「物語の作法」課題提出板の検索

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▼はるうらら の検索結果(ログ33-34)


雨宮弘輔 批評1/俺の日記から引用 2004年04月19日(月)01時26分12秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました

前半の明るい雰囲気と、後半の本の『つぶやき』の不吉さのギャップが好きです。この詩を読み終えた後、靴の中の石ころほどの小さな不安が残ります。
物が持ち主に対して何かを伝える作品は、数多くあります。僕はその中でも不安を示唆する言葉で持ち主の心を突き刺す表現が好きです。
『本は黙って付き合ってくれる唯一の友(だっけ?)』という言葉がありますが、つぶやいた本はあまり善い友ではなさそうですね。
7▼月夜の天国

群青の空に
月が出ていた
レモン色の
まんまるい月
あれはなぁに、と
君が言うので
天国だよ、と
僕は答えた

科学が発達する前、月は人々からどのように見られていたのだろう。10年前ほど前からそんなことを考えていたので、この詩は印象に残りました。
火星の表面に探査機が走っているこの現代の感覚でいえば、この詩の『僕』の答えはウソになりますね。でも僕はこのウソが好きです。こういうちょっとお洒落と滑稽さを含んだ映画の紳士さながらのウソ(ジョーク)なら、ぼくは週に一度位は言ってもいいと思います。
54▼アルバイター

氷を落とし 水注ぐ
喉が乾いてたまらない
洗剤落とし 床こする
汚れはなかなか落ちなくて
革靴で走り コップ割る
客に怒られ 詫び入れる
洗った灰皿 素早く戻す
帰る頃にはくたくたで
手にはいつでも火傷跡
夜空を見ながら 歌唄う
首をかしげて 星さがす
落ちない汚れで制服汚れ
泣くこともできず
ひとりで帰る

僕の家の近くにある居酒屋で、アルバイトをしている女の子を思い出しました。
彼女は頭に巻いたバンダナを汗で濡らし、フライパンの焦げであらゆる箇所を汚しながら働いています。傍から見たら必死になって働いているように見えます。そして余談ですが、休憩中はつまらなそうな顔をして店先でタバコを吹かしています。
そんな彼女を以前、駅で見掛けたことがあります。店の制服ではなく、どこか知的な女性を感じさせるお洒落な服装でした。僕は店で働いている姿とのギャップから、労働の切なさのようなモノを感じました。この詩も同様です。

批評というより感想になってしまいました。詩は昔、ヘルマン・ヘッセを少しだけ読んだ程度なので、これら詩が客観的に観て優れているのかどうか判りません。僕が、ただ55の詩の中で言葉から情景を想像しやすいモノを選びました。音読してみたら、リズム感もあったので文章の表現ということで考えれば、上手いと思います。

露木悠太 批評1/少数派の集合 2004年04月19日(月)02時58分53秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
 1位、▼街と夢
 「夜の街に出てネオンの中から」という出だしで、きらびやかな世界(と、インターネット)を連想しました。そのきらびやかな世界で夢を探してみたけれど、「見つかるのは嘘ばかりで」と言ってしまう。でもここは本音じゃなくて、『違う気がする』、もしくは『わからない』程度のことなのではないでしょうか。それでも「嘘」と言い切ってしまっているのは、この時の心情を強く表し、次の言葉を叫ぶため。続く「夢なんかどこにもなかった」が何だかとても痛くて切ないのはそのせいだと思います。『どこかにあるはずなんだけど、…もしかしたら無いのかもしれない』みたいな言葉の裏の不安を感じました。最後の「仕方がないので靴を一足買って家に帰りました」というところでは、ああ、それでもまた探しに行くのかなぁ、なんて思ってしまい、やっぱりそこにありそうなんだなぁ…と思いました。「夢なんかどこにもなかった」は、『夢だと思っていたものは違った』だったのではないでしょうか。僕のフィルターを通してみると、そんなふうに読めました。

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
 2位、▼はるうらら
 これはとてもストレートな詩です。同じような体験をしたことがある人なら、無条件に共感してしまうでしょう。今日はこの本を読んでしまおう、なんて決意しておきながら、集中できずやめてしまう。少し休憩、なんて言いながら。そんな時、誰にともなく悪い気がしてしまう。見過ごしてしまいそうな日常のささいなことをきれいに、しかしドキリと詠ってくれたとてもいい詩だと思います。

50▼選択の世界

道が二手に別れてた
川が両脇流れてた
僕はどちらも選べずに
乾いた道を眺めてた
渦巻く 川は 空映し
うつむく 僕は ただ虚しい
選ぶことに飽きていた
夢見る年は過ぎていた
ロクンロールみたいな
川の音
僕は そのまま飛び込んだ
ジャズポップみたいな
結末だ
 3位、▼選択の世界
 「ロクンロール」、この言葉に僕は引っかかりました。一応ロック好きな僕としては、『ん?』と首をかしげてしまったからです。『ロクンロール? それを言うならロックンロール、もしくはロケンロールだろ?』と思ったのです。でも何度か読み返してみて、その疑問は消えました。「ロクンロール」という語感は「トプン、トプッ…」という川辺の水が岩に当たる音に聞こえて、「ジャズポップ」は「ジャボーン!」という水に飛び込む音に聞こえたからです。…作者の意図するものかわかりませんが、この言葉の使い方はとてもおもしろいと感じ、3位に入れました。

 さて、僕が稲葉さんの詩集を読んでみて感じたことは、「少数派の集合」です。
 人にはどこかしらに穴ぼこが開いていて、そこを埋めるためにいつも何かを探しているような気がします。その場所も数も大きさも人それぞれで、求めるものも違います。
 稲葉さんの詩は、この詩集を読む限りでは、多くの人の小さな穴を埋めるより、少数の人の中くらいの穴を埋めているもののように感じました。僕もいくつかの言葉にはっとしました。しかし逆に何も感じ取れなかったものもありました。でも、きっとこれをわかる人がいるんだろうなとも思いました。故に少数派に届く詩の集合体なのだと感じました。それは強みでもあり、弱みでもあります。
 最後に、とても楽しく拝見させて頂きました。これからも創り続けてください。 

寺岡恵 批評1/共感と裏切り 2004年04月19日(月)14時35分01秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

稲葉さんの詩には内省的になりつつも、若者感覚の「ま、いっか」的な終結がいくつかあると思います。
登場人物はおそらく楽観的?な行動(言葉)で、
読んでいる方はそれによって突き放され、そのギャップが心地よかったりもします。
菊池さんも似たことをおっしゃってましたよね。
あと、リズムがいいものがたくさんあると思いました。
ただ、声に出して読むと、時々リズムが崩れるかなというところもありました。

4▼失うこころ、咲く桜

あまりに水ばかり垂れるので
くしゃくしゃに、こころ絞りました
春風に当てて乾かしたら
ふうわりと空へ逃げました
僕はことり、と胸が痛んで
こころの風船追いかけました
夢中で走っているうちに
いつの間にかぽっかり胸に穴
なにやら暖かいので 見てみると
ぎっしり桜が詰まってました
気づかぬうちに穴は埋まって
こころは もはや小さな点です
こころの代わりに桜を入れて
僕はそのまま帰ったのです

くしゃくしゃ・ふうわり・ことり・ぽっかり・ぎっしり

音がいいですね。絵本にでてきそうな…絵と合わせたい詩だと思います。
情景が浮かびます。

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
わかる気がします。共感できる詩です。
はるうらら出かけたくなったので
本当にそうなんだよね。本よ私は逃げていませんっ!

43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
最後の三行が好きです。
妙な突き放され感。
読んでいる方は一緒に夢を探している訳ですが、
当の本人はとりあえず家帰っちゃった。
悩んでいるんだけど、疲れてやめた。
私たちの世代にリアルな詩だと思います。



土橋明奈 批評1/薄手の手袋越し。 2004年04月20日(火)01時52分29秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
ストーリィ的に一番読みやすい物でした。ファンタジックな作品が多い中で割りと実物感がありました。
詩は飲み込み易さが要だと思うので。
それと、最後に靴を買っていなければこの詩を選んでいなかったです。
希望とも果てない無常とも付かない終わりが良いですね。

53▼無味乾燥

薄っぺらいCDが
飛び飛びの音を奏でてる
手帳の予定は抜け抜けで
昨日以降なら空いてます
空に穴あけ 月覗く
うるさいCD止めもせず
隣つきぬけ 奇をてらう
粗い 夜の 闇 粒子
猛々しく狂う 深夜の緑
耳に栓して今宵も眠る
何やってんだかって感じが気に入りました。
意味的理解はあまり出来ていませんが、情景イメージがし易いのが好印象です。
作品集後半はテンポが良い物が多いですが、内容とどちらが優先ですか。

6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
女の子らしくて、可愛らしい。童話の一節の様。嘘の存在感が絶妙。
本は何処へ逃げるのかこっそり追い掛けてみたいです。





前澤貴仁 批評1/集めた夢たち 2004年04月20日(火)17時02分26秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

一番
54▼アルバイター

氷を落とし 水注ぐ
喉が乾いてたまらない
洗剤落とし 床こする
汚れはなかなか落ちなくて
革靴で走り コップ割る
客に怒られ 詫び入れる
洗った灰皿 素早く戻す
帰る頃にはくたくたで
手にはいつでも火傷跡
夜空を見ながら 歌唄う
首をかしげて 星さがす
落ちない汚れで制服汚れ
泣くこともできず
ひとりで帰る
一番の理由としては『リアルな描写がたくさんある』ということ。うんうん分かると思って読みました。一人のどこにでもいる若者の、生活のひとかけらみたいで面白い。あとは音。リズムを付けても壊れない形がある気がします。

二番
43▼街と夢

夜の街に出て
ネオンの中から
夢を探そうとした
入り組んだ道を歩いて
何度も信号を越えて

靴はしだいに傷付いていくのに
見つかるのは
嘘ばかりで
夢なんかどこにも無かった
空はもう薄青かった
仕方がないので
靴を一足
買って家に帰りました
新しい靴はまた、次の夢を探す一歩になる。
って、感想じゃないですね。

三番
6▼はるうらら

ふと
出かけたくなったので
読みかけの本
膝に置きました
しおり代わりに
嘘を挟んで
軽やかに
ドア開け放ちます
鍵はかけなくて
良いでしょう
少し
出かけるだけだから
嘘を挟んだ本は微かに
逃げるのか、と
つぶやきました
やっぱり僕は物語が出来上がってるのが好きみたいで… しおりではなく嘘を挟む。理由は後付けで、少しこの本から離れたかっただけ。
作品から受けた僕なりの解釈です。
本文中にはないですが、タイトルから(僕だけですか?)桜を連想します。心地よい春。そんな作品。

松永洋介(アシスタント) 批評課題1で選ばれた作品の集計結果 2004年04月25日(日)00時15分40秒
▼課題と連絡:批評課題1/稲葉祐子「冷凍庫には入れないでください」 への応答

批評課題1で、稲葉祐子さんの詩集「冷凍庫には入れないでください」から各自3編を選んでもらいました。その集計結果です。
単純に、1回選ばれたら1票と数えました。順位をつけてくれた人もいましたが、重みづけ(たとえば1位3点・2位2点・3位1点とか)はしてありません。また、今回選ばれなかった作品は省いてあります。

⇒稲葉祐子 作品1「冷凍庫には入れないでください」
⇒批評課題1の投稿一覧

▼批評課題1集計結果
票数作品選んだ人
743▼街と夢越智、城所、松本、露木、寺岡、土橋、前澤
56▼はるうらら雨宮、露木、寺岡、土橋、前澤
536▼どうしようか高澤、滝、加賀、瓜屋、野島
41▼夜のサーカス児玉、滝、千田、室橋
34▼失うこころ、咲く桜越智、寺岡、高澤
37▼月夜の天国雨宮、高澤、藤森
314▼枯れた喉五十嵐、加賀、吉見
315▼洗濯の必要志田、滝、室橋
28▼回送列車松本、五十嵐
210▼旅吉見、野島
232▼変化城所、瓜屋
237▼無題藤森、加賀
250▼選択の世界菊池、露木
253▼無味乾燥土橋、前澤
254▼アルバイター雨宮、千田
12▼水の便り菊池
13▼夜粒室橋
15▼いつかの僕の夢吉見
19▼口笛を吹く余裕城所
111▼箱の中千田
118▼幸福の王子菊池
120▼白紙瓜屋
121▼かまいたち児玉
123▼蜂蜜ハニー志田
124▼東京の夕暮れ五十嵐
129▼この心越智
134▼無題児玉
135▼川藤森
140▼もしもこれが夢だったなら志田
141▼内側野島
148▼不動の自由松本

管理者:Ryo Michico <mail@ryomichico.net>
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