「物語の作法」課題提出板の検索

※空白も1つの文字として扱われます。複数語による絞り込み検索はできません。
 表示方法: 表示する
検索範囲:(ログ番号を入力:「0-8」で2001年度分、「9-20」で2002年度分、「21-31」で2003年度分、「-10」で0から10まで、「25-」で25以降すべて)
 ※エラーが出る場合、検索範囲をせまくしてください

城所洋(.|\r)*>(作品1|作品2|作品4|作品6|作品7) の検索結果(ログ34-40)


城所洋 作品1/張りぼて 2004年04月22日(木)21時47分43秒

初めて君に会った時
君はさながら水のようで
透き通った目 流れるような髪 滴り落ちる指先
それが僕を動かしたんだ
でも 何でだろう
僕という器は
水みたいに綺麗な君には似合わない気がして
新しく 焼き直したんだ

くわん、くわん、くわわわん
僕の気持ちをろくろに乗せて
うわぐすりを変えてみよう
もっともっと光沢を出して
さぁ、君は僕を気に入ってくれるかな?

・・・彼女には、合わなかったみたいだ
そうだよね
彼女には、こんな下卑た器は似合わないんだ

くわん、くわん、くわわわん
僕の気持ちをろくろに乗せて
今度はもっと大人しく
渋くてクールな色を出そう
さぁ、君は僕を気に入ってくれるかな?

・・・彼女には、合わなかったみたいだ
そうだ、形だよ
もっともっとスマートにしよう

くわん、くわん、くわわわん
僕の気持ちをろくろに乗せて
形を綺麗にくびらせて
アクセントに銀色をちりばめた
さぁ、君は僕を気に入ってくれるかな?

・・・彼女には、合わなかったみたいだ
どうしよう
もう、うわぐすりも切れた
良い形も浮かばない
残っているのは
どうしようもない この気持ちだけ

くわん、くわん、くわわわん
僕の気持ちをろくろに乗せて
素朴な僕が、出来上がった

もう、きっとだめなんだろう
それでも僕を差し出すと
彼女は喜んで僕を受け入れた

どうしてだろう
彼女は僕の何を見たのだろう
まぁ いいさ
これから、二人は始まるんだ
期待に胸を膨らまし
彼女をちびりと一口と飲んだ
でも、彼女には 味があって
それは、しょっぱくて とても、とてもしょっぱくて
思わず僕は 彼女を吐き出した

城所洋 作品2/泡沫の温もり 2004年05月06日(木)23時35分01秒

君と僕との関係は
まるでティーセットのようだと
最近 ふと、そう思うようになったんだ
君がカップで 僕は受け皿
ほら、僕はよく君に敷かれてたから
すると、差し詰め中身の紅茶は
君との生活なのだろう

普段はちょっとほろ苦くて
杯を交わす度に
シロップのように甘くなって
口喧嘩の度に
レモンのように酸っぱくなって
体を重ねる度に
ミルクのように滑らかになった

僕は君との関係に満足していたし
君と僕とは二つで一つだと
そう 思っていた

何でそうなったのか分からない
でも知らず知らずのうちに
僕達の紅茶は すっかり
冷めてしまっていたんだ

冷めた紅茶は君には似合わなくて
君は、僕の元から離れていった
僕は必死になって
君との生活を引き留めようとしたんだ
でも僕には無理だった
カップを失った紅茶は
小さな僕では、受け切る事は出来なかったんだ

可笑しいよね
本質的には 僕は紅茶を受ける入れ物なのに
僕一人では 単なる小皿でしかなかったんだ

・・・あれから、もう一年か
君は、一人でやっていけてるだろうか
君の事だ きっと大丈夫だろう
僕は、というと
未だに僕を敷いてくれる人を探していて
でも 今は、醤油とワサビを上にのっけている

城所洋 作品4/ボクらを造っているモノ 2004年06月18日(金)18時27分17秒

今日は彼女と久々のデートなんだけど
結局テキトーな服と髪型で家を出た
君は人々に自分の様を見せびらかす
一時間かけて作り上げたご自慢のツラを

何時の間にか蠢いている ある筈の無い見栄っ張り
この恋の構成材料は 男と女 膨らむ理想と薄っぺらな現実
でも知ってんだ
君が何故だか僕にだけ見せるすっぴんの笑顔を

「ねぇ! ホンネはエゴ? 何の為なんだ!?
なぁ、誰なんだよ 君を見せつけたい奴は・・・・・・。」

さっき見た新作映画の人気俳優は
昨日見たドラマでも同じセリフを吐いていた

何時の間にか飛び交っている ありふれた愛の言葉
この映画の構成材料は 資金と台本 新しい額縁と同じ絵のパズル
でも分かってんだ
これ以上甘くするには塩も必要なんだって

「ねぇ! ホンキはソコ? それでいいのかよ!?
なぁ、いい加減さ もう食傷気味なんだよ・・・・・・。」

君は何見てるの?何か見えてるの?
そう言ったら、彼女に思いっ切り蹴飛ばされたんだ

行き交う人は背も年も体型も違うのに
どいつもこいつも雑誌で見た服装ばかり

何時の間にかあふれている 輝かしいマネキン達
この街の構成材料は 鉄とコンクリート 沢山の嘘となけなしの夢
でも感じてんだ
ここの住人は皆、お高い仮面を被ってるって

「ねぇ! ホントはドコ? 誰が隠してる!?
なぁ、覚えてるか 何も無かったあの頃を・・・・・・。」
「ねぇ! ボクはココ! ちゃんと見えてるの!?
なぁ、聞いてくれよ 僕の構成材料は・・・・・・。」

城所洋 作品6/色眼鏡 2004年08月21日(土)21時36分35秒

絡みつくネオン
立ち並ぶ看板
薄暗い空
灰色の道

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

隣にいる誰か
通り過ぎる誰か
声を掛ける誰か
それを無視する誰か

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

そびえ立つ廃墟
犇めき合う雑踏
隠蔽する現実
倒錯する虚構

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

掻き分けた人波
差し伸べる電灯
気付く筈の無い真実
誰もが疑わない街並み

ここには本当の僕はいない・・・・・・・・・。

でも、僕は知っている
本当の本当は、何処にも無いって
在るのは、それだと思われる何か
在ったのは、それに近い別物

だから僕は、全てを僕に染めていく
僕にだけ見える、僕の色に
僕の主観
僕だけの本当

全てが僕の色に染まれ・・・・・・・・・。

城所洋 作品7/神が造り給うた、神を作りし存在 2004年08月21日(土)22時59分45秒

 8月20日 曜日:土曜日 天気:晴れ

午前11:30頃

母親に頼まれて昼食を買いにコンビニへ行く。
その時、家の階段で死にかけたセミを見つけた。
もがいている姿が可哀想で、下まで持って行き、植え込みに置いてやった

最初は、慈善だった

午後00:00頃

昼食を買い終え、家に戻る。
その途中、植え込みで動かなくなったセミを見た。
「最後は土の上で死ねて幸せだったかい?」
そう呟いて、そこを後にした。

この頃のは、きっと自己欺瞞だったと思う。

午後05:00頃

週刊誌を買いに、行き付けの衣料品店へ向かう。
だって、2日も早く発売するんだ。お得だろう?
その帰り、植え込みから出て、道路の上にいるセミを見た。
触ってみる。・・・動いた、まだ生きていたんだ。
苦し紛れにもがいて出てしまったのだろう。
僕はもう一度植え込みにセミを置いてやった。

単なる偽善だった。

午後07:00頃

夕食を食べに出かけた。
行き掛けに、植え込みを見た。
セミは、激しく羽を羽ばたかせていた。
あいつの回りには、無数のアリが群がっていた。
あいつは、必死になって追い払っていたんだ。

僕は、あいつを植え込みという戦場に送り出してしまったんだ。

午後09:00頃

腹も膨れ、夜の町を徘徊していた。
ふとオリンピックの様子が気になって家路につく事にした。
僕はまた、植え込みを見た。
暗がりでよく見えない。
あいつの羽音も聞こえない。
それでも目が慣れてくると、何とか見つける事ができた。
動いていない。
ちょん、と触ってみる。
動きはしない。
持ち上げた。
昼間はカシャカシャともがいていた足。
ちっとも動かない。

お前はやっと、死んだんだ。

午後11:00頃

日記を書いている。
ふと、植え込みいるあいつを思い出した。
朝になったらあいつは、いなくなっているんだろうな。
そんな事を思いながら、日記を綴った。

僕は正しかったのだろうか。
あいつは本当に土の上で死にたかったのだろうか。
食物連鎖。
僕はそれを思い、あいつを植え込みに下ろした。
でも現実は、ただ単にアリにエサをやっただけ。
そう思うのは、僕が人間だからだろうか。
人間って、何だろう。
食物連鎖を傍観する存在。
あいつはその中で生き、その中で死んだ。
僕は、何だか自分が生きているという自信が無くなってきた。
僕は生きているんだろうか?

それを考える事すら、おこがましいようで嫌になった。

管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
Powered by CGI_Board 0.70