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批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」 の検索結果(ログ42-43)


城所洋 批評8/共感・郷愁・鏡映 2004年10月11日(月)15時30分09秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【紡ぎ歌】

きれいなことばを吐きましょう
どんなにみにくい私でも
つむぐことばがきれいなら
少しはきれいに見えるやも

きれいなことばを吐きましょう
どんなにみにくい感情が
ことばの裏にあったとて
ことばの面のきれいさに
ごまかされるやもしれません

きれいなことばを吐きましょう

きれいなことばを吐いたなら
こんなに醜い内側も
いずれきれいになるやもしれぬ
いずれきれいになって欲しいと

きれいなことばを吐きましょう

 五十音順に行きますと、これが最初になります。
 まず気に入ったのがテンポの良さ。大分整えられていて、非常に好印象を受けました。
 続いて中に含まれる言葉も、中々共感を覚えました。小学生の頃の話ですが、自分の場合は逆に、純粋、といえばいかにも綺麗なのですが、単なる馬鹿でした。それで、そんな自分をかばうように汚い言葉を使っていたらどんどん汚れてこんな風に、的な経験があるので、何とも羨ましい(恨めしい?)歌だなぁ、などと思った訳です。


【Happiness】

Always Mummy said,
"I love you, Baby,
I love you.
So U must be happy!"

Oftentimes Daddy said,
"I love mum, and
She love you.
So U must be Happy!"

Sometimes Grandma said,
"I love dad, and
He loves mum, and
She loves you.
So U must be HAPPY!"

『人に愛されることは、幸せなことだから』

I must be happy...HAPPY?

 これは面白かったですね。これだけ異彩を放っていました。(言語違うし
 直訳すれば、「〜〜が愛しているからお前は幸せに違いないだろう」ってことですよね?
 確かに、家族に愛されるだけが幸せではないですね。愛されなければ幸せじゃないって事ですし。自らが愛してこそ、といえば月並みですか?


【無色透明】

みんなみんな『個性』という枠に囚われて
自分を青や赤や黄色に やたら染めたがるけれど
その中で 己を透明だと嘆く君は
僕の目に強くまぶしく こんなにも鮮やかなのに


 これは短かったのですが、他のと比べて圧倒的に際立っていました。
 以前にどこかで、「何にも染まっていない色とは、同時に何にも染める事が出来ない色だ」ていうフレーズを聞いた記憶があるのですが、まさにそれですね。
 何の色にも染まっていないというのがどれだけすごい事か、今なら分かる気がします。


【LIE】

痛みの数だけ優しくできる なんて
なんて酷い嘘

うけた痛みの分だけ
人は必ず傷つくはずで
傷の深さの分だけ
人は苦しんでしまうのに

もし君が傷ついた分
僕に優しいのだとしても
なにも嬉しくはない

泣いた分だけ優しくなれる なんて
泣かせた誰かの
酷いまやかし

 これを見た時、岡本真夜の「TOMORROW」を思い出しました。そう、あの「涙の数だけ強くなれるよ〜♪」で有名な曲です。
 これも小学生の時かな?クラスにやたらと泣き虫な友人がいて、怒ったり怪我したりするとすぐに涙を浮かべるんです。
 それでその当時にこの歌がブレイクして、皆でよく口ずさんでいたのですが、「おいちょっとまてよ、この歌が本当なら今頃あいつはムキムキになってるはずだ!」とかいって、ひょんな所で現実を知ってしまったあの幼き頃の思い出が浮かんできてしまいました。
 そう、泣いて強くなれるなら、みんな今頃必死こいて玉ねぎを微塵切りしていますし、痛みを味わえば優しくなれるなら年中ヘッドスライディングですよ。(ちょっと違う?)


【ん】

私が小声でささやくと
あなたは少し目を細め
「ん?」とひとこと
やさしくたずねる

私が好きよと泣き出すと
あなたはつられて泣きそうで
「ん」となんども
やさしくうなずく

私が別れを伝えると
あなたは全てわかったように
「ん。」と一度
終わりを告げた

 これは正直期待していました。いや、五十音と聞いた時から必ずこれがあるだろうと。そしてあるならきっと五十音にすると決めた時からこれに力を入れていたはず。
 そして、御多分に洩れない出来でした。
 自分もあるだろうと思い、どんなのか予想はしていました。自分の場合、あえて「ん」を一箇所で、しかも一番最後に持ってきて印象付けるだろうという安直な考えでしたが、そちらの方が上手でしたね。
 ただ真中の「ん」は少し上下に比べて薄いような気がしました。おそらく後ろに何の記号も無いせいだと思います。そこだけ気になりました。


 さて、終わりになりましたが、今回選出したものは、それに共感や郷愁を覚えたものが多かった気がします。それと同時に、何だか自分の心境にマッチしているなぁ、とも感じたため、↑な感じのキャッチフレーズをつけて見ました。(ああ、自分、洒落込むんほんま好っきゃなぁ・・・)

露木悠太 批評8/参ったなぁ。 2004年10月12日(火)03時59分24秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【路上の音】

駅の階段 おりていく
疲れた耳に 届くメロディー
少しかすれた声で唄う
ギターにのせた 君のブルース

路上のタイルのステージに
暗い電灯 スポットで
一生懸命唄う 君

がんばれ
がんばれ
がんばりましょう

家路を急ぐ 人々の背に
君は夢中に
ただただ唄う


 カセットテープの「ジリジリ」した音が好きだったり。レコードの針が小さくはねたときの「プツッ」て音が好きだったり。そんなものが溢れている路上の音。「がんばれ」って怖い言葉ですよね。でも路上から聞こえる「がんばれ」には、なぜか簡単に頷いてしまったり。俯いて通り過ぎてしまったり。背中を叩かれるような思いがします。


【おしまいの音】

私の中に
脈々と流れる旋律は

君に合わせて
彼に合わせて
あの子にあわせて
空にあわせて
風にあわせて
お日様にお月様に あわせて

テンポを変えて
リズムを変えて
時にハーモニー
時に独奏
移調転調
B、F、C、G、

終止符知らず
たまにリピート
コーダはまだまだ
先のこと

あらゆるものに共鳴しながら
身体をめぐり 欠片を唄う

この身体朽ち果てるまで。


 音楽にしても何にしても、「私はこれをやった」っていうものがある人は、それをものを見るときの基準や、尺度にすることができる。そう思うんです。だから羨ましい。僕は楽器がど下手くそ。『作品3/ラジカル・ラジオ』でもばればれでしたね。


【ケーキ】

ショートケーキにモンブラン
チーズケーキとティラミスと

甘いものはおいしいけれど
食べ過ぎると 太るんです。

甘い言葉は優しいけれど
食べ過ぎると 太るんです。


 うん、うんと頷いてしまった。わかってはいるんだけど、そこに行ってしまう。ほんとは厳しいことを言ってくれる人のほうが、思いやってくれていたりするんですけどね。


【存在】

誰か
私の悲しみを否定して下さい

この酷い想いを
この陳腐な考えを
その根底にある 存在不安を

否定して下さい

私はここにいて良いのだと
私はここにいるのだと

誰か 教えて


 批判性を秘めているような。流れの中に身を置いてもなお、自分の価値観によってものを見ることができる。それが孤独に感じられたりしてしまって、時々叫びたくなる。邪推になってしまっていたら申し訳ないのですが(失礼かも、ごめんなさい)、何か自分に近しいものを感じました。僕はそれをプラスに捉えようと、《良い目》を持っているのだ、と考えてみたりします。『存在不安』という言葉が胸に突き刺さりました。でもそう感じたズレのようなもの(世界に対しての)は、必ず強い味方になってくれると思います。自分を批判すること、実はなかなかできることではないと思うんです。


【ワタクシ】

わがままで
頑固で
意地っ張りで
高飛車で
プライド高いくせ
打たれ弱くてすぐ逃げる
自分が傷つくことに精一杯で
相手の気持ち考えられずに

あぁ、困ったなぁ。


 どの詩も菊池さん自身の言葉で言っているのがすごく伝わってきます。ただ、ストレートなだけに頭に浮かぶ情景や世界観に、広がりを感じる部分が少ない。何か読み手の脳にウワっと広がる、喚起されるものが欲しい。と思いました。シャウトさえも操ってしまうヴォーカリストのように、自分の言葉を読む人の主観から見つめることができたなら、より作品の良さが伝わると思います。自分を批判できるのだから、きっとできると思います。もう、後一歩。『あぁ、困ったなぁ。』ってすごくよくわかる。僕は時々、一人で「参ったなぁ」とかぼやいてしまうんです。わがままで、頑固で、意地っ張りで、高飛車で、プライド高いくせ、臆病で思いやりに欠ける。でも、誠実でありたい。でしょ? 僕も同じ。

五十嵐 舞 批評8/ぐっと・・・そして 2004年10月12日(火)16時28分52秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

 
まず総評を述べますと、とても好きな作品が多くて悩みました、はっきりいって。共感したものがいくつもありその中でも5つに絞るのは辛かったです。選抜されたものは、技術的にも「巧い」という詩として完成度が高さよりも今回は気にいったという主観的なものを重視して選びました。では、選んだ5つの作品を一つ一つ感想と批評を述べたいと思います。

【絵空事】

あの空の向こうに
明日があって
明日の向こうに
幸せがあるの

君はいつも 絵空事

>前半の女の子っぽい感じの甘さと4つと最後の「君はいつも 絵空事」とばっさり切るような否定の言葉とのギャップの差が強烈というか印象に残っていて、何よりもこの短い文章の中でこのインパクト…この最後の『絵空事』がいい仕事してますね〜〜って感じです。この技術的な面と好みの面の両面で感心させられ共感を与えた作品でした。


【鐘】

黒い人の群
白い人の群
誰がために鐘は鳴る

君のため
彼のため
あの子のため
誰がために鐘は鳴る
誰がために我は在る

>短いんですけど、意味というか菊池さんが言いたいことが凝縮されている感じがしました。メッセージ性が強い感じを受け、結局はこの文章では疑問というか解決出来ていないのですが、そこでは読み手に「貴方はどう思いますか」みたいな投げかけがこの文章の中にあると思うのは私だけでしょうか。また韻(群れ、鳴る・在る)を踏んでいるところにも巧いなというか凄いなと思ったところです。でもひとつ気になるところが・・・「誰の」では「誰が」となっているのには意味があるでしょうか。


【ここにいるから】

「自分が嫌い」と 笑顔で泣く君
そんな悲しい目をして笑わないでよ

「君が好きさ」と 僕が言っても
君まで届かない まだ君まで響かない

「夜が怖い」と 憂鬱な目で
孤独を怖がる 寂しがり屋で

「人が怖い」と 泣き出した僕に
君の声は届いたから あの日 君の声は響いたから

「君が好きさ」 「僕がいるよ」

僕の想いが 君に届くまで
ここにいるから 僕はここにいるから

>これははっきりいって好みです。というか自分が落ち込んでいる時というかナーバスになっている時に言われたいです、願望です。読んでいてこういう人が身近にいたら幸せだなと思いました。最後の2行がいいんです、「(抜粋)君に届くまでここにいるから僕はここにいるから」の一言が選んだ最大の要因ですかね。自分を肯定してくれる、またただじっと側にいてくれる存在ははっきりいって有難いです。親身になって叱ってくれる人もありがたいですが。人は独りでは生きていけませんからね・・・


【ほんとう】

この世界 正解なんてないけれど
僕に見えるもの
僕の耳に届くもの
僕が思うこと
僕に触れた君の手や
昨日 君と見た花火が とてもキレイだったと
そんなことが
いちばんのほんとう

>うん、うんと納得するというか、やっぱり自分の見聞きや起きたことと照らし合わせたりすることなどして結局は自分で判断するものが自分の中での「真実」または「正解(ほんとう)」なのである…哲学的というかそこに行きつくような気がした。この感覚に共感というより共鳴した感じのほうが近いかな?て思います。昨日〜で始まる一行が少し青春の一ページみたいに爽やかで仄かに甘い感じが良かったのかも・・・あまり上手くまとめられませんでした。

【未来】

なにが正しくて
なにが悪いのか
そんなことひとつもわからないけれど
この先の道を
選んで掴み取っていく
それは私のこの両手

>ただひたすら共感したというか、この先の自分も同じようにして生きていくのだろう感慨もありました。詩的にも整っていてメッセージ性も強くバランス的にも良かったと思います。≪人生≫この先明るくても暗くてもそれは自分の手でが選んでいくのだから何があろうとも自分の責任なんだという決意も滲んでいるしそれを背負う不安が見え隠れしている感じにも取れましたが。運命とかそういうのに頼るというか悪くてもそのせいには出来ない生き方は辛いです…逃げる場所がないから。自分のせいにするよりも他人というか他のせいにして生きていくほうが楽ですからね、精神的負担が少なくて。うむ・・・どうも違う方向にズレていくので・・・この辺にしときます。

以上が私の批評と感想です。無理をせず納得のいく作品作りをして下さい。
次回作も期待して待っております。

千田由香莉 批評8/「水鏡」 2004年10月12日(火)20時54分06秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【息】

息をのむ音がした

何かを言おうとして
言葉と一緒に
のみこんだ 息
形になれずに
ふかくふかく
のみこまれて
とてもとても
苦しそう

こわがらないで
息をすることを
想いを言葉にすることを

(評)「言葉をのみこむ」という、行き場のない感じが好きで選びました。自分で自分の首をしめてしまう、苦しみたいわけじゃないのにそうしてしまう。そんな矛盾が痛いです。

【軌跡】

少しずつ
少しずつ 歩いて
きたけれど
僕の目指す
明日につくまで
あと何歩

(評)果てなんてないのだと、知っているような気がしました。歩いて初めて道に成る「軌跡」という”名前”が好きです。

【手紙】

綴じた封筒
わたすことができなくて
あの時言いたかった
ごめんなさいと
ありがとうは
今もピアノの上
時を止めたまま

(評)時間は容赦なく流れていくのに、思いを置き去りにした場所だけ時間が止まっている感じ。今もなお持ちつづけている捨てられない「想い」。でもそれは紙のように脆くて儚いものなのに、わかっているのにどうしても大事にしてしまうんですよね。

【未来】

なにが正しくて
なにが悪いのか
そんなことひとつもわからないけれど
この先の道を
選んで掴み取っていく
それは私のこの両手

(評)力強い!ですよね。正しいものなんてないけれど、確実に言いきれるのは、白も黒もすべての判断基準は自分にあるということですよね。読んだ後に「掴んだっ!」って、ガッツポーズしたくなります。

【ん】

私が小声でささやくと
あなたは少し目を細め
「ん?」とひとこと
やさしくたずねる

私が好きよと泣き出すと
あなたはつられて泣きそうで
「ん」となんども
やさしくうなずく

私が別れを伝えると
あなたは全てわかったように
「ん。」と一度
終わりを告

(評)終始、彼の返答は「ん」でした。でも、同じ言葉なのに、それぞれのニュアンスが違っていて、そこが愛しいと思いました。「ん」に込められたそれぞれの想いが、胸をちくちくします。
(総)なんだか私にとって、愛しい空気が漂っていました。矛盾だらけで今にも壊れそうなほどに脆い「願い」が、「カタチ」になった感じ。本のタイトルじゃないですけど、「限りなく透明に近いブルー」という色彩が浮かびました。(本の内容も知らないけれど、あくまでも色で)キャッチコピーは「鏡」をどうしても使いたくて、”水鏡”。些細な衝撃で、水面がぶれて見えなくなる。そんな風に脆くても、何度でも映し出す。そんな掴めない鏡が、この作品の空気に似合うような気がしてつけました。

土橋明奈 批評8/成さぬ脳。 2004年10月13日(水)01時54分09秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【うわばみ】

そうしていつも
僕がどんなにか苦しんで
吐き出したものを
君はやすやすと
のみこんでしまうんだね
大したことないよと
笑顔で
大丈夫だよと
うなずいて

怖い。と、一瞬思ってしまう。そんな人が側に居て欲しい様な欲しくない様な。
素敵だとは思うのに何だか安心出来ない詩。

【最終電車】

最終電車 走るよ
くらいくらい線路の先に
なにがるのか 
見えないけれど

ホームにすべりこむ電車
ふきこむ風に おびえるけれど
大丈夫 
かならずどこかに つながっているから

今日はおしまい
バイバイまたね
また明日

人工物の鉄の塊
たったひとつあたたかな僕

次の電車は朝日を浴びて
違う日の中 走るのだろう

ファンタジィに見えました。情景が好きでした。平仮名と漢字はどう選んでいるのですか。
`たったひとつあたたかな僕´は浮付いてる気がしました。

【ナイフ】

「赤い屋根の
 白いお家で
 茶色い犬をかうの
 それが夢なの」
カラフルな君のナイフ
となりの男の子につきささった
君は満面の笑みで
彼の鮮やかな血に気づかないから
思わず指差して
ゲラゲラ笑ってしまった

`君は満面の笑みで´で`鮮やかな血´この組み合わせが好きです。
`思わず指差してゲラゲラ笑ってしまった´ああ、可愛い。

【縫い目】

君と僕とをつなぎましょう
君と僕との境目が
くっきりしてるの 嫌だから

皮膚と皮膚をビラリ剥がして
ちくりちくりと縫い合わせる

この針はきっと愛という名で
この糸はきっと絆という名で

君と僕とがつながったなら
君と僕がつながれたなら

縫い目はギザギザ

君は痛いと泣くけれど
君の痛みは僕の痛み
僕も痛いと泣けるから

縫った処で何が繋がるのか。縫えば境目が際立つ。痛いのは好きですが。

【軒下】
激しい雨に
ぐっしょりやられて
げっそりなって
雨宿り

遠くのほうから
走ってくる君
ぐっしょりで
からっと笑顔で
こんにちは

やあやあひどい雨ですね
まったくひどい雨ですね
いったいどちらに行かれるのです
私は私へ
君は君へ

どうやら大分やんできたのか
私の行く先 雲間が見えた

ではこのへんで
どうかお元気で
君よ どうかお元気で

激しい雨の中
もう一度足を踏み出した

浮かぶ情景が良かったです。最後2行無くても良いと思いました。
そんな出会いをしたいです。

滝 夏海 批評8/ひとしずくの想い 2004年10月13日(水)09時14分02秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【うわばみ】

そうしていつも
僕がどんなにか苦しんで
吐き出したものを
君はやすやすと
のみこんでしまうんだね
大したことないよと
笑顔で
大丈夫だよと
うなずいて

 2・3行目は「吐き出すのに苦しんだ」のか「苦しんだから吐き出した」のか、のみこむのと吐き出す・溜め込むのはベクトルの向きが違うから使う力も違うのではないか、など気になる部分はありますが、そんな事どうでも良いくらいにこの詩が好きです。自分の弱さ・相手を強いと思う気持ち・少しの羨ましさ、いろんな感情がない交ぜになった雰囲気。

【存在】

誰か
私の悲しみを否定して下さい

この酷い想いを
この陳腐な考えを
その根底にある 存在不安を

否定して下さい

私はここにいて良いのだと
私はここにいるのだと

誰か 教えて

「悲しみを否定する」というフレーズに惹かれました。ただ、最後の3行は説明しすぎな感じがするので、無い方が残る印象が強いと思います。

【体温】

かなしくて
くやしくて
どうしようもなく
自分が嫌で
泣きたくて
だけど泣けなくて
そんなあの日
ずっととなりで
空を見ていた
君の体温が
やさしくて
あたたかくて
すべてのトゲが
お日様に溶けて
じわりとしみて

僕の目にしずく

 河原の草の上、もしくは屋上で2人並んで空を見上げ、その横にふわんふわんと1行ずつ浮かんでは消える…そんなイメージが浮かびました。絵本のような物語。

【Happiness】

Always Mummy said,
"I love you, Baby,
I love you.
So U must be happy!"

Oftentimes Daddy said,
"I love mum, and
She love you.
So U must be Happy!"

Sometimes Grandma said,
"I love dad, and
He loves mum, and
She loves you.
So U must be HAPPY!"

『人に愛されることは、幸せなことだから』

I must be happy...HAPPY?

 コマ割りして絵を付けたら面白そう。テンポ良く読んでいって、最後は思わず主人公と一緒に「んんん?」と眉間に皺を寄せて首傾げてしまいました。

【おしまいの音】

私の中に
脈々と流れる旋律は

君に合わせて
彼に合わせて
あの子にあわせて
空にあわせて
風にあわせて
お日様にお月様に あわせて

テンポを変えて
リズムを変えて
時にハーモニー
時に独奏
移調転調
B、F、C、G、

終止符知らず
たまにリピート
コーダはまだまだ
先のこと

あらゆるものに共鳴しながら
身体をめぐり 欠片を唄う

この身体朽ち果てるまで。

 綺麗に纏まっていて、読んですぐにすっと体に溶けました。気になるのはタイトル「おしまいの音」おしまいというより、寧ろ振り出しに戻るような気がします。強制的に初めの音に戻させるくらいのイメージのタイトルと付けても良いのでは。

 全体的な事ですが「どこかで聞いた事のあるようなフレーズ」が多く見られます。それは馴染みやすいし、耳に心地よいかもしれません。けれど、どれを読んでも「あれ?どこかで聞いた?」と思わせてしまうのは、勿体ない。「どこかで聞いた事がある」ようだけど「菊池加奈子でしかありえない」部分、例えばテンポ・言葉の選びかた・繋がり、そのような物をもっともっと増やしていくと魅力が文字から外へと押し出されてくると思います。

高澤 成江 批評8/ぽわぽわ綿毛 2004年10月13日(水)12時47分26秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【うわばみ】

そうしていつも
僕がどんなにか苦しんで
吐き出したものを
君はやすやすと
のみこんでしまうんだね
大したことないよと
笑顔で
大丈夫だよと
うなずいて


「君」みたいな子が隣にいてほしい。苦しんで吐き出したものを笑顔で軽く飲み込んでもらえるとほっとする時ってありますよね。辛いときに限って大したことないよ、とか大丈夫だよ、って簡単な言葉で慰められると嬉しい気がする。暖かい感じの詩だと思いました。

【ケーキ】

ショートケーキにモンブラン
チーズケーキとティラミスと

甘いものはおいしいけれど
食べ過ぎると 太るんです。

甘い言葉は優しいけれど
食べ過ぎると 太るんです。

上手い表現の仕方だと思いました。甘い言葉は確かに太っちゃいますねえ。気を付けなければ!!

【体温】

かなしくて
くやしくて
どうしようもなく
自分が嫌で
泣きたくて
だけど泣けなくて
そんなあの日
ずっととなりで
空を見ていた
君の体温が
やさしくて
あたたかくて
すべてのトゲが
お日様に溶けて
じわりとしみて

僕の目にしずく



ストレートで判りやすい詩でした。テンポがいいので読みやすいです。最後の一文の「僕の目にしずく」っていうのがなんだか好き。

【ほんとう】

この世界 正解なんてないけれど
僕に見えるもの
僕の耳に届くもの
僕が思うこと
僕に触れた君の手や
昨日 君と見た花火が とてもキレイだったとか
そんなことが
いちばんのほんとう


なんだか共感できる詩でした。世界の問題とかより好きな人とのことが自分にとっては大切、みたいな感じが好きです。そんなふうに思われてみたいです。

【を】

君の声を
涙の色を
笑顔のあたたかさを
空の遠さを
海の懐かしさを
花のかぐわしきを

私が私であるということを

終わるひとつ前のことを



「を」という言葉の使い方が上手だなあ、と思いました。語尾に「を」を付けると続きがあるようでなんだか意味深な感じがします。「終わるひとつ前のことを」とはどういう意味なんですか?「を」があいうえをの最後から2番目だからですか?

全体的に暖かくて可愛い感じの詩が多くて癒されました。50音お疲れさまでした。




前澤貴仁 批評8/まぶしい朝はきっと来る・・・ 2004年10月13日(水)13時17分50秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【朝がくるまで】

どんな夜でも
朝はくるよと
痛みをのりこえた君が
強い強い目で言うから

こんな夜でも
いつか朝はくるのだと
今は痛みを
ただうけとめて

朝がくるまで

・「朝はやってくる」なんて希望のある言葉でしょうね。
 夜明けは時に、あぁ朝が来たんだなー。今日もがんばろーって思わせてくれます(笑)
 ひとつの希望の表れですね。
 僕も自分でこんな言葉をいれた作品を作りたいものです。

【軌跡】

少しずつ
少しずつ 歩いて
きたけれど
僕の目指す
明日につくまで
あと何歩

・明日は「夢」でしょうか?
 夢に向かって一歩ずつ歩く。そんな印象を受けました。
 歩いてきた道は自分の人生の軌跡となる。

【誓い】

そばにいてください
今となりにいてください
永遠をその指輪に誓うのならば
今ここにいるとこの指先に
誓って

・【印】と対にもなりえる作品ではないでしょうか?
 印と対比してみると短い文章と指輪にぎっしり思いが詰まってますね。
 それだけに僕はこっちのほうが好きですね。
【フィールド】

君はその笑顔の裏で
ずっと戦っていたんだね。
そしてその足で道を踏みしめ
これからも戦っていくんだね。

苦しくても辛くても
それでも最後に笑えるように。

・ゲーム性、ファンタジー色が強いかなと。
 登場人物などの視点からの作品……もとネタがありそうですね。

【未来】

なにが正しくて
なにが悪いのか
そんなことひとつもわからないけれど
この先の道を
選んで掴み取っていく
それは私のこの両手

・善悪の判断。一般論では答えれない他問題もあり、結局は誰もかもが悩み。
 やがて自分の信じた道を進んでく。
 自分のその手で未来を掴め!

 (選んだ理由としてはただ単に自分が未来って言葉に弱いだけですw)

松本紗綾 批評課題8/受け手送り手 2004年10月13日(水)15時20分28秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【ここにいるから】

「自分が嫌い」と 笑顔で泣く君
そんな悲しい目をして笑わないでよ

「君が好きさ」と 僕が言っても
君まで届かない まだ君まで響かない

「夜が怖い」と 憂鬱な目で
孤独を怖がる 寂しがり屋で

「人が怖い」と 泣き出した僕に
君の声は届いたから あの日 君の声は響いたから

「君が好きさ」 「僕がいるよ」

僕の想いが 君に届くまで
ここにいるから 僕はここにいるから

最初の2行がグッと来ました。もし、目の前の人が笑顔で泣いていたら、悲しい目をして笑っていたら・・・と考えると、なんともいえない気持ちになり。もし、自分が必死に笑っているとき、そんな言葉を言われたら・・・と考えると、これはこれでどうすればいいのかわからなくなる。

【存在】

誰か
私の悲しみを否定して下さい

この酷い想いを
この陳腐な考えを
その根底にある 存在不安を

否定して下さい

私はここにいて良いのだと
私はここにいるのだと

誰か 教えて

相手に言われたい言葉がある上で、問う。言ってくれるだろうと信じているからこそ、問う。その言葉を言われたら妙に安心しきって、言われなかったら・・・。

【道化】

みんなのまえで
ぼくがじょうずにわらえたら
閉じた右目
まぶたにそっと
哀れみのキスをください

最初の2行がかなのみで構成されていて、最後の3行には漢字も使われている。その違いが、表と裏のように感じ、「ぼく」についていろいろ考えさせられた。私なら、4行目にも漢字を入れただろうなと思った。(まぶた→瞼など)

【ほんとう】

この世界 正解なんてないけれど
僕に見えるもの
僕の耳に届くもの
僕が思うこと
僕に触れた君の手や
昨日 君と見た花火が とてもキレイだったとか
そんなことが
いちばんのほんとう

正解と、ほんとう。似たようなモノかと思いきや、それらは違うモノなんだと気付かされた。改めて、言葉の魅力を教えられた。

【約束】

毎日スケジュールを埋めて
約束と約束を
繋ぐように生きる

終わることのない約束に
うんざりして
約束がなくなってしまうことに
おびえながら

誰かに囚われながら生きる
そんな君が悲しくて

少しは自分のために生きてもいいよと
伝える為に
僕はもう一度 約束をする

最後の1行が選ぶ決め手となった。彼らの関係や、彼らの背景など勝手に想像しては思わず笑顔になってしまった。

真っ暗な影があるからこそ、そこに光が差したとき明るいと感じ、自分以外の人がいるからこそ、嬉しくなったり悲しくなったりするんだと全部を通し思った。表があるところには必ず裏はある。

加賀麻東加 批評8/100%自分好み選択 2004年10月13日(水)15時44分09秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

 批評の順番は印象に残った順とさせて頂きました。
 全体的な感想は、物凄く印象に残った詩と、さらりと流してしまう詩との差があると感じました。
 だからこそ自分好みの詩が余計に目立ち、菊池さんご本人とはまた違う意味合いや気持ちだとは思いますが、共感出来た詩や何だか泣きそうになる詩もありました。
 個人的に、どうしてここでこの言葉を入れたのだろうと気になり、良い言葉が中にあるにも関わらず選択からはじいた詩もありました。
 例を挙げると【モノトーン】の場合。

僕のモノトーンの世界を
まるで魔法のように
鮮やかに彩る君の指
色とりどりの世界を
この手のひらに

 率直に素晴らしいと思いました。
 色の無い世界にこの短い文で一気に鮮やかなイメージが頭に浮かび、魔法の世界のようなものを想像出来ました。
 だからこそ「君の指」が気になってしまいます。
 世界という大きなスケールの中、指という単語は小さい気がして不釣り合いに思えました。こだわる理由があるとしたら構わないと思いますが、意図を是非知りたいです。

 そして読んでいくと、全体的な特徴というか菊池さんカラーが見えた気がしました。
 「囚われる」「お日様」「花火」などの単語が目立つ事、そして「私」ではなく「僕」をほとんど使う事などが特徴でしたが、菊池さんが好きな言葉なのでしょうか。勘違いだったら申し訳ないのですが、【浴衣】とかは実話に感じました。もし実話だったら、もっともっとリアルに出来るはずですし、そうでなくても【浴衣】に関してはもっと泣ける詩に出来ると思いました。(偉そうに…)
 では選んだ五作を。

【鐘】

黒い人の群
白い人の群
誰がために鐘は鳴る

君のため
彼のため
あの子のため
誰がために鐘は鳴る
誰がために我は在る


 初めて読んだのが確か結構前?確か六月頃。
 「誰がために鐘は鳴る 誰がために我は在る」のフレーズが格好良くて、実はこのフレーズが今日の今までぼんやり頭に浮かぶ位印象に残った詩です。私の中ではダントツでした。とにかく格好いい。私の頭には浮かばない文です。すごいと思います。何か、昔っぽい渋い詩だなぁと感じました。
 昔といえば、ゲームで確か「カエルのために鐘は鳴る」だったかなぁ?そんなゲームがあったと思い出しました。

【無色透明】

みんなみんな『個性』という枠に囚われて
自分を青や赤や黄色に やたら染めたがるけれど
その中で 己を透明だと嘆く君は
僕の目に強くまぶしく こんなにも鮮やかなのに


 目立つ!すごくいい。
どんな詩よりもひと際光ってますよ。
 透明という単語をうまく使い、更に詩全体を美しい印象に仕上げてます。
 「みんなみんな」と繰り返した事、「鮮やかなのに」の「なのに」で終わらせたとこを知りたいです。

【未来】

なにが正しくて
なにが悪いのか
そんなことひとつもわからないけれど
この先の道を
選んで掴み取っていく
それは私のこの両手


 シンプルでいいですねー。
進路ややりたい事が分からずに昨日は考え事をしていたので、丁度共感出来る詩。
 【未来】の前後の詩とはまた違うから、何か目立ちますね。


【ほんとう】

この世界 正解なんてないけれど
僕に見えるもの
僕の耳に届くもの
僕が思うこと
僕に触れた君の手や
昨日 君と見た花火が とてもキレイだったとか
そんなことが
いちばんのほんとう


 これ泣きそうになりました。
 詩の内容とは関係ないけれど、片思いをしていて、なかなか会えないし気持ちも届かない時や恋で切ない思いをしている時にこれを読むと、多分、ぼっろぼろ泣けて来ると思いますよ。好きな人の大きな手や、ささいな会話さえも愛おしいと思う事実はほんとうで、そしてずっと一緒にいたいと想うこともほんとうなんだろうなぁ。

【晴天】

見上げたら
空はどこまでも青く青くあって
其れは変わらずに遠く広くあって
それだけで僕は…

本日は、晴天なり。


 きれい。これが印象。
 菊池さんの詩は色を出すものが多く、中でもこの詩は自分の一番好きな水色を放っていたので選びました。詩に色を持たせる事が出来るのは菊池さんの良さだと思います。
 夏に何度も見上げた真っ青な青空を思い出させてくれた詩です。

 普通にこれだけの詩を書いて、すごいなぁという感想が一番です。
これからも頑張って下さい!





越智美帆子 批評課題8/淡々とした物語の数々 2004年10月13日(水)16時04分00秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【ストマックエイク】

『ぐちゃぐちゃ』
『どろどろ』
『わけがわからない』
『もう駄目だ』

弱音で膨れた腹が痛い


「弱音で膨れた」というのが、とてもおもしろくかつ頷いてしまうような言葉で、その的確さにはっとしました。

【軒下】
激しい雨に
ぐっしょりやられて
げっそりなって
雨宿り

遠くのほうから
走ってくる君
ぐっしょりで
からっと笑顔で
こんにちは

やあやあひどい雨ですね
まったくひどい雨ですね
いったいどちらに行かれるのです
私は私へ
君は君へ

どうやら大分やんできたのか
私の行く先 雲間が見えた

ではこのへんで
どうかお元気で
君よ どうかお元気で

激しい雨の中
もう一度足を踏み出した


これはとても好きです。短いのにちゃんと物語のようになっていて、言葉の単調さも雨の中という陰鬱な背景にマッチしているように思えます。

【メール】

君に出したメールの返事を
待ってる自分が歯がゆくて
そっと指で 電源を切る。


こういうことってある! と思い選びました。待つもどかしさに耐えきれない夜ってありますよね。

【モノトーン】

僕のモノトーンの世界を
まるで魔法のように
鮮やかに彩る君の指
色とりどりの世界を
この手のひらに


菊池さんのサイトにもこの言葉がありますが、それを見たときから「おお、すごい!」と思ってました。モノクロの世界が他者の指によって彩られる。他者への依存のようにも思えますが、それほどその「君」を愛おしく思っていることが感じられます。

【LIE】

痛みの数だけ優しくできる なんて
なんて酷い嘘

うけた痛みの分だけ
人は必ず傷つくはずで
傷の深さの分だけ
人は苦しんでしまうのに

もし君が傷ついた分
僕に優しいのだとしても
なにも嬉しくはない

泣いた分だけ優しくなれる なんて
泣かせた誰かの
酷いまやかし


共感しました。傷ついた人間が優しくなれる、というのは諦念がつくりあげた幻想です。そう思わないと悲しすぎるじゃないか、というような。感情に直視することは、痛みをえぐり出すという厳しい作業になりますが、そうすることで癒されるものもあるはずです。



雨宮弘輔 批評8/言霊の幸ふ所 2004年10月13日(水)16時14分28秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【鐘】

黒い人の群
白い人の群
誰がために鐘は鳴る

君のため
彼のため
あの子のため
誰がために鐘は鳴る
誰がために我は在る

〇<人の群>に色をつけているところが衝撃的でした。「十人十色という言葉はあるけれど、群れになってしまえば皆同じ」という印象を受けました。『群』って、それ自体が一つの思想を持っているような存在に思えて、不思議ですよね。
ついでにこれを読んでいて、ヘミングウェイ原作の『誰がために鐘は鳴る』の映画を観たくなりました。

【印】

ピアスをプレゼントするので
耳につけていてください。
ゆびわをプレゼントするので
薬指につけていてください。

僕がいない間も
身につけておいてください。
僕がいない間にこそ
見せつけておいてください。

それは僕のハンコです。
「僕のもの」という
印です。

○人にアクセサリーを渡すことって難しいですよね。趣味の問題もありますけど、渡された人が、そのアクセサリーを身に着ける度に自分のことを思い出しそうで、気が引けます。でも、やっぱ好きな人には「何か印を付けたい」という願望が沸いてきますよね。なんて言うか……汚したい欲望? あっ、それはちょっと違うか。

【ストマックエイク】

『ぐちゃぐちゃ』
『どろどろ』
『わけがわからない』
『もう駄目だ』

弱音で膨れた腹が痛い

○最後の一行が新鮮でした。あまり聞かない言葉だから。でも、共感を呼びます。
弱音は『甘え』を求めることに似ています。「弱音って、お菓子と一緒で時には必要ですけれど、求めすぎるとお腹を壊す」という考えを起こさせてくれる作品です。


【Happiness】

Always Mummy said,
"I love you, Baby,
I love you.
So U must be happy!"

Oftentimes Daddy said,
"I love mum, and
She love you.
So U must be Happy!"

Sometimes Grandma said,
"I love dad, and
He loves mum, and
She loves you.
So U must be HAPPY!"

『人に愛されることは、幸せなことだから』

I must be happy...HAPPY?

○COCCOの曲を思い出しました。名前は忘れてしまったのですが、豚を屠殺する曲です。
家族の愛って無条件で保障のあるものだと、よく言われますが、それって見方によっては怖いことですよね。そんなことを思い出しました。<人に愛されることは、幸せだから>という箇所も、自分が幸せであることに疑問を持たせてくれる文で好きです。


【LIE】

痛みの数だけ優しくできる なんて
なんて酷い嘘

うけた痛みの分だけ
人は必ず傷つくはずで
傷の深さの分だけ
人は苦しんでしまうのに

もし君が傷ついた分
僕に優しいのだとしても
なにも嬉しくはない

泣いた分だけ優しくなれる なんて
泣かせた誰かの
酷いまやかし

○傷ついた分だけ優しくなれる人もいますけど、僕は傷ついた分だけ他人に厳しくなってしまう人しか知りません。「優しさ=厳しさ」とは思えない厳しさです。
「本当に傷の人は深さだけ、優しくなれるのか」という疑問に<酷いまやかし>という結論をつけた部分が印象に残りました。ついでに僕は、傷ついた分だけ優しくなれる人間が、どこかで存在することを信じています。

 露木さんも述べているように菊池さんの詩はストレートなものが多いと感じました。メッセージ性が強いということではなく、言葉が具体的で文芸的な部分からかけ離れていってしまうのが、個人的に惜しかったです。でも、五十音で一つひとつ詩を創るのは、大変な能力と労力がいることだと思います。凄いことですよね。あの蜷川幸雄も『オイル』という劇で同じようなことをやっていたのですけれど、それに衝撃を受けた記憶があります。
 最後に、普段あまり詩を読まないせいか批評が難しかったです。批評というよりも感想になってしまいましたね。もし的外れな意見を述べてしまっていたら、ごめんなさい。『詩』というものは、どこに注目して読むものなんでしょうか? 未だにわかりません。今度、皆さんに訊いてみたいと思っています。


野島明菜 批評8/私に響いた詩を選びました。 2004年10月13日(水)16時14分53秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【ここにいるから】

「自分が嫌い」と 笑顔で泣く君
そんな悲しい目をして笑わないでよ

「君が好きさ」と 僕が言っても
君まで届かない まだ君まで響かない

「夜が怖い」と 憂鬱な目で
孤独を怖がる 寂しがり屋で

「人が怖い」と 泣き出した僕に
君の声は届いたから あの日 君の声は響いたから

「君が好きさ」 「僕がいるよ」

僕の想いが 君に届くまで
ここにいるから 僕はここにいるから

批評:「響く」という言葉がすごくきれいだという事に気付かされました。タイトルにその言葉を入れたほうが、この詩に合うかも。「夜が怖い」といったのは彼女?それとも僕?

【手紙】

綴じた封筒
わたすことができなくて
あの時言いたかった
ごめんなさいと
ありがとうは
今もピアノの上
時を止めたまま

批評:最後の一文はゴロが合わない気がします。だけど内容に共感できるのでこの詩が好きです。

【ナイフ】

「赤い屋根の
 白いお家で
 茶色い犬をかうの
 それが夢なの」
カラフルな君のナイフ
となりの男の子につきささった
君は満面の笑みで
彼の鮮やかな血に気づかないから
思わず指差して
ゲラゲラ笑ってしまった

批評:なぜナイフがつきささったのか意味が分からないけど、「カラフルな君のナイフ」という言葉がすごく美しくて格好いい!ひと目惚れじゃなくて、ひと耳惚れしちゃった!ゲラゲラという笑い方も下品で好きだなぁ。

【モノトーン】

僕のモノトーンの世界を
まるで魔法のように
鮮やかに彩る君の指
色とりどりの世界を
この手のひらに

批評:魔法、鮮やか、彩る。この言葉は色とりどりの世界をほんとイメージさせてくれます。きれいで好きだなぁ。タイトルを「モノトーン」にするならば、僕についての文章をもう少し付け足してもいいかも。

【おしまいの音】

私の中に
脈々と流れる旋律は

君に合わせて
彼に合わせて
あの子にあわせて
空にあわせて
風にあわせて
お日様にお月様に あわせて

テンポを変えて
リズムを変えて
時にハーモニー
時に独奏
移調転調
B、F、C、G、

終止符知らず
たまにリピート
コーダはまだまだ
先のこと

あらゆるものに共鳴しながら
身体をめぐり 欠片を唄う

この身体朽ち果てるまで。

批評:人生を詠ってる感じがいいですね。「独奏」「終止符知らず」という部分が、共感できるので好きです。作品全体のタイトル「音の箱」もすごくきれいな響きが聞こえてきそうな感じで好きだなぁ。 

瓜屋 香織 批評8/いつか誰かが思ってたこと 2004年10月13日(水)18時10分19秒
▼課題と連絡:批評課題8/菊池佳奈子「音の箱」批評 への応答

【ここにいるから】

「自分が嫌い」と 笑顔で泣く君
そんな悲しい目をして笑わないでよ

「君が好きさ」と 僕が言っても
君まで届かない まだ君まで響かない

「夜が怖い」と 憂鬱な目で
孤独を怖がる 寂しがり屋で

「人が怖い」と 泣き出した僕に
君の声は届いたから あの日 君の声は響いたから

「君が好きさ」 「僕がいるよ」

僕の想いが 君に届くまで
ここにいるから 僕はここにいるから

 ○誰かにこういうことを言ってもらえる、もしくはこういうことを言ってあげたい誰かがいる、そういう人ってこの世の中で、どのくらいいるのだろうと思いました。

【存在】

誰か
私の悲しみを否定して下さい

この酷い想いを
この陳腐な考えを
その根底にある 存在不安を

否定して下さい

私はここにいて良いのだと
私はここにいるのだと

誰か 教えて

 ○「私はここにいて良いのだ。」と誰かに言ってもらう、もしくは思ってもらうために、明日も明後日も生活しているような気がする日があります。


【紡ぎ歌】

きれいなことばを吐きましょう
どんなにみにくい私でも
つむぐことばがきれいなら
少しはきれいに見えるやも

きれいなことばを吐きましょう
どんなにみにくい感情が
ことばの裏にあったとて
ことばの面のきれいさに
ごまかされるやもしれません

きれいなことばを吐きましょう

きれいなことばを吐いたなら
こんなに醜い内側も
いずれきれいになるやもしれぬ
いずれきれいになって欲しいと

きれいなことばを吐きましょう

 ○人からは、内側はなかなか見えないものだから、表面だけきれいにしておいたらきれいにみえるかもしれないけど、なんだかさみしい。けれど、本当に大切なのは、みにくくてもきれいになってほしい、と願う心かもしれないな、なんて思いました。

【ほんとう】

この世界 正解なんてないけれど
僕に見えるもの
僕の耳に届くもの
僕が思うこと
僕に触れた君の手や
昨日 君と見た花火が とてもキレイだったとか
そんなことが
いちばんのほんとう

 ○ほんとうのことは、ひとの数だけあるのかもしれない。だれかのほんとうは、じぶんかもしれない。なんてことを考えました。


【ん】

私が小声でささやくと
あなたは少し目を細め
「ん?」とひとこと
やさしくたずねる

私が好きよと泣き出すと
あなたはつられて泣きそうで
「ん」となんども
やさしくうなずく

私が別れを伝えると
あなたは全てわかったように
「ん。」と一度
終わりを告げた

 ○実際の場面が思い浮かぶというよりは、言葉でつくられる世界がひろがる感じがしました。全体から、やさしいかんじが漂っていて好きです。

 菊池さんの作品は共感するものが多かったです。
誰もが心の中に思いながら、ながしてしまう感情を言葉の中に残している気がしました。

管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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