「物語の作法」掲示板 (0028)


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東條慎生 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月30日(火)22時57分32秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

光の円盤
形状は円盤型。表面は太陽光をさまざま色に変換して反射する奇妙
な鏡でできている。見る方向を変えるごとに反射の仕方が変化する
性質を持つ。表面の色は基本的に銀だが、緑色のものや青色のもの、
向こう側が透けて見える半透明など。かなり巨大なものまである。
先史文明人の遺跡に残された大量のこの物体は至る所で発見された。
仮説1 食糧。本体の一部と同質のもので構成されている本物体は、
先史文明人の機械的身体を構成するいわば栄養源。
仮説2 美術的嗜好品。ものによってかなり多彩な模様が認められ
るため、体内に取り込み特定の光を当てて、反射光を楽しむ。
どちらにしろ、嗜好品の一種であるとする説が今は有力。

鉄の繋ぎ目
先史文明人の身体から大量に発見される物質の一つ。細かいものか
らある程度大きさを持つものまで種類が多く、細かな形の違いもか
なりある。腱や筋肉が骨と骨をつなぎ合わせているように、この物
体も機械的身体を構築し、維持するために不可欠のものであると推
測される。
なお、この物体、じつは自由に取り外しが効くものであり、先史文
明人の身体とはさまざまなパーツを適宜取り合わせて作られていた
のだという説が昨年提出された。現在の我々から見ればかなり実感
しにくい話だが、身体を構成するパーツは同じものが大量に発掘さ
れている現在の状況はその新説を裏書きしている。

緑の体
薄い板であることが多く原則的に緑色。ものによって黒や赤などの
色であることもあるが数は非常に少ない。先史文明人の身体を構成
している基本素材で、細かな線や銀色の結節点が多彩な模様を描き
出す。線と線、点と点の繋ぎ目には内臓の一種と思われる大小様々
な物体がつながれている。きわめて平面的な先史文明人の身体の特
徴は基本素材が平板であることから来ている。
先史文明人の機械的身体の特徴の一つは、平面を組み合わせて立体
的な身体を作りあげているところにある。外からみれば立体に見え
る彼らの身体は、細かく見ていけばすべて平面や方形に分解できる
のである。「身体パーツ説」の論拠もこれである。

長い血管
先史文明人の外形的な特徴のもっとも目立つ点は、至る所から出て
いる長いひも状のものである。これによってつながれた物体はそれ
相応の役割を果たし、外部に露出した臓器であるかに見える。議論
が分かれるのは臓器と臓器をつなぐ血管にも見えるこのひもがつな
ぐものである。つながれている外部の臓器らしきものは、個体によ
ってはひもを使わずとも内蔵されているものも多く、個体差が激し
い。個体差が激しいとはいっても、特定の傾向があり、それをして
先史文明人の性差であるとする者もいるが、「身体パーツ説」以来、
そのようなわれわれの生態をむやみに対象に当てはめようとする説
が説得力を持つことはないだろう。

不明物体
先史文明人の身体において中心的な役割を果たすと思われる部位。
という説が有力ではあるが、数多の仮説のうちある程度説得的、と
いうにすぎない。先史文明人の研究については結局のところ、遅々
として進んでいないというのが現状の妥当な把握だろう。そもそも、
われわれのような生命体がなぜ過去の地層から発見されないのか、
その点についての究明がまったくなされていないことこそ問題であ
る。それを待たずしてなぜこのような機械的身体が多く現在にまで
残ることになったのか、そして先史文明人の生態とは何であったの
か、そのような問いに答えることはできまい。そもそも、われわれ
が「先史文明人」と呼ぶものは、ほんとうに「文明」なのか?

五十嵐 舞 課題11/夢の標本箱(改定) 2003年09月30日(火)10時39分24秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

 小さき君に…捧げる詩
あの翼に人はどんな願いや想いを乗せるのだろうか
その小さき翼には幾つもの願いが込められているだろうか
今…この地上の何処かで 生まれる小さき君に
幾千の友と共に生まれ・・・消えていく君に
君は身勝手な僕らを恨まないのだろうか
きっと君は僕らの想いや願いを託された希望という翼で
微笑みながらこの蒼き空を天高く羽ばたいているのだろう
そして君は役目を終え、死と再生の炎の中で消えていった
小さき翼の君、君がいない現実が僕を孤独という奈落へと沈ませる
そして知る、君がもう僕の手の届かない場所へと旅立ったことを

 星夜の感傷
ひらひらと天上から雪の妖精たちが降り立った
舞い降りた地は摩天楼が咲き乱れ夢も現実も汚れている街Tokyo
ぎらぎらとした電飾に侵食された聖夜の日
街に取り残された孤島のような小さきEden がここにあった
もう朽ち果てそうな大きなモミの木がひっそりとそびえ立っていた
その姿に僕は息飲んだ・・・遠い記憶の彼方にあった庭のモミの木
かつて面影はもうない、
けれども僕にはあの幸せな頃の華やか姿が浮かび上がった
ふと気がつくと涙が一筋流れ、歪んだ視界の先に星が輝いている
ちょっとセンチメンタルになった夜だった

 大地の海で
巨樹の根と苔むした岩々が絡み合っている大地の海
それは樹と岩で創り出された神々の世界
その醸し出す雰囲気に飲み込まれ圧倒され茫然と立ちつくす自分
古代の人々はそうこの世界が持つ圧倒的な存在感に神を見出した
そんな事を漠然としながらもふと思った自分が急に愛しくなった
それから僕は目を閉じてひたすら全身でこの世界を感じていた
生命の営みや息遣い、そして神の気配を・・・ふと見上げると
もう漆黒の夜空には女神が零した涙の光達が瞬いていた
ここで眠るとしよう、疲れきった身体が夢の世界へいざなっていく
澄み切った水の如くしみ込んでいく朝の光が僕を起こしに来るまで

 天翔る鼓動
紅に染まる大地を駆け抜けた騎馬の民今この地を生きる
馬と共に生きた風の子供達 大地を走る彼らの鼓動
風と騎馬が奔り抜ける草原は交易の富と勇者を生む
蘇れ!!叙事詩が歌う大地へと 輝かし軌跡をまた歩んで
生き様は子から孫へと受け継がれ語られていく伝説となって

 硝子の夢
七色の光の音色を奏でる瑠璃の玉 
それは妖精たちの忘れ物
ガラスの小瓶に詰め込まれた光の涙たち
輝きは【地球】の息吹の証のようでいて
星々が燈す命の灯火のように、儚く美しい

日の光に翳して眺めた真夏の昼下がり
口にはちょっぴり甘酸っぱいレモン味 
簾越しの風が静かに眠りの世界へと僕を誘う 

奥野美和 課題11/夢の標本箱2003 (訂正) 2003年09月29日(月)08時49分00秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

いいおとのおとこのこ

あのひとのまえでじょうずにできないの
ただしい呼吸 はしの持ちかた


ちらちらちらり

電線でつなわたりする夢をみたのは
ほんとうで嘘じゃないのに


みれないかおみたい

つまらないからだまってるわけじゃない
これはなついた証拠なんです


レター

わたしには失うものがもうなにも
ないから君をうばってあげる


口角上昇

もっていく荷物がいがいと少なくて
おどろきつつも空に家出を

寮美千子 原稿の頼み方・頼まれ方/文字数編 2003年09月27日(土)12時33分14秒
室橋あや 課題11/夢の標本箱2003 訂正しました。 への応答

室橋さん。さっそくのリライト、ごくろうさま。

>すみません、300字でのせればいいと思ってました。

そうだったのか、とやっと気づきました。もう少し、親切にいってあげればよかったですね。

出版・広告業界では、全体の文字数で発注するときは「300字でお願いします」というように頼みます。レイアウト先行で、文字の並びまで気にする場合は「30字×10行で」となります。

同じ文章でも、どこで行をかえるかで、印象は全く違ってきます。わたしが新聞の連載をしていた時は、新聞の文字数にあわせて、言葉を削ったり足したりもしました。

というわけで、みなさんもその点考えて、推敲してください。この掲示板に提出された形でプリントします。よろしく。

室橋あや 課題11/夢の標本箱2003 訂正しました。 2003年09月27日(土)00時33分32秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

『2月18日の旅』
まず心配していたのは後ろから拳銃をつきつけられて「freez
e!」なんてことにならないかだ。着いた途端に空港が占拠され、
ジョン・トラボルタみたいな顎の割れた東洋系の男に人質にされて
94年型のレンジローバーに押し込まれる。そして興奮する犯人に
両手をあげて発音良く、「f**k you」。
パリに着いたころには予想外なことに大立ち回りができないほどに
疲れ果てていた。ややメガネのずれた日本人は誰にも相手にされる
ことはなく、構ってくれたのは「こんにちわ」といらぬ日本語で話
しかけてきたフライトアテンダントくらいだった。
もちろん空港だって占拠されてなんかいない。

『2月19日の昼』
年齢不詳のイギリスのウェイトレスの英語はこれっぽっちも聞き取
れなかった。
ナイフとフォーク。
友人三人と顔を合わせて慣れない食事に精を出す。何事にもリズ
ムが大切だ。パン、野菜、かうひい、談笑。パン、野菜、かうひい
、談笑。だんだん口数が減っていく。隣に目をやると黒いコートに
身を包んだ女の人が音も立てずに5本の巨大ソーセージを平らげて
いた。店のガラス戸には英字新聞が張り付いて、また風に飛ばされ
ていく。しばらく静かだった友人達と顔を見合わせて思う。
ここは日本じゃない。

『2月21日の下』
チューブだ。階段をずっと下った先にかまぼこ型の地下鉄が待って
いる。テルミニからチプロミュゼイヴァティカンまで狭い車内でポ
ケットに手を突っ込んだまま正面に座った女の子と無言でお互いを
探っている。黒髪と小さな耳には銀のピアスがある。彼女は目を泳
がせて、物珍しそうにアジアの四人組を眺めている。その視線が腰
に来る。私が手を暖めている場所だ。また視線が動く。隣の子の鞄
でとまる。それに気付いて鞄に手をやると再び彼女の視線が動く。
やせ細った足首をぶらりと投げ出して、唇から少し間の空いた歯が
覗いて奇妙な笑みを浮かべたまま表情は変わることはない。
瞬きすらしない。

『2月24日の夜』
コロッセオ、ドゥオモ、サグラダファミリア、ヴァチカン、エリゼ
モンマルトル、メトロ、トラム、ミカドポッキー、オペラ、アクア
ナチュラーレ、ピースレインボーフラッグ!
一週間もすればブロックの街も歩きやすい。
夕食を買いに外へ出ると、
車を停めてたむろしている若い男女がいる。
目は青くて鼻は高い。いつか映画で見た風景。
私達が彼らを見るように、彼らも私達に目を向ける。
高い男の声が叫んだ。
「ィイエロゥーーーーーー!!!」

『3月4日の国』
私の髪は黒い。
鼻は低くて目も黒い。
人間だが日本語を話す。
東京に住んでいて、一回引っ越した。
今は大学に通っている。
母と父と妹がいる。
別に自分で選んだわけじゃないが、
日本人だ。


すみません、300字でのせればいいと思ってました。

寮美千子 夢の標本箱/文字数とサイズの制限 2003年09月26日(金)03時03分43秒
室橋あや 課題11/夢の標本箱2003  への応答


こらあ! むろはしぃぃぃぃ! 文字数の制限を守れと、きょうの授業でもいっただろうが。「課題と連絡」にもちゃんと書いてあるだろうが! そのうえ、この掲示板でも警告しただろうがあ! いったいなんど言わせるんだあ! 課題をやるときは、なにをするべきなのか、きちんと把握すべし。

本文は、必ず30字×10行の範囲で書くこと。
それぞれに、10字以内のタイトル(本文とは別)

なんど言わせるんだあ! ぺんぺんぺん。


プロフェッショナルな物書きに要求されるもののひとつは、求められた文字数で書くことです。長すぎても短すぎてもいけない。求められた文字数できちんと書くことも、大切な訓練です。

しかし、それは頼まれ仕事の場合であって、自己表現として頼まれもしない作品を勝手に書くのであれば、形式も長さも問われません。その自由を失ってはいけない。

けれど、これは共同の展覧会。共通の枠の中で展示することが目的。文字数は、守ってください。

ただし、ひとつのオブジェにつき、100枚の物語を書いてくるというぐらいの気合いがあるなら、話はまったく別です。

菊池佳奈子さんの人形のオブジェは規格外でした。けれど、すばらしい気合いが入っていたし、事前にちゃんと打診してきてくれました。こういう規格外は大歓迎です。


標本箱に入らない、とか、文字数オーバーだとか、つまらない規格外でわたしに悲鳴をあげさせないように。どうせなら、佳奈子さんくらいのすばらしい作品をみんなが出してきて、うれしい悲鳴をあげさせてください。

越智美帆子 作品2A/サイケデリック 2003年09月26日(金)00時21分20秒

 色褪せたフランス映画の中で、どぎつい色のキャンディを舐めている。ピンクもピンク。どう考えたって、自然界には存在しない色だ。それを舐めながらアリスは言う。
「ねぇ、ルイス、あたし次はあのアイスクリームが食べたい」
俺は20メートルほど先にある、紙吹雪を散らしながらカラフルな風船を配っているアイスクリーム売りのピエロに目をやった。ピエロはワゴンの中から、これもまたどぎつい色を放つアイスクリームを、群がる子供たちに配っていた。ワゴンについた赤と黄色のICECREAMの文字をしたライトが、黄ばんだ世界で鈍く光っている。よく見たら、Rの文字のライトが壊れているのか、ついていない。おいおい、ここはフランス映画の中だろうが、と思いながらも、俺はそんな小さなことは気にしないようにした。
「ねぇったら」
アリスがほうけている俺を急かす。なんであんな毒々しい食べ物を食べたがるのか。今どきの子供は、なんて思ったが、思い直して、アリスの手を引いてアイス売りのピエロに向かった。
 一歩歩くごとに俺は記憶の欠片を落としてしまう。慌てて拾うと、あっと言う間に子供たちが群がってきて、それらを持っていってしまった。俺はとりあえず怒鳴ってみるが、子供はイタズラな顔で高らかに笑いながらどこかへと行ってしまう。おい、どこに行くんだよ、と言うとそのうちの一人が俺に小声で耳打ちした。
「昨日」
はぁ?と聞き返すと、子供はその笑みをさらに浮かべ、小走りで走ってゆく仲間の元へと行ってしまった。昨日?俺は悩んだ。なぜなら、昨日の記憶は三番目の子供に持って行かれてしまったからだ。悩んだ末に出た結論は、昨日に行けばいいということだった。けれど、いったいどうやって昨日に行けばいいのだろうか。
 アリスが俺の手をひっぱる。早くしろ、と目で言っている。俺はハイハイと呟き、ピエロのワゴンの前にできている列に並んだ。ピエロはわざとぎこちないような動きをしているが、アイスクリームをつくっている手元はかなり機敏だ。大きくて真っ赤な口に、右目の下には真っ青な涙。それに左目を囲む四つ角の星は真緑だ。黄ばんだ世界でそれらはくすんでいるものの、アイスクリームと同じようなどぎつい原色だった。子供にアイスクリームと風船を渡す度に、ピエロはその大きな口をぱくぱくして何か言っているようだ。俺は必死にそれを聞こうとしたが、なんせここは一番前からちょうど100人目。ずらっと並んだ子供たちが、喚く騒ぐして今か今かとアイスクリームの順番を待っているから、耳を澄ましたってピエロの声は聞こえるわけがない。
 子供ばかりが長蛇の列をつくると、俺だけが飛び出ているのがわかる。前も後ろも小さい子供ばかり。俺はアリスに聞いた。
「ここは子供ばかりなのか?」
するとアリスは、驚いたと言う顔をして俺に言った。
「今まで気付かなかったの?ここはルイスだけが大人なのよ」
俺は変に納得した。そうか、ここは俺だけが大人なのか。だからといって、俺が王様ってわけじゃない。むしろ、子供が主導権を持っている世界だ。が、しかし俺は思い出した。ピエロがいるじゃないか。ピエロは明らかに大人だ。見たところ、身長は俺と同じくらいだ。
「でもピエロがいるじゃないか」
俺はアリスに問う。
「ああ、アレは一昨日から来てるのよ。今日は、基本的にルイスしか大人がいないの」
とアリス。俺は悩んだ。昨日とか一昨日とか。つまりは今日であるこの世界には、俺以外は子供しかいないということか。納得したような、していないような気持ちで俺は持っていかれた記憶の行き先を思った。いったい昨日はどこにあるのだろう。いくら考えても、もう持っていかれてしまった記憶はどうしようもないのだが。一昨日の記憶も通りすがりの兎に食われてしまった。俺は困り果てた。
「ほらあと少しよ」
 横でアリスが嬉しそうに声を上げた。俺は曖昧に頷いた。アイスクリームはチョコミントにしようと思い、鼻の中にミントの香りが広がった。
 が、本当にあと少しと言うところでアイスクリームは完売してしまった。ピエロが空になった、アイスクリームが入っていたボックスを掲げると、子供たちは文句をたれながらどこかに散っていった。俺はアリスに残念だったな、と言った。しかしアリスはもう次のことを考えていた。ルイス、ほら向こうでショーがやってる、とまた俺の腕をひっぱった。
 後頭部に新しい記憶が張り付いては、無理やり兎に食べられてしまう。必死に食べられないように押さえていても、レンガの雑居ビルから顔を出した子供たちが窓から鳩を飛ばすので、そいつらに食べられてしまう。俺は半ば諦めてブルーのチューイングガムを口に放り込んだ。すると、口の中に小さい夜が広がった。そうかこれは夜が入っていたんだな、と呑気にガムをくちゃくちゃと噛んでいたら、そのうちに小さな星が産まれた。星は基本的には小さくて白いものがほとんどだが、稀に当たりとして赤い大きいものが含まれている。残念ながら俺のガムには含まれていなかったが、ぷうっと膨らますと、その中で星たちがキラキラと輝いた。アリスは喜び、あたしにもちょうだい、とせがむ。俺はちょっと待てよと言い、右側のポケットを探った。ブルーのガムは右側に入っていたのだから、もしかしたらまだあるかもしれないと思った。けれど右側のポケットには、マッチと俺の悪い癖と昨日の欠片しか入っていない。昨日の欠片は取り出した瞬間に、空から飛んできた鳩に食われてしまった。俺はちっと舌打ちすると、今度は左側のポケットを調べだした。左側のポケットに手を突っ込んだ瞬間に、俺は、痛っ!と小さく叫んだ。指先に何か鋭利なものでも突き立てられたような痛みが走ったのだ。一体何が入っていたんだ、とゆっくりポケットから取り出すと、それはさきぼどの産まれたての星だった。星はばつが悪そうな顔をすると、そそくさと空に上っていった。俺はその星を見送り、空を見上げると、さきほどまでオレンジだった空がもう紺色になっていた。星たちはさっさと自分の出番の準備を始めている。その光景をまじまじと眺めていたら、アリスがガムはぁ、とだだをこね始めた。俺は思い出したように、今度は胸ポケットを探し始めた。今度こそはと思ったら、案の定銀紙に包まれたガムが姿を現した。俺はほっとしてそれをアリスに渡すと、アリスは嬉しそうにガムを口に放り込んだ。
 俺とアリスは、ショーがやっているという場所に向かって歩いていった。ラッパの音や太鼓の音が徐々に近くなり、空の色は紺色から黄色に、グラデーションを描き変わってゆく。風と時間は酒を飲んだように赤らみ、すべてが緩やかに流れてゆく。俺とアリスの手にはいつのまにか酒瓶が握られていて、足は軽やかに、浮かれて歩く。ショーに向かう子供たちも、みんながみんな浮かれている。ほら始まるよ、ほら始まるよ。途中、宣伝している玉乗りピエロや曲芸女や巨人が宣伝用のチラシをばらまいている。こいつらも一昨日から来たんだろうか、と思いながら、俺は飛んできたチラシを手に取った。チラシには手錠を架せられて、情けない顔で笑っている俺のイラストが描かれていた。俺は立ち止まった。立ち止まった俺に、流れ行く時間がいくつかひっかかり、きっ、と俺を睨んでまた元の流れに戻っていった。子供たちは絶えまなく繰り返し流れてゆく。笑い声も再生テープを繰り返したように、一定のリズムを刻んでいる。俺はもう笑っていなかった。ここは一体どこだろう。アリスが叫んだ。立ち止まってはダメ!俺はアリスを見た。たしかにそこにアリスはいた。いたのだが、それはさきほどまでの無垢な笑顔の子供ではなく、過去に見たことのある女の顔をした人間だった。
「お前は……」
アリスはにっと笑った。その口は赤く、空から降り注ぐ黄色い光で艶やかに光っている。ふとサブリミナルのように、この女の笑い顔が頭を高速で過る。アリスは言った。
「起きなさい」
耳の奥で音楽が聞こえる。絶えまなく続く、幾度と繰り返される音楽。それは、耳の奥でサイケデリックな色の液体となって、目の奥でちゃぷんちゃぷんと揺れている。その液体の中を泳いでいる俺。泳ぎ、潜り、沈む。液体の底のほうで、音楽が還元され、また大音量で響いていた。俺は目を瞑った。
 
 目を開けると、そこは薄い青をした昼間だった。クーラーが効いていて、俺の手にはずっしりとした手錠がかけられている。部屋には、ザ・カーディガンズのカーニバルが耳をつんざくほどの大音量で流れている。キッチンから、口の大きな女がやってきた。やっと起きたのね、と女。俺は咳き込み、そして全てを思い出す。今日は監禁されてから3日目。女はルイスキャロルのアリス・イン・ザ・ワンダーランドの朗読を再開した。俺はまだサイケデリックな世界に取り残されている。



越智美帆子 課題11/夢の標本箱2003(改正版) 2003年09月26日(金)00時00分05秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答


『ストレス』
ある朝起きたらカゴに施錠されていた。
それもご丁寧に鎖でぐるぐるに巻かれて。
本来は透明だったそれは、カゴの中で黒く鈍く光っている。
困った。
鍵を探さないと。

『ピンク豚のぬいぐるみ』
というわけで、早速ベッドの下を探ってみた。
するとそこにはピンク豚のぬいぐるみが。
首には鍵。
それをそっと抱き締める。
って癒されている場合ではない。
Rの刻印がされたその鍵を鍵穴に差してみたが、
鍵はくるくると手ごたえなく回るばかり。
これではないみたいだ。

『ハートの赤い木の実』
次に庭に出た私は、幾つもの房を付けた大きな木を見上げた。
真っ赤な、ハート型の木の実が大量に揺れている。
そこに混ざってFの刻印がされた鍵はあった。
木に上りそれをむしり取る。
ようやくの思いでそれを鍵穴に差すと、
これもまた残念、
差したままの状態でびくともしなかった。

『ウイスキーと煙草』
もうどうにでもなれ、という思いで
寝酒用のウイスキーを棚から取り出した。
ついでにそこにはドイツ煙草のカルメが。
さらについでに鍵も。刻印はNだ。
今度こそ、と鍵を差す。
が、しかし
鍵はがぶりと指に噛み付き、そのままどこかへ逃げていった。

『実用性のないピアス』
かわいいのだけれど
耳たぶがひっぱられて痛いピアス。
そこにも鍵がついていた。
今度はLの刻印。
ピアスじゃなければ、と思い
そっと願いをこめて鍵穴に差す。
見事的中。
難なく錠は解かれ
それはまた元の透明な姿に戻りましたとさ。
というのは、愛に飢えた私が見た最近の夢。


室橋あや 課題11/夢の標本箱2003  2003年09月25日(木)23時19分07秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答


1、『2月18日の旅』
まず心配していたのは後ろから拳銃をつきつけられて「freeze!」なんてことにならないかだ。着いた途端に空港が占拠され、ジョン・トラボルタみたいな顎の割れた東洋系の男に人質にされて94年型のレンジローバーに押し込まれる。そして興奮する犯人に両手をあげて発音良く、「f**k you」。
パリに着いたころには予想外なことに大立ち回りができないほどに疲れ果てていた。
ややメガネのずれた日本人は誰にも相手にされることはなく、構ってくれたのは「こんにちわ」といらぬ日本語で話しかけてきたフライトアテンダントくらいだった。
もちろん空港だって占拠されてなんかいない。


2、『2月19日の昼』
年齢不詳のイギリスのウェイトレスの英語はこれっぽっちも聞き取れなかった。
ナイフとフォーク。
友人三人と顔を合わせて慣れない食事に精を出す。何事にもリズムが大切だ。パン、野菜、かうひい、談笑。パン、野菜、かうひい、談笑。 だんだん口数が減っていく。隣に目をやると黒いコートに身を包んだ女の人が音も立てずに5本の巨大ソーセージを平らげていた。店のガラス戸には英字新聞が張り付いて、また風に飛ばされていく。しばらく静かだった友人達と顔を見合わせて思う。
ここは日本じゃない。


3、『2月21日の下』
チューブだ。階段をずっと下った先にかまぼこ型の地下鉄が待っている。テルミニからチプロミュゼイヴァティカンまで狭い車内でポケットに手を突っ込んだまま、正面に座った女の子と無言でお互いを探っている。黒髪と小さな耳には銀のピアスがある。彼女は目を泳がせて、物珍しそうにアジアの四人組を眺めている。その視線が腰に来る。私が手を暖めている場所だ。また視線が動く。隣の子の鞄でとまる。それに気付いて鞄に手をやると再び彼女の視線が動く。やせ細った足首をぶらりと投げ出して、唇から少し間の空いた歯が覗いて奇妙な笑みを浮かべたまま表情は変わることはない。
瞬きすらしない。


4、『2月24日の夜』
コロッセオ、ドゥオモ、サグラダファミリア、ヴァチカン、エリゼモンマルトル、メトロ、トラム、ミカドポッキー、オペラ、アクアナチュラーレ、ピースレインボーフラッグ!
一週間もすればブロックの街も歩きやすい。
夕食を買いに外へ出ると、車を停めてたむろしている若い男女がいる。目は青くて鼻は高い。いつか映画で見た風景。
私達が彼らを見るように、彼らも私達に目を向ける。
高い男の声が叫んだ。
「ィイエロゥーーーーーー!!!」


5、『3月4日の国』
私の髪は黒い。
鼻は低くて目も黒い。
人間だが日本語を話す。
東京に住んでいて、一回引っ越した。
今は大学に通っている。
母と父と妹がいる。
別に自分で選んだわけじゃないが、
日本人だ。


古内旭 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月25日(木)10時49分10秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

「鍵」
もうひとつの世界との接点を開く、失われた鍵。

「ボルト」
たった一本のボルトが、かつて巨大国家を支えていた。

「計算用紙」
この世の真理。あちら側では日々計算が行われ、こちら側では生活が営まれる。

「消しゴム」
過去を消せ、未来を変えろ。



杉井武作 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月25日(木)09時28分56秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

『ナ』
みんな、悼んでる

『カ』
山田も

『ナ』
佐藤も

『イ』
田中も

『デ』

もうそこに、いないのに



外島理香 作品18A/「ミナミ」 2003年09月25日(木)06時44分21秒

 「私、良く解からないのよ」
 酒に酔ったミナミは吐くように、そしてまたその言葉の重みを感じさせないような、冗談のような明るい口調でそう言った。僕が真剣に、ミナミの言葉の真偽を追求しなければ、ミナミは笑ってその言葉を、僕の吐き出した煙草の煙のように、この騒がしい飲み屋の空気の中に、掻き消したかもしれない。しかし、その言葉を吐いた時のミナミの顔は、その明るい口調とは裏腹に、決して笑ってはいなかった。むしろ、こわばっていた。僕はミナミの「私、良く解からないのよ」という言葉に関連することを、酒で浸った頭で、考えることにした。

 ミナミという女は、僕の家でたぶん1000時間ほど前から暮らしている。渋谷で拾った女だ。僕はミナミを拾った日、なんとなく都会がみたくなって新宿へ行って、なんとなく歩きたい気分になって、渋谷まで歩いていた。
僕は時間の感覚をあまり持っている方ではない。その日も、自分が家を出た時間はおそらく23時は過ぎていたらしく、渋谷にたどり着いたころは、もうとっくに終電がなくなっていた。夏ならともかく、2月のくそ寒い日のこんな時間に何の用のなく渋谷にいるやつは、僕の他いないようだった。数える位しか人はいなかった。その人達はどこか向かう所があるようで、みんな僕の入った路地から、どこかへと消えて行った。一人の人も見えない。昼間の雑踏が嘘のようだった。この世界から、人が消えてしまったような妙な快感を感じた。神様か巨人かが、人をみんなほうきで掃いて、ごみ箱に捨てるという光景が、ふと僕の頭に浮かんだ。いや、神様か空を越えられるような巨人が天国から人を掃いて、地球というごみ箱に、捨てたのかもしれないと考えた。それなら納得がいく。

 そんなことを考えながら、適当に路地を曲がると、階段があった。街頭が暗いので躓かないように下を向いて階段を下っていると、薄暗い中に、真っ白なものに輝くものが目に飛び込んできて、はっとして顔を上げた。そこには真っ白なワンピースを着た女が、顔を伏せ、手を顔の前で交差し、膝を抱え、ごみ置き場の中隅にしゃがんでいた。その女というのが、ミナミだった。ごみ置き場は、僕の腰位まであるコンクリートの壁で四角形に区切られていて、おそらく壁は白色か、クリーム色の塗料が塗ってあったようだが、渋谷の公害や落書きや年月で汚れていて、また近くの街頭の光が弱いが淡いオレンジ色で、それに照らされ茶色に見えた。しかし、ミナミのワンピースは真っ白で、暗くてもはっきりと見えた。その強烈な白黒のコントラストは今でも僕の頭の中に、ずっと張り付いたままだ。

 僕は、そのごみ捨て場にしゃがみこんでいる女を、まるで捨てられた子猫のようだ、と思った。茶色のダンボールに捨てられた、白い子猫のようだ、と。僕は捨てられている子猫を、見つけたことはない。だから、自分が捨てられている子猫を見つけた時に、どんな気持ちになるのかなんて知らなかった。ただその時、僕は寒そうだなと、思った。ミナミは、靴も履いておらず、サテン素材の夏に着るような、キャミソールのような真っ白なワンピースしか着ていなかったからだ。

 手を組んで、その奥で顔を下に伏せ、髪の毛が黒髪のボブくらいの長さで、顔にかかり、全くどんな顔なのか予想がつかなかった。何歳なのか、なぜここにいるのか、なんてことは全く理解できなかった。もしかしたら、ただのごみ袋が女に見えているだけかもしれないし、この女は幽霊なのかもしれない、なんて思ったが、僕はどちらでも構わないと感じた。

 僕がその場から立ち去ろうとした時、ミナミは顔を上げた。ミナミの顔は、まるでボリビア人のような顔立ちだった。眉毛が黒く濃い、目が大きく、鼻と口が小さい。ホステスのようでもあったが、どことなく幼さが残っているようでもあった。

 ミナミの目は捨てられた子猫のように、何か情に訴えかけるような部類のものではなかった。何でも写し出し、見ていくというようなとても強い意思を感じる部類の目だった。そんな目で、僕をじっと無言で見つめていた。僕はそのミナミの目に、自分は必要のなさを感じ、僕も無言で、歩き出した。ミナミは、歩きだした僕をじっと見続けていた。その視線を感じていたが、僕は振り返らなかった。来た道を戻ろうとして、階段を上がることにした。5段上がったところで、「置いて行かないで!」という叫ぶ声がした。振り返ると、ミナミが小走りで僕に向かってくる。サテンのワンピースがサラサラと揺れ、淡いオレンジ色の街頭の光を反射していた。階段を上がってくるミナミを見ている僕は、ビデオをスローモーションで見ているような感じだった。全く現実感がなく、夢の中にいるような心境だった。僕に触れそうな距離までミナミは来て、もう一度僕の目を見て「置いて行かないで」と言った。しかし、その言葉は、さっきの口調とは、全く違ったものだった。優しく心に訴えかけるような、そう、恋人同士が交わすような口調だった。僕は、捨て猫に懐かれてしまったような感覚だった。仕方ないから、連れて行くか、と僕は心の中で決心して、無言でまた歩き出した。

 行く当てなんかもちろんない。僕はホテルに向かって歩いて行くことにした。ミナミは歩き出した僕に、無言で付いて来た。僕はホテルがありそうな路地を歩いた。時々、人にすれ違ったり、車が通ったりして、僕は夢の中から抜け出しそうになったが、ミナミの裸足の足音は、途絶えることがなかった。

 7本目の路地を曲がったところで、随分前から立っていると思われる薄汚れた、外の電気も消えかけているようなホテルを見つけ、そこに僕は入った。ラブホテルだった。自動ドアが、ががが・・・という鈍い音を出しながら開いた。そこは、ひどく狭いフロントだった。マッジクミラーがやたら大きくあって、マジックミラーの下の方に鍵を受け取る四角形の穴が開いていて、部屋の値段が書いてあるボードだけが、壁の隅に掛かってあった。僕は片目で軽く部屋の値段を確かめてから、「203」と自分の住んでいる部屋番号を言った。「はい」という低く小さな年配の男の声がした。四角く開いた穴から無言で、鍵だけが出てきた。その鍵を持った時、後ろで、ががが・・・という鈍い音がした。

 僕は、エレベーターを待った。エレベーターの横にある銀色の灰皿にミナミの姿が写っていた。エレベーターのドアが開き、僕とミナミは乗り込んだ。僕達は、ランプが2階を指すのをただ無言で待った。2階につき、僕は203の部屋に入った。ミナミも、入って来た。僕はベットに倒れこんで、眠ろうと思って目を閉じた。ミナミの足音が聞こえない。ミナミは玄関のところで立ち竦んでいるようだった。僕は、起き上がってミナミを見た。起き上がったついでに、エアコンの温度を上げた。ミナミは立ったままで、相変わらず強い目で僕を見ていた。「寒くないの?シャワー浴びたら?それとも、寝る?」ミナミは僕の言葉に答える素振りはなかった。ただ、強い目で見ている。僕は、再びベットで寝ることにした。ミナミは日本語が分からないのかもしれない、と思ったが、ミナミが発した「置いて行かないで」という言葉を思い出し、発音に引っかかりがなかったことに思い直し、僕はベットに倒れこんだ。僕はミナミと、どうにかなろうなんていう気持ちが不思議なほど起こらなかった。

 気が付いたときはもう、朝のようだった。ミナミは、僕の横で寝ていた。あの強い目を閉じて眠っていた。なんだか、ミナミがものになってしまったように思えた。存在が人形のように感じた。目がないミナミは、生きている感じがしなかった。
僕が起き上がると、ミナミも目を覚ました。また僕を強い目で、見つめた。「君、名前は?」と僕が聞くと、「ミナミ」と小さく答えた。

 僕は、シャワーを浴びた後、お腹が空いたので駅でパンとコーヒーでも買って帰ろうと思った。僕はベットから出て、シャワールームに向かった。シャワーを浴びている最中、ミナミのことを考えた。ミナミには帰るために、最低限コートと靴が必要だと思った。僕は小説で稼いだ金があるし、それを早く使ってしまいたかった。自分の酒代に使うより、ましな使い方だと、思った。ミナミがどこに帰るのか、僕の家に帰るのか、僕には予測がつかなかったが、僕はどちらでも構わなかった。もしかしたらシャワールームを出た時に、いなくなっているかもしれない。

 シャワールームを出ると、ベットの上にミナミの姿はあった。ベットに座って、シャワールームから出た僕を、相変わらずの強い目で見ていた。僕は、ミナミに必要なものを買いに、外へ出ることにした。僕はミナミに「ちょっと出かける」と言った。ミナミは、こくんと、頷いた。

 エレベェーターで下へ降り、鈍い音のする自動ドアが開いた。ホテルの外は真っ青な空だった。晴れていて、気持ちの良い暖かかさだった。太陽が真上にあったので、今は昼なんだなと僕は知った。ホテルのある路地から出ると、渋谷の街は人でごった返していた。僕は現実と、夢とを、往復している旅人のような気分になった。近くにあるホテルでは、昨日まで知らなかったミナミがベットに座っている。

 僕は、一番近くにあった服屋に入った。その服屋は雑居ビルの1階と2階を持っているようだ。入りやすい感じのカジュアルな女性向けの服屋だった。「いらっしゃいませ」店員が、ニコニコしながら僕に声を掛けてくる。「お誕生日のプレゼントですか?」僕は「はい」と適当に答えた。「そうですか。どんなものをお探しですか?」店員はなぜかやたら幸せそうにしてくる。コートと靴だ、と言うと、2階のコートと靴の売り場に案内してくれた。コートがたくさん並んでいる中に、真っ白なロングコートがあった。僕はそれを手に取った。靴は、エナメルの黒いブーツを買うことにした。サイズは店員と相談してMを選んだ。店員は、丁寧に包装してくれた。その時、なぜか僕は生まれて初めて、買い物をしたんだと思えた。

 その袋を持って、再びホテルに戻った。部屋には、ミナミの姿はなかった。靴もないので帰っていったのか分からなかったが、シャワールームから、微かに水の音がした。
ミナミは髪をタオルで拭きながら、シャワールームから出てきた。下にはサテンのワンピースを身に付けていた。なんとも、美しかった。サテンの薄い素材の揺れやミナミの髪の毛を乾かす、白くきれいな細い手に、むかし、高校生の頃、美術館で見た美しい絵を思いだした。題名は忘れたが、確かモネが描いた絵だった。僕はそんなミナミの美しさに軽い性欲感じ、それと共に、自分のものにしたいという強い独占力を感じた。しかし、高校生の頃見た、モネのあの絵に対して感じたように、僕にはその美しいものをどうすることも出来ないという感情の方が強かった。僕は立たなかった。シャワールームから出てきたミナミは、もう僕を強い目で見つめることはしなくなっていた。

 僕は「これを着て、家に帰ろう」と言って、包装紙に包まった服を出すとミナミは、僕のことをただ見て頷いた。そしてゆっくり、包装紙をといていった。その手つきの美しさに、僕は見惚れてしまった。そして包装紙の中から出てきたコートとブーツを、ミナミは手に取り「ありがとう」と下を向きながら、軽く微笑んで言った。ミナミが初めて僕に見せた笑顔だった。

外島理香 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月25日(木)06時05分56秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

「砦への鍵穴」

お好きなところに
「あなたの鍵」をさして下さい
7つの鍵穴は
7色の世界に
あなたを誘います
さあ、どうぞご自由に!
開くドアを選ぶのは
あなた自身ですよ


「水面に映る僕の姿」

遠くから聞こえる
川のせせらぎと
はしゃぐ声
遊ぶ子どもの中に僕の姿はない
真夏なのに真っ黒な服を着ている
覗き込んだ水面には僕の顔が映る
僕は僕にお辞儀をしているのか?
緑色に輝く道を
どれほど先へ進んでも
遊ぶ子どもの中に僕の姿はない


「powder stone」

恋をしてひとつになりたいと願うのは
人間に限ったことじゃない
地球で流星雨が美しかった日
宇宙の彼方まで雪が降り注いでいた
それは最初で最後の恋をした惑星同士の悲しい欠片


「蓄音機」

夜明けの透明な色と
蜃気楼に映るもの
耳を澄ませば
聞こえてきます


「1961号室」

あなたに会うために私が選んだ姿
風に乗ってあなたのもとへ
久しぶりの再会で話がたえない幸福の時

高橋阿里紗 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月25日(木)03時13分43秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

『化石の歌』

○セミの欠片
夏休み、おばあちゃんちの裏の川まで、僕は旅にでる。
勇者の武器は、虫かごと虫とりあみ。
かごの中には、琥珀色に輝くセミの抜け殻。
たった今、一瞬の生を、絞るように歌っているモノの、抜け殻。

○大木の欠片
おばあちゃんが言ってた。
裏の川は、この前の雨で土砂崩れがあって、化石が取れるんだよって。
ジャブジャブ川に入って、化石を探す。
前に図鑑で見た、三葉虫なんて、あったら素敵だ。
気付いたら一時間。
僕の手にしたものといったら、綺麗な流木のカケラ。
それと、年輪がきっかり刻まれた木の化石。
彼等は、昔、一つの大きな大木だったんだ。
母なる大木からはぐれてしまい、一方は流木、もう一方は化石になった。
なんという運命の皮肉。
彼等は全く別のモノになってしまった!

○水晶玉の欠片
とっても綺麗な石を見つけたんだ。
これは、きっと昔水晶だったに違いない。
ただの水晶なんかじゃない。
神秘的な太古の占い師。
彼の相棒の水晶玉。
その、カケラ。
占い師は、あまりにも占いが百発百中だったから、神とも悪魔とも言われ、人々から恐れられていたんだ。
そして、ある日、占い師は悪魔として処刑されてしまう。
死体は川に。
祈りは空に。
彼の腕には、相棒の水晶玉。
僕の手の中には、そのカケラ。

○指輪の欠片
指輪を落としませんでしたか?
十字の模様のついた、壊れた指輪を拾ったんです。
これを落としたのは、真っ白くて、髪の綺麗な天使。
指輪を落としたことにも気付かずに、大きな羽を広げ、はばたいて云ってしまった。

○宇宙の欠片
夜、遊びつかれた僕は夢の中。
昼間、川で拾った化石たちが歌を囁きはじめる。
自分の歴史を、過ぎた時のカケラを。
その歌は、僕の夢を電光石火で駆け抜けて、いつしか宇宙に辿り着く。
そして、僕の惑星を中心に、ゆっくりと廻りはじめる。
僕もいつかそこに還る日がくる。
それまで、化石の歌は響くよ。
僕の、深い深い、真夏の夜の夢の中。




島本 和規 貸し夢屋「ゴールドラッシュ」 2003年09月25日(木)02時53分35秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答


貸し夢屋 「ゴールドラッシュ」
夢の標本箱2003臨時支店


子象のボン太

サイズは少々小さめですが
持ち運びには便利なので
お出かけのさいに最適です。
お子さまとの行楽にいかがでしょうか?
付属品に観賞用のレンズが付属いたしますので
それを通して観賞いただければ
より一層迫力あるボン太を楽しんでいただけるかと思います。


月のチケット

こちらの商品は4時間のあいだ
月の移動を利用者の思うがままに
動かせるチケットとなります。
三日月、満月あなたの思うがまま。

なお、もしも他の星にぶつかるなどの
トラブルが起こった場合は
お客さまの責任となりますので
操作にはくれぐれもご注意ください。


貸し出し中

申し訳ございません。こちらの商品はすでに
貸し出し中となっております。
次回のご利用を心からお待ちしております。


夢のきんちゃくぶくろ

このきんちゃく握るとあなたの
欲しいと思う物が袋の中に現れます。
参考までに経営者である私が握ってみました。
ちなみにあくまで夢でありますので
袋から取り出すことはできません。あしからず




奥野美和 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月25日(木)01時56分59秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

■わらいごえ   ないてるの?

あのひとのまえでじょうずにできないの
たとえば呼吸 もしくは会話

■じゅんばんまち

わたしには失うものがもうなにもないからきみを奪ってあげる

■黙ってて。―いいの?

電線でつなわたりする夢をみた あんがいうまくするする行けた

■左手でかいた手紙
つまらないから黙ってるわけじゃないこれはなついた証拠なんです

■あなたが 枕元においためがねをかけた 景色
ぼやけた ナミダ?

(あなたはすやすやと眠る)

もっていく荷物いがいと少なくておどろきつつも空に家出を

越智美帆子 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月24日(水)21時03分18秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

 『ストレス』
 
 ある朝起きたら、カゴが鎖でがっちりと封印されていた。しかも、ご丁寧に南京錠までつけられて。困った。鍵を探さないと。
 鍵は、ベッドの下にあったぬいぐるみの首と、庭にある木の実に混ざって、と、テーブルの上にある煙草と酒に絡んで、と、ピアスについて、あった。それぞれの鍵にはH、F、N、Lというアルファベットが刻印されていて、私は何のことだろうと思ったが、不思議に思うのはめんどくさかったので、順に鍵穴に差していった。Hの鍵は一応はまったものの、そのままびくともしなかった。Fの鍵は鍵穴に吸い付いたものの、手ごたえなく、くるくると回るば
かりだ。Nの鍵は、差した瞬間に大きな声を出して指に噛み付いた。となると、Lの鍵が正解か。私は待ちかねた思いでLの鍵を南京錠の鍵穴に差した。鍵は難無く錠を解いた。ようやく解放されたそれは、カゴを開けた瞬間、きらきらと元の澄んだ透明に戻った。
 という夢を見た。最近疲れていたせいなのか。

注釈
H=heal
F=friendship
L=love
N=nonessential



圓山絵美奈 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月24日(水)19時46分23秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

「遺体」
なんて身勝手なやつ。確かな存在が欲しいとかつぶやいて
僕を作り出しておいて。僕はいつも傍にいた。
そして君に歌を歌った。何度も何度も甘い言葉をあげた。
なのに人間じゃないなら意味がないだって。
ヒステリックに君は僕を壊す。
よく見ておけばいい。君がした残酷さを。

「バンノウ目薬」
私はあの子の目をつぶしました。
あの子が私にそれを望んだのです。
最初は汚いものを見えなくしてあげました。
次は手に入らないあの人を見えなくしてあげました。
最後にこの世にあるすべてのものを見えなくしてあげました。
そしたら今度は嫌な事を耳にしないように
「あれ」を使うそうです。
あの子は人形にでもなりたいんでしょうか?

「機嫌の悪いルージュ」
嫌になるわ。男に媚びる女って。
どんなに私は違うって言ったって、
じゃあ誰のためよ?その厚化粧。
ムカツクから私を使う時はその唇
大きく腫らして紫色にしてやるわ。
どれもがいい子に真っ赤な
唇にしてくれると思うなよ。

「断ち切りバサミ」
「何も持ってないの」そういう事いうやつに
かぎって足元に小さな花咲かせてる。
同情が欲しいなら「これ」を貸してあげるから
それを摘み取ってからにしてよ。
ねえ、あんたは気がついてないの?それとも見えないふりをしているの?
大きな口たたくけど、
「これ」をすべてに使う勇気なんてもってるのかしら?

「私のお菓子」
デブは褒め言葉です。
太っている人は幸せな人です。
私はまだ72キロしかありません。
ちょっと悲しいです。
友達は90キロあると自慢してきます。
正直くやしいです。
あなたの愛が栄養分です。
最近足りないのでお菓子を見つけてきました。
あなたから私への嫉妬心や憎しみを固形にしたものです。






滝 夏海 課題11/夢の標本箱2003 2003年09月24日(水)16時19分47秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

(カギ括弧からが本文、その上の一文がタイトル)


まず一枚、と彼は言う

「昔、偉大な魔法使いが
 あらゆる国を駆け回り
 あらゆる物を閉じ込めた。
 一枚残った空きカード
 寂しがり屋だから
 あんまり覗き込むと
 君を吸い込むよ    」



王族星、と次を出す

「え、知らないって?
 とある王国の伝説だよ。
 姫の星と王子の星。
 光は届くのに
 触れる事は叶わない
 切ない恋の物語    」



この蝶は、と指し示す

「魔法の時間が化石になると
 砂糖菓子になるんだってさ」



不思議だろ、と呟く

「その国で使うランプは
 時を燃料とするそうだ。
 今でも燃え残った時間達が
 ほら          」



最終章、と僕を見る

「物語はこれでお終い。
 さぁ、サイコロを振って
 君の人生を進めなさい 」

瓜屋香織 課題11/夢の標本箱 2003年09月24日(水)15時31分21秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

No.657
ともだちがいいといったクツもバッグもまねしてかいました。
ともだちのカレシなのにほしくなってねてしまいました。
わたしはどうもなにがいいのかわたしだけでは
わからないみたいです。
だれかがいいといったら、わたしもいいとおもう。
それだけです。

で、朝起きたらこんなものになってました。


NO.328
たくさんの人が僕を好きだといいました。
でも自分が好きではない人に思われるのは
めんどくさいし、気持ちが悪いです。
僕は量より質だと思います。
恥ずかしくなるような過去ならなかったことにします。

で、起きたらこんなものになってました、罰ですかね?


NO.89
成績がいいとか、家がお金持ちだとか、お父さんが社長だとか
綺麗なママだとか、そういうことばかりが気になります。
気になるというか、それがすべてです。
だから私は自分のランクにあったそこそこの人間と
つきあうようにしています。

で、今日の朝みんなの朝食を作るために起きたらこんな姿に
なっていたのです。


NO.5968
ミニスカートをはくのは、みんなにかわいいあたしをみせたい
からです。かわいいあたしにあたしも満足です。
学校も、かわいい制服のとこに決めました。
かわいいかかわいくないかがあたしのものさしです。
みんな、みて、みて、みて、
でも、みんなとはいっても、そこの息の臭いオヤジやチェック
シャツの眼鏡に言っているわけじゃありません。

朝起きるとこうなってました。でもかわいいから、いっかー?


NO.444
誰かとてっとりばやく仲良くなるためには、誰かをいじめて
悪口を言う事が、イチバン効率が良かったのです。

今日の朝起きるとこうなっていたけど、このままの方がいい
気がしてきました。早く捨ててください。

五十嵐 舞 課題11/夢の標本箱 2003年09月24日(水)12時41分32秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答


   その小さき翼は・・・
あの翼に人は願いを懸ける。想いも乗せる。
あの小さき翼に幾つもの願いと希望を託されて。
今この地上の何処かでまた生まれる小さき君に
幾千の友と共に生まれては・・・消えていく君に。
君は僕らを恨まないのだろうか。
きっと君は微笑をこぼしながら僕らの想いと願いと希望を乗せ、
託されながらこの蒼き空、天高く羽ばたいているのだろう。
そして君は役目を終えると、死と再生の炎の中で消えていく。
あの小さき翼は・・・もういないのだと言い聞かせる。
小さき君はもう旅立ったのだ、もう僕の手の届かない場所へと。

   星夜の感傷
ひらひらと天上から雪の妖精たち
舞い降りた地は心も世界も汚れた摩天楼の街
ぎらぎらとした電飾に侵食された聖夜の日
街に取り残された孤島のような小さきエデンがここにあった
もう朽ち果てたそうな大きなモミの木がひっそりと聳え立った
その姿に僕は息飲んだ・・・遠い記憶の彼方にあった庭のモミの木
かつて面影はもうない、
けれども僕にはあの幸せな頃の華やか姿が浮かび上がった
ふと気がつくと涙が一筋流れ、歪んだ視界の先に星が輝いている
ちょっとセンチメンタルになった夜だった

 
   樹と岩の海
巨樹の根が張り巡らされた岩々がそびえ立っていた
この樹と岩で創り出された神々の世界に
圧倒され飲み込まれている自分がいる
古代の人々はこの樹と岩が醸し出すオーラに
神を見出したのだと思ったそんな自分が急に愛しくなる
目を閉じてひたすら全身でこの世界を感じていた、
生命の営みや息遣い、神の気配を・・・ふと見上げると
もう漆黒の夜空には女神が零した涙の光達が瞬いていた
ここで眠るとしよう、疲れきった身体が夢の世界へいざなっていく
澄み切った水の如くしみ込んでいく朝の光が僕を起こしに来るまで

   天翔る鼓動
紅に染まる大地を駆け抜けた勇者たちは今この地を翔る
馬と共に生きた風の子供達 彼らの鼓動大地を走る
馬と風が奔りぬける 果てしなく続く大地が英雄を呼ぶ
物語が彼らを叙事詩という地に甦らせた 風を友にし
生き様は人から人へ受け継がれ語られていく伝説となって
子から孫 受け継がれる血とともに 誇りと歌と馬を伴って



   ガラス=◎=tama?
七色のガラスの球体 人はビー玉という
色彩は七色以上もある 光の加減で変化する瑠璃色
ビー玉こそ人生かもしれない、回り続ける生命の輪の如く
生きることは転がることであり、動かなくるまで転がり続ける
そう死ぬこととは止まること、心臓が突然止まるように
そんな気がしたビー玉を見つけたあの日の午後
もう無邪気でいられる時代はもう過ぎたのかもしれない
ひたすら前を向いてその日を生きていたあの頃
転がるガラス球のように走り回ったあの時にはもう戻れないのだ

寮美千子 厳守! 夢の標本箱の文字数&サイズ 2003年09月24日(水)02時15分25秒


本文は、必ず30字×10行の範囲で書くこと。
それぞれに、10字以内のタイトル(本文とは別)をつけてください。
行数をはみだしたものは、書き直ししてください。


サイズにも制限があります。
「夢の欠片」のサイズは 118mm×55mm×高さ45mm
下記の課題ページ、熟読のこと。


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横田裕子 課題11 夢の標本箱 2003年09月23日(火)22時34分10秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

「世界一重い手錠」
 私が持ってる装飾品の中で一番重い 手錠
 私には大きすぎるから あなたの指に
 付けたら最後 手錠になって
 私が許さないと外れないから
 あなたがどこへも 行ってしまわないよう
 
 あなたの指にはめられるはずもないのに
 ぴかぴかに磨いて 願をかける

「異世界へワープ」
 このタッグを下げた君が
 アイツに狙われるか
 もしくは
 アイツが憎むべきソイツに
 助け出されるかは
 君の運次第
 人生は でたとこ勝負

「井の中の・・・」
 こんななりだけど
 私の出身は砂浜じゃない
 由比ガ浜とか湘南とかだなんて言わないでよ
 だって私は知ってる
 ゆらゆら揺れる波の模様
 差し込んでくる柔らかな陽の光
 群れなす魚
 砂に埋もれる奴には知らないこと
 だけど

 私は知らなかった
 水平線から昇る朝日が
 すごくすごく 綺麗だって こと
 
 「」
 大切なもの達を失くさないように
 あれもこれも止めておく
 テレビで見た料理のレシピに
 忘れちゃいけない約束
 いつも目につくところに
 ココロも一緒に
 ココロがあったら安心できるもの
 姿が無くても一緒にいるような気がするもの

 「夜に垂らしたひとしずく」
 いつもと違う化粧をしたら
 性格変わるかも と思って
 ひいたルージュは赤いワインと同じ色
 重ねた唇は糖度70%のいちごジャムの味
 そんな夜はルージュと同じ色のワインのにおい
 
 
 
 

菊池佳奈子 課題11/夢の標本箱 2003年09月23日(火)16時51分02秒
▼課題と連絡:課題11/夢の標本箱2003 への応答

●天使の卵

うまれてくるのは
どんなものでも
かならず天使です。

●夢見る機械人間の腕

アタシはいったい誰で
なんのために存在するのか
神様でない
アタシの存在理由が
此処にあって欲しい

●青い鳥

幸せの青い鳥は
およそ64億匹いるそうです。
気が付いたらそばにいるものですが
待っているだけでは見つかりません。
閉じ込めてもいずれ
何処かへ消えてしまいます。
くれぐれもお気をつけ下さい。

●Your Own Crown

僕は王様
自分という小さな国の
たったヒトリの王様
他の誰にも
なれない王様

●サプリメント

ビタミン
ミネラル
食物繊維
そんなのサプリメントでとれるけど
元気だけは
自分のココロの力は
頑張らなくちゃ
手に入らない


○異形の者

見世物小屋の中で
捕まえられた妖精
ピエロにぼやく
空は赤く汚されて
海は灰色濁っているし
左耳は悲鳴をあげて
右腕はすでに逃げてしまったけれど
何故かアタシは此処にいるんだ。


http://www3.ocn.ne.jp/~knyako/hakoniwa/

菊池佳奈子 作品5A/トリカゴノウタ 2003年09月07日(日)14時31分01秒

籠の中 聞こえてくるよ 君の唄 だけれど鍵は どこにもなくて
あるはずの 柵は透明 気が付いて それでもどこか 飛び出せないの
叫んでた 此処から出せと 泣いていた だのに今は 此処にいたいよ
差し出した 花束の色  はらはらと 僕の手の上 踊り狂って
見たくない リアルになんて いたくない 僕がいたいの 夢のなかだけ
日常と 非日常の 境目は 自分でなくて 世間の目
僕の罪 直視できない ごめんなさい 生きるためにね 盲目でいる
言葉さえ 0と1との 信号の 電子の波を 漂う海月
あの空の 山の向こうの 青空は 今日も君を 見下ろしている
飛べるかな 君を励ます その空へ 僕ならきっと 飛べると言って
鍵のない 出口を探すの もうやめて そろりそろりと 片足だした

手のひらを 絡ませてみる 君の腕 不安定なの どこかに逝った
手を伸ばす 届かないなんて 知っている だけど君まで 届けよ想い
不安なの 君の気持ちに 確証持てず いつも試して みたくなる僕
恋心 複雑すぎて 理解不能 今君の横 とまどいだらけ
つらくても 大きな君の 手のひらで 髪を撫でたら あたし笑える

脆弱な 若さを武器に 逃避行 リアルでしたい 気狂いピエロ
町田から 何処まで行ける? 僕の足 愛と勇気が 友達だっけ
存在の 否定をしたくは ないからさ だから逃げるよ 何処までも
めんどくさい 言い捨てた君 色褪せた 君と僕との 歴史が終わる
どこまでも 一緒に行って 欲しかった ただ本当に それだけなんだ
独占欲 ここまでいけば 所有欲 君のクローン 僕にください
ひとりきり だけれど平気 君はもう 僕には必要 なくなったから
さようなら 笑顔でいって 別れたい どうして上目で 睨んでしまうの
改札を くぐった背中 見送って 君が最後に 泣けば良い
最後まで 強気な姿勢 崩さない 弱気になれない 弱い証拠ね

君のこと 忘れていました ごめんなさい 思い出したよ 可愛い笑顔
愛される 瞳をしてじっと みないでよ どこまでずるいの 可愛い貴女
僕の罪 気付けなかった 見るまでは 貴女がどんなに 苦しいのかを
ごめんなさい アタシひとりで 盲目で 幸せ掴んで 喜んでいて
不幸にね なるべきだったの アタシはさ だけれど今は 幸せなんだ
愛してる 身体重ねて わかること そんな幸せ ごくわずかだよ
幸せな 貴女見てると 憎たらしい いっそ壊して あげましょう

疲れたね ここらでひとつ 休もうか 困ったことに 居場所がなくて
語り合う 未来も過去も 持たないの だってあたしは 刹那主義なの
こんな世に 産んでしまって ごめんなさい 誤って済む 問題じゃない

さあ走れ 猪突猛進 掲げます マッハ50で かけぬけていく
時と刻 時間は待って くれません だから全速 まわりを見ずに
朝帰り 視線感じる 午前5時 パパとママには ばれませんよう
天の川 かきわけていく 流れ星 祈るだけなら 誰でもできる
明日には 何かが変わってますように 叶わなくても 願ってしまう

いつだって どんな作品 作っても 所詮どこかは 他人の猿真似

19才 子供か大人 あやふやで 今もわからぬ 境界線

http://www3.ocn.ne.jp/~knyako/hakoniwa/

杉井武作 作品2A/あたしのつよいボディガード 2003年08月26日(火)05時23分45秒

あたしのつよいボディガード
ふたりはいつも一緒なのよ
目があうとやさしく笑いかけている
お昼にはケーキを食べるのよ
はにかんだ横顔にやさしくキス
今すぐ抱きしめたいわ
ステップをとるのがとっても上手
あたしのつよいボディガード
お手てつないでお散歩しましょう
二人乗りでブランコをこごう
世界中に幸せみせびらかすのよ
ひさしぶりの晴れやかな気分
メガネがとっても似合っている
にこごりを食べましょう


金魚すくいならまけないわ

横田裕子 作品3A 炎天下で見た夢 2003年08月09日(土)18時11分16秒

夕食に 肉じゃが作った どうせなら あなたのために 作りたかった
タイミング いつも悪くて フライング 未だ走れず 君までの距離
汗滲む バトルスーツが 脱げなくて 私を笑う 夏の太陽
諦めの 悪さはきっと 宇宙一 時には仇に 時には武器に
アルバイト 鍛え磨いた この腕は 日に焼けまるで 鉄腕アトム
幸せを 指で作った フレームに 彼氏はTシャツ 彼女は浴衣
水蜜を ひとくち齧ると 甘い水 私のだって 負けないからね
お米とぐ ひとり立ってる 台所 後ろに君が いればいいのに
見栄張って 買ったマニキュア 籠の底 誰かの為に 出番待ってる
待ってるよ 振り向いたなら そっこーで 尻尾振って 抱きついてやる
極上の アイスクリームが 溶けるよな 熱い吐息で 部屋を満たして
散り際も 綺麗な花を 咲かせたい 叶わぬ恋も 無駄じゃないはず
夕立で 濡れた路面の 灰色に シグナルレッドの 花咲き乱れ
ガラス戸に 有り得ない夢 描いてる 嵐みたいに 泣けたらいいのに
触れただけ キスのひとつで はしゃいでた 君の姿が 心許なく
雲行きは 気まぐれ風で 変わってく 恋はギャンブル 出たとこ勝負
無意識に 横目で見てる 気になって 煙草くゆらす いつもの仕種
悔しさに 泣かない強さ あったなら 誰か私の 涙腺締めて


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管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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