「物語の作法」課題提出板 (0010)


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奥野美和 1B 「帰り道に想う」 2002年05月09日(木)07時46分38秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

派手に転んだ。かさぶたができた。かさぶたをはがす日々。かさぶたをじっと見る日々。
人に見せて泣いたりもした。

でも、がむしゃらに走り出したら、いつのまにかかさぶたはなくなっていた。
かわりに、なんだかちょっぴりきれいな石が埋め込まれていた。

時間はわたしにとても優しい。
夢は私を支えてくれる。

お酒を飲んだ帰り道は、いつもしているウォークマンをする気がしない。
街の音を聴きながら歩く。改札から溢れる人。みんな、何を考えて歩いているのだろう。
わたしは、ふと夏を想う。

「すいかわり」。もう、どのくらいしていないだろう。

私の幼稚園では、毎年、夏にすいかわりをした。本当に嫌だった。
あの目隠しされたときの心細さ。注目しているであろう、みんなの視線。
失敗することの恐怖。臆病だった。

目隠しされた五歳の私。記憶を引きずりだしてしまった。

子どもの頃から失敗することに敏感だった。
カンニングをしたこと。残した給食をトイレに流したこと
。仲間はずれにされて、閉じこもった食缶置き場。

暗い気持ちに包まれる。今日は、なんだか妙にセンチメンタルになる。
お酒のせいか。あらゆる景色が私の記憶を、感情を動かす。

現在をつかまえなくては。マスカラがたっぷりついた睫毛を触る。
もう、私は21歳だ。目隠しされた5歳の少女ではない。

すいかわりで、すかしてしまったら笑えばよい。失敗はユーモアで乗り越える。
そして、それをパワーにするタフさを持って。私は決して人見知りでもなければ、
無口でもない。話したい。色んな人と話したい。

途方にくれる。あきらめる。私は弱いと泣きながら。

でも、もう、そうやって逃げるの、もう止めよう。

コミュニケーションをとるということ。伝えようとする努力。
理解しようとする姿勢。あとはイマジネーションがあればなんとかやっていける気がする。

心になにかが溢れる。
サングリアの大きな瓶に浸ったグレープフルーツを思い出した。


家の前につく。空を見ると、道路沿い。私の部屋の窓に、星が写っていた。
勇気をもらった気がした。膝の石も光った。

触ろう。ぶつかろう。抱きしめよう。はじめよう。

もう深夜。静かに「ただいま」を言う。
明日は朝、少し早く起きて家族とご飯を食べようと思う。



私たちの世界はふさがれていない。
たとえ、それが四方に追われていても、上を見て。
空がある。空に近づけるように登ろう。
空が見えなかったら、その頭上の蓋をあける努力を。
きっとラッピングをあけるようなキラメキが私たちを待っている。


菊池さやか 自己紹介 2002年05月09日(木)03時02分35秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

前この時間に朗読したもの
 きもの 幸田文
理由
 とにかく、この小説の雰囲気が好きです!その時代の空気というか、匂いが伝わってくるのです。是非読んでみて下さい。
好きな作家さん
 幸田文さん
 宮部みゆきさん
 etc
少し前は、指輪物語などのファンタジーが好きでした。最近、なぜかファンタジーにときめきを感じない・・・。誰か胸ときめくファンタジーを教えて下さい。

締め切りは過ぎてしまったみたいですが、一応提出してみました。いくら考えてみても全く書けなくて、結局、自分でも何を書いているのか分からないままになってしまいましたが・・・。こんなことなら、せめて締め切りには間に合うように提出してしまえば良かった・・・。パソコンも全く使えない人間なので、作品の提出にも凄く戸惑ってしまいました。こんな夜中にパソコン教えて下さった方、ありがとです。

菊池さやか 1A「鍋の魔人」 2002年05月09日(木)02時20分09秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

午後四時頃にやって来る、お豆腐屋さんの笛の音は寂しい。私はお膳いっぱいに広げた新聞を、ぼんやり眺めていた。
最新の電動折りたたみベッドの広告。人参で10キロ痩せ、トマトで視力回復するという雑誌の見出し。日本経済再生について何か語るおじさんのアップの写真(この場合、おじさんのアップは必要なのだろうか?)etc。 今日の料理欄は、さわらと新じゃがの梅煮。はて、これはどんな味がするのだろう?さわらにはスーパーの切り身としてしかお目にかからない。給食か何かで知らずに食べているのかもしれないけれど…。じゃが芋と合うのだろうか?
―そうだお鍋だ。
料理のことに考えが向いて、ふっと気がついた。昨日の残りのかぼちゃを温めなおしていたはずだ。気づいてみると、いつの間にか部屋に香ばしい匂いが漂っている。慌てて立ち上がると、急いで隣の台所に出る。台所は、更に酷いことになっていた。香ばしいどころか明らかに焦げ臭い匂いがし、心なしか空気が白く霞んで見える。昨日のかぼちゃを温めていたガスコンロの右側の鍋は、予想していたよりは大人しく、多少かたかたと揺れ、白い煙を吐きながら、とりあえず爆発することもなくまだそこにあった。私は、今更急いでも仕方ないかな、と思いつつ、さっとコンロの火を止めた。少し煤けて渋い銀色になった鍋は、お節介な動力がなくなって、すうっと大人しくなる。蓋の真中の黒いつまみに触れてみる。温かいけれど、まだ熱くはない。やれやれ。今度はそれを
しっかり掴んでひっぱる。
くわっ
以外に力が必要だった。シンバルの離れる時のような音を響かせて蓋が開き、真っ白な蒸気が目の前に広がる。
「焦げましたぜい、ご主人様」
鍋の魔人が、私の前に現れた。


上野晶代 未定 2002年05月08日(水)22時11分38秒

 濃紺の夜空に大きく赤い月の昇る夜だった。
 ぼくは冷たい風を浴びながら家への道程を自転車で走っていた。 
 こんなふうに、ひとりで夜の街を自転車で散歩するのがぼくは大好きだ。
 身体全体で感じられる風も気持ちいいし、何より、ひとりになれる貴重な時間だ。
 ぼくの住むこの街では、夜中をのぞいて、ひとりきりになれる場所なんてあまり無い。    だからぼくは、こうやっていつも夜中にこっそりひとり外に出るんだ。  
 


 夜の街はとても静かで、昼間の騒音とも言える人々のざわめきは、
 一瞬の幻のようにさえ思えてくる。
 ぼくの親は、ぼくが何処で何をしてようが一切気にしない人たちなので、
 ぼくは何時何処で何をしてようと、全てがぼくの自由だ。
 まあ、その代わり、責任も自分持ちなんだけど。





 以下次回へつづく・・・?期限をとっくに過ぎているんですが、これはどうなるのでしょ   う・・・?私も期限、今日だと思っていました。まあ、これも運命かなあ・・・と半分諦めて
 たんですが、どうせだから書くだけ書いておいてみようと思い、書いてみました。笑



 しかも私、パソコンもインターネットもヘヴィー級初心者なので、作品提出と、自己紹介の
 場所の違いも判らない。この授業受けられなくて当然かも・・・といった位です。
 今もマンガ喫茶というタバコ臭い中でお金払って打ってるし!!
 
 あ、大変遅れましたが、私の名前は、上野 晶代 と申します。
 「うえの あきよ」と読みます。人間関係学科の二年生です。この授業では、自分の見てる世 界観(感)をうまく文字として表現できるようになれたらなあと思って参加してます。
 好きな作家は原田宗典や中島らも。好きな理由は、もちろん!笑えるから。
 あと、とても綺麗な世界観を味わえるという意味では、長野まゆみさん。
 読んでると、自分が若くなって、小学校の頃のような、見えない所に見えない何かを見出す力 を取り戻せるような気がするからです***私はこの感覚が大好き。最近は自分の好きな作風
 とは違ってきているのですが、私は、飽きもせず同じ作品を毎年読み続けます。
  
 この前紹介した作品とは違ってしまうんですが、長野まゆみさんの作品の中でも私が特に大  好きな作品について書こうと思います。

 書名は「三日月少年漂流記」。
 なぜ好きか?
 それはまず、登場人物にすてきな秘密があること。主人公が怖いもの知らずの少年たちである こと。作品のなかで香ばしい匂いが自分に届くぐらい美味しそうな食べ物がたくさん出てくる こと。何度読んでも、「あー、食べて〜・・・。」と思わせる食べ物の描写ですかね。まあ、
 もし可能なら「そちらの世界に居候させて下さい」という感じです。


 書くべきことって、これぐらいでしたよねぇ・・・?  
 それでは明日、おそるおそる教室に入ろうと思います。  
  

小川美彩 自己紹介 2002年05月08日(水)21時47分45秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

私も同じく〆切を勘違いしていました。
今見て焦って投稿です。すみません。私としては投稿しただけで奇跡に近いような素晴らしい気分なのですが、〆切りすぎてちゃ意味ないですねぇ…。
いつもいつもご迷惑おかけします。

さて、単位もらえるのかと危ぶみながらも自己紹介。
表現学部文学科三年の小川美彩です。去年から授業を取っています。そして去年殆ど作品を書いていないという素晴らしい実績があります。今年こそしっかりやれるかなやらなきゃな、と思ったけど、出だしでまたしくじったようですね。
まあやってしまったものは仕方がないとして。
以下、紹介する文章は『ぼくがぼくであること』山中恒・著、の最後らへんのくだりです。

「おふくろさんはおれの顔なんか、見たくないっていうかもしれない……でも、おれはこの顔を見てもらおう。おふくろさんはおれをなぐるかもしれない。……でも、おれはよけないでおこう。おれは、やっぱりおふくろさんの子だということを、わかってもらおう。そしてやっぱり、おれはおれであることも、わかってもらおう!」


この本は、中学生くらいのころに読んだものですが、簡単にありきたりに言えば、主人公、秀一少年の家出と成長の物語です。秀一がとても等身大でリアルに描かれていて、彼の感情の動き・怒りやコンプレックスが本当に直に伝わってきます。
そしてこの最後のくだり。秀一の、「ぼくがぼくであること」の自覚と
今まであった家族との軋轢を乗り越えようとする決意。家族の重圧の中でもがきながら生きてきた彼のそのセリフがとても心に残っていたので、紹介しました。

上で書いた本もそうですが、児童文学が好きです。特にトールキンやエンデやルイスなどの、ファンタジー作品をよく読みます。最近ではハリーポッター、ネシャン・サーガあたりでしょうか。
しかしそもそも私が本が好きになったきっかけの作家は宮部みゆきです。
他にも新旧・国内海外問わず推理小説等もよく読んでます。

実は文章より絵を描く方が好きみたいです。
だから絵本のようなもの…具体的絵本を考えているわけではないですが、そんなものを作ってみたいと思っています。

小川美彩 1A「箱マニア」 2002年05月08日(水)20時45分55秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

「この箱に、大切なものを入れなさい」
そう言って母がくれた箱は、小さな私には両手でも抱えられないほど大きかった。
春の空が笑ったような可愛い青色の箱だ。その箱にはこれから両手いっぱいの、私の大切なものが入るのだ。そう思うと、その空の箱がどんなきらきらがちゃがちゃの楽しいオモチャより素敵なものに思えた。
さて、何を入れよう。
考えて、考えて、何日も空の箱の前で唸っていたけど、この素敵な箱に入れるだけの大切なものが思いつかなかった。
私が今一番大切なものは、この箱そのものだ。私の持ち物中で、一番とびっきり素敵な箱。
ならばこの箱を入れなければ。
どうしていいのか分からなかったので、母にもう一回り大きな箱をねだった。
もっと大きな箱に入れた私の箱は、「大切なもの」という匂いがさらに強くなって、さらに素敵なものになった気がした。箱の中、という秘密めいたところが私の気を引いて、片時も離れたくないほどだった。私の、宝物。
朝起きると箱の中の箱に挨拶して、出来る限り箱の側で過ごし、夜寝るときにはおやすみなさいを言いながら、箱を箱の中にしまった。

そうやって過ごしているうちに不安になった。
こんなに素晴らしくって素敵な箱、皆欲しがるに決まっている。誰かに盗まれたりはしないだろうか?大きな箱に入れているだけで大丈夫かしら?

それから私は、いろんな箱を集め始めた。
小遣いが溜まれば何でも良いから箱を買い、プレゼントには箱をねだった。たくさんたくさん箱があれば、私の素敵な大切な箱は目立たないだろう。そう、カモフラージュってやつ。少し気に入った箱は別の箱にしまう。木は森に、箱は箱に隠す。そうして私の部屋は、大小さまざまな、色とりどりの箱で埋まった。私の部屋はどんなオモチャ箱の中より楽しく、不思議に満ちていた。
しかし、何故だか箱を集めれば集めるほど私の不安は膨らんでいくようだった。大切な箱は今は四重・五重に箱に守られている。大丈夫、大丈夫、安全安心。何度も自分にそう言い聞かせて、それでも私は夜眠れなくなった。
私は毎日箱の数を数えて、ひとつでもなくなっていないか、盗まれていないかを確認した。
箱は変わらずそこにあって、まったく無駄な苦労だったけれど、それで私はいつも少しだけ安心するのだった。

そんな私の不安と幸せが壊されたのは、本当に唐突のことだった。
母が、私の箱の殆どを何処かに持って行ってしまったのだ。
母はいつしか、箱を集める私を奇妙な目で見るようになっていた。きっと母は私の素敵な箱が羨ましかったのだろう。そんな母の眼差しには気付いてはいたけど、最初の桃色の箱をくれた母を疑ったりはしなかった。油断だった。
私は泣いて叫んで、全身が真っ青になってぶるぶる震えて、母を罵り叩いた。返せ!箱を返せッ!!
母も震えていた。
あの箱は皆捨てたのよいい加減目を覚ましなさい箱は入れ物よ中身がなければ意味がない私はあなたに両手に抱えきれない素敵なものを見つけてもらおうと思ったのに…
私には母の言葉は意味のない単語の羅列にしか聞こえなかった。
母は私から箱を奪ったのだ。私が羨ましくて、箱を横取りしたのだ。泥棒の言葉など聞くものか。
母が去り、箱の消えた部屋には私と最初母のくれた優しい色の箱だけが残されていた。母は私の一番大切なこの箱だけは残して行ったのだ。だからといって許すつもりはないけれど。
胸に開いた空洞と、そこを弄るように吹きすさんで行く怒りと悲しみの風を感じながら、私はすっかり様変わりしてしまった寂しい部屋の隅に蹲っていた。部屋の真ん中には私の空色の宝物がひとつ、慰めるように置かれていた。そう、この箱はいつも私を慰めてくれたのだ。可哀想な私をいつも慈しんでくれる。
涙と震えの止まらないまま、私は箱に近づき、抱きしめた。箱はあの頃より小さくて、でもやはり大きかった。
可哀想にね、可哀想にね。大切なものを失ってしまったんだね。でも大丈夫だよ、ぼくと君がいれば、大丈夫だよ。
箱はそう言っていた。
私は泣きやんだ。血の気の引いた体がふんわり暖かくなったような気がした。
そう、この箱があれば大丈夫だ。大切なものは、箱と、私。
私は箱の内側に鍵を取り付けた。そして、迷わず箱の中に入った。
昔ならもっと楽に入っただろうけど、今はぎゅうぎゅうで姿勢を工夫しなけばならなかった。ちょっと辛いな、と言うと、箱は心なしか体を膨らませてくれた。
何とか入りきって、また苦労しながらも蓋を閉じると、目の前には暗く安らいだ静かな空間が広がっていた。そこには母に対する憎しみも怒りも、大事なものを失う不安も恐怖も存在しなかった。
中から手探りで鍵をかける。カチャリと小さな音。私はため息を付いて目を閉じた。
これで、安心して眠れる。

奥山 伸太郎 自己紹介 2002年05月08日(水)15時35分31秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

すみません、寮先生。自分も〆切り間違えてました。今日までかと。
どうか単位を下さいませんでしょうか。申し訳ないです。


えー、というわけで、初っ端からいっぱいいっぱいです。
自分は、文学科3年の、奥山伸太郎といいます。はじめまして。

こないだの授業では、朗読というより、好きな言葉の紹介をしました。「喧嘩中等」という言葉です。これは僕の友達が考えたもので、「喧嘩上等」をもじった言葉です。
「喧嘩上等」だと、「かかってこいよ」みたいに、やる気マンマンな感じがうかがえますが、「中等」になると、「できれば避けたい」といった気持ちが感じられるんです。
威勢はいいんだけど、どっか腰が引けてる。そんなところが大好きで、この言葉にしました。

僕は以前から脚本とか詩とかをちょこちょこ書いたりしていて、その延長線上で今も書いています。でも、コメディ限定で(笑)。少しでも多くの人が長い時間笑っていられるものを作れたらいいなと思っています。
どーぞよろしくお願いします!

奥山 伸太郎 1A「箱入りヘッド」 2002年05月08日(水)15時09分09秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

聞いておののけ
ウチのヘッドはただ者じゃねえぞ
びびんなよく聞け
ウチのヘッドは
箱入りヘッド

聞いておののけ
ウチのヘッドはバイクに乗れねえ
でも大丈夫
運転手雇ってあるから

聞いておののけ
ウチのヘッドの特攻服はヘッドのお母さんが買ってきてくれたのさ
デパートで
しかも刺繍入り

聞いておののけ
ウチのヘッドは門限5時だ
だから夜は活動できない
へたすりゃ部活より早い

こんな
こんな世間知らずなヘッドだけど
カリスマ性は抜群だ
俺達一生ついてくぜ
ウチのヘッドは
箱入りヘッド

奥野美和 1A「帰り道に想う」 2002年05月08日(水)08時11分19秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

私の毎日はプレゼントのラッピングをあけるようなきらめきがある。
その日、1日がどんな日であるかわからないけれど、朝起きると、
なんだか、いい事があるような、そんな気がする。


求める気持ち。迎えに行くよ。コミュニケーションとろうじゃないか。


友人とお酒を飲んだ帰り道。最近はビールが美味しい。
そういえばコーヒーが飲めるようになったのは20歳の夏だった。
なんだか、今日はウォークマンをする気がしない。
街の音を聴きながら歩く。

そして夏を想う。

「すいかわり」がしたくなる。幼稚園の頃、お楽しみ会で「すいかわり」をするのが
本当に苦手だった。あの目隠しされたときの心細さ。
注目しているであろう、みんなの視線。失敗することの恐怖。


目隠しされた5歳の私。
記憶を引きずり出されてしまった。


でも、もう、わたしは21歳だ。
すいかわりで、すかしてしまったら笑えばいい。
失敗はユーモアで乗り越えろ。


なんだか今日は妙にセンチメンタルになる。
お酒が入っているからか。あらゆる景色が、私の記憶を、
私の感情を動かす。


どうにもこうにも、今日はおかしい。家までの道が長い。
心細くなってきた。シリウスを探す。私を知ってる人に会いたくて。
ここにいること、みていてほしくて。


ああ、自分がなにかと繋がっていることで、ほっとするなんて
やめよう。わたしは、わたしの、このカラダでここにいる。

失敗はパワーになる。コミュニケーションをとる姿勢を胸に。
そしてわかろうと努力する気持ちをポケットに。

あとはイマジネーションがあればやっていけるような気がする。



空をみた。
道路沿いの、私の部屋の窓、
明るい星がうつって、
きれいだなあ、と想った。


はじまる。もう、はじまっている。
行こう。


奥野美和 自己紹介 2002年05月08日(水)07時47分00秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

はじめまして、期限が切れてしまいました。いま、混乱しています。机の前で寝てました。
しかも、締めきりを間違えました。寮先生、ごめんなさい。明日の授業は参加させてください。
はなしを聞いていただけますでしょうか?すみません。


では。今後も頑張りたいので自己紹介をします。
奥野美和、表現学科3年生です。

私が朗読したのは、永井宏という美術作家の本、『SUMMER WORKS』です。
発行はメディアファクトリー。帯の言葉は「季節を深呼吸すると、自分の生活が見えてきます」です。

私が読んだのは「夏の仕事1」でページは
10 11 12 になります。長いので引用します。

新しい出来事は古い出来事でもある。記憶を何度も繰り返して、そのどこかとどこかを結びつける。すると新しい未来が見えてくるような気がする。

子供の頃からいったい何着くらいのセーターを着てきたのだろう。眠れない夜にかぞえた羊の数
ぐらいはきっとその材料になっているのかもしれない。



今後に書きたいものは、短歌をがんばること。
そして、本を作ることです。
私は、本の触り心地やニオイが好きです。

ちょっといま、いろいろたくらみ中なので、
形になりしだい、お知らせできたら、と考えています。

他に好きなことは音楽を聴くことです。
最近は、アヴァランチーズを聴いています。
洋、邦、なんでも聴きます。おすすめなどあったら教えて下さい。

あとは…たんい、わたし取れるかどうか、不安です。
頑張るので、よろしくお願いします。

久我真紗子 1A『徘徊者・続き』 2002年05月08日(水)00時56分14秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

下の課題を先に読んでください。続きです。


灰色の空間の隅に居心地の良さそうにすっぽりとおさまる大きめの箱があり、その中に太めの頬に林檎の様な赤みのある中年の婦人が座っていた。婦人のちょうど胸のあたりのところで箱はちょうど真上に開かれた形になっており、その縁に、オレンジ、黄、緑、白の甘い香りの液体が入っていた。婦人は彼女が近づくとその風貌に顔を引きつらせたが、皺だらけの手に四百円が乗っているのを確認するとどれにするかとたずねた。彼女は人と話をするのが久しぶりで声もかすれて出なかったので、緑の液体を指さした。婦人は緑の液体をコップにそそいで彼女に渡した。震える手で一口飲む。乾いた喉に冷たくてむせ返る様な甘くて懐かしい味がしみこんでゆく。それはメロンだった。甘い甘いメロンを一気に飲み干すと、彼女の目からはいつの間にか涙があふれとめどなく流れ、メロンジュースをもう一杯頼み、飲んでは泣き飲んでは泣きしていた。婦人は驚きはしたものの、訳ありなのを見てとると、どうしたのだとたずねた。彼女はこみ上げる想いで声など出なかったが、なんとかしぼり出す様にこう言った。
「半蔵門線の改札口はどこですか。」


 本当にすみません。この部分が7日の11時59分までに間に合いませんで、みっともないんですけど、先に途中までの分をのさせて頂きました。下の分と合わせて読んでもらえるとありがたいです。最初からこんなんで自分でもやってもーたーって感じなんですけど、決して手を抜いたんではなく、考える時間を取りすぎて文字打ちの時間がなくなってしまいました。やっぱりギリギリは良くないという事で、反省します。ところで、大丈夫ですか?単位もらえますか?

久我真紗子 1A『徘徊者』 2002年05月07日(火)23時58分11秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

 今朝も変わらず、低いゴゥンゴゥンという機械音が地鳴りの様に響いていた。排気ガスのまじったよどんだ空気が濃密な湿気を帯びてベタベタと体にまとわりながら流れていく。ここには、空も太陽も無いけれど、おそらく地上は雨だろう。普段よりも湿度が多い事は、茶色い泥濘層のような壁やタイル張りの床のヌメリを見ればすぐに分かる。銀光りするトカゲがチョロチョロと横切っていった。天井はすすけて、ほこりの塊が何百何千と集まり大きな黒いサナギとなって、いたる所から垂れ下がっていた。

 なぜここへ迷い込んでしまったのか、彼女は昔の事をたまに思い出そうとするが、どうしてもうまくいかなかった。実際、思い出せない程昔の事であることを、彼女の様相は物語っている。
垢と泥にまみれて顔は赤黒く変色し、頬は削げ、目は窪んだ。歯は汚らしく黄ばんで、髪はほこりとゴミを含んでチリジリに爆発し異様な臭いを漂わせていた。彼女が地下にもぐってからもうどのくらいになるのだろう。僅かに思い出せる事といったら、彼女は昔結構いい暮らしをしていたという事ぐらいだった。

 それでも彼女がここへ迷い込んだ始めの頃は、それを探すのに必死だった。横穴はどこまでもゴォォといいながら続いている様にも見えたが、ここからの脱出法は前に調べた事があるので知っていた。ここは細長い端から端までそう距離のない通路が横道から横道へ迷路の様に繋がっている場所だ。彼女はガムシャラに歩き回り探したが、相変わらずゴォンゴォンという地鳴りと天井の黒いサナギ以外何も見つからなかった。足が痛くて歩けなくなったので靴を脱いだ。どうやら夜になった様なので仕方なしにそこら辺の床に腰を下ろして眠った。
 幸いにも天井の一番低い横道の脇にトイレを見つけたので、その事には困らなかった。しかし空腹だけはどうしようもなく、4日目にへたり込んでいると足の悪そうな薄汚い白髪の男が彼女に食べ物の在り処を教えてくれた。
 彼女は手持ちの赤い紅で壁に印をつけながら歩いた。最初の角を右へ。先の通路より一層暗い通路を行くと粘ついた突き当たりの壁にでる。左は行き止まりなので右の通路を通っていくと、ゴゥンゴゥンという音が大きくなったが行き止まりなので左へ。すると、最初の通路に戻ってしまう。彼女はもうこれを何千回と繰り返している。最初の1カ月は必死で違う道を探したがどうしても見つからなかった。
 次の1カ月は発狂し、絞め殺される前の鶏の様な奇声を発し、頭を掻き毟りながら天井から垂れ下がる黒いサナギを叩き落してまわった。狂気が醒めると彼女は平静を取り戻し、今度は丹念に見落としがないかゆっくりと調べる事にしたがダメだった。

 彼女はもうここから出られはしないと諦めた。体力を消耗しきった今は今日食べるものを探すだけで精一杯なのだから。いつもの様にゴミをあさりに行き、残った魚の臭いを嗅いでいると、いつもと違う仄かな何かの香りをかぎあてた。それは全くの皮肉とも言えるのだが、彼女が毎日ほぼ腐りかけた魚やら何やらの食べられるものかそうじゃないかを鼻を使って嗅ぎ分けているうちに鋭敏な嗅覚となり、僅かな香りを嗅ぎ当てたのだ。
 それは懐かしい香りであった。いつか確かに彼女は嗅いだことがあるのだが思い出せなかった。香りにつられてフラフラと歩いていくと、いつのまにやら知らない横道に入っていた。彼女は迫りくる予感に胸が苦しくなった。道をでると、そこは大きな通路になっていた。相変わらず黒いサナギとゴォンゴォンという地鳴りは続いていたが、視界に懐かしい色の何かを見つけた。それは果物の香りだった。灰色の空間の下で 

宮田和美 1A「ワンモアタイムワンモアチャンス(笑)」 2002年05月07日(火)23時54分10秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

ナガオにうたってと何度もせがんだ山崎まさよしのページには、いっしょに山崎邦正の「ヤマザキ一番!」と山崎ハコの曲ものっている。
わたしはこの人たちの曲は一度たりとも聞いたことがないし(ヤマザキ一番はどこかでちらっと聞いた気がする)、山崎ハコにいたっては男か女かすら知らない始末だ。
ただ、
ナガオがうたっている間、このページをひらいてちらちらと視線をおとしながら、今日はなにをうたってもらおうかと考えていたわたし、のゆるんだ頬をこの人たちに知られている。
三人の山崎、略してサンザキ。

あのころ、ナガオは自分がうたってる最中にわたしがおしっこかなんかしに行くと、必ずといってもいいほどふきげんになった。だからわたしは自分のうたを一曲、犠牲にしなくてはいけない。
部屋にもどると、演奏だけがにぎにぎしく騒いでる中で、ナガオはよく目を閉じていた。白いテーブルの、ウーロン茶のグラスの隣には、上下さかさまに置かれためがね(プラスチック製の、こい紺色のフレーム。雑誌にのっていてかわいいとわたしがすすめた)が、わたしに背を向けている。ふう。
「ただいま。」
おおきな声でそう言ってから、ナガオが目を開けるまでのほんの少しの間が、いちばんざわざわした。いちばんこわかった。
もう、ナガオの顔色なんてうかがう必要もない。
生活の7割をナガオとわたしの心配に費やす必要もない。
電話の沈黙におびえる心配もない。
だいじょうぶ。だいじょうぶ。

「おい、おまえの番」
さくちゃんの声に顔をあげると、それとほぼ同時にギターのがちゃがちゃした音が耳をつんざき、ベースの音がおなかにずーんときた。なんだかうたう気がしなかったので
「ごめん、おしっこ」と言って部屋からでた。


鬼塚 美緒 つつじ 2002年05月07日(火)23時52分30秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

僕がこの場所に来て
ここが ひとりの 部屋になったのは
3年前の冬のことだった

君がこの場所に来て
ここが ふたりの 部屋になったのは
2年前の夏のことだった

窓辺に立ち 外を眺め
咲いたみたいよ つつじ
そう言って 微笑んだ 君の横顔が
誰かに似ている 
と 思ったのは去年の春のことだった

ここはとても暖かい
暖かい場所なんだ

あれから1年が経った 今
この場所に 君はいない
誰かのもとへ 行ったのではない
空のもとへ かえったのだ

僕は今 君がいないこの場所で
ひとり 生きている
ただ毎日
拭う手が無いと涙はひたすら頬を流れる
ということを ぼんやりと考え

窓辺に 君の面影を さがす

そしてある日
あの時微笑んだ君の横顔が似ているのは 僕だということに気が付いた 

しかし 空にいる君には 
今の僕のような顔になっていてほしくないと

ただ祈る

例え 君が僕のことを忘れても 
あの時の微笑みだけは忘れないでいてほしいと

ただ願う

ここはとても寒い
寒い場所なんだ


君が空にかえって
この部屋は 箱になってしまった

この箱の中からは
つつじの姿も 見えないんだ

荻原 彩 自己紹介 2002年05月07日(火)23時41分34秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

初めまして!!私はイメージ文化の二年、荻原と申します。
私が選びました言葉は・・中島敦さんの「山月記」からのせりふです。

「おれの毛皮のぬれたのは、夜露のためばかりではない。」

                                           
これは、かつては天才と謳われ詩人として名をあげたいと願っていた主人公・李徴が
己の内なる猛獣に飼い殺され、姿まで虎に変わってしまった悲しみを偶然再会した旧友
に語ったときのものです。私はこれを高校の授業でやったのですが、期末試験の前日に
初めてちゃんと通しで読んでみて夜中に一人で泣きました。
なぜかと言うとはっきりは説明できないんですが、李徴のどうしようもない悲しみと孤独、
山の上の月と同じに一人ぼっちに輝く虎の姿を想像して胸がつまったのだと思います。
この物語の李徴は尊大なる羞恥心だとか、臆病なる何とかだとか自分の内にいる猛獣のこと
を説明してますけど、私はそんなことよりもこの山の上の虎が毛皮を濡らして泣き叫んでいる
そのシーンを想ってノックダウンされました。
えっと・・好きな作家は特にいないのですが(そこまで語れるほど読書していません)、
山田詠美さんとかあと童話作家の柏葉幸子さんなんか好きです。
漫画も大好きでよく読みます。下らないのも楽しく読みます(笑)。
去年はあまり学校にも来ていなっかたのでボーっと過ごした一年間になってしまいました。
今年は何とか切磋琢磨していきたいと思っております。よろしくお願いします。



  


鬼塚 美緒 自己紹介 2002年05月07日(火)23時36分07秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

はじめまして。期限ぎりぎりでの駆け込み投稿失礼します。
表現学部表現文化学科2年の鬼塚美緒と申します。
前回の授業では梶井基次郎の「檸檬」という短編小説の一文を読ませていただきました。
粗筋は
「得体の知れない不安に駆られ日々京都の街を浮浪していた作者が、ある日八百屋で買った檸檬を時限爆弾に見立てて、書店に積み上げられている画集の上に置き、そのまま店の外に出る」
といった感じなのですけど、なんだか私の拙い説明ではわかりにくいですね。すみません。
それはともかく、授業で読んだ一文をここに紹介させていただきたいと思います。

変にくすぐったい気持が街の上の私を微笑ませた。丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛て来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなに面白いだろう。
 私はこの想像を熱心に追求した。「そうしたらあの気詰りな丸善も粉葉みじんだろう」
 そして私は活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている京極を下って行った。

最後の節の文章を抜粋したものです。
細かい説明をすると異常に長い文になってしまう上に、締め切りがきてしまい私の単位が去って行く、という悲しい結末に成り兼ねないので、細かい解説・評論はまた機会があった時に…で、宜しいでしょうか…。申し訳ありません。
というわけで自己紹介のほうも駆け足でさせてもらうと、
好きなことは、音楽を聴くことと映画を観ることと芝居を観ることで、最近気になっているのはSyrup16g(ミュージシャン)とピンポン(この夏公開の松本大洋原作映画)とラーメンズ(お笑い)。
基本的には本を読むことも文章を書くことも好きなのですが、最近では疎かになっている傾向にあり。これではいかん、と、この授業を受講いたしました。皆さんにいろいろと教えていただけると嬉しいです。
こんな粗忽で無節操でよくわからない私ですが、一年間宜しくお願いいたします。

宮田和美 自己紹介 2002年05月07日(火)23時10分38秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

はじめまして。イメージ文化2年の宮田和美です。
先週、授業で藤代冥砂さんの「野生の森」
をよみました。
詩です。

先に死なないと約束してしまったので1999年の元旦から肉食を断ってみた

という一文ではじまります。
これは雑誌「SWITCH」2000年1月号
(発行(株)スイッチ・パブリッシング)に、のっていました。
正直いって、
わたしはとくべつ藤代冥砂がすき
というわけではありません。
ただ、
時間の経過とか、人との別れとか、
いつかやってくる「あたり前」を受け入れられない、
惜しんでしまう
あいやら情やらてんこもりなところがすきです。

ほかにはくるり、岡崎京子、キテレツ大百科、
にんげんていいな、Cocco、
グレープフルーツがすきです。
よろしくおねがいします。


滝 夏海 1A (タイトル未定) 2002年05月07日(火)20時19分46秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

駆け込み投降、しかもまだ走り書き程度です。でも、期限が過ぎてしまうので。
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 ダンダン、ダン、ダンダンダン。
 断続的に響く鈍い音に起こされた。固いベッドから身を起こせば、目に入るのは開けっ放しのドアと、そのあるべき空間を埋める白い壁、いや、壁に見えるほど巨大な箱。真っ白な、箱。あれが来てから、何日くらいが経ったのだろうか。いい加減見飽きた風景にうんざりして、溜息をついた。
 大型犬を飼っている知り合いは、みんな言う。
「最初はこんなに小さかったのよ?」
 何かを掬うように両手を広げ、懐かしそうに微笑む。
 同じ事を、俺は言いたい。
「最初はあんなに小さかったんだ」
 そう、最初は。

 それはバイトに行ってる間に、アパートの一室、俺の所に入り込んでいた。
 玄関のドアを開けると見えた、リビングの床の、箱。
 みかん箱ほどのそれは見た目より重く、どけようとしたが押しても蹴っても動かなかった。大澤の仕業かと電話をしてみたが、違うと言われた。東京に出てきて1ヶ月、友人といえるような人物は彼だけの俺には、他に心当たりなど無かった。

 ダダン、ダンダン…ダン。
 再び聞こえてきた鈍いが派手な音。どうやら、玄関の方から聞こえてくるらしい。誰かがドアを叩いている、そんな感じだった。
 視線をそちらへ向ける。とはいっても、箱にリビングを占拠されている現在、箱と壁の間──おそらくシンクが邪魔で成長出来なかった部分だろう──からほんの僅かに見えるだけ。応答しようにも、これでは無理だ。
「おーーーい、誰だ、誰か居るのか!?」
 ベッドの上からとりあえず叫んでみるも、返事は無し。
「居るなら…居るんなら、返事しろよっ!!」

 ああ、そういえば数日前もこうやって叫んでいたっけ。
 どかせないままリビングに放置していた箱は徐々に体積を増し、みかん箱から引っ越し用段ボール中・大・特大サイズとなり、ある晩突然タンスくらいにまで大きくなり…部屋の入り口を塞いだ。
 開け放してあったドアと箱との隙間から手を伸ばすことは出来るが、頭までは入らない。箱自体を壊そうともしてみたが、何度試しても駄目だった。それだけじゃない。携帯の表示は圏外になり、箱の重みで部屋が歪んだのか、窓が開かなくなった。出入り口がないのでしょうがなく割ろうとしたが、防弾ガラスにでも変化したのか、辞書をぶつけようが椅子で殴ろうがびくともしなかった。
 俺は叫んだ。叫べば隣が気付いてくれるだろうと期待して、何度も何度も声を上げ続けた。
 声が嗄れる頃、期待は焦りへ、やがて虚しさに変わっていた。
 おかしな事はそれだけじゃない。その日以来、何も食べていない。水すら飲んでいない。排泄もしない。なのに俺は生きている。どういうことなんだ、これは。
 それとも、生きていると思っているだけで──。

『三宅ぇ、三宅三宅、みぃやっけくーん。いーかげん起きなっさーい』
 さっきまでとは違う音が、暢気な声が微かに聞こえてくる。
 ぼんやりとしていた視点が、急に定まっていく。散らばっていた思考を、掻き集める。
 籠もっているけどあれは、あの声は。
「大澤、大澤なんだな、そこにいるのは!?」
 狂った世界から逃れられる最大のチャンスかもしれない。その為には、なにがなんでも大澤には気付いてもらわなければならなかった。
 ベッドから飛び降り、箱に近付いていく。ドア枠との隙間に顔を寄せ、名前を呼んだ。
 祈るように。

 けれども外から聞こえてくるのは全て、叫びに対する答えではなかった。
『居ないのか?』
 また、ドアを叩く音。
『ガッコ何日休む気なんだ。いいかげんにしろよ』
 だんだんと焦れてくる声。まずい、このままでは帰られてしまう。
『ったく、しょーがねぇな…あいつの番号はっと』
 番号?…携帯か。相手は?きっと、いや絶対に俺に決まってる。だが、俺の携帯はベッドサイドの充電器に突っ立ったまま、ウンともスンとも言わない。そうだ、なぜか圏外で通じるわけが。
『…ぁ、もしもし?俺だけど…え?…お前ねぇ、名前表示されてるんだろ?で「俺」ったら本人以外誰が居るんだよ』
 おい、大澤は、一体誰と話して──そうか、俺にかけたわけじゃなかったんだな。
 そう思うと少しがっかりした。
 けれども、そうではなかった。そうだった方が、どれほど良かっただろう。
『でさ、おまえんちの前なんだけど、開けてくんない?居るんだろ?…はいはい分かったから、早くしろよ』
 ──今、なんて言った。おまえんちの前?大澤が居るのは、俺の家の前、だろ。
 あいつは誰と話してるんだ?

 ワケが分からなかった。目を丸くし、声のするの方を見ることしか出来なかった。
 カチャッという軽い金属音が耳に入り、血の気が下がった。聞こえたのは、玄関先。続いて、ギッと何かの軋む音。挨拶する声。バタバタした足音。
 隙間から見えている玄関のドアは、一度も動いていないというのに。
 この部屋には、俺以外に居ないというのに。閉じこめられた、俺以外に。

 あぁ、大澤の声がする。さっきよりも近く。ずっと近く。
 箱の、目の前にあるあの忌まわしい箱の中から、楽しそうな会話が聞こえてくる。
 笑い声すら、聞こえてくる。
 どうして。
 なんで。
 大澤…お前、どこに居るんだよ。
 誰と喋ってるんだよ。
 俺はここだ、ここに居るんだ。
 箱に縋り付くように崩れ落ち、何度も何度もその真っ白な壁を叩いた。
「大澤…おおさ、わ……お…ぉさわ…気付よ。気付いてくれ、よ…っ」


『そういや、前ここに違う奴住んでたような──や、気のせいか』
『ん、そうだよ』

滝 夏海 自己紹介 2002年05月07日(火)20時16分14秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

〆切ぎりぎりですが、初めまして、表現文化学科2年の「たき なつみ」と言います。今まで書いていたモノは小説とも詩とも言えないような物語の欠片ばかりで、「だからどうした」とツッコミを入れたくなるようなモノも多く。それでも、自分の中にある世界を少しでも形にしていきたいという欲求は止まらず。この講義で、まとまったモノが書けるように頑張っていきたいです。
これから一年、宜しくお願いします。

私が自己紹介代わりに選んだ文章は、水蜜桃調査猿の「ゼンマイ巻きの手順」でした。
これはクラフト・エヴィング商會が書いた『どこかに○いってしまった○ものたち』(筑摩書房)という本のP88〜91にあるものですが、水密調査猿という物が不思議ならば、説明の図が怪しいなど、とにかく胡散臭い。
この本は商品カタログになっていて、吹き出してしまう物から思わず欲しくなってしまう物まで様々な品が紹介されています。
けれども中表紙に書かれている本の別名は『クラフト・エヴィング商會不在品目録』。今となってはもうどこにも存在しない商品達のカタログなのです。
また、今回は読みませんでしたが彼らの別の本『らくだこぶ書房21世紀古書目録』『ないもの、あります』なども、商品カタログの形になっています。
最近では『じつは、わたくし、こういうものです』が新聞に載っていたりと、大分有名になってきたようで。
基本的にどの本も一話(?)が短く作られているので、通学や授業前のちょっとした時間にも読めてお薦めです……文庫ではないので、ちょっぴり鞄が重くなりますが(笑)

クラフト・エヴィング商會の本は、どれも独特の世界を作り上げています。実際には存在しない、あり得ない物を作りながらも、その細部にまで拘り考えられているからでしょう。私はその世界に浸るのが好きで、浸りながらも「う〜む」と唸るのが好きで、時々「やられたっ」と笑うのが好きなのです。

伊藤アサエ 1A「少女はアイソレーション・タンクにのって」 2002年05月07日(火)18時00分20秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

 僕にはするべきことがあった。
 授業中、僕のとなりの席の夢野ミナコさんを観察することだ。でも本人には決してばれないように、顔は前を向き、目だけをできるかぎりミナコさんの方へむける。そうすると、ミナコさんの長いまつげ、ビーズがたくさんのりそうな、長いまつげも、汚い言葉をはっしたことがおそらくないだろう薄くていつも艶やかな唇も、すっと鼻筋の通った形のいい鼻も、まぶたにやきつける事ができる。

 今日もミナコさんは、誰もきいちゃいない生物の授業を一人熱心に聞いている。

 いつものように、ミナコさんを見つめつづけて一日がすぎた。そしていつものように一人、ミナコさんを思いながら何にもない帰り道を歩くのだろう。誰か、「キミの一生はそれだけでオーケーだ」…なんて言ってくれないだろうか。
 進路志望調査の紙を配られたからだろうか、今日はいつになく自分という人間がつまらなく思えてくる。行きたい高校なんてないし、第一、3年になったばっかなのに、そんな事考えちゃいねーよっ!!…みんなそんなもんだと思ってた。しかし、ふと見た同級生の進路希望調査には、H高校だの、K高校だの、具体的な高校名がしっかりと書き込まれていた。
 僕は愕然とした。
 一方で、「ミナコさんはなんて書いたんだろう」と思った。そのときにかぎって僕はミナコさんのことを見ることができなかった。





あの〜、たいへん申し訳ないんですけど、ここで続く…なんてしてよろしいですかね?
「箱ってどこにでてくるんだよっ」と怒り心頭のみなさん、申し訳ないです。
ちょっと長くなりそうなので、来週までに必ず。

ちなみにこれからの概要。読まないでいてくれると助かるんですけど、念のため。&自分のため。


「僕」は少女に勧誘されて吹奏楽部に入る。
しかし自分にあわないと思い、やめる決心を彼女に伝えると、
「あなた、悩んでるでしょ」
といわれ、なぜか新興宗教団体に勧誘される。
その宗教は、大きな箱の中に入り、自分がしてきた悪事を悔い改めるというものだった…。

ってなかんじ。多少の変更あり。すんませんね、ほんと

伊藤アサエ 自己紹介 2002年05月07日(火)17時11分41秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

はじめまして、こんちくわ。
表現文化学科2年の伊藤麻恵です。
前回の講義は風邪を引いてしまい、出られませんでした。

と、ゆーわけで、アタシが皆に是非伝えたいモノ

    植物園で倒れ 泣き崩れちゃっても
    君は綺麗だな 血みどろになっても
    綺麗だ

…これはですね、大槻ケンヂがアンダーグラウンドサーチライ名義で出した
「スケキヨ」とゆうアルバムの6トラックめに収録されているナンバーなんですけど、これをアタシが初めて聴いたとき、中3だったかな〜、確か。
そんぐらいのときに聴いたんですけど、かなりの衝撃をうけました。
なんかこう、フォークとかで胸をブスッとさされて、その上ぐちゃぐちゃにかきまわされたような、すご〜くパセティックなんだけど、ごくロマンティックであり、しばしばオカルティックでもある。
なんか一発でやられちゃいました。

アタシもともとオドロオドロしいものが好きだし、魚座のA型なんで、ロマンチストなんです。
よくわかりませんが。
本当は全歌詞のせちゃいたいぐらいなんですけど、長くなるので、興味がある、そんな特異な方はご一報ください。オーケン好きも。

小川原 君依 1A 無題。 2002年05月07日(火)14時33分40秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

 途中のみ掲載します。そういうのはだめといった方はご遠慮ください…。すいません。
 話―少年梁(はり)はちょっとだけ自閉症気味。教室にいてもすべての音がノイズとしてしか聞こえない。教師と同級生にいじめられても動じはしないが、一人の声だけが届く。醜い顔をした少年で彼に「しんでしまえ」という。梁は気が付くとサーカス団をうろついてて、最後に案内された部屋の中で、己をとりまくものたちに向かい合って、ってところでしょうか。 


 何もかもが白かった。少年の目の前に今まであったものは、小さな家と学校と、町と、それらを取り巻く人間たちだけだった。その何もかもが白く輝いた世界の中に消えてしまった。
 少年はどこでもない、上でも下でもない、右でも左でもないところに一人たたずんでいた。少年が否定したすべてものが一切失われたとき、あとに残されたものは何もない空虚で、広く白い世界は少年自身さえも飲み込んでいくかの勢いをもっていた。
 叫んだ。
「いやだ、どうしてこんなところにいるの」
 声がした。あの、モップが顔面に迫ったときに聞こえた声。
 醜い顔。
「だから、おまえなんて死んでしまえばよかったのに。すべてを閉ざして、逃げているだけのおまえ自身を、殺してやりたかったのに。」
 現れたそれは、まっすぐと前を見つめていた。悲しい顔、その瞳から―…涙がとめどなくあふれている。薄蒼い瞳が梁自身の瞳が、涙を流していた。醜い瞳は、まっすぐと見つめているようでその実何もうつしてはいなかった。ただそこにあるだけ、で。
 泣いているのは、そこにいるのが自分自身であると。
 泣いているのが自分自身であると。
 何も見えていないのではなく、醜い瞳は色彩の中の世界に身を置いていたのだ。この、一瞬のときまで。
 梁は今まで隠してきた己自身をそっと抱きしめてやった。
「ごめん、こんなところにほっておいて。
 ずっと、受け止めていてくれたの。こんな、ぼろぼろになるまで。」
 自分自身の傷ついた顔だったのだ。

 もう一人の梁が抱きしめられた体から手を伸ばした瞬間に、すべては元に返っていた。
 空を見上げるとそこにあるのは、星の天幕。傍らに、壊れたようになっていたピエロの案内人の青年が、満足した表情で―仮面の下なので、はっきりとはわからないが―今度は魔法師の格好で待っていた。
「もうお帰りになるのですね。では、預かっていたプレゼントをお取りください。」
 その七色が渦巻いた箱を少年は受け取った。あけてもいいかとたずねると、仮面の青年はただうなづいた。
 二人から一人へとなった梁は恐る恐るその箱の中を見つめた―青い、青い空気が見える。それがはれた。
「街だ。」思わず梁の口から言葉がもれた。見えてきたのは、梁がすんでいる街を上空から見た景色だった。いつかどこかで見た景色だとおもったが、何の変哲もない上空からの写真でしかなかった。なぜわかったかといえば、その中央にある学校が、よくよく見ると校章の形を作っていたからだった。
「僕の学校、僕の町…」
 箱の中の視点は、どんどんどんどん空へと上昇していく。学校がやがて小さな点になり、街が小さな点になり、海岸線が見えた。やがてひろがって、日本が…地図をかたどったような平面ではない、球体の世界が見えてきた。
「ここは、宇宙のどこかなんだ。」
 今や地球がすっぽりとその箱に収まるくらいの大きさになった。
 そして異変が起こり、視点がまたどんどん下へと降りていった。にもかかわらず、箱から飛び出した地球という球体が、梁に向かって大きくなっていった。梁は目を閉じる。地球が、梁を包み込むのを感じた。

 このあとになんだかはいるのですが、ここの部分だけ送ります。ほかの部分は淡々としすぎてて…つらっ!というか、こんだけっていうのもわからないですね。全部書き終わったらもう一度投稿します…。

伊藤早紀 自己紹介 2002年05月07日(火)13時58分41秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

表現文化学科二年、伊藤早紀です。先日の授業で私は真心ブラザーズという
バンドのラストアルバム「夢の日々」から「重なるように」という曲を朗読
しました。今ここでも、この歌詞の一部を抜粋し、魅力について語りたいの
ですが…!ですが!うっかり、家に歌詞カードを忘れてきてしまいました。
曖昧な記憶で書いても良いのですが、それでは皆様に申し訳ないと思うので、
後日…キチンと乗せたいと思います。

真心ブラザーズは私の好きなバンドのひとつです。この歌詞の内容は
ありがちな!なんてベタな!と、いいたくなるような若さ特有の自信過剰さ、
自分は他人とは違うんだ!という根拠の無い確信、しかし一方では理想
(先走る妄想)と現実のギャップ・矛盾に悩み苛立ちや焦りを感じてしまう気持ち、
そんな、ある時期を越えた大人からみれば青くチョロイ日々を歌っています。
この歌を聴くと自分自身とオーバーラップして何だか気恥ずかしくなって
しまいます。でも、私はこういう青い気持ちは嫌いじゃないです。むしろ
大好きです。それは自分を高めたいという欲望の表れだからと思うからです。欲望が
あってこそ意欲が掻き立てられると思うからです。

齋藤 亮 1A「箱を斬れ。」 2002年05月07日(火)09時20分40秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

我が家の居間の入り口付近にそれは配置されていた。計算されつくした絶妙な位置に置かれていたその箱は、僕に地獄のような激痛を贈ってくれた。見たいTV番組があり、全力で部屋に駆け込んだ僕は、足下に置かれた鉄製の箱に足の小指をクリーンヒットさせてしまったのだ。
僕はそのまま前のめりになり、フローリングの床を転げ回る僕。絶対に骨折した。痛みをやわらげようと、当然折れてなどいない小指をさする。そして、この地獄を作り出した張本人、ポテトチップスの袋ほどの大きさの鉄の箱を睨み付ける。
鏡があれば自分の形相を確認してみたいほど、僕は怒りをあらわにしていた。この箱を許すわけにはいかない。かといって、このまま怒りに身を任せてかかと落としでも繰り出そうものなら、かかとの骨に無くてもよいヒビが生まれることは目に見えている。僕は深呼吸を一つして、心を落ち着かせると、足下に注意しつつ隣りの和室へと駆け込み、飾ってあった日本刀を無造作につかみ取った。昔親父に聞いた話では、先祖代々伝わる妖刀だそうで、一度抜けば視界に映る全ての命が消えるという。僕は確信していた。今こそがこの刀を使う時だと。
居間に戻ると箱をテーブルの上に乗せ、乱暴に刀を鞘から抜き、正眼に構える。小指の痛みは時間とともに増している気がする。僕は一呼吸入れると、頭上に持ち上げた両手を振り下ろした。
金属質な轟音が響き、手の平に強烈な衝撃を感じる。すると、アニメみたいに一瞬遅れて箱がまっぷたつに割れた。剣道の経験もない僕でも箱を斬れたのだから、妖刀というのは本当なのかもしれない。手に握った刀の刃も折れて半分ほどの長さになっていることに気付いたが、僕は思わず歓声をあげた。至上の喜びを前に、後で親父に怒られることなど気にならなかった。敵を取った嬉しさのあまり、部屋中を駆け回る。小指の痛みももはや感じない。ついさっき痛みのあまり転がり回った床を小躍りして走り回る僕。そして次の瞬間。

「ザク」

足下を見ると、刀の折れた先が床に突き刺さっていた。そして、その脇には僕の小指が転がっていた。

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微妙にブラックなオチでスミマセン。

齋藤 亮 自己紹介 2002年05月07日(火)08時36分05秒
課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介 への応答

人間関係学科二年の齋藤です。はじめまして。
我孫子武丸の「殺戮にいたる病」から抜粋します。

蒲生稔は、逮捕の際まったく抵抗しなかった。
樋口の通報で駆けつけた警官隊は、静かに微笑んでいる稔にひどくとまどいを覚えた様子だった。彼の傍らに転がった無惨な死体を見てさえ、稔と、これまで考えられてきた殺人鬼像を結びつけるのは、その場の誰にとっても困難なことだった。
手錠をかけられ、数人の警官に挟まれて部屋を出ていくとき、稔は少しだけ立ち止まり、振り返った。それまでずっと泣き叫び、茫然自失していた雅子は、自分に何か言葉をかけてもらえると思ったのか、虚ろな瞳に微かな光を宿らせ、彼を見つめた。しかし、彼が見ていたのは雅子ではなく、死体の方だった。自分がついさっきその手で命を奪ったばかりの死体。

冒頭の一部分です。一見何気ない文章ですが、緻密に計算された文章です。
本編を読み終わってからまた戻ってくればわかると思うんですけど、実は本編全体が計算されつくしています。その芸術性に感動しました。
だから特にこの部分ってわけでもなかったりします。
この作品、内容はグロいので嫌ですが、叙述トリック作品としては最高峰だと思います。

細かい笑いがちりばめられた文章ならなんでも好みます。強いて言えば、推理小説が好きです。
変な趣味ですが、よろしくお願いします。

松永洋介(アシスタント) 直しました 2002年05月07日(火)05時30分48秒
ただいま復旧作業中:ログが一部飛びました(冷汗) への応答

しかし、現在のログ(pttp0010.html)もお尻がちょっと消えました(復旧済)。
どういうことだ。みんながあんまり熱心に書くから、サーバーの負荷が大きくなっているのかな。そんなばかな。

なんかいまひとつ原因がつかめないなあ。
まあともかく、掲示板システムがへんな挙動を示したら松永までお知らせください。
ご協力お願いします。

松永洋介(アシスタント) ただいま復旧作業中:ログが一部飛びました(冷汗) 2002年05月07日(火)04時34分08秒

さきほど、本掲示板のログが一部飛びました。
正確には、掲示板ファイルpttp0009.htmlのお尻のところが消えた。
ログに支障が出たのは、この掲示板システムを使いだしてから初めてのことなので、ちょっとびっくりしています。
さいわい、サーバー上にはインデックス情報が、手元にはバックアップ・ログが残っていました。
順次復旧作業をおこないます。数時間のうちには元通りです。

現在、システム的には、課題の投稿に支障はありません。
自己紹介は「課題(親記事)/朗読テキストの紹介と自己紹介」への、
創作は「課題(親記事)/箱を題材とした創作」への応答として投稿してください。

ご心配をおかけして申しわけありませんが、よろしくお願いします。

山下遼 1A「ぼくのカードゲーム戦争」 2002年05月07日(火)04時31分40秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答



小学生のぼくらが、今いちばん熱中している遊び。

それは、「遊戯王カードゲーム」。
トランプのように最初からカードがあるわけじゃなくて、
自分でカードを買って、その集めたカードで対戦するゲームだ。

しかし、カードを買うには当然お金がかかる。
小学生のぼくのおこづかいでは、大した枚数は買えない。
1パック5枚入りで150円の遊戯王カードが、ぼくにはすごく高く感じる。


ぼくが普段から一緒にカードをやっている親友の中田くん小嶺くん
あいつらはすごくたくさんカードを買っている。
それはぼくのように5枚入りのパックで買っているのではなく、そのパックが30も入った「ボックス」で買っているのだ。
ボックスはひと箱で4500円もするので、当然ぼくには雲の上の存在だ。
じゃあ何でぼくが買えなくて、中田君と小嶺君が買えるんだろう?


答えは簡単。あいつらは金持ちなんだ。

中田君はお父さんが会社の社長で、すごい大きな家に住んでいる。
ぼくらがいつも溜まり場にしているのも、中田君の家だ。
行くたびに中田君のお母さんが、「たまには外で遊びなさいよ。」と言いつつもお菓子を出してくれたりする。
当然、そんな中田君のことだからおこづかいもいっぱい貰っていてもおかしくない。
中田君は月に一回、近所のおもちゃ屋でカードをボックスで買っているもんな。

小嶺君の家は父子家庭だけど、なぜかお金をいっぱい持っている。
本人に家のことを聞くのはなんかかわいそうな気がして、あまりそこには触れていない。
前に一度小嶺君に、「何でそんなにお金持ってんの?」と聞いたことがあった。
そうしたらアイツは、「ばあちゃんからもらった」と言ってたけど
そのクセに、中田君と同じくらいの定期的なペースで買ってんじゃん!
小嶺君は、ぼくにとっては謎の男だ。

そんなわけで、お金がないのはぼくだけだ。
ぼくのおこづかいは1ヶ月800円。ぼくが8歳だからだってさ。
お母さんに「このままじゃぼくが20歳になっても2000円じゃん!」って言ったら
「20歳になったらアルバイトできるでしょ。それに、中学生になったらもうちょっとあげるわよ」だって。
なんかぼくだけ不公平だと思った。

月が変われば変わるほど、あいつらはどんどんカードを買っていく。
中田君に至っては、専用のカードアルバムまで買っている。
ぼくだけ…ぼくだけが置いてけぼりだ。



「遊戯王カード」が流行り出してから半年くらいたったあたりで、ぼくは中田君や小嶺君とカードをしなくなった。
理由は、あいつらのカードがものすごくハイレベルで、ぼくのカードでは全然勝ち目がなくなったからだ。
あいつら、「今度二人で全国大会出ようぜ」なんて言ってる。
「ぼくも出ようかな」なんて言ったら、「お前じゃ絶対勝てないって」とか言われた…。

(ちくしょう、なんであいつらだけ…
ぼくもカードをボックスで買って、あいつらを見返してやりたい!
そしてなにより、もう一度あいつらとカードをやりたい!)

でも、ぼくにはお金がない。
いったいどうすればいいんだ……。


「オカアサン ノ サイフカラ コッソリ オカネヲ チョウダイシヨウ」

遂にぼくの頭の中に、悪魔からの電報が送られてきた。


お母さんが家にいない隙に、財布から茶色いお札を抜き取るぼく。
お母さんの寝室の三面鏡に、緊張と罪悪感で引き攣ったぼくの顔が映る。
「仕方ないんだ!友達と遊ぶお金をくれないお母さんが悪いんだ!」と自分を正当化するための自己暗示をかけるぼく。
この時、ぼくは「ハングリー精神」という言葉の意味を間違いなく履き違えていた。

一万円あるから、ボックスが2つも買える!!

おもちゃ屋の中でこの喜びを噛み締め、さっきまでの罪悪感は、どこへともなく消し飛んでいた。



買ってしまった。「遊戯王カード・30パック入りボックス」!!!

遂にぼくは、富の象徴とも言うべき「箱」を手にしてしまった。しかも2つも。
これでもう仲間外れから解放されるかと思うと、嬉しくて仕方なかった。


おもちゃ屋から家に帰るまでの道のりは、ものすごく長く感じた。
必要以上に周りを警戒するぼく。

「こんなところで交通事故はゴメンだ」と、いつもより左右を凝視する。
「学ランを着ている人はみんな不良だ。カツアゲする人だ」とばかりに、帰宅途中の中学生を避けて通る。
「お母さんの財布からお金を盗んだ僕は捕まるかもしれない」と、交番の前をダッシュで過ぎる。

結局その警戒心は取り越し苦労に終わり、無事家についたぼくは自分の部屋に駆けこむ。


さぁ、遂に時は来た。「箱」を開けるときが……!!!





ガチャッ。




ぼくの部屋のドアを開け、お母さんが言った最初の言葉。

「どうしたの、それ?」



<完>




_____________________

書いてるうちにどんどん長くなっていき、最終的にはこんな長文になってしまいました。
この「ぼく」の結末は、皆さんの想像にオマカセということで。
ちなみにこの文はフィクションです。実際の僕とは関係無い話です。

上村謙輔 1A 贈り物 2002年05月07日(火)04時23分16秒
課題(親記事)/箱を題材とした創作 への応答

右だったか、左だったか、よく覚えてはいないけど。
この場所から少し行くと、とても眺めの良い場所に出るんだ。
なんか曖昧で、はっきりとしない気持ちだけど。
なんとなく、楽しい気分になるんだ。
本当はきっと、そんな場所なんてないのかもしれないし。
あっても、二度と辿り着くことはできないかもしれない。
ただ、いつも通りに飽きてしまった今を変えたいのなら。
道に迷う覚悟決めて、探しに行ってしまえばいい。
「この曲り角はどっちだろう」
考えることで、変わっていけばいいさ。
「やっぱ、向こうの道だったか」
間違えることさえ、楽しめればいい。
こんな試行錯誤を繰り返して。
結局、辿り着けなかったとしても。
いつか、最初の目標を忘れて。
動くことを、楽しいと感じられれば。
そのころにはもう、『眺めの良い場所』なんて必要なくなってる。
いつも通りを、くぐり抜けられたから。
だから頑張ってみてよ。
次へ、次へと、進んでみてよ。
誰かに変えられた自分なんて、一見美しいけど。
面白い訳ないんだ、自分で作った自分よりも。
そんなことは、誰よりも皆、わかってることだろうけど。
「さぁ、頑張れ」
もう一度、こんな言葉を自分にかけてみようよ。
思った以上に楽しかったり。
できる自分に出会えたり。
嬉しい気分になれたなら。
その気持ちを箱に詰めて。
『大切な何か』と宛名を書いて。
いつかの自分への贈り物にしよう。
苦しかったり、悲しいときに。
きっと助けてくれるから。
そんな小さな喜びも。
とても大きな悲しみを包む。
そう思えるかは自分次第。
だから私は信じてる。
少なくとも私は信じてる。

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管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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