「物語の作法」課題提出板の検索

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土橋明奈(.)*>作品 の検索結果(ログ47)


土橋明奈 作品1/冬の行事 2004年12月01日(水)02時35分05秒

それは黄緑のラインが入った銀色の乗り物が街をぐるぐる廻り出すずっと前のお話。
君の頬に触れる事を幸福だと気付くよりずっとずっと前の物語。

昔々のある冬の日、三郎太爺さんは還暦のお祝いを盛大に挙げてもらってご満悦でした。
嬉しくて嬉しくって仕方なかった三郎太爺さんは皆にお礼をしようと考えました。
そこで祝ってくれた人達に、ささやかな贈り物をしようと決めました。
寒い地方だったので風邪をひかぬ様それぞれの贈り物に靴下を添え・・・ではなく、
それぞれの贈り物を靴下に詰めて用意をしました。
内緒の話、三郎太爺さんは少しボケていたのです。
折角用意したものの、家族達はあまり三郎太爺さんを外に出したがらなかったので、
三郎太爺さんはこっそり夜中に届けるに事しました。
赤いちゃんちゃんこを着込み愛犬の一郎太と二郎太にソリを引かせて、
暗く深い雪の中へ贈り物を配りに行きました。
深夜の事なので皆は当然夢の中です。
三郎太爺さんは気にせず、勝手口や窓や屋根裏から家に入って贈り物を枕元に置きました。
翌朝になって皆は謎の贈り物に驚きました。
三郎太爺さんは贈り物をした事に満足をし、名乗り出る事はしませんでした。
皆は三郎太爺さんのした事だとすぐに気付いたのですが、素知らぬ顔を決め込む三郎太爺さんに
嬉しい気持ちだけを伝え、誰がした事か分からないフリをしました。
味を占めた三郎太爺さんはそれから天に召されるまで毎年冬になると、
赤いちゃんちゃんこを着込み愛犬の一郎太と二郎太にソリを引かせて、
暗く深い雪の中へ贈り物を配りに行く様になりました。
三郎太爺さんの話は伝統になり、伝説になり、西洋にまで伝わって行き、
今でも細々と世界中で語られ、続けられている冬の小さな行事になりました。

それは小さな箱を使って遠くの人とおしゃべりをし出すずっと前のお話。
君が躊躇い無く頬に触れさせてくれていたよりずっとずっと前の物語。

土橋明奈 作品2/フライパン 2004年12月03日(金)21時28分53秒

泉にフライパンを落として困っていた若者に泉の精が尋ねました。

「あなたが落としたのは、
 金のフライパンですか?
 銀のフライパンですか?
 それとも普通のフライパンですか?」

若者は正直に答えました。

「僕が落としたのは、普通のフライパンです」

泉の精は若者の正直さに感心して、こう云いました。

「正直な若者よ、あなたに普通のフライパンを返し、金のフライパンと銀のフライパンを授けましょう」

若者は喜びましたが、困った事には変わり有りません。
濡れた揚げパンと金属の揚げパンを貰っても、若者の空腹は収まらないのでしたとさ。

土橋明奈 作品3/ベンK 2004年12月03日(金)21時32分58秒

「はぁああぁ〜!?俺のノート失くしただと?今日のテストはノート無いとヤバイのに」

「ホントごめん。ごめんなさい!めっちゃ探したんだけど、何処かに挟み込んじゃったかもしんなくて・・」

「ぁあ、謝んなくて良いって、お前は悪くないから」

「・・へ?」

「悪いのはベンKだから・・」

「ベンケー?」

「知らんの?鎖国の時代にオランダから入ってきた妖怪の一種だよ。カウヤングに封印されたんだが、昨今それが破れたって話」

「へぇえー。知らんかった!そんで?何でベンケーが悪いの?」

「ベンKは賢すぎて、遅れた人間の学問を憎んでたんだ。そんで、書物やら古文書を隠す悪さを働いて退治されたんだけど。
 現代に復活したベンKは学校を狙い始めたんだよ」

「そうか!それでお前のノートを隠したのか!!」

「・・・・おそらくな」

「どうすれば退治出来るんだ?」

「あぁ、退治の方法までは知らんが取り返す方法なら知ってる」

「どんな!?」

「失くした奴の向う脛を蹴飛ばすんだ。思いっきり」

「・・・俺の?」

「そう。お前の」

「痛いじゃん、俺」

「何云ってんだよ、お前は痛くないんだよ。
 ベンKと隠された人には特別な絆が出来て、そのスイッチングポイントは向う脛なんだ。
 それはベンKの弱点なんだけど、そこを蹴る事によって観念して返すんだよ」

「・・・・・お前、賢いなぁ〜」

「常識だぜ?」

「じゃあ、俺の向う脛蹴ってくれ!」

「おう!きっとこれで、もう一回探せば見つかるよ。もし、見つからなければベンKにもう一発だな!」

「だな!」

「じゃあ、行くぞ」

「うん!」

「テメェ、よくも失くしやがって・・・!!」

「えっ!?・・・・」

土橋明奈 作品4/大人 2004年12月03日(金)21時34分38秒

私は大人になった。

社会で認められたし、
耐える事も知ったし、
我が儘は云わないし、
人に物を譲る事も出来るし、
ある程度の経験は積んだし、
多くを学んだつもりはある。

「うふふ、子供みたい」

なんて、私が子供なら云われないだろう?

「あ、あう、あり、あ・・」

“ありがとう”と、
口から素直に云えなくなってしまったけれど、

「なあに?トイレなの?おじいちゃん」

相手が分かってくれなくても、そうそう怒りはしない。

それが大人ってもんだろう。

土橋明奈 作品5/ベートーヴェン 2004年12月03日(金)21時36分26秒

「お前、その頭どうしたんだよ!?」

「おはよー。あ、頭?格好良いだろ。俺、昨日からベートーヴェンなんだ」

「はぁ?唯の寝グセっぽいけどな」

「始めた仕事が結構肌に合っててさ」

「そりゃあ良かったな。始めた仕事って、確かだい・・」

「リズムが良いんだろうな。高い処も好きだし」

「流すなよ。だからベートーヴェンって。そんなオチかよ」

「大工だから第九でベートーヴェン!なんつってな」

「説明すんなよ」

「あっ俺、益岡に返す物があったんだ。そろそろ、行くわ」

「あぁ、じゃあな」

「ごめんな。一方的に喋っちまって。昨日から耳が聞こえなくってさ」

土橋明奈 作品6/9.81m/s² 2004年12月03日(金)21時38分37秒

4秒は長い。

もう大分こう、ホヤホヤしている気がする。
お腹がムズムズするのを除けば心地は良い。

そもそもは。
部屋の掃除が億劫で散歩に出たが面白い事など、
そうは無かった。
そう云えば、今朝のオムレツは上手くいった。
益岡の持って来た卵が良かったな。
あいつはイイ奴だ。
今度泳ぎを教えてくれると云ってたな。
早く教えて貰えば良かった。
今度は無理そうだ。
現在、散歩に出た絶壁で風に足を捕られ落ちている最中。
目測で80m強の高さだったから着水までは約4秒。
岩場は無かったから上手く入水出来れば助かるやも。
でも、泳げない。
しかし、受け身位は取っておくか。
あ、もう駄目だ。
海面が目のま

管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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