「物語の作法」課題提出板 (0033)


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加賀麻東加 批評課題1/パソコン打てないよおおー 2004年04月20日(火)13時03分15秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

☆一番☆
枯れた喉
うたを歌いたくて
仕方がないのに
旋律も何も出てきません
胸を震わせ 言いたいことを
あらわす術を持ちません
だから川原へ行きました
枯れた喉を潤すために
だから涙を流しました
枯れた心を潤すために


詩の雰囲気が好きです。ピアノ習ってたんで旋律って言葉が好きですねえ〜。何か一人の人が歌を歌おうとしている姿が浮かびました。

☆二番☆
どうしようか
どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです


やっぱ恋愛の詩は読みやすいです!愛の言葉とか愛がわからないとかが共感できましたー!

☆三番☆
こんにちは
さようなら
あっけないほどに人は別れ
後には消えない余白が残る
こんにちは
さようなら
また会えたらいいですね


一期一会の出会いもあればそのなかで一生付き合える人と出会えるんだなあと思わせる詩でした。



土橋明奈 批評1/薄手の手袋越し。 2004年04月20日(火)01時52分29秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
ストーリィ的に一番読みやすい物でした。ファンタジックな作品が多い中で割りと実物感がありました。
詩は飲み込み易さが要だと思うので。
それと、最後に靴を買っていなければこの詩を選んでいなかったです。
希望とも果てない無常とも付かない終わりが良いですね。

53▼無味乾燥

薄っぺらいCDが
飛び飛びの音を奏でてる
手帳の予定は抜け抜けで
昨日以降なら空いてます
空に穴あけ 月覗く
うるさいCD止めもせず
隣つきぬけ 奇をてらう
粗い 夜の 闇 粒子
猛々しく狂う 深夜の緑
耳に栓して今宵も眠る
何やってんだかって感じが気に入りました。
意味的理解はあまり出来ていませんが、情景イメージがし易いのが好印象です。
作品集後半はテンポが良い物が多いですが、内容とどちらが優先ですか。

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
女の子らしくて、可愛らしい。童話の一節の様。嘘の存在感が絶妙。
本は何処へ逃げるのかこっそり追い掛けてみたいです。





滝 夏海 批評1/テンポの先へ 2004年04月20日(火)01時18分33秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

1▼夜のサーカス

ガンガラガン、と風が吹き
今日の終わりを告げました
途端に世界は華やいで
偽者の光が差し込みます

我がもの顔で車が走り
サーカスみたいな猛獣だらけ
何を信じたら いいのかな

僕は光にくらまされ
歩くのがやっと なのでした
猛獣に食べられないうちに
家に帰らなければなりません

夜はまだまだ長いから
眠らなくてはなりません

 語尾と単語の選び方など言葉の使い方が少し気になる詩もいくつかありますが、これはその文章的な言葉使いと詩のイメージが、上手く合わさっているのではないでしょうか。猛獣だけど「サーカス」と付くと、怖そうなのに飼い慣らされてそうでもあって。世界や自分を少し離れてみている感じが出ていて良いと思いました。ただ、最後の2行がどこから繋がっている(連想されている)のか分からず、ちょっと余分に見えました。


15▼洗濯の必要

痛みはたたんで隅に寄せ
汚れたこころは洗います
今日は晴れていますので
明日までには乾くでしょう

昨日も今日も洗濯日和
明日もずっと洗濯日和
必要なのは雨ではなくて
乾いた空気と洗剤です

 どこかで聞いた事のあるような内容ですが、テンポが良いので一票。文字で見るより、口に出した方が楽しめる詩です。青空を見て、ふっと呟きそう。
 個人的な好き嫌いの話になりますが、この詩は4行より2行で区切り、「昨日も〜」からの2行と「必要〜」からの2行を入れ替えた方が、声に出した時気持ちいいかな、と。これは本当に個人の趣味の話ですから。


36▼どうしようか

どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです

 とっても直球な詩で、好きです。稲葉さんの詩は、気持ちとそれを表した言葉と詩全体のイメージとが微妙にズレて複雑に見えるだけで、実はとっても素直な詩だと思うんです。それが表れているのが36『どうしようか』と37『無題』。困っている姿もまた可愛らしかったので、こっちを選びました。

 「テンポは良いけど、もう一歩」というのが全体的な感想です。それはたぶん、どこかで聞いた事のあるフレーズが多かったり、語っている内に主題から違う方へ逸れてしまったり(意図してすり替えるのは別)、どこにピントを合わせて良いか迷ってしまう部分があるからでしょう。フレーズとしてよく使われる物はテンポも良く、耳に気持ちいいのですが、その分さらっと流れてしまう怖れがあります。音の流れやテンポに拘るのも良い事だと思いますが、もっともっと稲葉さんならではの言葉の使い方をしていけば、心に引っ掛かる詩が増えるのではないでしょうか。

児玉武彦 批評1/伝わらずとも解る詩を! 2004年04月20日(火)01時02分25秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

1▼夜のサーカス

ガンガラガン、と風が吹き
今日の終わりを告げました
途端に世界は華やいで
偽者の光が差し込みます

我がもの顔で車が走り
サーカスみたいな猛獣だらけ
何を信じたら いいのかな

僕は光にくらまされ
歩くのがやっと なのでした
猛獣に食べられないうちに
家に帰らなければなりません

夜はまだまだ長いから
眠らなくてはなりません
3位;とにかくこの詩集の冒頭という事もあり、何より
   ガンガランという言葉のインパクトに引き付けら
   れた。あと個人的に「眠らなければ」という下り
   が今の自分にリアルに響きました。

21▼かまいたち

身構える余裕はありませんでした
武器も持たない僕は
ただ
立ち止まって
傷付くのみです
不覚にも不意にやってくる
その悪意から
僕は未だに逃げられません
2位:筆者の気持ちがとてもストレートに伝わって来て思
   わず共感してしまう。ただ、折角タイトルに「かま
   いたち」と工夫されているのに「悪意」という言葉
   が、より深く共感するのを妨げているきがする。

34▼無題

刻むほどに厚いものは
いつか何処かに置いてきた
泳がすほどに広い心は
とうに何処かに捨ててきた
空は冷たく 息は白く
今日は終わって流れ去る
1位:表現方法として、とてもセンチなのにそれが鼻につか
   ず、とても素直に共感出来るのは文体のバランス感覚
   によるものなのか。「刻むほどに厚いもの」という言
   葉が特に良い。万人が持ってるであろう形容し難いモ
   ノを絶妙な言葉で過不足無く言い当てているきがする。

総評:全部で55個もある詩の中で共感出来た詩は割合とし
   ては多いとは言えなっかたが、筆者が詩を生み出すバ
   ックグランドはとても興味が持てた。詩というのは一
   体誰に響けば良しとされるのか畑違いの自分には解ら
   ないが、より多くの人に伝わるにこしたことはないき
   がする。なら、例え響かずとも伝わる作品の創作を心
   掛けてみてはどうか。詩の意味が解るのと解らないの
   とでは、心に響く響かないに関係無く大きな前進にな
   るのでは。    




松本紗綾 作品1/ピースメーカー 2004年04月19日(月)21時47分03秒

あたしは銃が手離せない。
誰かを傷付ける為じゃないの。
あたしがあたしを守るため。
銃を持つあたしに近づくおバカさんはいないでしょ。
だからあたしも傷つかない。
誰かが近くにいるから傷付けられるのよ。
傷付けられたくなかったら
銃を持ちなさい。
みんなに見せびらかす様に。
そして大声で叫びなさい。
あたしは強い!と。

銃を持たない強さを知らない私。

石崎森人 批評課題1/ヘビースモーカー シングルベッド。 2004年04月19日(月)20時22分08秒

 あんまり自分は詩を読まない。詩集を読んでも殆どが流し読み。生真面目にあえて一文一文読む努力はしない。とにかく目でドライビング。だけどたまに急ブレーキ。どうしてもそこから進めない、流せない言葉がある。心に引っかかって、染み込むような。
 吐いて棄てるほど言葉の氾濫している時代で、流されない言葉。それこそが詩だと自分は思っています。だからあんまり詩を読まないのです。
 それでは流せなかった言葉達を三つ。
32▼変化

変わってしまうのは
寂しいことなのかな
どうして変化を
素直に喜べないのだろう
変わらないものなんて
何一つないことを
本当は皆知っているのに
本当は皆ひとりだと
泣きたくなるほど
わかっているはずなのに

 自分も含めた誰か。それが一緒に居たい人ほどその人が変化することに対して寂しさを覚えたりする、そういうありふれた感情だけど、いつまでたっても拭い切れない気持ちを表現していると思います。終わりのほうの「本当は皆ひとりだと泣きたくなるほどわかっているはずなのに」という言葉でこの詩は一段と深くなっていると思いました。あの人は自分じゃないから変ってしまうのはしょうがない。人は所詮一人だ、しょうがない事だ諦めようと思っているのに、諦められない気持ち。この諦めきれない気持ちってどこから来るんでしょうね?
35▼川

針を刺すよな寒さの中で
川辺を歩いていきました
時々流れにきらめく魚
白い息吐き眺めてました
どうせ明日も後悔だらけ
鉄柵にもたれ吐息する
タバコは吸うなと言われても
煙を吸わなきゃ潰される
日々の重さに
自分の呼吸に
生きていることの実感に

どうせ明日が来るだけなのに
夜が寂しいのは
何故でしょう

 やってらんねーよマジでお前ら全員ぶっ飛ばしてやる――なんて大きな声で言えたらこんな気持ちにはならないのかな、と思います。自分も言えない人。超言いたい。目に写る全ての人に言いたい。だけど言えません。代わりに煙を吸います。人と話すと緊張します。だから煙を吸います。生きてることに労れます、煙を吸って紛らわせます。だけど自分でも不思議なんですよ。深夜の、蒲団に潜った瞬間の寂しさ。あれはもしかして、今日が終わることの寂しさなのかな。
8▼回送列車

あの回送列車に乗って
君の手も届かない場所へ行きたい
勝ちも負けも関係ない
隅っこに在る小さな場所へ
そう考える僕は
泣きそうな顔をしているのかな
夕暮れ
スーパーの袋から
白い葱をのぞかせてさ

 すれ違う全ての者に殴られて倒されて罵られた負け犬のような気分を思い出させてくれました。そう周りは敵ばかり。それなのに自分はぐうの音も出ないほど無力。ああ無常。
そんな時は何処かに消えたい。自分だけの楽園で何も気にせず暮らしたい。この胸の痛みから、少しでも逃れられるところに。この詩の一番好きなところは、スーパーの袋から白い葱が出ているところ。生活臭ぷんぷん。そして負け犬の獣臭もぷんぷん。逃げられない現実が袋から見えているような。ははは。この文章書きながら泣きそうな顔しているなァ俺。








志田 匡平 批評1/水面の葉っぱ 2004年04月19日(月)19時43分14秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

23▼蜂蜜ハニー

蜜のような甘い夢
咲く花のような明るい世界
蜂蜜ハニーは飛び回る
極彩色の希望を胸に

やがて世界が冷えきって
命が尽きるその前に
蜂蜜ハニーは飛び回る
羽ばたく羽があるうちに

 この詩はテンポの良さに惹かれました。
タイトルから中盤まで、「蜜」「花」「極彩色」と、
明るくポップな印象で進み、読み手を軽快なリズムに乗せていますが、
後半の詩の印象は、「世界が冷え切って」、「命が尽きる」
など暗くなるっていきます。
 自分は頭を『ガツン』と殴られました。
タイトルから続く明るいテンポにつられて明るく読んだら、
すごく残酷な気分になりました。
できれば、序盤のテンポのまま最後まで読み終えたかったです。
それは策にハマっているのでしょうか?
そうだとしたら、してやられました。
15▼洗濯の必要

痛みはたたんで隅に寄せ
汚れたこころは洗います
今日は晴れていますので
明日までには乾くでしょう

昨日も今日も洗濯日和
明日もずっと洗濯日和
必要なのは雨ではなくて
乾いた空気と洗剤です

 これも、23番と同じくテンポが好きです。
 読み終えてから『ボー』っとして、自分にとっての『洗剤』を再認識しました。
洗濯という日常にも『ホッ』としました。
40▼もしもこれが夢だったなら

もしこれが夢だったなら
また一から
やり直せるかな

仮定と疑問が
入り乱れて
私は目の前を見失う
ほんとうのものは
いつだって目の前に
あるのに
ちゃんと確認したことは
一度もない
目の前にあるのに
何もかもが

夢見たもの以外の
何もかもが

 沢山の詩の中で1番ストレートに書いてある詩じゃないでしょうか?
それと同時に、誰もが思うことじゃないでしょうか?
自分は毎日のように、「もしも…」の妄想の中に旅します。
『目の前』(=現実)は変わらぬものと知りながら、
その旅は無意味と知りながら…。
現実から目を背けることの多い自分に刺さった詩でした。

全体的に、寂しく落ち着く作品が多いと思いました。
蜜蜂ハニーの前半の世界が続くような、
ハイテンションで駆け抜けるような作品も読んでみたいです。

これからもバンバン書いて、どんどん発表してください。

藤森亜依 批評1/心に響く言葉、情景が浮かぶ言葉。 2004年04月19日(月)19時04分49秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

私が選んだのは以下の三つです。気に入った順になっています。
37▼無題

こんにちわ
さようなら
あっけないほどに人は別れ
後には消えない余白が残る
こんにちわ
さようなら
また会えたらいいですね

私はこの詩が一番気に入りました。というか、気になりました。これほど短い言葉の中に、現代の若者なら誰もが感じるであろう人間関係の希薄さが強く現れていると思います。私が普段このようなことをよく感じてしまうからかもしれませんが、この詩には強く共感出来ました。あぁ、そうだよね、という感じ。
「消えない余白」という言葉が引っかかりました。その人と出会った記憶は消えないけれど、その人と何をしたのか、どんな人だったのかまるで覚えていない。だから、記憶の中に空白、余白として残る。そういうことでしょうか?勝手な解釈ですいません・・。

35▼川

針を刺すよな寒さの中で
川辺を歩いていきました
時々流れにきらめく魚
白い息吐き眺めてました
どうせ明日も後悔だらけ
鉄柵にもたれ吐息する
タバコは吸うなと言われても
煙を吸わなきゃ潰される
日々の重さに
自分の呼吸に
生きていることの実感に

どうせ明日が来るだけなのに
夜が寂しいのは
何故でしょう

「どうせ明日が来るだけなのに〜」というラストがとても印象的でした。何か諦めのようなものを感じながらも、同時に何かに期待しているような、そんな解釈をしてみました。どうせ〜という表現に、悲観的なものと、皮肉めいたものが私には感じられたのですが、どうでしょう?
私は煙草を吸いませんが、日々の重さや、生きていることの実感に潰されそうな気持ちは分かります。共感できる詩でした。

7▼月夜の天国

群青の空に
月が出ていた
レモン色の
まんまるい月
あれはなぁに、と
君が言うので
天国だよ、と僕は答えた

上の二つと違って、情景的な詩だと思います。読んですぐに景色が浮かぶような、そんな雰囲気を感じました。「君」と「僕」の関係を色々想像出来るのも良いです。私の中では、やはり恋人の線が濃厚なのですが。年の離れた兄弟、というのもいいかもしれませんね。絵本の一ページにありそうな、そんな詩のように感じました。

正直三つを選ぶのに悩みましたが、やはり私は上の三つが良かったと思います。稲葉さんの詩の言葉はとても綺麗で、情景がすぐに浮かんできたり、強く共感できるものが多かったです。普段あまり詩を読まない私が思ったことなので、大した批評になっていませんが、そう感じました。あと、短いものが多く、リズム良く読むことが出来ました。さらりと自分の中に入ってくる、ということは詩には大切なことだと思います。

石崎森人 授業参加を認めないとは…… 2004年04月19日(月)18時08分52秒
寮美千子 作品発表の覚悟 への応答

そんなあまりに非道い仕打ちではないでしょうか。
なぜ?という気持ちで一杯です。


自分は真剣に作品と向き合っていると自負があるし、中途半端な気持ちではありません。

ただ、自分は昔、HPを理由にとても厭な事があったので、公開を控えただけです。それは自分だけではなく、周りの人を巻き込んだことでした。自分だけなら罵詈雑言なんでもOKすよ。だけど自分以外の誰かが傷つくのは厭なのです困るのです。
それにHPは実名で公開してます。無責任な発言をしているわけではありません。


ホームページを運営しているということを書いてしまったのは本当に後悔しています。とても軽率でした。


覚悟が無いわけではないのです。そこをどうかご理解お願いします。






高澤成江 批評1/あったかい感じ。 2004年04月19日(月)17時27分50秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

4▼失うこころ、咲く桜

あまりに水ばかり垂れるので
くしゃくしゃに、こころ絞りました
春風に当てて乾かしたら
ふうわりと空へ逃げました
僕はことり、と胸が痛んで
こころの風船追いかけました
夢中で走っているうちに
いつの間にかぽっかり胸に穴
なにやら暖かいので 見てみると
ぎっしり桜が詰まってました
気づかぬうちに穴は埋まって
こころは もはや小さな点です
こころの代わりに桜を入れて
僕はそのまま帰ったのです
物語性がある詩だと思う。頭の中で絵が思い浮かぶ。
「こころは もはや小さな点です」というところの意味が私にはちょっとわからなかった。
胸の穴に桜が詰まっているって表現がなんだか可愛らしくて好き。

7▼月夜の天国

群青の空に
月が出ていた
レモン色の
まんまるい月
あれはなぁに、と
君が言うので
天国だよ、と
僕は答えた
勝手に、恋人同士っていう設定で読ませていただきました。
この詩が全部の中で一番好きです。ストレートだけどロマンチックできゅんとくる。
こんなこと言ってくれる男がいたら多分惚れる。

36▼どうしようか

どうしようか
お金もないし
君には何もあげられない
並んで笑っていようかな
せめて愛の言葉くらい
君に贈れるといいんだけど
私には愛が何なのか
まだよく解からないのです
君の欲しいものすらも
まだよく解からないのです
基本的に私は恋愛っぽい詩が好きみたいです。この子の気持ちは共感できる。
なんだかもどかしくて可愛くて切ない。


全体的に(私が選んだ詩の中にはなかったけど)「嘘」って言葉が頻繁に出てくるのが気になった。稲葉さんはものすごく嘘が嫌いなのか、嘘をついてしまったことがあってそれが胸につかえているのかな。
もっと長い詩を読んでみたいです。

五十嵐 舞 批評1/ ちょっとした言葉に惹かれました。 2004年04月19日(月)17時15分09秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

 なんとなく稲葉さんの作品は時代というか現世を斜めから見ている感じがします。そこから見える真実を稲葉さんなりのティーストに仕上げ、自分の心情も反映させているように思える作品でした。私自身、世の中を斜めというか捻くれてみている人間なんでちょっと変わったものを選んでいるかもしれませんが、お気に入りの三点を選んでみました。

8▼回送列車

あの回送列車に乗って
君の手も届かない場所へ行きたい
勝ちも負けも関係ない
隅っこに在る小さな場所へ
そう考える僕は
泣きそうな顔をしているのかな
夕暮れ
スーパーの袋から
白い葱をのぞかせてさ
>これはすっごい共感できるところというかこんなことを考えた時もありましたね。最後の3行がこの詩をリアルにさせているのかもしれません。この三行がこれを選んだ理由です。妙に抽象的な心情の世界からいきなり現実感を起こさせる感じ素敵です。もっと飾りの言葉を削るともっと良くなるかも…

14▼枯れた喉

うたを歌いたくて
仕方がないのに
旋律も何も出てきません
胸を震わせ 言いたいことを
あらわす術を持ちません
だから川原へ行きました
枯れた喉を潤すために
だから涙を流しました
枯れた心を潤すために
>現実問題で自分の喉が風邪を引いたらしく嗄れて痛いので思わず選んだ作品。最後の4行のテクニックがいいですね、訴えてくるものがあって効果的な感じを受けます。私も自分のつくる作品につかってみようと思います。いいたくても、それを表現できないもどかしさって誰でもありますよね…これって意外と辛いんです。詩や俳句を作る際もあってイライラします。でも人に伝えられない・・・それも変に誤解されたら居た堪れないです。

24▼東京の夕暮れ

なぜでしょう
夕闇が迫るにつれて
僕の心は
空っぽになるんです
まるで
間違ってここに
迷い込んだような気分
本当の居場所が
他に在るような気分
そんな気分になるのは
冬の夕べに吹きすさぶ
空っ風のせいかも
しれません
さぁ早く
家に帰ろう
>「間違ってここに迷い込んだような気分 本当の居場所が他に在るような気分」っていうのは、誰でも思ったことがある言葉というか気分ですよね。これに共感した感じです、これを選んだのは。でも、東京の夕暮れって本当に空虚感やマイナスな思考をもたらして来て、安心できる自分の居場所である「家」という概念に帰りたくなりますよね・・・この辺が妙にリアルですね!!でもホント休日のオフィス街の夕暮れって闇の口が広がっていて行きたくないし、いたくない感じですよ・・・ひとっけがなくて。それをイメージされたのもあります。

全体を通して良かったと思います。これからも作品づくり頑張ってください。


千田由香莉 課題2/「お尋ねします。どちらが本当の私なのですか。」 2004年04月19日(月)16時02分52秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【素顔】

 
  反射鏡 透かす心の 朧月 

  

 

千田由香莉 作品1/俳句 「憶の細道」 2004年04月19日(月)15時55分51秒

 色んなものを出していきたいと思っていますが、まずは高校のときからちょくちょく触れていた「俳句」をひねってみました。
声に出して読んでもらえたなら嬉しいです。

 ●記念写真 瞬きへ落ちる 忘れ霜

 ●まだかいな? 爪先立ちで笑う夏

 ●忘れもの 数えた小指に 結ぶ春

 ●地球散歩 大地に刻む MYサイン

 ●テンぺスト 歪に光る 蒼春譜

 ●天上天下 響く連弾 春夏の音


 私は日本語の響きが大好きです。
 そして、邦楽ロックが好きなのですが、俳句は5.7.5の音にのせて鳴らすロックだと思います。短いだけにひとつの言葉に、よりたくさんの意味を込める。その作業がたまらなく好きなんです。 ではまた。


 

寺岡恵 批評1/共感と裏切り 2004年04月19日(月)14時35分01秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

稲葉さんの詩には内省的になりつつも、若者感覚の「ま、いっか」的な終結がいくつかあると思います。
登場人物はおそらく楽観的?な行動(言葉)で、
読んでいる方はそれによって突き放され、そのギャップが心地よかったりもします。
菊池さんも似たことをおっしゃってましたよね。
あと、リズムがいいものがたくさんあると思いました。
ただ、声に出して読むと、時々リズムが崩れるかなというところもありました。

4▼失うこころ、咲く桜

あまりに水ばかり垂れるので
くしゃくしゃに、こころ絞りました
春風に当てて乾かしたら
ふうわりと空へ逃げました
僕はことり、と胸が痛んで
こころの風船追いかけました
夢中で走っているうちに
いつの間にかぽっかり胸に穴
なにやら暖かいので 見てみると
ぎっしり桜が詰まってました
気づかぬうちに穴は埋まって
こころは もはや小さな点です
こころの代わりに桜を入れて
僕はそのまま帰ったのです

くしゃくしゃ・ふうわり・ことり・ぽっかり・ぎっしり

音がいいですね。絵本にでてきそうな…絵と合わせたい詩だと思います。
情景が浮かびます。

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
わかる気がします。共感できる詩です。
はるうらら出かけたくなったので
本当にそうなんだよね。本よ私は逃げていませんっ!

43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
最後の三行が好きです。
妙な突き放され感。
読んでいる方は一緒に夢を探している訳ですが、
当の本人はとりあえず家帰っちゃった。
悩んでいるんだけど、疲れてやめた。
私たちの世代にリアルな詩だと思います。



露木悠太 課題2/月のお話 2004年04月19日(月)03時30分39秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【月のお話】
 
 空はゆっくり目を閉じ始めた。大好きな本を、今日は森の中で読んでいた。

「…吊るされた月はだんだん削られ、円を失い、輝きはまばらになった。
あんまり鋭くなったから、頭の上の糸斬りつけて、深い青の空を滑り落ちた。
それでも星の連続する光、落ちた星は燃え尽きたらしい…」

 少女は足もとを見つめた。赤い靴のつま先は艶やかに星を映している。その足で、浮力を失った小さな石を蹴ってみた。 〈コツッ〉

「…だけれど滑り落ちた場所はまた、深い青の水面だった。照らしていたはずの湖に照らされ、月はありのままの姿を見ることができた。
『ふぅ…』、と溜め息をついた月。『このまま揺られて船にでもなろうか、それとも沈んで魚の家になろうか』。」

 少女は目の前の老木を見ていた。鳥やリスを思い浮かべた。

「…しかし、そこに映っていたのはまぎれもなく空。まんまるい月。
『仕方ない、欠けない石を探し、もう一度空まで行こう』
照れ笑いした月は、次の日の夕刻になって帰っていった…」

 少女は空を見上げた、月は居ない。
 とその時、背中のあたりに視線を感じた。
 

露木悠太 批評1/少数派の集合 2004年04月19日(月)02時58分53秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
 1位、▼街と夢
 「夜の街に出てネオンの中から」という出だしで、きらびやかな世界(と、インターネット)を連想しました。そのきらびやかな世界で夢を探してみたけれど、「見つかるのは嘘ばかりで」と言ってしまう。でもここは本音じゃなくて、『違う気がする』、もしくは『わからない』程度のことなのではないでしょうか。それでも「嘘」と言い切ってしまっているのは、この時の心情を強く表し、次の言葉を叫ぶため。続く「夢なんかどこにもなかった」が何だかとても痛くて切ないのはそのせいだと思います。『どこかにあるはずなんだけど、…もしかしたら無いのかもしれない』みたいな言葉の裏の不安を感じました。最後の「仕方がないので靴を一足買って家に帰りました」というところでは、ああ、それでもまた探しに行くのかなぁ、なんて思ってしまい、やっぱりそこにありそうなんだなぁ…と思いました。「夢なんかどこにもなかった」は、『夢だと思っていたものは違った』だったのではないでしょうか。僕のフィルターを通してみると、そんなふうに読めました。

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
 2位、▼はるうらら
 これはとてもストレートな詩です。同じような体験をしたことがある人なら、無条件に共感してしまうでしょう。今日はこの本を読んでしまおう、なんて決意しておきながら、集中できずやめてしまう。少し休憩、なんて言いながら。そんな時、誰にともなく悪い気がしてしまう。見過ごしてしまいそうな日常のささいなことをきれいに、しかしドキリと詠ってくれたとてもいい詩だと思います。

50▼選択の世界

道が二手に別れてた
川が両脇流れてた
僕はどちらも選べずに
乾いた道を眺めてた
渦巻く 川は 空映し
うつむく 僕は ただ虚しい
選ぶことに飽きていた
夢見る年は過ぎていた
ロクンロールみたいな
川の音
僕は そのまま飛び込んだ
ジャズポップみたいな
結末だ
 3位、▼選択の世界
 「ロクンロール」、この言葉に僕は引っかかりました。一応ロック好きな僕としては、『ん?』と首をかしげてしまったからです。『ロクンロール? それを言うならロックンロール、もしくはロケンロールだろ?』と思ったのです。でも何度か読み返してみて、その疑問は消えました。「ロクンロール」という語感は「トプン、トプッ…」という川辺の水が岩に当たる音に聞こえて、「ジャズポップ」は「ジャボーン!」という水に飛び込む音に聞こえたからです。…作者の意図するものかわかりませんが、この言葉の使い方はとてもおもしろいと感じ、3位に入れました。

 さて、僕が稲葉さんの詩集を読んでみて感じたことは、「少数派の集合」です。
 人にはどこかしらに穴ぼこが開いていて、そこを埋めるためにいつも何かを探しているような気がします。その場所も数も大きさも人それぞれで、求めるものも違います。
 稲葉さんの詩は、この詩集を読む限りでは、多くの人の小さな穴を埋めるより、少数の人の中くらいの穴を埋めているもののように感じました。僕もいくつかの言葉にはっとしました。しかし逆に何も感じ取れなかったものもありました。でも、きっとこれをわかる人がいるんだろうなとも思いました。故に少数派に届く詩の集合体なのだと感じました。それは強みでもあり、弱みでもあります。
 最後に、とても楽しく拝見させて頂きました。これからも創り続けてください。 

雨宮弘輔 批評1/俺の日記から引用 2004年04月19日(月)01時26分12秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました

前半の明るい雰囲気と、後半の本の『つぶやき』の不吉さのギャップが好きです。この詩を読み終えた後、靴の中の石ころほどの小さな不安が残ります。
物が持ち主に対して何かを伝える作品は、数多くあります。僕はその中でも不安を示唆する言葉で持ち主の心を突き刺す表現が好きです。
『本は黙って付き合ってくれる唯一の友(だっけ?)』という言葉がありますが、つぶやいた本はあまり善い友ではなさそうですね。
7▼月夜の天国

群青の空に
月が出ていた
レモン色の
まんまるい月
あれはなぁに、と
君が言うので
天国だよ、と
僕は答えた

科学が発達する前、月は人々からどのように見られていたのだろう。10年前ほど前からそんなことを考えていたので、この詩は印象に残りました。
火星の表面に探査機が走っているこの現代の感覚でいえば、この詩の『僕』の答えはウソになりますね。でも僕はこのウソが好きです。こういうちょっとお洒落と滑稽さを含んだ映画の紳士さながらのウソ(ジョーク)なら、ぼくは週に一度位は言ってもいいと思います。
54▼アルバイター

氷を落とし 水注ぐ
喉が乾いてたまらない
洗剤落とし 床こする
汚れはなかなか落ちなくて
革靴で走り コップ割る
客に怒られ 詫び入れる
洗った灰皿 素早く戻す
帰る頃にはくたくたで
手にはいつでも火傷跡
夜空を見ながら 歌唄う
首をかしげて 星さがす
落ちない汚れで制服汚れ
泣くこともできず
ひとりで帰る

僕の家の近くにある居酒屋で、アルバイトをしている女の子を思い出しました。
彼女は頭に巻いたバンダナを汗で濡らし、フライパンの焦げであらゆる箇所を汚しながら働いています。傍から見たら必死になって働いているように見えます。そして余談ですが、休憩中はつまらなそうな顔をして店先でタバコを吹かしています。
そんな彼女を以前、駅で見掛けたことがあります。店の制服ではなく、どこか知的な女性を感じさせるお洒落な服装でした。僕は店で働いている姿とのギャップから、労働の切なさのようなモノを感じました。この詩も同様です。

批評というより感想になってしまいました。詩は昔、ヘルマン・ヘッセを少しだけ読んだ程度なので、これら詩が客観的に観て優れているのかどうか判りません。僕が、ただ55の詩の中で言葉から情景を想像しやすいモノを選びました。音読してみたら、リズム感もあったので文章の表現ということで考えれば、上手いと思います。

松本紗綾 批評1/景色とリズム 2004年04月18日(日)19時34分02秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

順番は作品の順になってます。
8▼回送列車

あの回送列車に乗って
君の手も届かない場所へ行きたい
勝ちも負けも関係ない
隅っこに在る小さな場所へ
そう考える僕は
泣きそうな顔をしているのかな
夕暮れ
スーパーの袋から
白い葱をのぞかせてさ

技術的なことに関しては、何もわかりませんが、
素直にこの作品は私の中へ入ってきました。
頭の中の想像(妄想)と現実の違い・・・みたいなモノは
誰もが持っているモノではないかと思っています。
だからかも知れませんが、共感出来たのかなと思います。
43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました

私にはこの詩の様な体験は全くありません。(当たり前かもしれませんが)
でも、この作品は、景色が一番見えました。
最後だけ「帰りました」と、語尾が違うのは何か意味があるのでしょうか。
込められた意味が気になりました。
48▼不動の自由

植物に 成りたい
土から水を吸い上げて
葉を繁らせたら
どこまでも伸びてゆける
水草のように浮遊して
いつまでも目を閉じて
朝には朝露
夜には夜露
動かずに居る自由が欲しい
植物になりたい
見上げた空に
焦がれるような

まず、タイトルが気になりました。
私の中で「不動」と「自由」は対のものという認識があったからと思います。
同じ「不動」にも動かないということと、動かされないということの
2つの意味があるのかと考え直し、納得しました。

私なりの批評なので、稲葉さんの伝えたいことがしっかり読み取れたのかはわかりません。
その上、私の経験が少ないのか今の私には難しい詩がありました。
ただ、全体的に音のリズムは私の好きな並びが多かったと感じました。

吉見幸子 課題2/ほんとうの私 2004年04月18日(日)19時07分42秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【empty mind】

何着たらかわいく見える?
何着たらやせて見える?
何着たらきれいに見える?

大きいレースついたブラウス?
黒い別珍のボレロ?
スパンコールのきらきらなジャケット?

あなたにわたしはどう映る?
どうしたら「かわいいな」と思ってくれる?
どうしたら「スマートだ」と思ってくれる?
どうしたら「きれいだな」と思ってくれる?

このまま会いにいこうかな?
あなたはどう思うかな?
かわいいと思うかな?
スマートだと思うかな?
きれいだと思うかな?

あなたはほんとうのわたしを知らないよね?
いつも飾っているわたししか見れないよね?
ほんとうのわたしを見たい?

でもわたしにもわからない
ほんとうのわたし














城所洋 批評1/伝わって来れたもの 2004年04月18日(日)18時37分40秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

 自分は滅多に詩を見たりしていないので、若干(大分?)評価基準がずれているかも知れませんが、自分なりに批評したいと思います。
9▼口笛を吹く余裕

口笛を吹く余裕はせめて
いつも残しておきましょう
両手の荷物が重くても
家路がどんなに遠くても

それは放課後のチャイムのように
君の心に響くでしょう
何も見えないと泣くよりは
君に力をくれるでしょう

まず第一に、基準としたのはメッセージ性です。その詩の中の何か伝えたいものが明確に伝わってくるかどうかで判断しました。それで選んだのはこれです。
 何分、鈍感なもので、どれを見ても中々パッとしなかったのですが、この詩には、それが含まれているとはっきり汲み取れました。
 いかなる状況でも、口笛を吹けるくらいの余裕を持っていれば、なにもしないよりは全然マシだ、という、単純ながら、実に教訓染みた詩として、中々面白いと感じました。
32▼変化

変わってしまうのは
寂しいことなのかな
どうして変化を
素直に喜べないのだろう
変わらないものなんて
何一つないことを
本当は皆知っているのに
本当は皆ひとりだと
泣きたくなるほど
わかっているはずなのに

 続いてはこちらです。これはメッセージ性もさることながら、非常にダイレクトに、剃刀のようにスパっとした切れの良い味を感じました。こういった歯切れの良い作品は、結構好みです。
 諸行無常の理を皆、周知しているにもかかわらず、何故かそれを嘆いてしまう。何だか、変化する事の喜憂、不変である事の喜憂を垣間見た感じがします。
43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました

 という事で最後になりますが、これは、全ての詩の中で最も気に入りました。物語性も十分で、読んでいて非常に共感し、哀愁を感じられた作品です。
 街という物をテーマに、その中に蠢いている夢と現、そのギャップを的確に表現し、結末に仕方なく靴を一足買って帰る、というのが何ともリアルで、現実を知った登場人物の心情が非常に良く伝わってきたような気がします。

 全体的な感想ですが、やはり読みなれてないせいか、メッセージや物語が無いと思ってしまうようなものがいくつかあったように思えます。良い所まで行っておきながら、どうにも尻切れトンボで終わってしまったように感じるものや、いま一歩深みに欠けるもの、最後まで意図を理解できなかったものなど、少なからずありました。
 詩はあんまり分からないのですが、そんなこんなの理由で、僭越ながら上に挙げた三つは、伝わって来たもの、ではなくて、敢えて、伝わって来れたもの、とさせていただきました。

越智美帆子 課題2/羊水漂流 2004年04月18日(日)18時18分22秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【漂流】

 行ってきます。
 Aはそう言って出かけていったらしい。
 Aの母親の母親によると「Aは嫌に晴れ晴れとした顔をしていました」とのことだ。
 実際、Aは晴れ晴れとした気持ちで家を出たのであるし、母親の「嫌に」という言葉には吐き捨てるような気持ちが込められていたし、どちらにしてもAと母親は仲が悪かったということだ。
 母親という肩書きはあるものの、Aの母親であるこの女は実際、Aの母親の肩書きを放棄したがっていた。けれど、腹を破ってでてきたのはAだったし、彼女が望んだ子供はどこか遠くの世界で同じに日に誕生して、今もどこかでのうのうと生きている。この子供、実はAの母親の子供になることをAよりも先に拒否し、難なく他の母親の腹からこの世に頭を突き出したのだった。
 さて。Aはというと、やはり晴れ晴れとした面持ちで歩いていた。
 空は雲が何層にも連なり、月が、Aを親心にも似た気持ちで見守っていた。本当は見守っているふりをして、隙あらば食べてしまおうというのが魂胆だったのだが、彼(月は男である)は厳格な取り決めによってAに手出しすることは固く禁じられていて、摂食衝動よりもその際に行われるであろう罰を思い浮かべると、見守るという無難な態度を取るしかなかった。それに、彼はそう腹も減ってはいなかった。
 Aが歩いているのは、とある町外れである。
 町外れのどこかではあるが、ここに足を踏み入れることのできる人間はそういない。何故なら、Aの微妙な心情がここへ入り込む鍵になり、その微細な心の波長が狂えば、Aがここを歩いていることはなかったからだ。
 Aの感情は不思議なリズムをとっていた。上の旋律では三連符、下の旋律では四分音符、それが一小節の中の最初と終わりだけ重なる。複雑ではあるが、Aはそれを一つも間違うことなく刻んでいた。実はそのリズムこそがここへ入る鍵であったのだが、Aがそのことを知るわけもない。
 町外れは野原になっていた。等間隔に細い木が生えており、それは白樺に似た木であった。その先は三本に枝分かれしており、月に向かって全てが伸びている。Aはその木の間を縫いながら歩き、そろそろ見えてきた海に感嘆のため息を洩した。見渡す限り紺の海が広がっていた。岸には一艘のボートが浮かんでいた。それと不思議なことに、海から首の長いランプ灯が一本だけ生えていた。ランプ灯は月と同じような色で発光し、月はそれに対抗心を抱いていた。
 Aはそのボートに寝そべり、袋に入れて持ってきた本を取り出してひろげた。そしてAと母親について書かれている頁を全て破ると、海に捨てた。残りの頁は全て真っ白だったが、Aは早速その最初にこう記した。
「出発します」
 同じ時刻、この言葉はAが次に辿り着く場所に届き、言葉ではない印によってある人物に知らせられる。
 ボートは出発し、ゆっくりと進んでいく。Aは目を瞑り眠ろうと試みたが、興奮で頭が冴えてしまい、なかなか眠ることができなかった。
 

越智美帆子 批評1/無臭の詩 2004年04月18日(日)17時35分35秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

私はこの三つを選びました。
4▼失うこころ、咲く桜

あまりに水ばかり垂れるので
くしゃくしゃに、こころ絞りました
春風に当てて乾かしたら
ふうわりと空へ逃げました
僕はことり、と胸が痛んで
こころの風船追いかけました
夢中で走っているうちに
いつの間にかぽっかり胸に穴
なにやら暖かいので 見てみると
ぎっしり桜が詰まってました
気づかぬうちに穴は埋まって
こころは もはや小さな点です
こころの代わりに桜を入れて
僕はそのまま帰ったのです

29▼この心

ごみ箱があったなら
この心すぐに捨てるのに
歩いてもどこにも見当たらないから
仕方なく胸で飼っています
この心どんどん大きくなって
ついには私まで支配しそう
誰かごみ箱を持っている人は
私に申し出てください
さもなくばこの心消す方法
私に教えて下さいな


43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました


 まず4の詩なんですが、胸に桜がつまっているという表現がおもしろいと思いました。この場合で言う水というのは、きっと不甲斐なさやもどかしさ故の不満のようなものだと思うのですが、水が垂れてしまうこころを絞ったらそれは小さくなってしまい「もはや小さな点」になってしまった。くしゃくしゃになってしまい萎んでしまったこころの代用に桜を使うことで胸が暖かくなり、そのまま家に帰った「僕」は本当に家に帰れたのかな、と疑問に思いました。

29の詩は4の詩と同様、心情に対する不安について書かれています。しかしこちらは漢字で「心」となっており、飼っているという言葉を使っているのには少し違和感がありました。作者の意図が見えないのです。しかし、この「飼っている」という表現がおもしろかったので選びました。

43の詩は諦めに靴を買い替えるという表現を重ねているところがおもしろいと思いました。詩の中で主人公は夢を探しているのに嘘ばかり転がっている街に落胆する。そもそも、夢に真実を求める無垢さにはっとさせられますが、ここで嘘ばかりの街に落胆するも、靴を買い替えるという行動でもってしてまた家に帰るというところで、その思いは夜に発症する一時的で衝動的なものだったのかな、と思いました。
それと明け方に開いている靴屋はないと思うので、きっと夢を追い求めて街に繰り出すというこの詩自体の舞台も、主人公の夢の中ですよね? 二重の夢を使うことで、夢がさらに儚いものであると言いたい、ということが上手く伝わってきます。

全体的に苦々しい心をキレイな言葉で表している詩が多いな、と思いました。その中に思わぬ擬人法が使われていたり、ハッとさせられる表現があり、これは稲葉さん独特のものだなぁと感じました。
家に帰る、という居場所を求めている主人公が、一種諦めのようなものをいつも持ち合わせているところに虚無を感じ、それでも状況や状態を変えて次の世界に踏み出す。そこが完全には諦めていない部分であり、希望が見えます。
ただ、語感があまりよくなかったり不完全燃焼なものが多々有ると思ったので、それらをもっと突き詰めて書いていけば、もっと良くなると思いました。
「無臭の詩」にしたのは、感情を書いているのに、その伝達が軽いからです。しかし無臭であるからいいものもあります。無臭であることを上手く使い、なおかつ微妙な心情をもっと書いていってほしいと思いました。

菊池佳奈子 批評1/空気の膜 2004年04月18日(日)00時51分53秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

好きな作品ばかりで大分迷いましたが、私は以下の三編を選びました。
2▼水の便り

「一日目」
悩んで迷って疲れた末に
ほんの少しだけ
夢をみました

(もしかしたら
逃げたかったのかも
しれません)

目覚めると 雨が降っていて
誰かの愛を 感じました
僕は 元気です

「二日目」
帰らない、と決めたあの日から
雨は暖かさを増すようでした
本当に帰れなくなりそうだ、と気づいたのは
水たまりに映った僕が
少し透き通ったように見えたからです
雨は勢いを増して降っています
いつか止む日はくるでしょうか
喉の渇きがおさまりません

「三日目」
息もできないほどの豪雨で
仕方なく岸辺に上がりました
今や川の中で生活している日々です
もう ずいぶん体も魚らしくなってきました
君は お変わりないですか
水辺で僕をみつけても
決して捕まえないでくださいね
君は魚が嫌いだから
そんな心配は無用かな
じゃあ、さよなら。

まず、「一日目」「二日目」「三日目」とわかれているところが新鮮でした。
時間軸を作ることで短い文章の中で効果的に全体の物語性を強くしている気がします。
稲葉さんの詩は物語性の強いものが多かった…というかほとんどでした…が、これは特に強い物語性を感じました。
あと、「僕は 元気です」というフレーズがすごく良いです。
淡々としていて、そこからどんな感情を読み取れば良いのかはっきりしていない。
このフレーズが「一日目」の最後にきていることで次に次にと読み進んでしまうのだと思います。
そして最後の着地の仕方がすごく面白い。
「二日目」で少しの動揺が見られるのに、「三日目」はまったく変化しているところでまた淡々としている。
しかも「じゃあ、さよなら。」と最後までドライ。
なのに「さよなら。」
少し突き放しているような、でもこの語りの中からあまり感情が読み取れなくて、
読者と筆者の間に心地良い壁を感じました。

18▼幸福の王子

貧しい人に与えてください
この身に巣くう真心を
やさしい人に与えてください
この胸に棲む哀しみを

どれだけ嘘を重ねれば
明日に飛んでゆけるだろう
どれだけ君に与えれば
愛をこの身に受けるだろう

これはグリム童話の『幸福の王子様』のネタですよね?
題名ですぐにピンときました。
童話の『幸福の王子様』を読むと、悲しいまでの犠牲心が美徳なんて通り過ぎていて、
それはもはや人間くささの欠片も無くて、王子には感情移入しにくかった記憶がありますが、
この詩は王子の言動と私をうまくリンクさせてくれました。
言葉の使い方もとてもうまくて
「真心」なのに「巣くう」という表現が的を得ている気がします。
「やさしい人」に「哀しみ」を。というのも、王子の人間離れした精神性の中にこの言葉がはいるだけでとたんに弱い人間になる。
後半部分もとても好きです。
嘘を重ねて自分をごまかしたところで、王子は結局「明日」にはいけなかった。
好きになったら与えてしまうけれど、なんでも与えたいと思ってしまうけれど、でもその裏に見返りを絶対求めている。
本当は与えるだけでなく、愛されたい。という気持ちが切なく伝わってきました。

50▼選択の世界

道が二手に別れてた
川が両脇流れてた
僕はどちらも選べずに
乾いた道を眺めてた
渦巻く 川は 空映し
うつむく 僕は ただ虚しい
選ぶことに飽きていた
夢見る年は過ぎていた
ロクンロールみたいな
川の音
僕は そのまま飛び込んだ
ジャズポップみたいな
結末だ

この詩は、少しひねくれてる気がして、そこが好きです。
前半部分というか…全体の流れとしてはひどく鬱々としているのに
いきなり川に飛び込んじゃって、おおっと思わせられます。
さらにそこに「ロクンロール」と「ジャズポップ」を持ってくることで雰囲気が全然変わっちゃう。
鬱々なことが滑稽なまでに思えてくる。
個人的にすごく好きです。
もったいないのは、前半の流れが遅くって「ロクンロール」から急に早くなるから、少し読みにくさを感じてしまうことでしょうか。
「渦巻く」からの二行を少し変えるだけで大分読みやすくなると思います。

全体的に、物語性を強く感じる詩が多かったです。
時間の進みだったり、気持ちや場面が展開することで、詩という短い文章のなかで流れができているのだと思います。
だけれど少々結末が弱い詩が多いように感じました。
そのためか少し、ものたりない。
淡々としている文章が多いことや、文体として丁寧語を使いすぎているんじゃないかとも思います。
結果、どう読み取っていいのか戸惑う詩がいくつかありました。
何を言いたいのか。あまり伝わってこなかった…というのか。
あいだにいくつかはっきりした詩をいれたら全体にコントラストが出て良いかもしれません。

稲葉さんの詩には独特の雰囲気があると思います。
優しくて淡々としていて…。
でもそのまわりに薄い膜があるみたいにつかめない。
触れている気はするのに、どうもつかめない。
そんな印象をうけました。

寺岡恵 課題2/思春期保健 2004年04月17日(土)14時20分56秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【Night game】

嫌い
大人は嫌い
好き
大人になりたい
どれくらい胸が膨らめば

嫌い
大人になったら
嫌い嫌い
ちいさな叫び声あげる

触れる舐める
嫌い嫌い
早く早く
大人になりたい



露木悠太 課題2/宇宙と空 2004年04月17日(土)01時06分31秒
▼課題と連絡:課題2/松本潮里作品とのコラボレーション への応答

【宇宙ノ音】

私の家は星々の欠片、
切り売りされた土じゃない。
私の髪が揺れるのは、
あの流星が過ぎたから。
私の場所から見えるのは、
半円の宇宙。
私の耳に届くのは、
幾億光年先からの残響音、
シグナル。

君のためにできること、
君は必要としていないのかもしれない。
君に言葉を渡すこと、
君は望んでいないのかもしれない。
例えば僕の命では、
たどり着けない場所にいるような、
あの遠い空にある、
昔のできごとみたいに。
…悲しくなる。

稲葉祐子 作品1/冷凍庫には入れないでください 2004年04月16日(金)22時48分58秒

以下にアップしてあります。(寮美千子)

http://ryomichico.net/wako/pttp4/inaba1.html

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管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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