物語の作法・課題2 鈴木一業(2)

ミーコのあめがふってくる

 ミーコはどこにでもいるふつうのおんなのこです。いつもどろだらけで、かみのけなんかはごしゃごしゃです。めはピカピカとかがやいています。ミーコはうたをうたうのがだいすきです。ほらほら、きこえてきた。みみをすましてごらん。ミーコがどこかでうたっているよ。
 よいてんきです。あたまのうえでたいようがキラキラしています。ミーコはすこしとおくのおかのうえにいました。
 おかのうえは、ピンクの花がたくさんさいています。ここからはミーコのすむまちがおもちゃみたいにちいさくみえます。おかのうえは、ミーコのひみつのばしょなのです。

 「チカチカきいろいおひさまグルグル。おそらまっさおプルルンミーコ」
 ミーコのうたがきこえてきました。
 ミーコのうたごえはすごくおおきいので、おかのしたのまちまでとどきます。するとまちのみんなはしごとのとちゅうでも、
 「ああ、きょうもよいいちにちになりそうだなあ。」
 なんていって、きもちよくわらうのです。
めをとじてミーコのうたをしずかにきいている人や、いっしょにうたったりする人もいます。それからしばらくすると、またいつもとおなじようにしごとをしたりごはんのしたくをしたりするのです。

 ミーコはおかのうえにくるときいつももってくるものがあります。それはミルクのはいったすいとうです。たくさんうたをうたうとのどがかわきます。ミーコはすいとうのふたをあけて、ごくごくとつめたいミルクをのみました。のこったミルクはすぐそばにあるちいさな木にあげます。ミルクをあげながら、ミーコはまたうたいだしました。
 「ねえねえグングンのんだらねえ。きっとモリモリでかくなる。」
 ミルクがなくなったら、こんどはポケットからハンカチをだして木をごしごしふきながらうたいます。
 「ツルツルランランきれいになって。こんどはミーコをきれいにしてね。」
 ミーコはごしゃごしゃのかみをなでながらなんだかわくわくしてきました。

 そのときです。ミーコのまわりがざわざわしてきました。ちいさなちいさなこえがたくさんきこえてくるのです。
 「ミーコさん、ミーコさん」
ミーコはびっくりして、どきどきして、わくわくして、まんまるでおおきなめをいっそうピカピカさせました。
 ちいさなこえがまたいいます。
 「ミーコさん、ミーコさん。」
 ミーコはみみをすまして、そのこえのするほうをみてみました。なんとそれはあしもとのピンクの花のこえだったのです。たくさんのちいさなピンクの花が、ミーコのことをじっとみていました。

 「ミーコさん、おねがいがあります。きいてください。」
 「ええ、どうしたの。おどろいたわ。」
 ミーコはゆっくりとしたこえでいいました。でもほんとうはびっくりしてしかたがなくて、なんだかいまにもとびあがりそうでした。
 ピンクの花がもうしわけなさそうにいいます。
 「じつはさいきん雨がふらなくて、わたしたちののどはカラカラです。ちいさなこどもたちももうやせてますますちいさくなってしまっています。どうかそのてにもっているミルクをすこしわけてもらえないでしょうか。」
 なんてかわいそうなんでしょう、とミーコはおもいました。みずをあげたいわ。でもこまったことに、すいとうはからっぽです。

 「ごめんなさい。すいとうのなかにはもうなにもないの。」
 ミーコがそういうと、ピンクの花はかなしそうにしたをむいてシンとしてしまいました。
ちいさなこどもの花たちはいまにもなきだしそうです。でもどうにかみずをあげたいとおもったミーコは、かんがえました。そして雨をふらせるためにうたをうたうことにしたのです。
 「ポロポロピコピコあまつぶひとつ。ズムムンおおきなくもひとつ。」
 ミーコのこえはつづきます。
 「キンキラたいようよっといで。ちっちゃいなみだをとめとくれ。」
 するとどうでしょう。いっしゅんたいようがひかったとおもうと、じわじわとかげがおおきくなってきました。
 ひとつ、ふたつ、みっつ。ポツリ、ポツリ、ポツリ。雨がふってきたのです。

 おおきな雨のつぶが、ちいさな花たちにあたります。またざわざわとしはじめました。
 まちのほうもさわがしくなってきました。なにせひさしぶりの雨です。おとなもこどももおおはしゃぎしています。
 ミーコはまだうたっています。どうやらたのしくてやめられないようです。雨のつぶのひとつひとつにミーコがうつって、まるでたくさんのミーコがふってきているようです。
 まちやおかのうえは、うたと雨につつまれてミーコだらけになっているのでした。
 ミーコはどこにでもいるふつうのおんなのこです。いつもどろだらけで、かみのけなんかはごしゃごしゃです。めはピカピカとかがやいています。きっときみのちかくにもいるよ。