれません。
 それまで、あえないんだと、みんなはいいます。
 いつか、あしのはずれた子がいて、その子はかるいあしどりで、どこかへいってしまいました。
 ボクのあしは、はずれません。
 でも、ゆうがたのあきちで、みんなとあそぶのは、とてもたのしいのです。
 オレンジ色のゆうひが、まだ、そらにありました。